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―第二十一話 能力者狩り
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「あー、あー、あー」
うん、完全に戻ってるな。
朝起きると、声が戻っていた。
何が原因なのかはわからないが、これでいちいち言葉に気を使う必要がなくなった。
とりあえず、ジャスミンのところに行くか。
ここ最近は、ジャスミンに迷惑かけてばかりだったしな。
少しはお礼をしないとだ。
◆
「リア、本当にこれ貰っていいの!?」
「ああ、そのために買ってきたんだしな」
俺が買ったのは、この町で最近売れ始めた数量限定のクレープだ。
俺も自分用に一つ買ってみたのだが、ムチャクチャ美味かった。
とりあえず一口、という感じで食べたのだが、そこから止まらなくなった。
「じゃあ、いただきます!」
大きく口を開け、口いっぱいにクレープを頬張る。
「……うまっ!! これ、ムチャクチャ美味いわよ!! ほら、あんたも食べてみなさい!!」
「いや、俺はもう食ったからいいよ。というか、お前新聞なんてとってたんだな」
机の上に乱雑に放り出されている新聞を手に取り、何か面白いことはないだろうかと目を走らせる。
「ん? 連続殺人事件?」
隅のほうに書いてあったその文字が、なんとなく気になった。
……なになに、王都を中心に冒険者が殺されているのか。
へー、嫌な時代だな。
「リア、紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「あー、コーヒーで」
「オーケー」
あいつ、もう食い終わっていたのか。
……にしても、ここ最近はこうやってゆっくりすることも少なかったし、なんとなく新鮮に感じるな。
「はい、お待たせ」
「お、サンキュ」
コーヒー片手に新聞を読む。
これってなんか、できる男感が出てね?
って、そういえば。
「全然触れてなかったけど、俺の声、今朝起きたら戻ってた」
「へ―……。へ!? ……あ、言われてみれば本当ね!! というか、なんでそんな大切なこと、早く言わないのよ!?」
「いや、今の今まで忘れてた」
「あ、あんたねぇ……」
◆
「――よし。そろそろ家に帰るか」
「送っていかなくて大丈夫?」
「お前、俺を何歳だと思ってんだよ」
「でも、この間だってここに来るまでに真逆のほうまで歩いていたじゃない」
「……痛いところをついてくるじゃないか。でも、この間ので道は覚えたから大丈夫だよ」
「わかったわ。じゃ、気を付けてね」
「おう。じゃあな」
◆
ジャスミンの家から帰る途中で、俺は異変に気が付いた。
……誰かつけてるな。
しかも、それほど距離が開いていない。
よし、この路地裏で待ち伏せするか。
「動くな」
路地裏に入った瞬間、首筋にナイフを当てられる。
……結構な手練れだな。
「俺、なんかしたか?」
「街の外まで行くぞ。少しでも不審な動きをすれば、お前を殺した後にあのジャスミンとかいう女も殺す」
「……分かった。おとなしくついていく」
「賢明な判断だ。行くぞ」
後ろに立たれているせいで、相手の正体が全く分からない。
だが、声質からして女の可能性が高いな。
うーん、女相手に手を出すのってあまり好きじゃないんだよな。
それに、この場所では能力を使えない。
街の外を指定してくれたのは、俺としても助かったな。
ま、能力で気絶させてから警察に引き渡すなりなんなりすればいいか。
◆
「ほら、この辺でいいか?」
「ああ。そのままゆっくり後ろを向け」
指示通りに後ろを向き、相手の姿を確認する。
顔を見られないようにするためか、フードを深くかぶっている。
背丈は、俺よりも少し低いくらいだろうか。
「能力を使おうだなんて考えるなよ?」
……!?
こいつ、なんで俺の能力のことを知ってるんだ!?
