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―第十八話― 招待
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夢を見た。
知らない土地で、子供の頃の俺が、誰かと一緒に歩いている。
その誰かの正体を知る術はないが、子供の頃の俺の表情はとても晴れやかだった。
それを、ただ後ろで見守っているだけ。
心に留める程の夢ではないと思うが、なぜか頭から離れない。
ここ数日、何度もこの夢を見ている。
そして必ず、子供の俺が、誰かに話しかける場面で終わる。
『今日の流星群、一緒に見に行こうね!』
◆
ジャスミンと教会に行ってから数日。
「『あー、だっる』」
俺の能力の暴走は、未だに止まっていなかった。
「ねえ、リア。マイナスの言葉を言うのはやめてくれない? あんたのせいで、こっちまでマイナスの気分になるのよ」
「『だってよー。なんで俺たちがあんなところまで出向かなくちゃならないんだよって思ったらさ……』」
◆
それは、昨日の出来事だった。
「『あれ、手紙? 珍しいな……』」
俺の家に手紙が来るなんて、今までで片手で数えられるほどだったぞ。
しかも、なんだよ、この封蝋。
変な紋章まで入って──というか、この紋章、どこかで見たことがあるような……。
◆
「『おーい、ジャスミーン―!』」
猛ダッシュでジャスミンの家に来た俺は、ドアを壊さんばかりの勢いでノックをしていた。
「なによ、うるさいわね……」
「『おい、この手紙を見てみろ!』」
そう言って、半ば押し付けるような形でジャスミンに手紙を押し付けると、最初は面倒くさそうに読んでいたジャスミンの顔が、少しづつ青ざめていった。
「ちょ、リア、あんた、なにやらかしたの!?」
「『いや、まだ何にもしてねえよ!?』」
手紙に書かれていた内容を要約すると、王都に今すぐ来い、という事だった。
ちなみに、封蝋の紋章は、王家のものだった。
俺は今まで、王家に目を付けられるほど働いたこともなければ、犯罪に手を染めたこともない。
故に、なぜ呼ばれたのかが意味不明なのだ。
◆
そして、現在に至る。
「『王都までの道のりって、なんでこんなに長いんだよ』」
「サンビルがそういう位置にあるからでしょ?」
「『あっちが用事あるってんなら、あっちのほうから来いよ』」
「あんた、王家相手に図々しすぎるでしょ……」
「『あー、もう。ほんっとうに面倒くさい』」
「だから、マイナスの言葉は言わないでってば」
「『なんか疲れたから寝るわ』」
「子供かっ!」
◆
「お客さん着きましたよ」
「『ん。はい。今起きます』」
「ほら、さっさとしなさい」
「『はいはい』」
未だに眠ろうとする体を引きずり、俺は馬車から降りた。
◆
「『すっげ―!』」
目の前に広がっている世界は、まさに異世界だった。
遠く離れたここからでも見えるほどに大きなお城。
そして、その周りにそびえたつ豪華絢爛な貴族の屋敷。
あまりの華やかさに、少し気圧されてしまうほどだ。
「リアトリス様ですか?」
恰好から見て、ここの門兵だろうか。
「『あ、はい。どうかされましたか?』」
「申し訳ございませんが、招待状のほうを拝見させていただけませんでしょうか?」
招待状というと、あの手紙のことか。
「『あ、はい。これでいいですか?』」
「………はい。確認いたしました。この町は大変お広いですので、ここから先は、わたくしが案内いたします」
「『あ、はい。ありがとうございます』」
「ん? リア、どうかした?」
「『いや、やけに丁寧な門兵だな、と思ってな』」
「どうかされましたか?」
「い、いえ、何でもないです。ほら、変なことばかり気にしてないで、さっさと行くわよ」
「『あ、ああ』」
◆
「『ちょ、ちょっと、待てよ? 俺たちが呼び出されたのって……』」
目の前にあるのは、非常に大きな城門。
いや、まだ勘違いってこともあるし……。
「こちらは、我らがフェンネル王国の王城でございます」
勘違いじゃなかった―!!
