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―第三十三話― 写真
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あの晩から数日が経過したが、これ言って変わったことは起きずに平和な毎日が続いていた。
というか、俺自身、あの晩の事をほとんど忘れかけている。
にしてもまあ、子供の体力ってのはすごいな。
ほぼ毎日遊んでいるにもかかわらず、一切疲れた様子が見えない。
俺だったら、一日でつぶれる自信がある。
……さてと、今日も日課の夜の散歩に行きますかね。
◆
うーん、夜風が気持ちいい。
……実際に感じてるわけではないが。
今日は満月か。
うん、きれいだなあ。
……よし、ある程度夜空を堪能できたし、さっさと戻るか。
◆
……あれ?
ビオラさん、起きてる?
ベッドから体を起こし、何かを眺めているような……。
『ビオラさん、どうかされたのですか?』
「……いいえ、何でもないです。ただ少し、昔のことを思い出しておりまして」
『?』
「一枚だけ取った、夫との写真です。何度も見返しているので、少し色褪せているかもしれませんが……」
差し出された写真を見ると、確かにビオラさんと男性が二人で並んでいる姿が映っていた。
男性の方は、特に汚れが目立っている。
「目が見えなくなってからも、ずっとこの写真を見ていたんですよ。……いえ、見るというよりかは触るというほうが正しいですね。そうしているとなんだか、夫がすぐそばにいてくれているような気がしてしまって」
頬を染め、少し照れるような表情を見せたビオラさんを見て、なぜか少しだけ悲しい気持ちになった。
◆
今日も今日とて、少年はツツジのところへ遊びに行っていた。
うーん、本当に体力値どうなっているんだ?
お、あの宣教師だ。
なんか、最近はあいつの周りに人だかりができるようになっている気がする。
そんなにあの宗教は素晴らしいのか?
それとも、あの宣教師は話が上手いのか?
どちらにせよ、あのアンデッド化魔法についてが不可解だな。
◆
「あー、負けたー」
「お兄ちゃんは、カードゲームめちゃくちゃ弱いよね」
「い、いや、手加減してるだけだし? ほ、本気を出せば……」
あー、ほほえましいなあ。
見ているだけで癒されるような光景に、思わず顔を綻ばせる。
しかし少年よ、このままだと一生ツツジに勝てないぞ。
だって、この娘……。
「ほら、次のゲームやろ! 私に負けっぱなしでいいの?」
「次こそは勝つ!」
そーっとツツジの後ろに回り、思わずため息を吐く。
後ろに回してある手の下には、自分に有利なカードが置かれている。
そう、所謂イカサマをしているのだ。
……まったく、末恐ろしいこどもだな。
◆
「じゃあ、また明日ねー」
「うん。今日は偶然負けまくったけど、明日こそは僕が勝つからね!」
「楽しみにしてるねー」
結局、勝つまでやり続けると少年が駄々をこね始め、ツツジにわかりにくい程度の手加減をされてようやく少年は帰路に着けた。
この間は賢いといったが、案外馬鹿なのかもしれない。
◆
少年の家まであと角一つという時、突然悪寒が走った。
なんだか、この角を曲がってはいけないような気がする。
少年の手を引っ張ってこちらに来させようとするが、一切の手ごたえ無く空振りをした。
まずい。
何かはわからないが、何かまずい。
◆◆◆
あーあ、今日もツツジちゃんに勝てなかったなー。
うーん、どうやったら勝てるんだろう。
そんなことを考えながら、角を曲がる。
あとはこの一本道を歩くだけで家に帰れる。
お母さん、大丈夫かなあ。
……あれ?
なんか、今手に触れたような気がしたんだけどな……。
気のせいか。
……って、あれ、なんだ?
家の前に人だかりができていた。
いや、あれはこの街の警護団だな。
僕の家に何か用があるのだろうか?
あ、一人がこっちに気が付いた。
「おじさん、何かあったんですか?」
「……えっとね、その―。ちょっと事故が起こったんだ。危ないから、少し離れててくれるかな?」
……嘘だ。
この人は、何かを隠している。
早く家に行かなきゃ……!
