Buuuuuutaaaaaaaa-dooooooooooooon!!

ごったに

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「残念だったな、汐里しおり。お味方はみんな、あっちに行っちまったぞ」

「なにそれ。漫画のセリフ? ってか、味方ならまだいるし」

 豚丼をひたすらかき込んでいる謎の女の隣に歩いていき、虚勢を張る汐里。

 しかし、そこで汐里は初めて違和感を持った。

 この女は、一体誰なんだ、と。

 自他共に認める掃き溜めに鶴の鶴である汐里は、引き立て役でしかない他のゼミ生に興味を持ったことがない。

 だがそれでも、改めてまじまじと個人の顔を見れば、わかる。

 こんな女は、屁泥へどろゼミにいなかった、と。

「え? 私はあなたの味方ではありませんよ……あ、来た来た」

 水を向けられた、豚丼を貪る謎の女はここに来て食事を終えた。

 構内の廊下に、山ほど伏せられた丼の山。

 さながらそれは、スープ一滴残さずラーメンを平らげたことをアピールする嘘マナー、伏せ丼の進化系。

 異様な光景を背にした謎の女は楊枝で歯垢をほじりつつ、スマホを取り出した。

 屁泥ゼミ生に代わって今回の問題に介入しそうなアトモスフィアの女に、凌空と汐里、それとマックスもその一挙手一投足に目が離せなくなる。

「ほい、再生」

 旅のご隠居のお供衆の掲げる印籠よろしく掲げられたスマホから、爆音が発せられた。

「うわっ、うるせ……ってこれ、パチンコ屋か? 映ってるのは汐里と……?」

 既に凌空りくの貯金を汐里がパチンコで溶かしたことは、この場の全員が知るところだ。

「うわあああああああああああああああああっ! やめろおおおおおおおおおおおっ!」

 なのに、汐里は血相を変えて謎の女に飛び掛かり、スマホを奪取せんとする。

 サッ、と軽い身のこなしでそれを避ける、謎の女。

 さりげなく足を掛け、まんまと引っかかった汐里はそれに転ばされる。

 包帯を巻いた額から床にダイヴし、ついでに鼻から不吉な音までさせて倒れ込んだ。

「いけない、いけない。こっちは原動画か。ノイズを除いた方を、と」

 動画を止め、謎の女が素早くスマホを操作する。

 すると、同じ動画だがパチンコ屋特有の音響が除去されたものが流れた。

『汐里ちゃんさぁ、めっちゃパチンコ下手じゃん』

 汐里の隣の台に男が座っている。

 昼の仕事をする人間はまず着なさそうなスーツに身を包んだ、ヴィジュアル系バンドからそうでないロックバンドに転向したミュージシャンめいた風貌だ。

 肌が化粧した女のような綺麗な質感で、実際にうっすらメイクしている風の横顔。

『うん。今日初めて来たし。人生で、初めて』

 男と話す汐里のテンションは、高い。

 来る日も来る日も、聞きたくもない「今日の差別を感じた瞬間ハイライト」を凌空に語り聞かせて来たときのものとは、声のトーンからして違う。

 ヒステリックで、どこかオラついてすらいた汐里が、こんな甘えた声を?

