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表題作以外の小説
異星人ポーネ
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国連が解体された。
旧常任理事国の5か国がすべて滅亡したからだ。
滅亡といってもその原因は、災害や疫病、核戦争、はては王朝や政体の崩壊ではない。
「おーい、光」
外から俺を呼ぶ声がしたので、アパートの窓から顔を出す。
無駄に長くて黒い高級車から、銀髪の女が身を乗り出して手を振っている。
瞳まで銀色で、仄かに輪郭が青く発光している。
その女こそが国連解体の引き金を引いた、とんでもないやつだ。
具体的には、異星人だ。どこから来たかを尋ねても「そのへん」としか言わないので、ソノヘン星人ということにした。
ソノヘン星人の彼女の個体名はマスカット・ド・サド=マスカルポーネ14世。
めちゃくちゃだが、そう名乗ったのだから受け入れざるを得ない。
地球人をおちょくっているのが丸わかりの、ふざけた名前だった。どうせ地球人には彼女の本名を発音できないのだろう。
仕方がないので、縮めてポーネと呼ぶことにした。
「早く来いって」
ポーネの声に剣呑さが滲みだしたので、俺は着の身着のまま部屋を飛び出した。
「なあ、次はどこを滅ぼす?」
長い黒い車に乗り込むや、せっかくだだっ広い車内なのにポーネは俺と肩を組んで端末を突き付けてくる。
かつて国連の常任理事国だった5か国が真っ赤になった世界地図が、画面には映っている。
「また? 別にもう日本以外ならどこでもいいよ」
初めて出会った日のポーネも、こんな感じで俺に滅ぼしていい国を尋ねてきたのだ。
────お前、地球人代表。今から10秒数えるから、その間に滅ぼしていい国を指名しないとお前を殺す
だっけか。開口一番、そんなことを言ってきたのだ。
友人が全員左翼団体に入ってサル痘とエイズと肺炎とエボラ出血熱と麻疹に感染したことでせっかくの大学の夏休みが暇になり、むしゃくしゃしていた俺はあの5か国を指名した。
指名したが、派手な滅亡は何も起きなかった。
何も起きないことを指摘すると、ポーネは俺に端末を突き出して来た。
それは同時通訳付きのニュース速報だった。
常任理事国5か国すべての国家のトップが国連本部にて「日本の属国になりたい」と子供のように泣き喚いている様が報道されていた。
トップだけではない。5か国の国民すべてがSNSを使って日本語で「日本の属国になりたい。全財産を日本に寄付したい。日本のために無償で働きたい」と泣き喚いていたのだ。
言葉だけでなく、日本人の口座に無差別に各国から突然大金が送金されてきたことが、SNSの投稿でわかった。
────ほら、滅んだ
ニンマリ笑う不気味な美女に俺は、何をしたのか尋ねた。
────対国家無力化兵器アメノハバキリさ
よくわからん宇宙語を逐一解説させたものをまとめると、国家レベルで対象地域の住民の邪心を切り落とし、強制的に従属させる洗脳兵器だという。
どこにそんなものがあるのかと訊けば、ポーネは宇宙を指差した。要するに衛星兵器らしい。
そんなわけで戦争もしていないのに常任理事国が日本に勝手に降伏し、日本にだけ利のある不平等条約を一斉に結んで属国になったため、国連は解体された。
昔のよしみで日本が声掛けしたことで、現在は復活した日独伊三国同盟が国際社会をリードし、世界公用語は日本語になり、世界宗教は日本崇拝教になった。
「どこでもいいは禁止。どこでもいいけど、具体的に言え」
「仕方ないなぁ」
おっぱいを押し付けてくるポーネに呆れながら(だって宇宙人が変身してるだけだし、偽乳だぞ)、俺はレアメタルや石油のたくさん埋まっている国をスマホで調べた。
検索結果に上がった国を伝えると、ポーネは俺が伝えた国へとアメノハバキリの洗脳光線を宇宙から照射した。
IOTってスゲー!
