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武人祭
円卓会議
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「ところでアヤト君、もし王位を譲渡するとしたら、誰がいいと思う?」
三人一緒にソファーで後ろに倒れてる時、ルークさんがそんな事を言い出した。
メアは嬉しさのあまりか、俺の顔に頬をグリグリ押し付けて、ミーナはさらにその上にのしかかっていた。
「んじゃ、ワークラフト」
ミランダのラストネームを口にすると、全員が驚いた。
その驚かれる理由も大体わかる。
「あれだけ毛嫌いしてたミラを推すのか?」
「勘違いするなよ?俺はミランダが苦手っていうだけで、最初に会った時より丸くなった今のあいつは嫌いじゃないし、ミランダの家以外の貴族知らないし・・・・・・ああいや、まだ何人かいたな」
あと思い出せるのは、ベアトリクス・フィールドとリリス・アーリアくらいか。
まぁ、ミランダはともかく、この二家がラライナに属してるかどうかは知らんが。
理由を続けるために口を開く。
「でもミランダなら最初から貴族だし、SSランクの冒険者っていう肩書きもあれば、人望もそこそこある・・・・・・丁度いいんじゃないか?」
実際、ガーランドだって人望があって民に慕われて、王としての実務を全うしている。もちろん、ノワールの手助けもあっての事かもしれないが。
俺も一応SSランクの冒険者という肩書きを持っているが、貴族でもないし、そのために貴族にされたとしても疎まれるのがオチだろうから、あまりいい手ではない。
どちらにしろ何かしらの嫌がらせを受けるなら、貴族でない方が自由に動きやすいだろう。
「たしかに・・・・・・では候補の一つと考えておこう」
「確定しないのか?」
「アヤト君に継いでほしいという考え、わしはまだ諦めておらんのでな」
ルークさんは少年のようにニッと笑い、そう言った。
この人は・・・・・・きっと長生きするだろうな、とその笑顔を見てそう思った。
ーーーー
それからしばらくして、一つの部屋に二十近くの臣下や貴族の奴らが集まり、ルークさんを中心とした会議が開かれた。
中央には丸いテーブルがあり、それを囲んでいるところから円卓会議とでも呼ぼうか。
そしてこの集められた原因である俺はそのテーブルから外れ、ルークさんの後ろで壁に寄りかかっている。
同じ当事者であるメアはルークさんの隣に座り、完全部外者となるミーナは応接室でそのまま待機となった。
集まり始めてから五分、正直言うともう帰りたかった。
貴族たちのあからさまな敵意のある視線が俺に向けられ、居た堪れない気持ちになっている。
今までは色んな対処の仕方をしてきたが、対処できない場にいるというのが苦痛だ。
メアに迷惑をかけないように、というのもあるが、この円卓会議では貴族の階級を持たない俺はただの平民という事で、発言権などほぼ皆無なのだ。
もちろん、ルークさんから問答があった場合は答えられるし、許可されれば発言できる。
しかし、ルークさんが俺ばかりを優遇すれば、きっと反感を買うだろうし、話がさらにややこしくなるだろう。
という事で、俺はどんな視線を向けるれても嫌味を言われても、我慢しなくてはいけない。
「全く、臭いな・・・・・・今日に限ってはこの部屋が臭く感じるぞ?」
「もっともですな。ここには高貴な者のみがいるはずなのに、下賎の臭いがする・・・・・・」
「しかもなぜですかな?獣の臭いも混じってる。この城のどこかに亜人でもいるのではないか?」
さっそくニヤニヤクスクスとしながら俺を見る貴族が複数名。
すげぇな、今の貴族。この部屋にいないはずのミーナの臭いを嗅ぎとったのか?亜人並に鼻がいいじゃないか。
なんて挑発じみた事は口には出さずに思うだけにしていると、メアが自分の体を嗅ぎ出す。
「やべぇ、どうしよう?まだ風呂入ってねぇんだけど・・・・・・もしかして俺のせいか?」
メアの自重しない発言に貴族たちが黙り、ルークさんも頭を抱える。
