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高校生編
2 勘違いと真実
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「だって、甲斐は朔夜と付き合ってるんでしょう?」
偶然知ってしまった秘密だけど、黙っておこうと決めていた。甲斐と朔夜は従兄弟だけれど、大事な血の繋がった二人が両想いならと、偏見なしに二人を見守っていたのに。
それなのにどうして甲斐は自分にプロポーズをする訳?例え友達や周りがごちゃごちゃ言ったとしても、ウチの両親も多分反対はしないと思うんだけど。
「は?」
「えっ!?」
朔夜は何を言われたのか理解不能というような顔をして、甲斐は青い顔になっている。
遥以外の全員が驚いた声を出した後、大人四人の大爆笑が弾けた。
うん、誰も甲斐と朔夜が付き合ってると信じてない証拠だね。
「あはは。駄目、笑いが止まらないわー。甲斐の気持ち、全然通じてない。しかも、遥ちゃん、反応が斜め上過ぎるし」
菜々叔母さん、酷い。笑いすぎだし。笑いが収まりきらないらしくテーブルの上をばしばし手で叩いている。
「うーん、流石が我が娘と言えばいいのか・・・。この母にしてこの娘と言えばいいのか・・・」
お父さん、それって私がお母さんと一緒で、超が付くほど天然だと言いたいわけ?
余りの皆の反応に遥はむうっと口を尖らせた。
「なんだよっ、それ!甲斐と付き合ってなんかないからっ!俺はノーマルっ!可愛い女の子が好きなのっ」
姉の台詞をようやく理解したらしい。顔を真っ赤にさせ、朔夜は机をドンと叩いて反論してきた。
「嘘だー。前に私この目で見たもん。先月だったかな、ここで試験勉強教えて貰っていた朔夜が、甲斐に『好きなんだ。でも、内緒にしててくれないか』って言われているのを確かに聞いたもん。この耳でね!その後、朔夜も頷いてたし。あれから、2人は付き合い始めたんだよね?」
リビングで朔夜が甲斐に中間試験が間近だから勉強を教わっていた。何故、姉に頼まないのかというのは、まあ、察してください。―――はい、甲斐の方が頭がいいのと、教え方が上手いから。自分も甲斐にはしょっちゅう教えてもらってマス。
朔夜も試験が近いという事は、同じ高校の自分も同じという事な訳なのだけれども。そこはそれ、遥はリビングの隣にある自室で試験勉強もせずにだらだらと漫画を読んでいた。(中崎家は一階がコーヒーショップで、二階がリビング、両親の部屋、そして子供部屋が二部屋という間取り)
喉が渇いたから何か飲もうとリビングへ行こうと思いたち、ドアノブに手を掛け、ほんの少し開けた状態で聞こえてしまったのがさっきの台詞だった。
昔からモテまくっている甲斐は、どんな女の子からの誘いも告白も受けなかったのは、そういう訳だったんだーと妙に納得した出来事だった。
それがなんで私に指輪なんてくれるのかな!?何故か大人達には大爆笑されるし。そもそも甲斐が誕生日プレゼントに指輪を出すからこういう羽目になってるんだよね。それとも普通に誕生日プレゼントとして渡すのはつまらないからって、朔夜みたいにウケを狙ったんじゃないでしょうね。
とも思わないでもない遥だった。
「はっ、まさか。朔夜との言えない秘密の仲を隠すために、私を利用するつもり?」
テレビでも最近多くなっているとはいえ、男と付き合ってるとバレるのは都合が悪いから、従弟である自分をダシにするつもりで指輪をくれたのかと閃いた。
甲斐と朔夜は従兄弟で仲が良いのは学校でもよく知られている。自分も含めてだけど。三人は同じ高校に通っているから。そういう理由なら遥は確かにお飾りにはうってつけだ。のぼせ上がって本気になったりもしない。
収まりかけていた笑い声がまた遥の言葉によって再燃した。
大人達は笑いが止まらず、涙目でお腹を抱えて苦しそうにしている。甲斐は頭を痛そうにし、朔夜は脱力したのか机に突っ伏している。そんなカオスの中にいなかがらも、睦月ちゃんはマイペースにケーキを頬張っている。
「馬鹿。そんな訳あるか」
遥は甲斐から心底馬鹿するような目で窘められた。
「遥がBLの漫画とか小説好きなのは知ってるけど、俺は違うから。どうりで最近俺に対する態度がおかしいと思った」