そして変化も早かった。
日本崇拝教に改宗した産油国の王が、石油タンカーの大船団を率いて日本に向かって出航したことがニュースになった。
明日からガソリン税が廃止されてガソリンが1リットル30円になることも発表された。
俺は車を持っていないが、ポーネを乗せてきたこの車の運転手が喜んでいた。
「着いたぞ。降りろ」
車が止まると、運転手がドアを開けてくれた。ポーネに続いて車を降りると、なんかドームだった。
ポーネは顔パスで、受付が俺にまでうやうやしく傅いた。
そのままアニメだと王族とかが観戦するのに使うような、見晴らしのいい部屋へと案内された。
部屋では、待機していた属国のIT企業の社長がポーネと俺にビールを注いでくれた。
いや、そこは普通にビール売りのお姉さんがよかったなぁ。
「光」
「なんだよ」
「君の肝臓に乾杯」
「どういう音頭だよ」
ビールを飲んでいると選手入場が始まった。
生成AIで作ったような全高8メートルは下らないクリーチャーと、青い髪でサイドを刈り上げた鼻にピアスをした西洋人がゾロゾロと入場してきた。
「ポーネ、あの化け物はなんだ」
「凄いだろ~。属国にいたキモい現地の珍獣を連れてきたんだ」
「いや、人間じゃなくてデカい方だよ」
筋骨隆々の体躯に無数の眼球と無数の触手を持ち、それが絶え間なく増減しては、あらぬ場所に口を作ったり手足を作ったりするクリーチャーを指差した。
「あー、あれ。故郷にいくらでもいるつまらない動物だよ」
「あんなのがそんなにいっぱいいるの!?」
「いるけど」
「襲われないの?」
「あんなの私に傷一つ付けられないザコだよ。小学生が戯れに殺す小動物と同じさ」
「えー!? クマやゾウが束になっても敵わなさそうなのに!?」
「当たり前だろ、アメノハバキリ使えばイッパツなんだから。いいから、黙って観戦してろよ」
ポーネは俺にオペラグラスを持たせると、スナック菓子を頬張り始めた。
仕方がないので、言われた通りに黙って観戦することにした。
空いたグラスにIT社長がまたビールを注いでくれた。
観戦とは言ったものの、勝負になるわけがなかった。
なんといっても、クリーチャーの丸太を束ねたような巨大な腕だ。
それが伸ばされると、腰を抜かして失禁する青髪刈り上げ鼻ピアスどもはあっさりとクリーチャーに捕まった。
ペリカンとティラノサウルスのあいの子みたいな形の馬鹿でかい口の中は奈落の底に繋がっていそうなほどに暗く、そこへ青髪以下略たちは悲鳴とともにポンポン放り込まれた。
逃げ惑う青髪以下略も、クリーチャーの触手に捕らえられてはひょいパクひょいパクとリズミカルに、その口へと消えた。
ある程度青髪以下略が溜まると、クリーチャーは口を閉じて連中を踊り食いした。
磨り潰された青髪以下略の赤い血がクリーチャーの口の隙間から噴き出て、場内や客席へと飛び散った。
この虐殺劇に、客席から一斉に歓声が上がった。
日本人らしき顔も散見されたが、だいたいは外国人だった。
「身を粉にして働く日本崇拝教徒向けのガス抜き、3S政策だよ。スラッシュ、スプラッタ、スクリームってね」
「スラッシュとスプラッタは同じようなもんだろ」
やがて青髪以下略を食い尽くしたクリーチャーは、大きなゲップを轟かせると競技場から退場していった。
よほど臭かったらしく、客席から悲鳴が上がった。
競技は次のプログラムに入った。
今度はクリーチャーは出てこない。
めちゃくちゃ身なりのいい年老いた属国人や頭の良さそうな学者然とした属国人、そしてやっぱり青髪以下略が入場してきた。
