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美月~聖女の力はひたすら隠す
ep34:美月視点㉔
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自業自得の食中毒で寝込んだ先輩料理人たちは重症で、復帰まで1ヶ月以上かかると診断されたらしい。
一体何を盛ったのやら……。
調理補助として有能だと思われた私は、宮廷シェフから指名依頼を受けて、お城の調理場に通うことになっちゃった。
「おお! よく来てくれた。今日も千切りを頼むよ!」
「キャベツ10個でも20個でも切りますよ。そこに積んどいて下さい」
「ナントカ切りっていうやつも頼む!」
「飾り切り、ですね。任せて下さい」
私は宮廷料理人たちの頼みを次々にこなす。
まさか転生後もキャベツの千切りが日課になるとは思わなかったけど。
飾り切りとは、食材を花や葉などの形に細工して切る日本料理の技法ね。
日向食堂はお祝い用のオードブルも作ってたから、ニンジンを花の形にする「ねじり梅」とか、キュウリを葉っぱの形にする「木の葉切り」は慣れてるの。
西洋の中世に似た食文化をもつエトワール王国には無いものだったから、めちゃくちゃ驚かれたわ。
「野菜をこんなにも華やかな形にカットできるなんて、素晴らしいセンスと技術ね」
王妃様は飾り切りがとても気に入ったらしく、私を後宮に呼んで御褒美の金貨をくれた。
調理補助依頼の報酬とは別に、ボーナスをくれたの。
私、このまま料理人の道に入っちゃおうかって思ったよ。
ゲームでは、ルナが調理場に入ることなんて無かったのに。
どうしてこうなった?
神殿で聖女として人々を癒す筈のルナが、お城の調理場で野菜を切ってるのよ。
シナリオ改変しすぎかしら?
聖女だとバレなければいいので、気にしないことにするわ。
「アラン! ここはルナに任せて、騎士団の稽古に来いよ」
私に付き合ってジャガイモの皮むきをしていたアランは、アルデバランに連れ去られてしまった。
クレーマー男を一撃で倒した【小さな英雄】がアランだと知り、騎士団長が興味を持ったみたい。
これもゲームには無かった展開ね。
とりあえず、アランが強くなるのは嬉しい。
もしかして、騎士団に勧誘されるのかな?
孤児で平民の少年が騎士になれたら、この国では大出世だ。
(ああ、推しがカッコイイ……)
調理補助の仕事を終えた私は、騎士団の稽古場の片隅でベンチに座り、アランが稽古に励む様子を眺めて思う。
騎士団長の息子アルデバランがここで稽古をしている様子は、ゲームでは何度も見た。
でも、ゲームではアランがここで稽古することは無かった。
……というか、チュートリアルしか出てこなかったし。
今ここにアランがいるのは、私がシナリオを改変したからだ。
「モブとは思えない剣技ね」
「?!」
いきなり真後ろから囁かれて、私は飛び上がりそうなくらい驚いた。
振り返ると、クスッと悪戯っぽく笑うレイカがいた。
「れ……レイカ、どうしてここに?」
「まだ言ってなかったけど、私はアルデバランの婚約者なの」
私が知らないシナリオ改変を、レイカが告げる。
ゲームのアルデバランはルナに会うまで剣の道ひとすじだったけど、この世界では婚約者ができたんだね。
「ダンジョンで見たときも思ったけど、あの子の筋力、体格からは想像つかないくらい高いわね?」
「うん。パーティ組んで初めて見たとき、能力値を見て驚いたわ」
ベンチに仲良く腰かけて話す私たちの会話は、剣戟を続ける騎士たちやアルデバランやアランには聞こえない。
冒険者養成学校で鍛え上げられたアランは、騎士団の稽古にもついていけている。
攻略対象として能力値が高く設定されている筈のアルデバランと剣を交えても、互角にやり合えるレベルだ。
「彼が勇者になるっていう未来も、あるのかしら」
「でも、本来の勇者(アストル)が存命なら、力の継承は無いよね?」
プレイヤーだった私たちにも、分からなくなってきた未来。
シナリオ通りなら、ルナが恋人として選んだ攻略対象が、アストルの霊から勇者の力を継承する。
でも、この世界のアストルは生きている。
力の継承が無いとしたら、攻略対象は勇者にはなれない。
って、それじゃ誰がラスボス倒すの?