え、本当に違うの?別に甲斐が男色でも構わないかなーなんて思ってたのに。誰と付き合おうが、甲斐は甲斐なんだし。二人の関係がバレたからと言って一切の交流は無しなんてことにもならないだろうし、これからもずっと仲のいい従弟でいてくれるだろうと確信できる。
甲斐には自分がよく読む漫画とかのジャンルは知られているから、あっさりとBLなんて言葉も出てくる。驚きも特にない。
流石にBLまでは貸してとは言われないけど、互いに本の貸し借りは良くしている。甲斐も一度読んでみたら面白かったらしく、今じゃあ少女漫画もファンタジーも結構色んなジャンル読むんだよね。
「じゃあ、私の聞いたのは何なのよ。絶対に聞き間違いじゃないから。ちゃんと分かるように説明してよね」
絶対に言っていたと断言出来る。だからこそ二人は付き合ってるものだと思ってた。
「いいか、よく聞いとけ。遥の聞いたのは間違いじゃないが、大事な所が抜けてる。好きなんだの前に、ずっと前から遥の事がと言ったんだ。納得出来た?これで俺が遥に指輪を渡した訳も分かっただろう?」
おおう。
一文が抜けていた、とな。という事は、全部を繋げると、「ずっと前から遥の事が好きなんだ。でも、内緒にしててくれないか」になる。
ふむふむ。成程。成程。そういうことだったのかぁ。
―――へ?
ということは、甲斐が好きなのは朔夜でなくて―――。
「私の事が好きだから、指輪をくれたの?」
朔夜と付き合ってるけど、隠れ蓑にするためにくれたわけでなくて?根本から違う?
遥はテーブルの上に置いてある、貰ったばかりのきらきら輝いている指輪を見つめた。
バイトで貯めたという指輪のお金は、ウチのお父さんがマスターとして店をやっているコーヒーショップでバイトして貯めたお金のことだろう。高校に入ってからずっとバイトを続けているし、頑張っていたのも知っている。
「だから最初からそう言っている。因みにここにいる全員が俺が好きな相手は遥だと言うのは共通認識されてるから」
目の前にいるのは、ダレデスカ?
甲斐に見えるのに、知らない人を相手に喋っているみたいにしか思えない。
甲斐が私のことを好き?
「だって今までそんなそぶり全然見せなかったじゃないっ!」
遥と甲斐は生まれた年は一緒だけれど、先に生まれているのは遥《わたし》だ。年上として敬うのは無理なのは分かるけれど、普段の扱いが完全に睦月ちゃんレベルというか、ううんそれ以下の扱いしかしてくれなかったことを是非とも聞かせて欲しい!
完全に小さい子を扱う仕様だったのは間違いない。昔からずっとそうやって甲斐と一緒に育ってきたのだから、それが当たり前として定着してたのだ。気が付かなかったのだと当然だと言いたい。
同い年だというのに、甲斐には学校の行き帰り、宿題の手伝い、果ては服装や髪型の事まで口を出されていた。お前は私のおかんか!という程に。
ただ、さり気なくいつもそばにいてくれたから。鬱陶しさなんてこれっぽっちも無かったから。当たり前のようにただ受け入れていた。従姉なんだからほっとけないんだろうと。
「それは、約束があったから。だから遥の18の誕生日までは我慢してた」
「約束?」
「父さん達とちょっと昔約束したことがあったから。大したことじゃないから、気にしなくていい」
子供扱いをしなさいっていう約束じゃあないよね?教えてもらえないと余計気になるんだけど。
じとーっと甲斐を見るも、教えてはくれなさそう。
「・・・なぁ、甲斐。本気で姉ちゃんでいいのか?俺達をホモだと思うような、こんなとんちんかんな奴だぞ?チビだし、胸もないし、母さんと一緒でとんでもない方向音痴だし」
ぐさっ、ぐさっ。
血の繋がりって惨い。
弟からの痛すぎる言葉に屍となりかけている姉を見ても、弟は反省するどころか
更に追い打ちをかけてきた。
「甲斐ならもっとこう、誰が見てもいい女っ!って女が似あうと思うんだけど。モテるんだし。こんなのわざわざ選ばなくたって、不自由してないだろうに」
朔夜はさも残念そうな子を見るように姉を見ると、甲斐に今ならまだ間に合う、思い直した方がいいと勧告している。
「さーくーやー」
お姉ちゃんに向かって、言いたい放題言ってくれてーっっっ。「こんなの」とはどういうつもりだーっっっっ。ああ?