今の貴族たちがしていた話でそう思ったのかもしれないが・・・・・・違う、お前の事じゃない。
そうツッコミたいけど何も言えなくてもどかしい。
するとメアが今度は首を傾げる。
「でもおかしいよな・・・・・・今日はまだそんなに動いてねぇし、石鹸もアヤトのと同じのを使ってるはずだしな・・・・・・」
その言葉に貴族の中でざわつく。
「平民と同じ物を・・・・・・?一体どういう事だ、それは!?」
「まさか平民と同じ風呂に!?」
「なんとふしだらな!いいえ、もはや汚らわしい!」
「決まりだ、そいつを不敬で罰しろ!」
ぎゃあぎゃあとカラスのように騒ぎ立てる貴族たち。最後の奴は短絡的過ぎて、俺が消えてほしいというのがよく伝わってくる。
まさか貴族たちよりメアの発言に頭を痛める事になるとは・・・・・・
するとルークさんの雰囲気が変わる。
「静まれ。その『高貴な者』が場を掻き乱すような発言をしてどうする」
今までに聞いた事のないような重い声を発するルークさん。
その姿にはいつもの穏やかな雰囲気はなく、王らしい威厳を兼ね備えていた。
メアもその姿を見るのは初めてらしく、目を見開いて驚いている。
「一人の人間を糾弾するためにこうやってお主らを呼んだのではない。わしの考えは変わらんのでな」
「ワンド王、本当に考え直す気はないのですか!?」
背筋のピンッと伸ばした初老の男が、そう発言した後に俺を睨む。
「彼の事は少し伺っております。貴族でありながらSSランクの冒険者をしているミランダ・ワークラフト殿を倒した者だと・・・・・・」
「しかも彼も最近、冒険者でSSランクになったと言うではないか」
「ああ、しかしありえない事だ。なんせ、その者が冒険者になったのはほんの一ヶ月前だと聞いているぞ。にも関わらずSSランク冒険者?怪しさしかないではないか!」
別の初老金髪の男が俺を指差して叫ぶ。
「たしかに・・・・・・たとえそやつがSSランクの強さを持とうとも、DやCからこの短期間でいきなりSSに到達するのは不可能に近いのではないか?」
「この者の実力はわしが保証する」
貴族たちの疑問にルークさんは堂々と答えるが、貴族たちは『いやだが・・・・・・』『しかし・・・・・・』などと引き下がろうとしない。
そんな中、一人の男が手を挙げる。
「発言、よろしいでしょうか?」
それは銀色の綺麗な長髪で、ダンディに髭を生やした男だった。
あのキリッとした表情かどことなく見覚えがあるのだが、まさかな・・・・・・
「構わない。何か言いたい事があるなら言ってくれ、ワークラフト侯爵」
ワークラフトという名に『ああ、やっぱり』と思ってしまう。
あれはミランダの、そしてアルニアの父親だろう。
しかし侯爵というと・・・・・・貴族の低い階級から数えて『男爵』『子爵』『伯爵』『侯爵』『公爵』となっていたな。
という事は上から二番目で、そこそこ地位があるのか。
って、そんな事を考えてる場合じゃなかったな。ミランダの父親って事は、あいつを叩きのめした俺を憎んでいたりするんじゃないのか、そのワークラフト侯爵ってやつは?
その父親の方に視線を向けると、向こうも俺が気になっていたらしく、一瞬だけ視線が合った。
「彼がSSランクである証拠を提示すればいいのではないかと進言します」
「証拠・・・・・・というと、ギルドカードか?」
「はい。しかしただギルドカードを見せるだけではなく、どれだけの魔物を倒したかという詳細を知りたく存じます・・・・・・」
「っ!」
侯爵の提案に、思わず俺は息を飲んでしまった。
ギルドカードの詳細提示・・・・・・上級や超級をどれだけ倒したかがわかれば、たしかに理解させるには確実かもしれない。
しかし俺がSSランクになった原因は、恐らく神話級に値するチユキを複数回殺し続けた事だ。
であれば、もし詳細が乗った紙があるとすれば、神話級を複数回倒した事が記されていて、この場にいる全員に知れ渡ってしまう。
事実の改竄と言われるか、はたまた化け物と呼ばれて、結局メアとの話が有耶無耶になるか・・・・・・やっぱり、どの道面倒な事にしかならないみたいだな。
・・・・・・いっその事、メアを攫うか?