彼ら彼女らは身長より長い角材を手に持っており、場内にゴングが鳴るや、それを使って殺し合いを始めた。
乱戦する上級国民、学者、青髪以下略に、客席から紙コップなどゴミや鶏卵やトマトが投げ込まれる。
ゴミに頭をぶつけて蹲るもの、卵やトマトを踏んですっ転ぶ者は興奮した他の選手によって滅多打ちにされて、死んだ。
顔が内出血だらけで、青黒く腫れて無惨なものだ。
「どうだ? 面白いか?」
黙って観ていたら、黙って観てろと言ったポーネから感想を尋ねられた。
あまりに反応しなかったせいかもしれないが、ガス抜きとして開催されている娯楽だと言ったのもポーネだ。
エキサイトしたら、俺の品格を問われるやつじゃん。
「普通かな」
「ふ、普通!? 地球人は他人の不幸が大好きだっていうのはウソだったのか!?」
「別に間違ってはいないんだけど、うん」
最高の娯楽を用意したつもりだったらしいポーネは、うろたえたような顔をしている。
「なんか、別に楽しいこととか、もう何もないんだよね」
「楽しいことが、何もない?」
「うん。満たされて幸せになったから、もう、何も刺激を感じない」
友人をすべて思想と病で失った俺は、なんか普通に話したり遊んだりする相手が欲しいだけで、成金趣味の人や不満たらたらの人間が見たがる残虐ショーは要らなかった。
金もモノも、名前も顔も知らない属国の人たちが湯水のごとく俺にも貢いでくれるから、物欲的な渇望がまるでない。
SNSで見る感じ、日本人はみんな働かなくてよくなった結果、だいたいが引きこもってだらだら無気力に自堕落に過ごしてる人が多いっぽい。
俺も正直、大学に行く意味も卒業する意味もなくなったと感じている。
「そうなんだ。早く言えよ、光」
「いや、有無を言わさず連れてきたんじゃん」
「じゃあ、帰る?」
「うん」
「そうなんだ。これから客席にうちの星の動物を放つ、メインイベントが始まるのに」
「やめなよ、それは」
やんわりと窘めたが、そのままそこを後にしたから悪趣味なハプニングが中止されたかはわからない。
「なあ、光」
「なに」
長い車の中に戻るやいなや、ポーネが神妙な顔で俺を見てきた。
「私とコイビトになれ」
「え。なんで」
「なんで!?」
そんな関係になる意味がまるでわからなかった。
宇宙偽乳女なんか抱かなくても、街を歩けば属国の娼婦のバーゲンセールだ。
映画スターレベルの金髪碧眼の美女が掃いて捨てるほどいる。
しかもみんな「避妊しないで! 日本人様のお精子様を頂戴しとうございます」とおねだりしてくる。
もちろんそれは、彼女らの真っ黒で真っ暗な〝副業〟のシノギに必要だからなのだが……それは別の話だ。
ああ、そうか。ポーネが車で移動したがるのは、やきもちが原因なのか。
ヤリ捨てるだけの女に嫉妬すんなよ。
「私、光のために光の国を豊かにした。ご褒美ほしい」
「いや、なんでも手に入るんだから俺からご褒美とかいらんだろ。俺の金も持ち物も、もはや属国の人らの貢ぎ物ばっかりだし、それは果たして俺からの贈り物になるかっていうと、怪しいじゃん。〝俺からの〟ものなんて、あるようでないぞ。それはポーネも同じ、むしろポーネは日本全国国賓待遇で俺より何でも持ってるじゃん」
「違う。光の、心が欲しい」
「いや、こんな国で恋愛とかする意味なくね。ソンヘン星人のお前と俺じゃ、子供もできんだろ」
別に子供とか欲しくもないが。
完全に満たされて毎日遊び呆けるだけで、何を目指すでなく、何を残すでもない俺たちだ。
次の世代も国の将来も考える必要はない。
最高の幸福を幸福と感じられなくなった俺たちの行き着く先は、退廃と自堕落のみ。