甲斐のマジ告白も一旦脇に置いた。
低くドスの聞いた声でちょっとは反省させるつもりで朔夜の名前を呼んでも、堪えるようすはない。けろりとしている。
「だって全部本当の事じゃん。どこか間違ってる?」
ふふん、言い返すなら言って見ろとばかりに170をとうに超えた長身から見下ろされた。
くううぅっ。~反論出来ないところが辛すぎる。
悔しいーっっ、少しくらいお姉ちゃんよりも背が高いと思ってーっ。一つ年下の癖に生意気なっ。チビで悪かったな。そりゃあ男の甲斐や朔夜よりは背が小さいよ。最近、中学二年の睦月ちゃんにも背を抜かれたよっ。
そればかりか胸も小さいし、方向音痴もとんでもない。朔夜が言ったことはすべて正しいことだったりする。
だからと言って口に出していい事と悪いことがあるだろうと怒りを込めて、言い返そうとした、その時。
「朔夜、言っておくけど、俺にとって遥は誰よりも大事で、見た目も性格も全部含めて好きだから。背も胸も小さくて、とてつもない方向音痴で、朝が苦手とか、BL好きとか、甘いものが好きで太りやすい体質を気にしているとか、そういうのもひっくるめて全部が好きだから」
さも当然というように、真顔で甲斐はきっぱりと言い切った。
開いた口が塞がらないとはこういう事を言うのだろう。
面と向かって好きな所をあげられている筈なのに、突き落とされている気がするのは気のせいか?
ええ、ええ、どうせ私はお母さんの遺伝を受け継いでるよっ!
背もちっこいし、方向音痴も超ド級が付くほど酷いよっ。学校の行き帰りも、教室異動さえも甲斐にはよーくお世話になってますよっ。
これに関しては済みませんとしか言えない。
毎年クラス替えをするたびに学校の中で迷子になるのは自分ぐらいだろうから。
見た目も勉強も全てが平均、もしくはそれ以下な遥。
それに比べて甲斐の成績は常に上位。見た目だって巧叔父さんの血を受け継いで、めっちゃ美形。菜々叔母さんも結構長身だから、甲斐も睦月ちゃんも背が高い。
朔夜もお父さんの血が濃いのか、割と整った顔してるし、背も高い。成績は私と似たのかよく似ていて平均ぐらい。悪くもないけど、よくもない。でも、これは甲斐がテストの度に教えてくれているからこその賜物だったりする。私も朔夜もお世話になっている。実際先生より分かり易いんだよね。甲斐がいなかったらもっと悲惨な点数ばかりだと思う。
それに甲斐は手先も料理も器用。
時々作ってくれるしめじの和風パスタや、厚みが3cmはあるふわふわパンケーキなんて、遥の大好物メニューの一位と二位をずっと独占しているくらいに美味しい。自分でも作ることはあるけれど、やっぱり甲斐の作ってくれたほうが断然美味しい。
頭も良くて、見た目が良くて、料理も出来てどれだけハイスペックなのか。そんな従弟としか思っていなかった相手から突然告白?
ここは有難うって言うべき?
