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―第八十五話― エルフの村
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「ほら、早く行くぞ」
…………。
「あ、あの、どうかされたんですか……?」
「……ここ、リアが昔住んでたとこなのよ」
「えっ、そうなんですか!? 結構ご近所さんだったんですね。……あれ、でも、ネメシスって……」
そこで何かを察したのか、アマリリスは俯いて黙り込んだ。
「……早く案内してくれ」
「……はい」
◆
「『移動』、『移動』……」
能力を乱用しながら、草原の中を進んでいく。
辺りにはうっすらと霧が立ち込めており、なんとなく幻想的な雰囲気が醸し出されている。
……肌がピリピリする。
……この感じは、結界の一種か?
「……もう少しで私たちの住んでいる村に着きます」
良かった。
もう少しで魔力が切れるところだったぜ。
「ようこそおいで下さいました。こちらが、私たちの村でございます」
「「ええっ!?」」
そこにいたのは、何百人という数のエルフたち。
「アマリリス。お前、もしかして……」
「はい。私も、エルフ族の一人です」
……エルフ族か。
本で読んだことはあったが、まさかこうしてエルフの村にまで行けるとは……。
「……そうか。じゃ、早速師匠のところまで連れてってくれ」
「はい」
◆
アマリリスに連れていかれた場所は、お世辞にもきれいとは言えない感じの家だった。
……とはいえ、俺の家よりも大きいしきれいではあるが。
「お師匠様。リアトリスさんたちを連れてきました」
「……入って」
その声に、アマリリスはゆっくりと扉を開けた。
「失礼しまーす……」
……あれ?
「……久しぶりね」
ベッドに寝ていたのは、リリーよりも少し大きいくらいの女の子だった。
「そちらのお嬢さんは……、ジャスミンさんね……」
「どうも、はじめまして……」
困惑している様子の俺たちに、笑いを含んだような声で、
「私はベゴニア。こんな見た目ですけど、千年以上の年月を生きてるエルフなんですよ?」
「「えっ!?」」
俺たちのリアクションに、ベゴニアは笑みを浮かべ。
「意外でしょ? ちょっと特殊な事情があってね……」
「事情、ですか」
あんまり深入りしてはいけない部分なのだろうか。
「リアトリスさん、あの……」
「そうだった、治療だな。……ってか、聖職者のジャスミンがいるんだし、ジャスミンに頼んだほうが良いんじゃないか?」
「あの、それが……」
「ごめんね。私、ネクロマンサーなの」
ああ、そういう事か。
ネクロマンサーは、いわば聖職者と対極の位置に存在する役職。
その分、回復魔法も効きづらいのだ。
「わかりました。恐らくですが、俺の能力で治せると思います」
「本当?」
「ええ、約束します」
治療自体はやったことがないが、恐らくあれならいけるはずだ。
床に手をつき、素早く魔方陣を張る。
額から少し汗が出始めた。
「……じゃ、行きますよ?」
アマリリスから期待の眼差しを受けながら、魔方陣に向かって魔力を流し込む。
……あとでベゴニアさんに聞きたいこともあるし、とびきり強力な奴をかけてやるか。
「『ベゴニアの体を治癒せよ』!!」
…………。
「あ、あの、どうかされたんですか……?」
「……ここ、リアが昔住んでたとこなのよ」
「えっ、そうなんですか!? 結構ご近所さんだったんですね。……あれ、でも、ネメシスって……」
そこで何かを察したのか、アマリリスは俯いて黙り込んだ。
「……早く案内してくれ」
「……はい」
◆
「『移動』、『移動』……」
能力を乱用しながら、草原の中を進んでいく。
辺りにはうっすらと霧が立ち込めており、なんとなく幻想的な雰囲気が醸し出されている。
……肌がピリピリする。
……この感じは、結界の一種か?
「……もう少しで私たちの住んでいる村に着きます」
良かった。
もう少しで魔力が切れるところだったぜ。
「ようこそおいで下さいました。こちらが、私たちの村でございます」
「「ええっ!?」」
そこにいたのは、何百人という数のエルフたち。
「アマリリス。お前、もしかして……」
「はい。私も、エルフ族の一人です」
……エルフ族か。
本で読んだことはあったが、まさかこうしてエルフの村にまで行けるとは……。
「……そうか。じゃ、早速師匠のところまで連れてってくれ」
「はい」
◆
アマリリスに連れていかれた場所は、お世辞にもきれいとは言えない感じの家だった。
……とはいえ、俺の家よりも大きいしきれいではあるが。
「お師匠様。リアトリスさんたちを連れてきました」
「……入って」
その声に、アマリリスはゆっくりと扉を開けた。
「失礼しまーす……」
……あれ?
「……久しぶりね」
ベッドに寝ていたのは、リリーよりも少し大きいくらいの女の子だった。
「そちらのお嬢さんは……、ジャスミンさんね……」
「どうも、はじめまして……」
困惑している様子の俺たちに、笑いを含んだような声で、
「私はベゴニア。こんな見た目ですけど、千年以上の年月を生きてるエルフなんですよ?」
「「えっ!?」」
俺たちのリアクションに、ベゴニアは笑みを浮かべ。
「意外でしょ? ちょっと特殊な事情があってね……」
「事情、ですか」
あんまり深入りしてはいけない部分なのだろうか。
「リアトリスさん、あの……」
「そうだった、治療だな。……ってか、聖職者のジャスミンがいるんだし、ジャスミンに頼んだほうが良いんじゃないか?」
「あの、それが……」
「ごめんね。私、ネクロマンサーなの」
ああ、そういう事か。
ネクロマンサーは、いわば聖職者と対極の位置に存在する役職。
その分、回復魔法も効きづらいのだ。
「わかりました。恐らくですが、俺の能力で治せると思います」
「本当?」
「ええ、約束します」
治療自体はやったことがないが、恐らくあれならいけるはずだ。
床に手をつき、素早く魔方陣を張る。
額から少し汗が出始めた。
「……じゃ、行きますよ?」
アマリリスから期待の眼差しを受けながら、魔方陣に向かって魔力を流し込む。
……あとでベゴニアさんに聞きたいこともあるし、とびきり強力な奴をかけてやるか。
「『ベゴニアの体を治癒せよ』!!」
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