無料でナマでヤれる娼婦がたくさんいるし、別に宇宙人を固定の性的なパートナーにする変態に走る必要がない。
「だいたい、俺の何が好きでこんなわけのわからんことをしてくれたわけ」
「それは……」
なんかポーネはめちゃくちゃ難解なことを言いだしたのだが、根気強く質問して理解したものを要約すると、次のようになる。
俺が小学生の頃に石をひっくり返したことが、バタフライ効果的にソノヘン星のポーネの命を救うことに繋がった。
要は、俺の無意識な挙動が乱数調整として働いて命が助かったことが発端となり、ポーネは俺にずっと片思いしていたというのだ。
成人して、宇宙航行とアメノハバキリの免許を取得したことでポーネは地球に飛来、長年の想いを遂げるために世界秩序を乱して俺に貢いでいるとのこと。
「地球人の感覚ではそれは知覚もできなければ、感謝もしないし惚れもしない出来事なんだよな」
「ええっ!? でも、でも私の星ではよくあることだよ。パパとママのなれそめもバタフライエフェクトだって言ってたし」
「難儀な文化だなぁ」
「地球が遅れてるだけでしょ。あ、いや、その光を馬鹿にしてるわけでは、決してないんだけど」
「付け加えると却ってそう思ってるっぽくなるから、言わなくていいよ、そういうの」
「ねぇ~、光! 私のモノになれよ!」
「そう言われてもな。具体的に恋人になって、俺と何をしてどうなりたいんだよ」
「私の星まで拉致して、私を妊娠させられる身体に改造して、繁殖行為したい。たくさん作った子供を未開の惑星に送り込んで、物量作戦で侵略させたい」
後半、地球人のスケール感だと、実子で野球チームを作りたい的な夢想に相当するんだろうか。
ものの見方が違い過ぎる。
「嫌だよ。せっかくお前のお蔭で死ぬまで努力のドの字もしなくて済む日本になったんだ、なんで他の星なんか行かなきゃいけない」
地球ではポーネが異星人だが、ソノヘン星では俺が異星人だ。
まず地球人が生存できる環境なのかわからん。
大気組成や太陽光的なものや食い物に飲み物、あるいは濃硫酸の雨が降ったりしないか有害な宇宙線を防ぐオゾン層的なものの有無や免疫といった問題もある。
仮にそれらがクリアできたとして、地球人に発声できない言語や異星人差別の問題だってある。
いや、ソノヘン星人は地球より高度な精神性を有していて、そこに差別はないかもしれない。でも、ソノヘン星の言葉でコミュニケーションが取れないのはキツいだろ。
そんな感じのことをこんこんと説明までして、理路整然と断ったはずなのだが。
「仕方ないね。これだけは使いたくなかったんだけど」
キラリ、ポーネの目から光る雫が落ちた。
まさか泣くとは思わなかったが、仕方がない。地球人は一度覚えた贅沢を捨てるのが、非常に苦手なのだから。
泣かせたのは悪かったと思わないでもないが、しかしウソ偽らざる気持ちを話したつもりだ。
結果が、どうしようもなく交わらない永遠の平行線。
気まずい沈黙が車内に降りる。ポーネが最高の日本を作ってくれてから、久しく味わってなかった感覚。
ふいに、ポーネがムキになったように端末を操作しているのが見えた。
めちゃくちゃ画面をズームしているのがわかった。
その動作にはとても見覚えがあり────────気付いたときには、既に手遅れだった。
自我が完膚なきまでに破壊される、常人が味合わなくていい類の衝撃が俺を襲った。
熱した鉄の棒に脳天から会陰まで貫かれる、感覚。
ああっ! これが、これがアメノハバキリ!!
ソノヘン星の最悪の洗脳兵器の威力か!! 俺が! 俺がなくなっていく!!
