49 / 57
陽太~アストルの幼年期
ep42:陽太視点②
しおりを挟む
俺にとって不幸中の幸いだったのは、転生前に観た映画の内容をハッキリと覚えていることだろうか。
これから何が起きるのか、映画【星空の彼方~亡国の王子~】を観た俺は知っている。
ソレイユ王国は、青く澄んだ海に囲まれた島国だった。
絶対君主制でありながら、国民の満足度はとても高い。
怪我や病気は、神殿へ行けば無料で治療してもらえるので、健康な人が多い。
豊富な海洋資源と肥沃な大地が育む農作物が自慢で、人口が少ないからかノンビリした雰囲気があった。
ソレイユ王家は、勇者を建国の祖とする血筋だ。
生まれてくる子に光属性があることは、珍しくない。
現王妃シェリルは国王の従姉妹であり、聖女の力をもっている。
第一王子アレクサンドルは、母と同じく光属性の治癒魔法を使うことができた。
「母上、アストルを抱っこしてもいいですか?」
「ええ。落とさないように気を付けてね」
「はい」
天蓋付きのベッドに腰かけて、赤ん坊の俺を抱くのは兄アレクサンドル。
事前に練習でもしたんだろうか?
幼い子供なのに、赤ん坊の抱き方が上手い。
俺の視界はまだぼんやりしていて、兄の顔はよく分からなかった。
「歩けるようになったら、一緒に遊ぼうね」
優しく話しかける声がする。
そっと抱き締めてくれる腕のぬくもりは、母と同じで心地よい。
「可愛いアストル。転んでもケガをしないように、僕が守ってあげるよ」
愛しさを込めて、額にそっと口づけられた。
惜しみなく愛を注いでくれる兄は、映画と同じ未来なら無残に殺されてしまう。
(……守りたいものが増えたな……)
安らぎを感じる一方で、俺はそんなことを思う。
兄に抱かれながら、俺は心の中で「ステータス」と呟いた。
ゲームでは見ることができなかった、アストルのステータスパネルが空中に現れる。
母シェリルや兄アレクサンドルに見られることはない。
このパネルは視覚で感知しているのではなく、俺の脳に直接投影されるので、視覚が未発達の赤ん坊になっていてもハッキリ見える。
アストルに転生した俺は、プレイヤーが主人公のステータスを見るように、能力値や属性を見ることができた。
(光・火・水・風・土・闇……やっぱり全属性か)
ゲームのアストルは、様々な武器を使いこなす一方で、多彩な魔法の使い手でもあり、プレイヤー泣かせの難敵だったのを覚えている。
全属性は、主人公と攻略対象たちに力を分け与えるために設定されたんだろう。
(……ラスボス戦で主人公たちに付与する魔法が全部揃ってるな。でも、今は使えないのか……)
ステータスには様々な魔法の名前が並んでいるが、ほとんどは「使用不可」の表記が添えられていた。
使用不可になっているのは、それを使うのに必要な魔力が足りないからだ。
アストルが使う魔法はどれも強力だが、消費魔力が多かった。
(確か……ゲームでは、魔力切れで失神寸前になるまで魔法を使えば、魔力量が増えていたな)
美月や華蓮ちゃんのゲームを手伝っていた記憶をもとに、俺は魔力量を増やすことを考えた。
映画のアストルにはできなかったことが、俺にはきっとできる。
魔族の襲撃までに、勇者の力を使えるようにしよう。
(何もできない子供のうちに攫おうとするのなら、その前に勇者として覚醒しておこう)
ファンのSNSで「ラスボスより強い」と言われたアストル。
その力を、魔族の襲撃までにどのくらい使えるようになるかで運命は変わる。
悲劇の未来回避を目指して頑張ろう。
これから何が起きるのか、映画【星空の彼方~亡国の王子~】を観た俺は知っている。
ソレイユ王国は、青く澄んだ海に囲まれた島国だった。
絶対君主制でありながら、国民の満足度はとても高い。
怪我や病気は、神殿へ行けば無料で治療してもらえるので、健康な人が多い。
豊富な海洋資源と肥沃な大地が育む農作物が自慢で、人口が少ないからかノンビリした雰囲気があった。
ソレイユ王家は、勇者を建国の祖とする血筋だ。
生まれてくる子に光属性があることは、珍しくない。
現王妃シェリルは国王の従姉妹であり、聖女の力をもっている。
第一王子アレクサンドルは、母と同じく光属性の治癒魔法を使うことができた。
「母上、アストルを抱っこしてもいいですか?」
「ええ。落とさないように気を付けてね」
「はい」
天蓋付きのベッドに腰かけて、赤ん坊の俺を抱くのは兄アレクサンドル。
事前に練習でもしたんだろうか?
幼い子供なのに、赤ん坊の抱き方が上手い。
俺の視界はまだぼんやりしていて、兄の顔はよく分からなかった。
「歩けるようになったら、一緒に遊ぼうね」
優しく話しかける声がする。
そっと抱き締めてくれる腕のぬくもりは、母と同じで心地よい。
「可愛いアストル。転んでもケガをしないように、僕が守ってあげるよ」
愛しさを込めて、額にそっと口づけられた。
惜しみなく愛を注いでくれる兄は、映画と同じ未来なら無残に殺されてしまう。
(……守りたいものが増えたな……)
安らぎを感じる一方で、俺はそんなことを思う。
兄に抱かれながら、俺は心の中で「ステータス」と呟いた。
ゲームでは見ることができなかった、アストルのステータスパネルが空中に現れる。
母シェリルや兄アレクサンドルに見られることはない。
このパネルは視覚で感知しているのではなく、俺の脳に直接投影されるので、視覚が未発達の赤ん坊になっていてもハッキリ見える。
アストルに転生した俺は、プレイヤーが主人公のステータスを見るように、能力値や属性を見ることができた。
(光・火・水・風・土・闇……やっぱり全属性か)
ゲームのアストルは、様々な武器を使いこなす一方で、多彩な魔法の使い手でもあり、プレイヤー泣かせの難敵だったのを覚えている。
全属性は、主人公と攻略対象たちに力を分け与えるために設定されたんだろう。
(……ラスボス戦で主人公たちに付与する魔法が全部揃ってるな。でも、今は使えないのか……)
ステータスには様々な魔法の名前が並んでいるが、ほとんどは「使用不可」の表記が添えられていた。
使用不可になっているのは、それを使うのに必要な魔力が足りないからだ。
アストルが使う魔法はどれも強力だが、消費魔力が多かった。
(確か……ゲームでは、魔力切れで失神寸前になるまで魔法を使えば、魔力量が増えていたな)
美月や華蓮ちゃんのゲームを手伝っていた記憶をもとに、俺は魔力量を増やすことを考えた。
映画のアストルにはできなかったことが、俺にはきっとできる。
魔族の襲撃までに、勇者の力を使えるようにしよう。
(何もできない子供のうちに攫おうとするのなら、その前に勇者として覚醒しておこう)
ファンのSNSで「ラスボスより強い」と言われたアストル。
その力を、魔族の襲撃までにどのくらい使えるようになるかで運命は変わる。
悲劇の未来回避を目指して頑張ろう。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。
naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。
癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。
そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。
「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」
ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる