最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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武人祭

災厄の悪魔

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「クフフフフ・・・・・・おや、どうしましたか? そんな間抜け面を晒してしまって・・・・・・たしかに面白いですが、見世物としてはあまり点は付けられたものじゃありませんよ?」
 「「っ!?」」

 まるで世間話でもするかのように話しかけてくるそいつは、僕らの中に平然と混ざっていた。
 どうやら僕らが「目」を解いたのと同時だったらしく、レオンやリゲイド、コノハ君もたった今気付いた様子で、同時に後ずさりをした。

 「なんだお前・・・・・・いや、お前が悪魔か!?」
 「悪魔・・・・・・クフフ、えぇ、よくおわかりになられましたね。たしかに周りからは『災厄の悪魔』などと勝手に呼ばれたりもしていましたが・・・・・・ああ、それとも比喩でしたか? まぁ、なんでも構いませんよ、呼び方なんて」

 災厄の悪魔・・・・・・!?
 あれは大昔に竜と渡り合い、一つの大陸を海に沈ませたと書物に書かれているお伽噺じゃないのか!?
 しかしその男は僕が混乱しているのなど気にした様子もなく、深々とお辞儀をして話を進めようとする。

 「どうも、皆様わざわざこんな僻地にまでお越しいただきご苦労様です。私は名も無き悪魔・・・・・・比喩ではなく、種族としてここに在ります。そして察するに、あなた方がここに来ることとなった原因、とここまで言えば理解できますか?」

 その喋り方は礼儀正しく、だがバカにしたような話の内容。
 しかしその全てが頭に入らず、悪魔だと自称した男のあまりの恐ろしさに僕は足がすくんでしまい、動作の一つ一つに体が跳ねて反応してしまっていた。
 こいつはダメだ、僕たちが勝てる相手じゃない・・・・・・!
 たとえ魔王であるペルディアでも、ここにいない獣王が僕たちに加わったとしても・・・・・・勝てないと断言できる。
 それほどまでにこの悪魔から感じる圧力プレッシャーと魔力は、常識の範疇はんちゅうを遥かに超えていた。
 その証拠に、僕以外の人たちも恐怖に怯え震えて動けずにいる様子だった。
 その中で唯一、コノハ君が前に出た。

 「え、っと・・・・・・つまりあなたが今回の騒動の原因となった悪魔さん、ですか?」

 コノハ君の問いに悪魔が目を丸くして驚いた表情をし、後に笑い出す。

 「悪魔・・・・・・『さん』? ク、クク・・・・・・クフフフフッ!」
 「あ、あのー・・・・・・僕、何か変なこと言いましたか?」
 「はい、いえ・・・・・・変、というより面白い方だと思いまして。私を前にして普通に接した上に敬称で呼んでくださる方など今までおりませんでしたので。クフフ・・・・・・」

 笑いが止まらずにいる悪魔に対して首を傾げるコノハ君。
 しばらくして悪魔の笑いが止まると、改めて僕たちを見据える。
 笑っているにも関わらずその射抜くような冷たい眼差しに背筋が凍る感覚に襲われる。

 「さて・・・・・・聞くまでもなさそうですが、あなた方の目的は私、という認識でよろしいでしょうか?」
 「くっ、なんて目をしやがる・・・・・・!?」

 レオンは身震いをし、リゲイドと共に構えを取り、ペルディアが魔術を展開する。
 僕も遅れて魔術を展開して、必死に気を保ちつつも口を開く。

 「厳密には確認。ここで何が起きたか。本当に大陸単位の戦士たちが数日で壊滅したのか。そしてもしそれが本当で、その原因である奴が敵対するのなら、って話だよ。でもーー」
 「私に勝てる見込みは万に一つもない・・・・・・それがあなた方の今の状況です。それでもと言うのであれば、そこに転がってる『もの』と同じにしてさしあげますよ」

 悪魔の視線の先には屍と成り果てた亜人や魔族が。
 もちろん、ハッタリではないのはよくわかっていた。しかしこの彼の言葉にどこか引っかかるものを感じる。
 そしてその原因をペルディアが口にする。

 「その言い方・・・・・・こちらが戦う気がないと言えば逃がしてくれるとでも言いたげだな?」

 そうだ、「それでもと言うのであれば」というのはそうとも捉えられる。
 なぜだ?

 「えぇまぁ・・・・・・
 「私たちと戦うメリット、だと?」
 「はい。元々ここで騒いでいるこの虫たちが・・・・・・いや失礼。それぞれの種族が少々耳障りだったので、静かにしていただきましたまでです。その目的はすでに達せられましたし、あなた方がここで大人しく帰るというのであれば追いはしませんよ」

 すると突如何もない空間が裂け始めた。
 なん、だ、これは・・・・・・? 今目の前で何が起きているんだ?
 目の前で起きている理解できない現象が頭を白くさせる。

 「なんだ・・・・・・それは!? 魔術、なのか?」
 「クフフ、長年生きているのにこんなことも知らないのですね・・・・・・ああ、またも失礼しました。そもそも六属性以上の適性を持つ者が現れるなど前例がありませんか。でしたら『空間魔術』を知らないのも無理はありませんね」
 「「空間魔術・・・・・・?」」

 魔術を使う僕とペルディアの声が重なる。
 六属性以上の適性? 空間魔術?
 まるで試すような眼差しで見てくる悪魔を他所に、僕の頭の中ではその言葉がぐるぐると回っていた。
 そしてーー

 『ヴゥ・・・・・・』

 低く唸る何かが響き、僕を現実へと引き戻した。
 辺りを見回すと、

 「バカな、たしかにこいつらは死んでいたのだぞ! しかも四肢どころか喉が千切れた者さえ起き上って・・・・・・!?」
 「まさか・・・・・・こいつらゾンビか!?」

 レオンとペルディアの会話に思い当たるものがある。
 ゾンビ・・・・・・それは魔物の一種で、別名「劣化した不死者」などと呼ばれている。
 たしかにソレらに酷似しているけれど・・・・・・

 「これらは私の闇の魔術の一つ、影を操る技を利用しています。見た目はゾンビのそれと似たものですが、若干弱体化してありますので、心配には及びません。通常、噛まれれば即死となりますが、激痛が伴う程度に済ませてありますので」

 悪魔は「どうです?」とでも言いたそうな笑顔をする。
 嫌な予感しかしない・・・・・・!

 「情報のみで何の成果もなく帰るのも気が引けるでしょう? ですので、その『成果』を与えてさしあげますよ・・・・・・せいぜい死なぬようお気を付けください」

 それだけ言い残し、悪魔は裂いた空間の中へと入り、裂け目と共に消えてしまった。
 残されたのは僕ら六人とーー

 『『ヴォアァァァッ!!』』

 人間、亜人、魔族の死体が操られた一億に近いゾンビもどきだった。
 そう、僕らは壊滅した三種族の兵士たちの屍全員を相手をしなくてはならなくなったのだ。

 「この・・・・・・クソッタレめがぁぁぁっ!」

 レオンの方向に似た叫びを合図に、僕たちの地獄戦いが始まった。
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