今にも消えてなくなってしまい……………………。
「俺を、どうか君の永遠の伴侶にしてください! 君の星で、一緒にたくさん子供をつくらせてください!!」
車の床に土下座して、俺は泣きながら一生懸命ポーネ様に懇願していた。嘘偽りのない真心をもって。
おしまい
旧常任理事国の5か国がすべて滅亡したからだ。
滅亡といってもその原因は、災害や疫病、核戦争、はては王朝や政体の崩壊ではない。
「おーい、光」
外から俺を呼ぶ声がしたので、アパートの窓から顔を出す。
無駄に長くて黒い高級車から、銀髪の女が身を乗り出して手を振っている。
瞳まで銀色で、仄かに輪郭が青く発光している。
その女こそが国連解体の引き金を引いた、とんでもないやつだ。
具体的には、異星人だ。どこから来たかを尋ねても「そのへん」としか言わないので、ソノヘン星人ということにした。
ソノヘン星人の彼女の個体名はマスカット・ド・サド=マスカルポーネ14世。
めちゃくちゃだが、そう名乗ったのだから受け入れざるを得ない。
地球人をおちょくっているのが丸わかりの、ふざけた名前だった。どうせ地球人には彼女の本名を発音できないのだろう。
仕方がないので、縮めてポーネと呼ぶことにした。
「早く来いって」
ポーネの声に剣呑さが滲みだしたので、俺は着の身着のまま部屋を飛び出した。
「なあ、次はどこを滅ぼす?」
長い黒い車に乗り込むや、せっかくだだっ広い車内なのにポーネは俺と肩を組んで端末を突き付けてくる。
かつて国連の常任理事国だった5か国が真っ赤になった世界地図が、画面には映っている。
「また? 別にもう日本以外ならどこでもいいよ」
初めて出会った日のポーネも、こんな感じで俺に滅ぼしていい国を尋ねてきたのだ。
────お前、地球人代表。今から10秒数えるから、その間に滅ぼしていい国を指名しないとお前を殺す
だっけか。開口一番、そんなことを言ってきたのだ。
友人が全員左翼団体に入ってサル痘とエイズと肺炎とエボラ出血熱と麻疹に感染したことでせっかくの大学の夏休みが暇になり、むしゃくしゃしていた俺はあの5か国を指名した。
指名したが、派手な滅亡は何も起きなかった。
何も起きないことを指摘すると、ポーネは俺に端末を突き出して来た。
それは同時通訳付きのニュース速報だった。
常任理事国5か国すべての国家のトップが国連本部にて「日本の属国になりたい」と子供のように泣き喚いている様が報道されていた。
トップだけではない。5か国の国民すべてがSNSを使って日本語で「日本の属国になりたい。全財産を日本に寄付したい。日本のために無償で働きたい」と泣き喚いていたのだ。
言葉だけでなく、日本人の口座に無差別に各国から突然大金が送金されてきたことが、SNSの投稿でわかった。
────ほら、滅んだ
ニンマリ笑う不気味な美女に俺は、何をしたのか尋ねた。
────対国家無力化兵器アメノハバキリさ
よくわからん宇宙語を逐一解説させたものをまとめると、国家レベルで対象地域の住民の邪心を切り落とし、強制的に従属させる洗脳兵器だという。
どこにそんなものがあるのかと訊けば、ポーネは宇宙を指差した。要するに衛星兵器らしい。
そんなわけで戦争もしていないのに常任理事国が日本に勝手に降伏し、日本にだけ利のある不平等条約を一斉に結んで属国になったため、国連は解体された。
昔のよしみで日本が声掛けしたことで、現在は復活した日独伊三国同盟が国際社会をリードし、世界公用語は日本語になり、世界宗教は日本崇拝教になった。
「どこでもいいは禁止。どこでもいいけど、具体的に言え」
「仕方ないなぁ」
おっぱいを押し付けてくるポーネに呆れながら(だって宇宙人が変身してるだけだし、偽乳だぞ)、俺はレアメタルや石油のたくさん埋まっている国をスマホで調べた。
検索結果に上がった国を伝えると、ポーネは俺が伝えた国へとアメノハバキリの洗脳光線を宇宙から照射した。
IOTってスゲー!