 とうに愛情などない凌空には、別人と見違える汐里は不気味でしかない。

 自分の知る汐里は、屁泥ゼミが使った後の教室で起きる怪異────狐憑きの影響下にあったのではないか、と思ったほどだ。

『マジ? それでなんで、俺の分まで出してくれんの?』

『それはね』

『うんうん、それは?』

『彼氏の貯金を引き出して来たから、でーす』

 侮蔑的にはっちゃけた声を出す、汐里。

 幸が薄い感じのイメージとかけ離れた、遊んでいる女のそれだった。

「ち、違うの! これは、これは違うの!」

「何が違うんだよ」

 パチンコで、勝手に引き出した凌空の貯金二百五十万円を溶かしたクズ。

 それを認めてなお、自己弁護を目論む汐里に凌空は冷たい声を返した。

『ギャハハハハ! クズぅ! クズだな汐里ちゃあん!』

 期せずして、動画の中の男からもクズ認定される汐里。

『いやいやいや。貯金ばっかで、プレゼントもくれない彼氏が悪いんだって』

 凌空の眉間に皴がより、汐里の目が泳ぎ出す。

 確かに凌空は支出を削る努力をしてきたが、誕生日やクリスマスにはバッグや財布を汐里に贈っている。

 痛かった出費をなかったことにされたのは、凌空にとって心外だった。

『うっわ、ケチかよ』

『そう、超ケチなの。チマチマ、チマチマ。若いのに金にならないバイトで小銭貯めてよう、将来、ローンなしで車買うんだー、って。アホかよ』

『アヒャヒャヒャヒャ! そいつバカじゃん! 大学生でしょ? いや、俺と同じ仕事すりゃもっと簡単に稼げるのに!』

『ねー? 死ぬほどクソバカだから、これは必要な社会勉強なの。すべて失って、何が本当に大切か学ぶとこから、やり直せってね! あはははは!』

「へぇ。社会勉強。ふーん」

「り、凌空? 違うのよ? こ、これはね。場の雰囲気! そう、私は言わされたの! 被害者なの? ねぇ、わかってよ凌空~~~~っ!」

「何をどうわかれ、ってんだよ。あぁ?」

 目を剥いて怒り、汐里との距離を詰める凌空。

 ひっ、と小さく悲鳴を上げる汐里。

 しかし、それで折れる汐里ではない。

 ターゲット変更、汐里はオラつき全開で謎の女に詰め寄った。

「ねぇ、もうやめてよ! 動画消して、消せよ! なんでこんなことすんの!」

「止めませんけど? これも私の活動の一環ですので」

「はぁ? 活動?」

『でもいいの? 彼氏が俺と同じ仕事すんの』

『いや、別にどうでもいいし。遊ぶ金さえ持って来てくれりゃあ、それでいい。あんなのただのATMだし。一回もヤラせてやってないのに、別れたくないって言ったらズルズル同棲続ける間抜けだし? そういう運命でしょ、あのバカ』

