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10/31は何の日?
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「今年のハロウィンイベントは無しですね。彩華さんも出産して間もないですし、真央さんもまだ育児休暇中ですから。柳原さんは大丈夫かもしれませんが、他の女性の従業員2人にこちらから残業頼むことも出来ませんし。どうします?当日に来てくださったお客様にクッキーを差し上げるだけにしておきますか?」
ある真夏日の夕方。連日30℃越えに体力も奪われがちだが、クーラーが効いた店内は居心地がいい。そんなクレマチスの閉店時間が迫ったぎりぎりの時間にオーナーとマスターでミーティングが行われていた。
キッチンでの洗い物をしながら浩介は、明日の下準備をしながらカウンターに座ってコーヒーを飲んでいる橘巧と今後の店の事について聞いた。
巧は大学からの友人であり、クレマチスのオーナーであり、小説家であり、愛する奥さんの妹の旦那でもあって今では義兄妹という間柄だ。巧は営業時間前と、終了間際の客がほぼいない時間帯を狙って顔を出すことが多いのだ。
2年前からハロウィンイベントをクレマチスで開催しているのだが、今年は人手不足により開催は難しい。しかし、全くイベントをしないという訳にもいかないだろうと思い、当日の配布予定のクッキーぐらいは作りたい。後はランチメニューに変化を加えるか。
「そうだな、それぐらいしか出来ないだろうな」
今年のハロウィンはとても寂しいものになりそうだった。
そのミーティング横のテーブル席では賑やかな女子会ならぬ、プチ同窓会が繰り広げられていた。
集合理由は集まったメンバーの1人が数日前に入籍をしたからだ。
同窓会メンバーは店長の奥さんである中崎彩華、クレマチスの料理担当の前原みう、最近よく店へ来るようになった木槌環菜で、彼女が入籍したのだ。
3人は高校の同級生で、彩華は結婚して橘から中崎へ、環菜は三田から木槌へと苗字が変わった。変わっていないのは前原みうだけだが彼氏がいる。付き合っている朝倉雪之丞は弁護士をしていてこの店の常連だ。付き合って2年ほど経つのだがゴールインも近いのではないかと親しい周りの者達は思っているのだった。
「ねえ、彩ちゃん、みうちゃん。今浩介さん達の話聞こえたけど、クレマチスってハロウィンイベントしてたの?」
店に通うようになってまだ3か月ほどの環菜は秋になると開催されているハロウィンイベントの事は知らなかったらしい。入籍したお祝いの話は一段落ついていたので、聞こえて来た話に内容が移行した。
「あー、うん。2年前からハロウィン当日だけイベントしてたの。私が勤めている手芸店たかやまと合同でワークショップと物品販売したり、ハロウィン限定クッキーを販売したりしてね。コスプレもやったよ?結構本格的に自分で衣装作って。結構面白かったよ。ね?みうちゃん」
イベント内容を楽しそうに話す彩華に、みうも頷いている。
「そうそう、初めてそのイベントが開催された時にたまたまお客さんとして私もこの店に来たんだけど、彩ちゃんがいて吃驚したよー。で、盛り上がって話をしてるうちに何故かここに働くことになったんだよねー」
「ええっ!?みうちゃんイベントに遊びに来て、そのままここに就職することになったの!?」
「そうそう、あの時付き合ってた職場の元カレが二股掛けてたんだけど、相手が同じ職場に入った高校生の子でさぁ。もう無理って振ったついでに仕事も辞めちゃったってワケ。で、ここで働かせてもらうようになって直ぐに雪乃さんと出会って付き合うことになったんだ~」
そんな経由でここに就職したのかと環菜は驚いた。
「そっかー・・・。みうちゃんも元カレが発端で朝倉さんと付き合うことになったんだー」
環菜も元彼の浮気が元で別れてむしゃくしゃするから気分転換に出かけたショッピング先で彩華夫婦と出会ったのが切っ掛けで、たまたま同じくショッピングに来ていた上司である木槌宗司に告白されて付き合うことになり、3か月というスピードで入籍することになったのだ。
そして、宗司とは同じ部署だった為に入籍を機に環菜は陶器を主に扱う会社・西島の通販部門から企画部へと部署移動をしたのだ。
「あ、そうだ!今度企画部で初めてミーティングに参加することになってるんだけど、彩ちゃん達の代わりにここでイベントすることを提案してもいいかな?」
良いことを思いついたと両手合わせをぽんと音を出してたった今考え付いたアイディアをみんなに聞こえるように提案した。
「えっ!?環菜ちゃんがここでイベント?どうやって?」
彩華もみうも驚いた顔をしている。
「西島の扱っている食器を使って何か出来ないかなと思ったんだけど・・・。ごめん、単なる思い付き。えへへ」
特に具体的な内容も考えないまま勢いで言ってしまった環菜だった。決まり悪げにしている。
「いえ、それ、いいかも知れないです」
カウンター席に座っていた巧は後ろを振り返って同窓会メンバーに言った。
「例えばこの店では普段使わないような少し贅沢な食器を自分の好みのものを選んでその日はコーヒーや食事を楽しむとか、食器に自分で絵を描いてみるとか出来ないですかね?」
「ああ、そういうのもいいですね。楽しそうです」
巧の提案に浩介も乗り気になったらしい。