甲斐が本気なのは分かったけど、それがどうしてお付き合いをすっ飛ばして、婚約や結婚の話になっているのか。
「もっと分かるように説明して!」
突然すぎて理解できない。
もっと詳しい説明を求めたのは当然で、全然悪くないと思う。
偶然知ってしまった秘密だけど、黙っておこうと決めていた。甲斐と朔夜は従兄弟だけれど、大事な血の繋がった二人が両想いならと、偏見なしに二人を見守っていたのに。
それなのにどうして甲斐は自分にプロポーズをする訳?例え友達や周りがごちゃごちゃ言ったとしても、ウチの両親も多分反対はしないと思うんだけど。
「は?」
「えっ!?」
朔夜は何を言われたのか理解不能というような顔をして、甲斐は青い顔になっている。
遥以外の全員が驚いた声を出した後、大人四人の大爆笑が弾けた。
うん、誰も甲斐と朔夜が付き合ってると信じてない証拠だね。
「あはは。駄目、笑いが止まらないわー。甲斐の気持ち、全然通じてない。しかも、遥ちゃん、反応が斜め上過ぎるし」
菜々叔母さん、酷い。笑いすぎだし。笑いが収まりきらないらしくテーブルの上をばしばし手で叩いている。
「うーん、流石が我が娘と言えばいいのか・・・。この母にしてこの娘と言えばいいのか・・・」
お父さん、それって私がお母さんと一緒で、超が付くほど天然だと言いたいわけ?
余りの皆の反応に遥はむうっと口を尖らせた。
「なんだよっ、それ!甲斐と付き合ってなんかないからっ!俺はノーマルっ!可愛い女の子が好きなのっ」
姉の台詞をようやく理解したらしい。顔を真っ赤にさせ、朔夜は机をドンと叩いて反論してきた。
「嘘だー。前に私この目で見たもん。先月だったかな、ここで試験勉強教えて貰っていた朔夜が、甲斐に『好きなんだ。でも、内緒にしててくれないか』って言われているのを確かに聞いたもん。この耳でね!その後、朔夜も頷いてたし。あれから、2人は付き合い始めたんだよね?」
リビングで朔夜が甲斐に中間試験が間近だから勉強を教わっていた。何故、姉に頼まないのかというのは、まあ、察してください。―――はい、甲斐の方が頭がいいのと、教え方が上手いから。自分も甲斐にはしょっちゅう教えてもらってマス。
朔夜も試験が近いという事は、同じ高校の自分も同じという事な訳なのだけれども。そこはそれ、遥はリビングの隣にある自室で試験勉強もせずにだらだらと漫画を読んでいた。(中崎家は一階がコーヒーショップで、二階がリビング、両親の部屋、そして子供部屋が二部屋という間取り)
喉が渇いたから何か飲もうとリビングへ行こうと思いたち、ドアノブに手を掛け、ほんの少し開けた状態で聞こえてしまったのがさっきの台詞だった。
昔からモテまくっている甲斐は、どんな女の子からの誘いも告白も受けなかったのは、そういう訳だったんだーと妙に納得した出来事だった。
それがなんで私に指輪なんてくれるのかな!?何故か大人達には大爆笑されるし。そもそも甲斐が誕生日プレゼントに指輪を出すからこういう羽目になってるんだよね。それとも普通に誕生日プレゼントとして渡すのはつまらないからって、朔夜みたいにウケを狙ったんじゃないでしょうね。
とも思わないでもない遥だった。
「はっ、まさか。朔夜との言えない秘密の仲を隠すために、私を利用するつもり?」
テレビでも最近多くなっているとはいえ、男と付き合ってるとバレるのは都合が悪いから、従弟である自分をダシにするつもりで指輪をくれたのかと閃いた。
甲斐と朔夜は従兄弟で仲が良いのは学校でもよく知られている。自分も含めてだけど。三人は同じ高校に通っているから。そういう理由なら遥は確かにお飾りにはうってつけだ。のぼせ上がって本気になったりもしない。
収まりかけていた笑い声がまた遥の言葉によって再燃した。
大人達は笑いが止まらず、涙目でお腹を抱えて苦しそうにしている。甲斐は頭を痛そうにし、朔夜は脱力したのか机に突っ伏している。そんなカオスの中にいなかがらも、睦月ちゃんはマイペースにケーキを頬張っている。
「馬鹿。そんな訳あるか」
遥は甲斐から心底馬鹿するような目で窘められた。
「遥がBLの漫画とか小説好きなのは知ってるけど、俺は違うから。どうりで最近俺に対する態度がおかしいと思った」