『ギャハハハハ! イエーイ、彼氏くん見てる~? 君の性悪彼女に、パチンコ! 奢ってもらってやーす!』

「見てるよ。しっかりとな」

 動画の中の男に返事をする、凌空。

 だがカッ開かれた目は、必死に頭を振る汐里を見据えている。

『ちょっ、やめてよ~~~! ホントに誰かに撮られてたらどうすんの』

「撮られてましたねぇ」

 今度は謎の女が動画の汐里の言葉を受けて、ねっとりした声を出した。

「この動画の中の男の人。この後、ここに来ますよ」

「へ……? え……?」

 動画を黙って観ていたマックスの発言で、汐里が顔色を失った。

「シノサキさん、僕が日本に来たばかりの頃、色々助けてくれたんですよ」

「ほほう。詳しく」

「聞こうじゃないか」

「そ、それはともかく、どうして今ここに来るの?」

「え、僕が暇になったから、呼びました。なんか、奢ってくれるそうです」

 マックスが満面の笑みを浮かべた、直後だった。

「ヘイ、マックス! どうした、そいつら連れか?」

 軽薄そうな声とともに、マックスの背中を叩いた者があった。

 動画の中で汐里とパチンコに興じていたホストの男、篠崎だった。

「ハイ、シノサキさん! 紹介します。こちらリクと、その元彼女のシオリと……」

賀茂川かもがわオナン────────」

 紹介に困っていたマックスに助け舟を出す形で、謎の女こと賀茂川オナンは名乗った。

 もちろん偽名である。

 彼女の本名は、林原育江。

 ではなぜ、彼女は偽名を名乗ったのか。

 その理由は。

「探偵研究会、副会長さ」

「た、探偵研究会ですって!」

 団体名を聞いて、震え上がったのは汐里である。

 私立大日本アルデバラン学院大学、探偵研究会。

 それは学内に幾多もある非公式サークルの中でも、異質の存在。

 部員数は公式サークル昇格に十分な人数がありながら、決して昇格しない。

 なぜならこの団体はその名の通り、学内外を問わず依頼がなくても勝手に私立探偵として探偵行為を行う、迷惑極まりない秘密サークルだからだ。

 聞き込み、変装、不法侵入、ハッキング、盗撮・盗聴、果てはハニートラップまで。

 あらゆる手段を用いて、学内の人間関係を掌握。

 さらに頼まれてもいない浮気調査、頼まれてもいない別れさせ屋行為によって他人の弱みを収集する。

 その情報を使い、ゆすりたかりを行って部費を調達。

 たとえ直接金に繋がらなくても、単純に他人の人間関係を壊して楽しむ悪趣味な団体だ。

 そう。

 ひたすら豚丼を食べていたから、オナンは「ぶひぶひ」と鳴いていたのではない。

 部費調達の気配を感じて、興奮していたのである。

 豚丼は、単純に食べたかったから食べていただけである。

「へぇ、君面白いね! ってか探偵部? うちの大学にそんなのあったんだ」

 汐里を押しのけ、馴れ馴れしくオナンの肩に手を回す篠崎。

「ふふふふふ。私に関わると、火傷じゃ済みませんよ」

「うっは! なにそれ。おもしれぇ女!」

解夏瑠げげるくん!」

 そんな篠崎とオナンの間に、果敢にも汐里は割って入った。

「は? 誰お前。ってか、大学でその名前出すなよ」

 源氏名で呼ばれ、露骨に機嫌が悪くなる篠崎。

 公私を分けるためにつける名を、篠崎は店の外で出されたくないタイプだった。

「ご、ごめん。篠崎くん! 私、汐里よ。わかる?」

「知らん。お前みたいなミイラ女」

「み、ミイラ女」

 あまりの言いように、凌空は吹き出した。

 確かに汐里は額に包帯を巻いているが、そこまでぐるぐる巻きではない。

 笑われたのが癇に障った汐里は、「こんなもの!」と小さく吐き捨て、包帯と眼帯、頬のガーゼを剥がして自らの足元に投げつけた。

「これでわかるでしょ?」

 腫れた顔を見せつけた汐里だが、篠崎はピンと来ないアピールで首を捻ってみせる。

 焦れた汐里は、ゴリ押しにかかった。

「ねぇ、助けてよ。彼氏に金をぬす……引き出したのがバレちゃって」

「言い直しても無駄だ。二百五十万円、耳を揃えて返せ。一括でな!」

 面倒そうにする篠崎に縋りつく、汐里。

 あくまで冷徹にそれを責める、凌空。

「いや、だから知らんって。ストーカーかよ。警察呼ぶぞ」

「こちらのことのようです」

「あ? え、ナニコレ」

 白を切る篠崎に、オナンが先ほどの動画を再生する。

「えーと、俺は悪くないよな」

「し、篠崎くん!?」

 動画を見終わった篠崎が、思い切り逃げ腰でオナンに愛想笑いを向ける。

「それはあちらの、凌空さんに聞かれては?」

 肩をすくめ、凌空を指差すオナン。

「えーと、この世紀の毒婦の、彼氏さん?」

 毒婦て。

 接客コミュニケーションを生業とするだけあって、篠崎は豊富な語彙を持っている。

 仕事中は、デバ大生とは思えない知的な会話すらしてみせる。

 だが今回はちょっとテンパってしまったがために、背伸びした言葉遣いをしてしまったのだ。

 篠崎の口から口頭で滅多に聞かない言葉が出てきたことに、凌空は面食らった。

 しかし凌空は、この状況を説明できる話を聞いたことがあったのを思い出した。

 小学生向けのドリルを解くことで、ホストは日々、日本語表現を磨いているという話だ。

 つまり最近の小学生は、毒婦なんて言葉を習うのか!

