上 下
57 / 206

―第五十七話― 第二号

しおりを挟む
「ジャスミン、『起きろ』」
「…………。リア!! なんで私に能力を……!!」

 やめろ、肩を掴んで揺さぶるんじゃない!!
 首がやばいし、頭がくらくらする!!

「で、でも、疲れは取れただろ?」
「……うん。まあ」

 よ、ようやく手が離れた……。

「ただ、一時的なものではあるから、あんまり無茶はするなよ?」
「わかったわ」

 その状態で無茶をして、倒れた人がここにいますからね。
 ポーション作りで倒れるなんて、初めての経験だったな。

「それで、ジャスミンちゃんの魔法が完成したってのは、本当なのか!?」
「はい!! それじゃ、今から見せましょうか」
「オーケー。何体くらいゴーレムを用意すればいい?」

 百体くらいは作る準備してるけどな。
 それ以上の数を言ってくる可能性だってあるし。

「一体もいらないわよ」
「「は!?」」

「サントリナさん。今から私と、本気で戦ってください!!」

 そう来たか……。

「ジャスミン、マジで言ってんのか!?」
「マジもマジ、大マジよ!!」

 ごめん、なにを言ってるかわからない。

「いいんじゃねえの?」

「サントリナ!?」
「やったー!!」

 サントリナと本気って、やばいぞ?
 具体的には、俺の語彙がなくなるくらいには。

「その代わり、双方手加減なしだぞ?」
「当り前です!!」

 ウソ―……。



「それじゃあ、ジャスミンちゃん。準備はいいか?」
「ええ、もちろんです!!」

 あんまり気乗りしないけどな。

「それでは、よーい、スタート!!」

 俺が掛け声を出すも、二人とも一向に動こうとする気配がない。
 ……当然か。
 二人とも、魔法の準備をしているのだろう。
 最大火力の衝突が起こるか、はたまた数で相手を押していくのか……。

 最初に動きをいせたのは、サントリナの方だった。

「『アイシクル』」

 右腕に氷の槍を顕現させ、それをジャスミンに投げつける。
 しかし、ジャスミンは一向に動く気配がない。

 まずいな、能力を使うべきか……?
 そう思った瞬間、

「『ストライク』!!」

 魔法を唱えながら剣を抜き、氷の槍を剣の腹で打った。
 すると、大きな炸裂音とともに、氷の槍は細やかな粒を散らしながら砕け散った。

 ……マジか。
 剣にライトニングを流し、その爆発で対象を破壊する。
 それが今の魔法の正体なわけだが、それをするには細かな魔力操作が必要だ。
 相応に時間をかけ、努力をしなければならないだろう。
 それを、ジャスミンはやってのけたわけか。

「なるほどねえ。今のがオリジナル魔法か」
「はい! 魔法第二号です!!」

 ……二号?

「この日のために、五つほど魔法を習得しました!!」
「「……………………」」

 阿保だろ、こいつ。
 もしくは、変態だろ。
 五つの魔法を習得するって、本当に、こいつは……。
 そりゃあ、体がボロボロになるわ。

「一つはオリジナルといえるか怪しいですけど、ほかの四つは完全オリジナルです!!」

 聞いてねえし、聞きたくなかった。
 逆に、オリジナルじゃない一つがめちゃくちゃ気になるんだが。

「サントリナさん、まだまだ続けますよ!!」
「おい、ちょ、待て!! 俺はもうやる気ねえから……!!」

「『はい、そこまで』!!」

 能力も使い、二人御静止させる。
 これ以上やったら、サントリナが潰れてしまう。
 強いとは言えども、もう現役から退いて何年も経つんだ。
 そんなじじいと現役バリバリのジャスミンとじゃ、流石にまずい。

「とりあえず、今回は一つでも魔法を見れたから終わりにするぞ」
「えー、まだやりたいんだけど……」
「我儘を言うんじゃありません!! ほら、さっさと帰って飯にするぞ!」
「はーい……」

 首根っこを摑まえ、能力で居酒屋まで送る。
 こいつをこれ以上ここにいさせたら危ない。

「悪い、助かった」
「いいよ。その代り、あとで奢れよな」
「……了解」
「ついでに、その時にジャスミンと対峙した時の感想もお願いな」
「それはもちろんだ」
「じゃ、俺たちも飯食おうぜ。腹減った」
「ああ、俺もだ。酒を飲もう、酒を!!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

隻腕令嬢の初恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,059pt お気に入り:101

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,911pt お気に入り:466

あなたの愛なんて信じない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:119,046pt お気に入り:4,076

処理中です...