え、本当に違うの?別に甲斐が男色でも構わないかなーなんて思ってたのに。誰と付き合おうが、甲斐は甲斐なんだし。二人の関係がバレたからと言って一切の交流は無しなんてことにもならないだろうし、これからもずっと仲のいい従弟でいてくれるだろうと確信できる。
甲斐には自分がよく読む漫画とかのジャンルは知られているから、あっさりとBLなんて言葉も出てくる。驚きも特にない。
流石にBLまでは貸してとは言われないけど、互いに本の貸し借りは良くしている。甲斐も一度読んでみたら面白かったらしく、今じゃあ少女漫画もファンタジーも結構色んなジャンル読むんだよね。
「じゃあ、私の聞いたのは何なのよ。絶対に聞き間違いじゃないから。ちゃんと分かるように説明してよね」
絶対に言っていたと断言出来る。だからこそ二人は付き合ってるものだと思ってた。
「いいか、よく聞いとけ。遥の聞いたのは間違いじゃないが、大事な所が抜けてる。好きなんだの前に、ずっと前から遥の事がと言ったんだ。納得出来た?これで俺が遥に指輪を渡した訳も分かっただろう?」
おおう。
一文が抜けていた、とな。という事は、全部を繋げると、「ずっと前から遥の事が好きなんだ。でも、内緒にしててくれないか」になる。
ふむふむ。成程。成程。そういうことだったのかぁ。
―――へ?
ということは、甲斐が好きなのは朔夜でなくて―――。
「私の事が好きだから、指輪をくれたの?」
朔夜と付き合ってるけど、隠れ蓑にするためにくれたわけでなくて?根本から違う?
遥はテーブルの上に置いてある、貰ったばかりのきらきら輝いている指輪を見つめた。
バイトで貯めたという指輪のお金は、ウチのお父さんがマスターとして店をやっているコーヒーショップでバイトして貯めたお金のことだろう。高校に入ってからずっとバイトを続けているし、頑張っていたのも知っている。
「だから最初からそう言っている。因みにここにいる全員が俺が好きな相手は遥だと言うのは共通認識されてるから」
目の前にいるのは、ダレデスカ?
甲斐に見えるのに、知らない人を相手に喋っているみたいにしか思えない。
甲斐が私のことを好き?
「だって今までそんなそぶり全然見せなかったじゃないっ!」
遥と甲斐は生まれた年は一緒だけれど、先に生まれているのは遥《わたし》だ。年上として敬うのは無理なのは分かるけれど、普段の扱いが完全に睦月ちゃんレベルというか、ううんそれ以下の扱いしかしてくれなかったことを是非とも聞かせて欲しい!
完全に小さい子を扱う仕様だったのは間違いない。昔からずっとそうやって甲斐と一緒に育ってきたのだから、それが当たり前として定着してたのだ。気が付かなかったのだと当然だと言いたい。
同い年だというのに、甲斐には学校の行き帰り、宿題の手伝い、果ては服装や髪型の事まで口を出されていた。お前は私のおかんか!という程に。
ただ、さり気なくいつもそばにいてくれたから。鬱陶しさなんてこれっぽっちも無かったから。当たり前のようにただ受け入れていた。従姉なんだからほっとけないんだろうと。
「それは、約束があったから。だから遥の18の誕生日までは我慢してた」
「約束?」
「父さん達とちょっと昔約束したことがあったから。大したことじゃないから、気にしなくていい」
子供扱いをしなさいっていう約束じゃあないよね?教えてもらえないと余計気になるんだけど。
じとーっと甲斐を見るも、教えてはくれなさそう。
「・・・なぁ、甲斐。本気で姉ちゃんでいいのか?俺達をホモだと思うような、こんなとんちんかんな奴だぞ?チビだし、胸もないし、母さんと一緒でとんでもない方向音痴だし」
ぐさっ、ぐさっ。
血の繋がりって惨い。
弟からの痛すぎる言葉に屍となりかけている姉を見ても、弟は反省するどころか
更に追い打ちをかけてきた。
「甲斐ならもっとこう、誰が見てもいい女っ!って女が似あうと思うんだけど。モテるんだし。こんなのわざわざ選ばなくたって、不自由してないだろうに」
朔夜はさも残念そうな子を見るように姉を見ると、甲斐に今ならまだ間に合う、思い直した方がいいと勧告している。
「さーくーやー」
お姉ちゃんに向かって、言いたい放題言ってくれてーっっっ。「こんなの」とはどういうつもりだーっっっっ。ああ?