そして変化も早かった。
日本崇拝教に改宗した産油国の王が、石油タンカーの大船団を率いて日本に向かって出航したことがニュースになった。
明日からガソリン税が廃止されてガソリンが1リットル30円になることも発表された。
俺は車を持っていないが、ポーネを乗せてきたこの車の運転手が喜んでいた。
「着いたぞ。降りろ」
車が止まると、運転手がドアを開けてくれた。ポーネに続いて車を降りると、なんかドームだった。
ポーネは顔パスで、受付が俺にまでうやうやしく傅いた。
そのままアニメだと王族とかが観戦するのに使うような、見晴らしのいい部屋へと案内された。
部屋では、待機していた属国のIT企業の社長がポーネと俺にビールを注いでくれた。
いや、そこは普通にビール売りのお姉さんがよかったなぁ。
「光」
「なんだよ」
「君の肝臓に乾杯」
「どういう音頭だよ」
ビールを飲んでいると選手入場が始まった。
生成AIで作ったような全高8メートルは下らないクリーチャーと、青い髪でサイドを刈り上げた鼻にピアスをした西洋人がゾロゾロと入場してきた。
「ポーネ、あの化け物はなんだ」
「凄いだろ~。属国にいたキモい現地の珍獣を連れてきたんだ」
「いや、人間じゃなくてデカい方だよ」
筋骨隆々の体躯に無数の眼球と無数の触手を持ち、それが絶え間なく増減しては、あらぬ場所に口を作ったり手足を作ったりするクリーチャーを指差した。
「あー、あれ。故郷にいくらでもいるつまらない動物だよ」
「あんなのがそんなにいっぱいいるの!?」
「いるけど」
「襲われないの?」
「あんなの私に傷一つ付けられないザコだよ。小学生が戯れに殺す小動物と同じさ」
「えー!? クマやゾウが束になっても敵わなさそうなのに!?」
「当たり前だろ、アメノハバキリ使えばイッパツなんだから。いいから、黙って観戦してろよ」
ポーネは俺にオペラグラスを持たせると、スナック菓子を頬張り始めた。
仕方がないので、言われた通りに黙って観戦することにした。
空いたグラスにIT社長がまたビールを注いでくれた。
観戦とは言ったものの、勝負になるわけがなかった。
なんといっても、クリーチャーの丸太を束ねたような巨大な腕だ。
それが伸ばされると、腰を抜かして失禁する青髪刈り上げ鼻ピアスどもはあっさりとクリーチャーに捕まった。
ペリカンとティラノサウルスのあいの子みたいな形の馬鹿でかい口の中は奈落の底に繋がっていそうなほどに暗く、そこへ青髪以下略たちは悲鳴とともにポンポン放り込まれた。
逃げ惑う青髪以下略も、クリーチャーの触手に捕らえられてはひょいパクひょいパクとリズミカルに、その口へと消えた。
ある程度青髪以下略が溜まると、クリーチャーは口を閉じて連中を踊り食いした。
磨り潰された青髪以下略の赤い血がクリーチャーの口の隙間から噴き出て、場内や客席へと飛び散った。
この虐殺劇に、客席から一斉に歓声が上がった。
日本人らしき顔も散見されたが、だいたいは外国人だった。
「身を粉にして働く日本崇拝教徒向けのガス抜き、3S政策だよ。スラッシュ、スプラッタ、スクリームってね」
「スラッシュとスプラッタは同じようなもんだろ」
やがて青髪以下略を食い尽くしたクリーチャーは、大きなゲップを轟かせると競技場から退場していった。
よほど臭かったらしく、客席から悲鳴が上がった。
競技は次のプログラムに入った。
今度はクリーチャーは出てこない。
めちゃくちゃ身なりのいい年老いた属国人や頭の良さそうな学者然とした属国人、そしてやっぱり青髪以下略が入場してきた。
彼ら彼女らは身長より長い角材を手に持っており、場内にゴングが鳴るや、それを使って殺し合いを始めた。
