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―第六十二話― 参加者

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 控室には、三十人ほどの男女が集まっていた。
 全員から、ただ者ではない雰囲気が漂っている。
 ……この人たちと戦うのか。
 私、勝てるかなあ。
 ……いや、勝つ!
 リアとサントリナさんに鍛えてもらった魔法もあるし、きっと行ける!

 ……それに、私には奥の手もある。

「みなさーん、静粛にしてください」

 あ、サントリナさんだ。
 ルール説明が今からあるって言ってたけど、サントリナさんがするのかな?

「えーっと、ごほん。これで全員集まったね。まずは、今回の大会に集まって頂いて、本当にありがとう」

 サントリナさん、凄い緊張してない?
 大丈夫なのかな……。

「申し遅れましたが、私は今大会の主催者の一人、サントリナです。以後お見知りおきを」

 名乗ったと同時に、控室内が一瞬で騒めいた。

「サントリナって、あの!?」
「あんな貧弱そうなのが!?」
「もうとっくに隠居して、滅多に人前に出ないって聞いてたけど……」
「おいちょっと待て、今貧弱そうなっていった奴誰だ! あと、俺はまだギリギリ現役だ!! そこんところ間違えるな!!」

 ……やっぱり、サントリナさんって有名人なんだ。
 さっきのアマリリスの時もそうだったし……。
 私、ギルドマスター以外の情報をほとんど知らないもんな……。

「え―い、騒がしい! とりあえず、今から大会についての説明するから、一回黙れ!!」

 机を叩き、全員の注意がサントリナさんに向いたところで、改めて話が始まった。

「ここにいる皆には、残り人数が八人になるまで、サバイバル形式で戦ってもらう。気絶、または無力化させられた時点で敗退だ。殺しは禁止。他は基本何でもあり。ただし、明らかにやりすぎな野郎は俺が全力で止める。以上!」

 息を切らしながら一方的に説明を終えたサントリナさんは、そのまま控室を出た。


◆◆◆


「っはー、緊張した!」
「お疲れさん」

 こいつ、人前で結構緊張するタイプだもんな。

「なあ、次大会開くときあったら、リアトリスが説明してくんね?」
「死んでも嫌だ」
「そんなにかよ……。お前だって、主催者側に回れるくらいには強いし、功績も上げてるんだ。今回は仕方ないにしろ、次からは俺推薦でこっちに来い」
「その時になったら考えといてやるよ」
「それ、絶対断る奴だろ」

 当たり。
 そんな面倒くさいこと、誰が引き受けるかってんだ。

「で、お前の方の準備は終わってるのか?」
「ああ。ばっちりだ」

 俺の能力は、本当に便利だ。
 今回の作戦・・に、最も適しているのではないかと思う程には。

「で、サントリナはどうすんの?」
「俺は大会の方で審判兼暴走した奴を止める係がある。あと、美味しい美味しい弁当を食べなくてはならない」
「こっちが命張ってる間に、そんなことするつもりなのかよ……」
「いいだろ、別に。王都の飯は上手いんだ。まあ、サンビルの酒場には劣るがな。ガッハッハッハ!」

 まあ、サンビルは冒険者が多い分、酒場も発展してるからな。
 ギルドの依頼にも、食材関係の依頼が多かったりする。
 ……俺は一度も受けたことないけど。

「お前も、たまには旅行気分で観光してみたらどうだ?」
「家が一番落ち着くから却下。それに、風景は絵で見たほうがきれいだ」
「風情がねえな。どっかの大工みたいなこと言いやがって」
「てか、そろそろ会場に行かねえとまずいんじゃねえの?」
「あ? ……あ、やっべ。じゃ、またあとでな!」
「おう」

 どたどたと足音を響かせながら去っていくサントリナを見送り、俺は腰に括った布袋を開いた。

「さて、俺も作戦に移りますかね」
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