甲斐のマジ告白も一旦脇に置いた。
低くドスの聞いた声でちょっとは反省させるつもりで朔夜の名前を呼んでも、堪えるようすはない。けろりとしている。
「だって全部本当の事じゃん。どこか間違ってる?」
ふふん、言い返すなら言って見ろとばかりに170をとうに超えた長身から見下ろされた。
くううぅっ。~反論出来ないところが辛すぎる。
悔しいーっっ、少しくらいお姉ちゃんよりも背が高いと思ってーっ。一つ年下の癖に生意気なっ。チビで悪かったな。そりゃあ男の甲斐や朔夜よりは背が小さいよ。最近、中学二年の睦月ちゃんにも背を抜かれたよっ。
そればかりか胸も小さいし、方向音痴もとんでもない。朔夜が言ったことはすべて正しいことだったりする。
だからと言って口に出していい事と悪いことがあるだろうと怒りを込めて、言い返そうとした、その時。
「朔夜、言っておくけど、俺にとって遥は誰よりも大事で、見た目も性格も全部含めて好きだから。背も胸も小さくて、とてつもない方向音痴で、朝が苦手とか、BL好きとか、甘いものが好きで太りやすい体質を気にしているとか、そういうのもひっくるめて全部が好きだから」
さも当然というように、真顔で甲斐はきっぱりと言い切った。
開いた口が塞がらないとはこういう事を言うのだろう。
面と向かって好きな所をあげられている筈なのに、突き落とされている気がするのは気のせいか?
ええ、ええ、どうせ私はお母さんの遺伝を受け継いでるよっ!
背もちっこいし、方向音痴も超ド級が付くほど酷いよっ。学校の行き帰りも、教室異動さえも甲斐にはよーくお世話になってますよっ。
これに関しては済みませんとしか言えない。
毎年クラス替えをするたびに学校の中で迷子になるのは自分ぐらいだろうから。
見た目も勉強も全てが平均、もしくはそれ以下な遥。
それに比べて甲斐の成績は常に上位。見た目だって巧叔父さんの血を受け継いで、めっちゃ美形。菜々叔母さんも結構長身だから、甲斐も睦月ちゃんも背が高い。
朔夜もお父さんの血が濃いのか、割と整った顔してるし、背も高い。成績は私と似たのかよく似ていて平均ぐらい。悪くもないけど、よくもない。でも、これは甲斐がテストの度に教えてくれているからこその賜物だったりする。私も朔夜もお世話になっている。実際先生より分かり易いんだよね。甲斐がいなかったらもっと悲惨な点数ばかりだと思う。
それに甲斐は手先も料理も器用。
時々作ってくれるしめじの和風パスタや、厚みが3cmはあるふわふわパンケーキなんて、遥の大好物メニューの一位と二位をずっと独占しているくらいに美味しい。自分でも作ることはあるけれど、やっぱり甲斐の作ってくれたほうが断然美味しい。
頭も良くて、見た目が良くて、料理も出来てどれだけハイスペックなのか。そんな従弟としか思っていなかった相手から突然告白?
ここは有難うって言うべき?
甲斐が本気なのは分かったけど、それがどうしてお付き合いをすっ飛ばして、婚約や結婚の話になっているのか。
「もっと分かるように説明して!」
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