知らない土地で、子供の頃の俺が、誰かと一緒に歩いている。
その誰かの正体を知る術はないが、子供の頃の俺の表情はとても晴れやかだった。
それを、ただ後ろで見守っているだけ。
心に留める程の夢ではないと思うが、なぜか頭から離れない。
ここ数日、何度もこの夢を見ている。
そして必ず、子供の俺が、誰かに話しかける場面で終わる。
『今日の流星群、一緒に見に行こうね!』
◆
ジャスミンと教会に行ってから数日。
「『あー、だっる』」
俺の能力の暴走は、未だに止まっていなかった。
「ねえ、リア。マイナスの言葉を言うのはやめてくれない? あんたのせいで、こっちまでマイナスの気分になるのよ」
「『だってよー。なんで俺たちがあんなところまで出向かなくちゃならないんだよって思ったらさ……』」
◆
それは、昨日の出来事だった。
「『あれ、手紙? 珍しいな……』」
俺の家に手紙が来るなんて、今までで片手で数えられるほどだったぞ。
しかも、なんだよ、この封蝋。
変な紋章まで入って──というか、この紋章、どこかで見たことがあるような……。
◆
「『おーい、ジャスミーン―!』」
猛ダッシュでジャスミンの家に来た俺は、ドアを壊さんばかりの勢いでノックをしていた。
「なによ、うるさいわね……」
「『おい、この手紙を見てみろ!』」
そう言って、半ば押し付けるような形でジャスミンに手紙を押し付けると、最初は面倒くさそうに読んでいたジャスミンの顔が、少しづつ青ざめていった。
「ちょ、リア、あんた、なにやらかしたの!?」
「『いや、まだ何にもしてねえよ!?』」
手紙に書かれていた内容を要約すると、王都に今すぐ来い、という事だった。
ちなみに、封蝋の紋章は、王家のものだった。
俺は今まで、王家に目を付けられるほど働いたこともなければ、犯罪に手を染めたこともない。
故に、なぜ呼ばれたのかが意味不明なのだ。
◆
そして、現在に至る。
「『王都までの道のりって、なんでこんなに長いんだよ』」
「サンビルがそういう位置にあるからでしょ?」
「『あっちが用事あるってんなら、あっちのほうから来いよ』」
「あんた、王家相手に図々しすぎるでしょ……」
「『あー、もう。ほんっとうに面倒くさい』」
「だから、マイナスの言葉は言わないでってば」
「『なんか疲れたから寝るわ』」
「子供かっ!」
◆
「お客さん着きましたよ」
「『ん。はい。今起きます』」
「ほら、さっさとしなさい」
「『はいはい』」
未だに眠ろうとする体を引きずり、俺は馬車から降りた。
◆
「『すっげ―!』」
目の前に広がっている世界は、まさに異世界だった。
遠く離れたここからでも見えるほどに大きなお城。
そして、その周りにそびえたつ豪華絢爛な貴族の屋敷。
あまりの華やかさに、少し気圧されてしまうほどだ。
「リアトリス様ですか?」
恰好から見て、ここの門兵だろうか。
「『あ、はい。どうかされましたか?』」
「申し訳ございませんが、招待状のほうを拝見させていただけませんでしょうか?」
招待状というと、あの手紙のことか。
「『あ、はい。これでいいですか?』」
「………はい。確認いたしました。この町は大変お広いですので、ここから先は、わたくしが案内いたします」
「『あ、はい。ありがとうございます』」
「ん? リア、どうかした?」
「『いや、やけに丁寧な門兵だな、と思ってな』」
「どうかされましたか?」
「い、いえ、何でもないです。ほら、変なことばかり気にしてないで、さっさと行くわよ」
「『あ、ああ』」
◆
「『ちょ、ちょっと、待てよ? 俺たちが呼び出されたのって……』」
目の前にあるのは、非常に大きな城門。
いや、まだ勘違いってこともあるし……。
「こちらは、我らがフェンネル王国の王城でございます」
勘違いじゃなかった―!!
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