「能力? 何のことだ?」
なるべく平静を装い、あくまでも俺は無能力者であると主張する。
「……白を切るか。まあいい。どちらにせよ、お前を殺すことは決まっているからな」
ナイフを構え、こちらに鋭い視線を送ってくる。
これは、俺もやるしかないか。
……面倒くさい。
うん、完全に戻ってるな。
朝起きると、声が戻っていた。
何が原因なのかはわからないが、これでいちいち言葉に気を使う必要がなくなった。
とりあえず、ジャスミンのところに行くか。
ここ最近は、ジャスミンに迷惑かけてばかりだったしな。
少しはお礼をしないとだ。
◆
「リア、本当にこれ貰っていいの!?」
「ああ、そのために買ってきたんだしな」
俺が買ったのは、この町で最近売れ始めた数量限定のクレープだ。
俺も自分用に一つ買ってみたのだが、ムチャクチャ美味かった。
とりあえず一口、という感じで食べたのだが、そこから止まらなくなった。
「じゃあ、いただきます!」
大きく口を開け、口いっぱいにクレープを頬張る。
「……うまっ!! これ、ムチャクチャ美味いわよ!! ほら、あんたも食べてみなさい!!」
「いや、俺はもう食ったからいいよ。というか、お前新聞なんてとってたんだな」
机の上に乱雑に放り出されている新聞を手に取り、何か面白いことはないだろうかと目を走らせる。
「ん? 連続殺人事件?」
隅のほうに書いてあったその文字が、なんとなく気になった。
……なになに、王都を中心に冒険者が殺されているのか。
へー、嫌な時代だな。
「リア、紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「あー、コーヒーで」
「オーケー」
あいつ、もう食い終わっていたのか。
……にしても、ここ最近はこうやってゆっくりすることも少なかったし、なんとなく新鮮に感じるな。
「はい、お待たせ」
「お、サンキュ」
コーヒー片手に新聞を読む。
これってなんか、できる男感が出てね?
って、そういえば。
「全然触れてなかったけど、俺の声、今朝起きたら戻ってた」
「へ―……。へ!? ……あ、言われてみれば本当ね!! というか、なんでそんな大切なこと、早く言わないのよ!?」
「いや、今の今まで忘れてた」
「あ、あんたねぇ……」
◆
「――よし。そろそろ家に帰るか」
「送っていかなくて大丈夫?」
「お前、俺を何歳だと思ってんだよ」
「でも、この間だってここに来るまでに真逆のほうまで歩いていたじゃない」
「……痛いところをついてくるじゃないか。でも、この間ので道は覚えたから大丈夫だよ」
「わかったわ。じゃ、気を付けてね」
「おう。じゃあな」
◆
ジャスミンの家から帰る途中で、俺は異変に気が付いた。
……誰かつけてるな。
しかも、それほど距離が開いていない。
よし、この路地裏で待ち伏せするか。
「動くな」
路地裏に入った瞬間、首筋にナイフを当てられる。
……結構な手練れだな。
「俺、なんかしたか?」
「街の外まで行くぞ。少しでも不審な動きをすれば、お前を殺した後にあのジャスミンとかいう女も殺す」
「……分かった。おとなしくついていく」
「賢明な判断だ。行くぞ」
後ろに立たれているせいで、相手の正体が全く分からない。
だが、声質からして女の可能性が高いな。
うーん、女相手に手を出すのってあまり好きじゃないんだよな。
それに、この場所では能力を使えない。
街の外を指定してくれたのは、俺としても助かったな。
ま、能力で気絶させてから警察に引き渡すなりなんなりすればいいか。
◆
「ほら、この辺でいいか?」
「ああ。そのままゆっくり後ろを向け」
指示通りに後ろを向き、相手の姿を確認する。
顔を見られないようにするためか、フードを深くかぶっている。
背丈は、俺よりも少し低いくらいだろうか。
「能力を使おうだなんて考えるなよ?」
……!?
こいつ、なんで俺の能力のことを知ってるんだ!?
「能力? 何のことだ?」
なるべく平静を装い、あくまでも俺は無能力者であると主張する。
「……白を切るか。まあいい。どちらにせよ、お前を殺すことは決まっているからな」
ナイフを構え、こちらに鋭い視線を送ってくる。
これは、俺もやるしかないか。
……面倒くさい。
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