「ああ、成程。食器に描く専用のペンなら『たかやま』でも売ってるよ。結構安いし、レンジのオーブン機能使えばあっという間に出来ちゃうし。いいね、そういうイベント」
続いて彩華も乗り気になったらしい。
という訳で、クレマチスとしては大歓迎となり、環菜は社内ミーティングで提案することになったのだった。
ある真夏日の夕方。連日30℃越えに体力も奪われがちだが、クーラーが効いた店内は居心地がいい。そんなクレマチスの閉店時間が迫ったぎりぎりの時間にオーナーとマスターでミーティングが行われていた。
キッチンでの洗い物をしながら浩介は、明日の下準備をしながらカウンターに座ってコーヒーを飲んでいる橘巧と今後の店の事について聞いた。
巧は大学からの友人であり、クレマチスのオーナーであり、小説家であり、愛する奥さんの妹の旦那でもあって今では義兄妹という間柄だ。巧は営業時間前と、終了間際の客がほぼいない時間帯を狙って顔を出すことが多いのだ。
2年前からハロウィンイベントをクレマチスで開催しているのだが、今年は人手不足により開催は難しい。しかし、全くイベントをしないという訳にもいかないだろうと思い、当日の配布予定のクッキーぐらいは作りたい。後はランチメニューに変化を加えるか。
「そうだな、それぐらいしか出来ないだろうな」
今年のハロウィンはとても寂しいものになりそうだった。
そのミーティング横のテーブル席では賑やかな女子会ならぬ、プチ同窓会が繰り広げられていた。
集合理由は集まったメンバーの1人が数日前に入籍をしたからだ。
同窓会メンバーは店長の奥さんである中崎彩華、クレマチスの料理担当の前原みう、最近よく店へ来るようになった木槌環菜で、彼女が入籍したのだ。
3人は高校の同級生で、彩華は結婚して橘から中崎へ、環菜は三田から木槌へと苗字が変わった。変わっていないのは前原みうだけだが彼氏がいる。付き合っている朝倉雪之丞は弁護士をしていてこの店の常連だ。付き合って2年ほど経つのだがゴールインも近いのではないかと親しい周りの者達は思っているのだった。
「ねえ、彩ちゃん、みうちゃん。今浩介さん達の話聞こえたけど、クレマチスってハロウィンイベントしてたの?」
店に通うようになってまだ3か月ほどの環菜は秋になると開催されているハロウィンイベントの事は知らなかったらしい。入籍したお祝いの話は一段落ついていたので、聞こえて来た話に内容が移行した。
「あー、うん。2年前からハロウィン当日だけイベントしてたの。私が勤めている手芸店たかやまと合同でワークショップと物品販売したり、ハロウィン限定クッキーを販売したりしてね。コスプレもやったよ?結構本格的に自分で衣装作って。結構面白かったよ。ね?みうちゃん」
イベント内容を楽しそうに話す彩華に、みうも頷いている。
「そうそう、初めてそのイベントが開催された時にたまたまお客さんとして私もこの店に来たんだけど、彩ちゃんがいて吃驚したよー。で、盛り上がって話をしてるうちに何故かここに働くことになったんだよねー」
「ええっ!?みうちゃんイベントに遊びに来て、そのままここに就職することになったの!?」
「そうそう、あの時付き合ってた職場の元カレが二股掛けてたんだけど、相手が同じ職場に入った高校生の子でさぁ。もう無理って振ったついでに仕事も辞めちゃったってワケ。で、ここで働かせてもらうようになって直ぐに雪乃さんと出会って付き合うことになったんだ~」
そんな経由でここに就職したのかと環菜は驚いた。
「そっかー・・・。みうちゃんも元カレが発端で朝倉さんと付き合うことになったんだー」
環菜も元彼の浮気が元で別れてむしゃくしゃするから気分転換に出かけたショッピング先で彩華夫婦と出会ったのが切っ掛けで、たまたま同じくショッピングに来ていた上司である木槌宗司に告白されて付き合うことになり、3か月というスピードで入籍することになったのだ。
そして、宗司とは同じ部署だった為に入籍を機に環菜は陶器を主に扱う会社・西島の通販部門から企画部へと部署移動をしたのだ。
「あ、そうだ!今度企画部で初めてミーティングに参加することになってるんだけど、彩ちゃん達の代わりにここでイベントすることを提案してもいいかな?」
良いことを思いついたと両手合わせをぽんと音を出してたった今考え付いたアイディアをみんなに聞こえるように提案した。
「えっ!?環菜ちゃんがここでイベント?どうやって?」
彩華もみうも驚いた顔をしている。
「西島の扱っている食器を使って何か出来ないかなと思ったんだけど・・・。ごめん、単なる思い付き。えへへ」
特に具体的な内容も考えないまま勢いで言ってしまった環菜だった。決まり悪げにしている。
「いえ、それ、いいかも知れないです」
カウンター席に座っていた巧は後ろを振り返って同窓会メンバーに言った。
「例えばこの店では普段使わないような少し贅沢な食器を自分の好みのものを選んでその日はコーヒーや食事を楽しむとか、食器に自分で絵を描いてみるとか出来ないですかね?」
「ああ、そういうのもいいですね。楽しそうです」
巧の提案に浩介も乗り気になったらしい。
「ああ、成程。食器に描く専用のペンなら『たかやま』でも売ってるよ。結構安いし、レンジのオーブン機能使えばあっという間に出来ちゃうし。いいね、そういうイベント」
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