乱戦する上級国民、学者、青髪以下略に、客席から紙コップなどゴミや鶏卵やトマトが投げ込まれる。
ゴミに頭をぶつけて蹲るもの、卵やトマトを踏んですっ転ぶ者は興奮した他の選手によって滅多打ちにされて、死んだ。
顔が内出血だらけで、青黒く腫れて無惨なものだ。
「どうだ? 面白いか?」
黙って観ていたら、黙って観てろと言ったポーネから感想を尋ねられた。
あまりに反応しなかったせいかもしれないが、ガス抜きとして開催されている娯楽だと言ったのもポーネだ。
エキサイトしたら、俺の品格を問われるやつじゃん。
「普通かな」
「ふ、普通!? 地球人は他人の不幸が大好きだっていうのはウソだったのか!?」
「別に間違ってはいないんだけど、うん」
最高の娯楽を用意したつもりだったらしいポーネは、うろたえたような顔をしている。
「なんか、別に楽しいこととか、もう何もないんだよね」
「楽しいことが、何もない?」
「うん。満たされて幸せになったから、もう、何も刺激を感じない」
友人をすべて思想と病で失った俺は、なんか普通に話したり遊んだりする相手が欲しいだけで、成金趣味の人や不満たらたらの人間が見たがる残虐ショーは要らなかった。
金もモノも、名前も顔も知らない属国の人たちが湯水のごとく俺にも貢いでくれるから、物欲的な渇望がまるでない。
SNSで見る感じ、日本人はみんな働かなくてよくなった結果、だいたいが引きこもってだらだら無気力に自堕落に過ごしてる人が多いっぽい。
俺も正直、大学に行く意味も卒業する意味もなくなったと感じている。
「そうなんだ。早く言えよ、光」
「いや、有無を言わさず連れてきたんじゃん」
「じゃあ、帰る?」
「うん」
「そうなんだ。これから客席にうちの星の動物を放つ、メインイベントが始まるのに」
「やめなよ、それは」
やんわりと窘めたが、そのままそこを後にしたから悪趣味なハプニングが中止されたかはわからない。
「なあ、光」
「なに」
長い車の中に戻るやいなや、ポーネが神妙な顔で俺を見てきた。
「私とコイビトになれ」
「え。なんで」
「なんで!?」
そんな関係になる意味がまるでわからなかった。
宇宙偽乳女なんか抱かなくても、街を歩けば属国の娼婦のバーゲンセールだ。
映画スターレベルの金髪碧眼の美女が掃いて捨てるほどいる。
しかもみんな「避妊しないで! 日本人様のお精子様を頂戴しとうございます」とおねだりしてくる。
もちろんそれは、彼女らの真っ黒で真っ暗な〝副業〟のシノギに必要だからなのだが……それは別の話だ。
ああ、そうか。ポーネが車で移動したがるのは、やきもちが原因なのか。
ヤリ捨てるだけの女に嫉妬すんなよ。
「私、光のために光の国を豊かにした。ご褒美ほしい」
「いや、なんでも手に入るんだから俺からご褒美とかいらんだろ。俺の金も持ち物も、もはや属国の人らの貢ぎ物ばっかりだし、それは果たして俺からの贈り物になるかっていうと、怪しいじゃん。〝俺からの〟ものなんて、あるようでないぞ。それはポーネも同じ、むしろポーネは日本全国国賓待遇で俺より何でも持ってるじゃん」
「違う。光の、心が欲しい」
「いや、こんな国で恋愛とかする意味なくね。ソンヘン星人のお前と俺じゃ、子供もできんだろ」
別に子供とか欲しくもないが。
完全に満たされて毎日遊び呆けるだけで、何を目指すでなく、何を残すでもない俺たちだ。
次の世代も国の将来も考える必要はない。
最高の幸福を幸福と感じられなくなった俺たちの行き着く先は、退廃と自堕落のみ。
無料でナマでヤれる娼婦がたくさんいるし、別に宇宙人を固定の性的なパートナーにする変態に走る必要がない。
「だいたい、俺の何が好きでこんなわけのわからんことをしてくれたわけ」
「それは……」
