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―第四十九話― ステータス
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にこにこと笑みを浮かべ、演説台に立ったまま動かないサントリナ。
それを取り囲む、怯えた表情の冒険者やギルド職員の方々。
……その中に、俺も立っているのだが。
「えー、ギルドの規則として、特別な理由がない限り、年に一度ステータス検査を受けてもらう必要があるのですが、先程、それを守っていない悪い子を見つけてしまいました」
サントリナのその声に、九割以上の冒険者がびくりと反応する。
「そして、その規則にはこうも記されています。冒険者ギルドの職員は、ステータス検査を受けさせる義務もある、と」
今度は、その場にいたギルド職員全員がびくりと反応した。
「この規則には、ちゃんとした意味があります。能力というのは、原則として先天的に発現しますが、稀に、後天的にも発現するのです」
後天的な能力の発現。
確かに、昔聞いたことはあるが……。
「あの、それって、都市伝説とかそういう類の話じゃないんですか……?」
一人の冒険者が、恐る恐るといった感じで質問をした。
にこやかな表情を崩さぬまま、サントリナはこう告げた。
「この話題について、ほぼ全員の前で講義したことがあるはずだぞ、こら」
場の空気が一気に凍りついた。
ヤバい、マジヤバい。
俺、全然講義の内容とか覚えてないんだけど。
「まあ、講義の内容をいちいち覚えておけなんて無茶は言わないさ。ただ、規則だけは守ろうぜ。最悪、規則違反でこの場にいる冒険者を全員解雇にすることだってできるんだ」
それは……、そうだな。
規則を守らないやつがいれば、組織全体の空気も悪くなる。
そいつを切り捨てるという判断だって、決して間違ってはいないと思う。
……ただ。
恐らくは、ここにいる全員の心の声が一致したであろう。
お前にだけは言われたかねえ!!
仕事をさぼっては街に繰り出し、酒を飲んでは暴れ、挙句の果てには近くにいた一般人と喧嘩を始める。
ギルドマスターの肩書がありながら、留置所に入れられた回数なら、その辺のチンピラに負けず劣らずのレベルだ。
裏での呼び名は、チンピラニートマスター。
そんな奴が、今更規則だなんて……。
「ちなみにですが、明日までにステータス検査の記録がない冒険者の各位には、罰金をおさめていただくことになります。ギルドの皆様は、ボーナスカットの可能性も忘れずに」
その言葉が終わるや否や、俺含め全員がギルドに向かって全力で走り始めた。
◆
「あー、疲れた」
三時間待ちだなんて聞いてねえよ。
「てか、ジャスミンはまだ来ねえのか?」
ジャスミンだけは、サントリナに一番に見つかってしまったため、俺たちもよりも先に連れていかれたんだよな。
ったく、今日は一緒に呑む約束してたってのに。
「ごめん、お待たせ」
「おう、先に呑んでたぞ」
……あれ?
「お前、なんかあったのか?」
「え!? いや、何もなかったよ……」
なんとなく、表情が曇っているような気がしたんだが。
気のせい…………じゃねえだろ。
「ステータスが悪かったのか?」
「!? い、いや、そんなわけないじゃないの。私って、こう見えてもこの町最強の冒険者だって言われてたくらいだし……!!」
焦りすぎだろ。
「ステータスなんて、気にするな。どれだけ低かろうが、結局は」
「……違うの」
俺の言葉を遮り、ポツリと一言だけ呟いた。
「違うって、なにが……?」
「……たの」
「え?」
「ステータスが、黒塗りされてたの!!」
…………。
………………。
「は!?」
それを取り囲む、怯えた表情の冒険者やギルド職員の方々。
……その中に、俺も立っているのだが。
「えー、ギルドの規則として、特別な理由がない限り、年に一度ステータス検査を受けてもらう必要があるのですが、先程、それを守っていない悪い子を見つけてしまいました」
サントリナのその声に、九割以上の冒険者がびくりと反応する。
「そして、その規則にはこうも記されています。冒険者ギルドの職員は、ステータス検査を受けさせる義務もある、と」
今度は、その場にいたギルド職員全員がびくりと反応した。
「この規則には、ちゃんとした意味があります。能力というのは、原則として先天的に発現しますが、稀に、後天的にも発現するのです」
後天的な能力の発現。
確かに、昔聞いたことはあるが……。
「あの、それって、都市伝説とかそういう類の話じゃないんですか……?」
一人の冒険者が、恐る恐るといった感じで質問をした。
にこやかな表情を崩さぬまま、サントリナはこう告げた。
「この話題について、ほぼ全員の前で講義したことがあるはずだぞ、こら」
場の空気が一気に凍りついた。
ヤバい、マジヤバい。
俺、全然講義の内容とか覚えてないんだけど。
「まあ、講義の内容をいちいち覚えておけなんて無茶は言わないさ。ただ、規則だけは守ろうぜ。最悪、規則違反でこの場にいる冒険者を全員解雇にすることだってできるんだ」
それは……、そうだな。
規則を守らないやつがいれば、組織全体の空気も悪くなる。
そいつを切り捨てるという判断だって、決して間違ってはいないと思う。
……ただ。
恐らくは、ここにいる全員の心の声が一致したであろう。
お前にだけは言われたかねえ!!
仕事をさぼっては街に繰り出し、酒を飲んでは暴れ、挙句の果てには近くにいた一般人と喧嘩を始める。
ギルドマスターの肩書がありながら、留置所に入れられた回数なら、その辺のチンピラに負けず劣らずのレベルだ。
裏での呼び名は、チンピラニートマスター。
そんな奴が、今更規則だなんて……。
「ちなみにですが、明日までにステータス検査の記録がない冒険者の各位には、罰金をおさめていただくことになります。ギルドの皆様は、ボーナスカットの可能性も忘れずに」
その言葉が終わるや否や、俺含め全員がギルドに向かって全力で走り始めた。
◆
「あー、疲れた」
三時間待ちだなんて聞いてねえよ。
「てか、ジャスミンはまだ来ねえのか?」
ジャスミンだけは、サントリナに一番に見つかってしまったため、俺たちもよりも先に連れていかれたんだよな。
ったく、今日は一緒に呑む約束してたってのに。
「ごめん、お待たせ」
「おう、先に呑んでたぞ」
……あれ?
「お前、なんかあったのか?」
「え!? いや、何もなかったよ……」
なんとなく、表情が曇っているような気がしたんだが。
気のせい…………じゃねえだろ。
「ステータスが悪かったのか?」
「!? い、いや、そんなわけないじゃないの。私って、こう見えてもこの町最強の冒険者だって言われてたくらいだし……!!」
焦りすぎだろ。
「ステータスなんて、気にするな。どれだけ低かろうが、結局は」
「……違うの」
俺の言葉を遮り、ポツリと一言だけ呟いた。
「違うって、なにが……?」
「……たの」
「え?」
「ステータスが、黒塗りされてたの!!」
…………。
………………。
「は!?」
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