直感的にそう考えた僕は、おじさんの足元をくぐり、家まで全力で走った。
「こら、待ちなさい!!」
他の警護団の人が驚いているすきを突き、何とか玄関先までたどり着くことができた。
しかし、そこで待ち受けていた光景は、あまりにも衝撃的なものだった。
というか、俺自身、あの晩の事をほとんど忘れかけている。
にしてもまあ、子供の体力ってのはすごいな。
ほぼ毎日遊んでいるにもかかわらず、一切疲れた様子が見えない。
俺だったら、一日でつぶれる自信がある。
……さてと、今日も日課の夜の散歩に行きますかね。
◆
うーん、夜風が気持ちいい。
……実際に感じてるわけではないが。
今日は満月か。
うん、きれいだなあ。
……よし、ある程度夜空を堪能できたし、さっさと戻るか。
◆
……あれ?
ビオラさん、起きてる?
ベッドから体を起こし、何かを眺めているような……。
『ビオラさん、どうかされたのですか?』
「……いいえ、何でもないです。ただ少し、昔のことを思い出しておりまして」
『?』
「一枚だけ取った、夫との写真です。何度も見返しているので、少し色褪せているかもしれませんが……」
差し出された写真を見ると、確かにビオラさんと男性が二人で並んでいる姿が映っていた。
男性の方は、特に汚れが目立っている。
「目が見えなくなってからも、ずっとこの写真を見ていたんですよ。……いえ、見るというよりかは触るというほうが正しいですね。そうしているとなんだか、夫がすぐそばにいてくれているような気がしてしまって」
頬を染め、少し照れるような表情を見せたビオラさんを見て、なぜか少しだけ悲しい気持ちになった。
◆
今日も今日とて、少年はツツジのところへ遊びに行っていた。
うーん、本当に体力値どうなっているんだ?
お、あの宣教師だ。
なんか、最近はあいつの周りに人だかりができるようになっている気がする。
そんなにあの宗教は素晴らしいのか?
それとも、あの宣教師は話が上手いのか?
どちらにせよ、あのアンデッド化魔法についてが不可解だな。
◆
「あー、負けたー」
「お兄ちゃんは、カードゲームめちゃくちゃ弱いよね」
「い、いや、手加減してるだけだし? ほ、本気を出せば……」
あー、ほほえましいなあ。
見ているだけで癒されるような光景に、思わず顔を綻ばせる。
しかし少年よ、このままだと一生ツツジに勝てないぞ。
だって、この娘……。
「ほら、次のゲームやろ! 私に負けっぱなしでいいの?」
「次こそは勝つ!」
そーっとツツジの後ろに回り、思わずため息を吐く。
後ろに回してある手の下には、自分に有利なカードが置かれている。
そう、所謂イカサマをしているのだ。
……まったく、末恐ろしいこどもだな。
◆
「じゃあ、また明日ねー」
「うん。今日は偶然負けまくったけど、明日こそは僕が勝つからね!」
「楽しみにしてるねー」
結局、勝つまでやり続けると少年が駄々をこね始め、ツツジにわかりにくい程度の手加減をされてようやく少年は帰路に着けた。
この間は賢いといったが、案外馬鹿なのかもしれない。
◆
少年の家まであと角一つという時、突然悪寒が走った。
なんだか、この角を曲がってはいけないような気がする。
少年の手を引っ張ってこちらに来させようとするが、一切の手ごたえ無く空振りをした。
まずい。
何かはわからないが、何かまずい。
◆◆◆
あーあ、今日もツツジちゃんに勝てなかったなー。
うーん、どうやったら勝てるんだろう。
そんなことを考えながら、角を曲がる。
あとはこの一本道を歩くだけで家に帰れる。
お母さん、大丈夫かなあ。
……あれ?
なんか、今手に触れたような気がしたんだけどな……。
気のせいか。
……って、あれ、なんだ?
家の前に人だかりができていた。
いや、あれはこの街の警護団だな。
僕の家に何か用があるのだろうか?
あ、一人がこっちに気が付いた。
「おじさん、何かあったんですか?」
「……えっとね、その―。ちょっと事故が起こったんだ。危ないから、少し離れててくれるかな?」
……嘘だ。
この人は、何かを隠している。
早く家に行かなきゃ……!
直感的にそう考えた僕は、おじさんの足元をくぐり、家まで全力で走った。
「こら、待ちなさい!!」
他の警護団の人が驚いているすきを突き、何とか玄関先までたどり着くことができた。
しかし、そこで待ち受けていた光景は、あまりにも衝撃的なものだった。
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