 感心しきり、凌空は隔世の感があるとまで思った。

 そんなわけないだろ。

磯貝いそがいでいいですよ」

「磯貝様っ! この度は、知らぬこととは言え、大変失礼なことを口走ってしまい。まことに、申し訳ありませんでした!」

 綺麗なお辞儀を見せられ、凌空は戸惑った。

 こんなにも素直に謝られるとは、想定していなかった。

 もちろん、一番戸惑ったのは汐里だ。

「ちょっと、篠崎くん? 篠崎くん!?」

「黙ってろ、ブス。俺を巻き込むんじゃねぇ」

「ブ、ブ、ブ……」

 好きの裏返し、照れ隠しで汐里にその言葉をぶつけて来た男子は、いた。

 しかしそれも、小学生の頃の話だ。

 ましてや真に悪意や邪険にする意図でその言葉を使われたことのない汐里は、心に深い傷を負った。

「店の伝手を使ってトバし、この女には必ず借金を返させますので。どうか、俺には慰謝料なんかは請求しないでいただけないでしょうか!」

「いや、慰謝料は請求できないと思うので」

「あれ? そうなの?」

 あっけらかんと、頭を上げる篠崎。

 その様は少し凌空をイラ立たせたが、

「まあでも、こいつがもう金ないのは事実だろうし、マジでトバすわ。面白いから、アンタから盗んだ金もちゃんと返させるよ」

「えっ! えっ! 嘘でしょ!?」

「うるせぇよ。ホラ、パスポート作りに行くぞ!」

 狼狽える汐里の首根っこを掴むと、そのまま篠崎は講義棟の外へ向かって歩き出した。

「悪いな、マックス! 遊び行くのは、また今度になる」

「オーケイ、シノサキさん! 約束ですよ!」

「任せろ! おい、とっとと歩けよクソアマ!」

 マックスにいい笑顔を向けたかと思えば、ドスの利いた声を出して汐里の尻に膝蹴りを叩き込む篠崎。

「痛ぁい!」

 呆気に取られている凌空を置き去りに、篠崎と汐里は自動ドアの向こうへと消えた。

「万事解決ですか。リクさん」

 マックスに肩に手を置かれ、凌空は我に返る。

 見上げ、しかし凌空は左右に首を振った。

「いや。盗まれた金が返ってきて、やっと終わりかな」

「私が言うのもなんですが。殴ったりせず、警察に届け出るべきでしたね」

「ホントだよ」

 自らの至らなさへの反省、そして非合法な団体の構成員の前置きに同意する意味を込めて、凌空は頷いた。

「そうだ。僕の用事がキャンセルになっちゃいましたし、アー、こうして出会ったのもなにかの縁です。みんなで、遊びに行きませんか?」

「ふふふふふ。私に触れると、火傷じゃ済みませんよ」

「いや、俺はパスで」

 屁泥ゼミに待ち伏せされてから、凌空は怒涛の時間を体験した。

 短時間に色んな事が起きすぎて、ヘトヘトだった。

 返ってこないと諦めていた金が、返ってくる。

 少なくとも、そう期待していい状況が訪れたことを噛みしめて、もう帰って寝たかった。

 しかし。

「了解しました、凌空さん。では三人で、豚丼食べ比べツアーと洒落込みましょうか」

「まだ食うの!? ってか、俺はパスって言ったじゃん!」

「おやぁ? 私が誰かお忘れですか? 私立大日本アルデバラン学院大学探偵研究会副会長、その名も、賀茂川────────」

「わかった、わかったって!」

「イエーイ! 豚丼食べ比べツアー!」

「いえーい!」

 マックスに背中を押され、オナンに手を繋がれ、逃げられなくなった凌空。

 観念して、豚丼の食べ比べもとい食べ歩きに付き合わされるのだった。
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