一体何を盛ったのやら……。
調理補助として有能だと思われた私は、宮廷シェフから指名依頼を受けて、お城の調理場に通うことになっちゃった。
「おお! よく来てくれた。今日も千切りを頼むよ!」
「キャベツ10個でも20個でも切りますよ。そこに積んどいて下さい」
「ナントカ切りっていうやつも頼む!」
「飾り切り、ですね。任せて下さい」
私は宮廷料理人たちの頼みを次々にこなす。
まさか転生後もキャベツの千切りが日課になるとは思わなかったけど。
飾り切りとは、食材を花や葉などの形に細工して切る日本料理の技法ね。
日向食堂はお祝い用のオードブルも作ってたから、ニンジンを花の形にする「ねじり梅」とか、キュウリを葉っぱの形にする「木の葉切り」は慣れてるの。
西洋の中世に似た食文化をもつエトワール王国には無いものだったから、めちゃくちゃ驚かれたわ。
「野菜をこんなにも華やかな形にカットできるなんて、素晴らしいセンスと技術ね」
王妃様は飾り切りがとても気に入ったらしく、私を後宮に呼んで御褒美の金貨をくれた。
調理補助依頼の報酬とは別に、ボーナスをくれたの。
私、このまま料理人の道に入っちゃおうかって思ったよ。
ゲームでは、ルナが調理場に入ることなんて無かったのに。
どうしてこうなった?
神殿で聖女として人々を癒す筈のルナが、お城の調理場で野菜を切ってるのよ。
シナリオ改変しすぎかしら?
聖女だとバレなければいいので、気にしないことにするわ。
「アラン! ここはルナに任せて、騎士団の稽古に来いよ」
私に付き合ってジャガイモの皮むきをしていたアランは、アルデバランに連れ去られてしまった。
クレーマー男を一撃で倒した【小さな英雄】がアランだと知り、騎士団長が興味を持ったみたい。
これもゲームには無かった展開ね。
とりあえず、アランが強くなるのは嬉しい。
もしかして、騎士団に勧誘されるのかな?
孤児で平民の少年が騎士になれたら、この国では大出世だ。
(ああ、推しがカッコイイ……)
調理補助の仕事を終えた私は、騎士団の稽古場の片隅でベンチに座り、アランが稽古に励む様子を眺めて思う。
騎士団長の息子アルデバランがここで稽古をしている様子は、ゲームでは何度も見た。
でも、ゲームではアランがここで稽古することは無かった。
……というか、チュートリアルしか出てこなかったし。
今ここにアランがいるのは、私がシナリオを改変したからだ。
「モブとは思えない剣技ね」
「?!」
いきなり真後ろから囁かれて、私は飛び上がりそうなくらい驚いた。
振り返ると、クスッと悪戯っぽく笑うレイカがいた。
「れ……レイカ、どうしてここに?」
「まだ言ってなかったけど、私はアルデバランの婚約者なの」
私が知らないシナリオ改変を、レイカが告げる。
ゲームのアルデバランはルナに会うまで剣の道ひとすじだったけど、この世界では婚約者ができたんだね。
「ダンジョンで見たときも思ったけど、あの子の筋力、体格からは想像つかないくらい高いわね?」
「うん。パーティ組んで初めて見たとき、能力値を見て驚いたわ」
ベンチに仲良く腰かけて話す私たちの会話は、剣戟を続ける騎士たちやアルデバランやアランには聞こえない。
冒険者養成学校で鍛え上げられたアランは、騎士団の稽古にもついていけている。
攻略対象として能力値が高く設定されている筈のアルデバランと剣を交えても、互角にやり合えるレベルだ。
「彼が勇者になるっていう未来も、あるのかしら」
「でも、本来の勇者(アストル)が存命なら、力の継承は無いよね?」
プレイヤーだった私たちにも、分からなくなってきた未来。
シナリオ通りなら、ルナが恋人として選んだ攻略対象が、アストルの霊から勇者の力を継承する。
でも、この世界のアストルは生きている。
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って、それじゃ誰がラスボス倒すの?
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