なんかポーネはめちゃくちゃ難解なことを言いだしたのだが、根気強く質問して理解したものを要約すると、次のようになる。
俺が小学生の頃に石をひっくり返したことが、バタフライ効果的にソノヘン星のポーネの命を救うことに繋がった。
要は、俺の無意識な挙動が乱数調整として働いて命が助かったことが発端となり、ポーネは俺にずっと片思いしていたというのだ。
成人して、宇宙航行とアメノハバキリの免許を取得したことでポーネは地球に飛来、長年の想いを遂げるために世界秩序を乱して俺に貢いでいるとのこと。
「地球人の感覚ではそれは知覚もできなければ、感謝もしないし惚れもしない出来事なんだよな」
「ええっ!? でも、でも私の星ではよくあることだよ。パパとママのなれそめもバタフライエフェクトだって言ってたし」
「難儀な文化だなぁ」
「地球が遅れてるだけでしょ。あ、いや、その光を馬鹿にしてるわけでは、決してないんだけど」
「付け加えると却ってそう思ってるっぽくなるから、言わなくていいよ、そういうの」
「ねぇ~、光! 私のモノになれよ!」
「そう言われてもな。具体的に恋人になって、俺と何をしてどうなりたいんだよ」
「私の星まで拉致して、私を妊娠させられる身体に改造して、繁殖行為したい。たくさん作った子供を未開の惑星に送り込んで、物量作戦で侵略させたい」
後半、地球人のスケール感だと、実子で野球チームを作りたい的な夢想に相当するんだろうか。
ものの見方が違い過ぎる。
「嫌だよ。せっかくお前のお蔭で死ぬまで努力のドの字もしなくて済む日本になったんだ、なんで他の星なんか行かなきゃいけない」
地球ではポーネが異星人だが、ソノヘン星では俺が異星人だ。
まず地球人が生存できる環境なのかわからん。
大気組成や太陽光的なものや食い物に飲み物、あるいは濃硫酸の雨が降ったりしないか有害な宇宙線を防ぐオゾン層的なものの有無や免疫といった問題もある。
仮にそれらがクリアできたとして、地球人に発声できない言語や異星人差別の問題だってある。
いや、ソノヘン星人は地球より高度な精神性を有していて、そこに差別はないかもしれない。でも、ソノヘン星の言葉でコミュニケーションが取れないのはキツいだろ。
そんな感じのことをこんこんと説明までして、理路整然と断ったはずなのだが。
「仕方ないね。これだけは使いたくなかったんだけど」
キラリ、ポーネの目から光る雫が落ちた。
まさか泣くとは思わなかったが、仕方がない。地球人は一度覚えた贅沢を捨てるのが、非常に苦手なのだから。
泣かせたのは悪かったと思わないでもないが、しかしウソ偽らざる気持ちを話したつもりだ。
結果が、どうしようもなく交わらない永遠の平行線。
気まずい沈黙が車内に降りる。ポーネが最高の日本を作ってくれてから、久しく味わってなかった感覚。
ふいに、ポーネがムキになったように端末を操作しているのが見えた。
めちゃくちゃ画面をズームしているのがわかった。
その動作にはとても見覚えがあり────────気付いたときには、既に手遅れだった。
自我が完膚なきまでに破壊される、常人が味合わなくていい類の衝撃が俺を襲った。
熱した鉄の棒に脳天から会陰まで貫かれる、感覚。
ああっ! これが、これがアメノハバキリ!!
ソノヘン星の最悪の洗脳兵器の威力か!! 俺が! 俺がなくなっていく!!
今にも消えてなくなってしまい……………………。
「俺を、どうか君の永遠の伴侶にしてください! 君の星で、一緒にたくさん子供をつくらせてください!!」
車の床に土下座して、俺は泣きながら一生懸命ポーネ様に懇願していた。嘘偽りのない真心をもって。
おしまい
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