そんな物騒な考えをした時、ルークさんが話の流れを変えてくれる。
「それはいい案じゃ。しかしギルドカードの内容はあくまで機密情報。外部に漏らしていいものではない」
ルークさんがそういうと、初老の男が立ち上がる。
「しかしそれでは皆納得がーー」
「だからこそ、この場で『口封じの契約』をする根性のあるものだけを選出しようと思う」
「「っ!?」」
「く、『口封じの契約』、ですと!?」
ルークさんの発言にその場にいる全員が驚き、初老の男もまた狼狽える。
口封じの契約?普通に聞くと物騒な名前が出てきたな・・・・・・
「わかっておいでですか、王!口封じの契約をした者は、契約の内容に記されたものに関してが今後一切喋れず、下手に解約しようとすればその者の命が失われてしまうのですぞ!?」
はい、ご説明ありがとう。
たしかにデメリットは大きいが、それだけ『この情報が重要である』という意味を持たせている。
もちろんハッタリと考える奴も出てくるかもしれないが、その情報を目にしてしまえばこっちのものだ。
「この意味を理解し、踏み込む勇気のある者だけ見せよう。しかし、これを見ればこの者がメアとの婚姻を認めざるをえなくなるであろう」
まるで予言のように言うルークさん。
メアも横で頭に手を回し、『たしかになー』と呟いていた。
もはや脅迫じみているが、もしこれで全員が大人しくしてくれるのであれば、それもいいかもしれない。
「ちなみに、ワークラフト侯爵はすでに契約を済ませている」
ルークさんがそう言い、貴族たちにざわめきが出てくる。ずいぶん早いな?そういうのを先にバラすとグルだと思われるんじゃ・・・・・・?
と、誰かが疑問を口にする前に侯爵が口を開く。
「彼は私の娘、ミランダを負かした男。婚姻やランクの飛び級以前に、彼の事を知りたかったから起こした行動だ。そして一足先に拝見させていただいた私からアドバイスが一つ・・・・・・」
男は人差し指を口に当て、シーッというジェスチャーをする。
「今後の自分たちのためにも、見ておく事をオススメするよ」
三人一緒にソファーで後ろに倒れてる時、ルークさんがそんな事を言い出した。
メアは嬉しさのあまりか、俺の顔に頬をグリグリ押し付けて、ミーナはさらにその上にのしかかっていた。
「んじゃ、ワークラフト」
ミランダのラストネームを口にすると、全員が驚いた。
その驚かれる理由も大体わかる。
「あれだけ毛嫌いしてたミラを推すのか?」
「勘違いするなよ?俺はミランダが苦手っていうだけで、最初に会った時より丸くなった今のあいつは嫌いじゃないし、ミランダの家以外の貴族知らないし・・・・・・ああいや、まだ何人かいたな」
あと思い出せるのは、ベアトリクス・フィールドとリリス・アーリアくらいか。
まぁ、ミランダはともかく、この二家がラライナに属してるかどうかは知らんが。
理由を続けるために口を開く。
「でもミランダなら最初から貴族だし、SSランクの冒険者っていう肩書きもあれば、人望もそこそこある・・・・・・丁度いいんじゃないか?」
実際、ガーランドだって人望があって民に慕われて、王としての実務を全うしている。もちろん、ノワールの手助けもあっての事かもしれないが。
俺も一応SSランクの冒険者という肩書きを持っているが、貴族でもないし、そのために貴族にされたとしても疎まれるのがオチだろうから、あまりいい手ではない。
どちらにしろ何かしらの嫌がらせを受けるなら、貴族でない方が自由に動きやすいだろう。
「たしかに・・・・・・では候補の一つと考えておこう」
「確定しないのか?」
「アヤト君に継いでほしいという考え、わしはまだ諦めておらんのでな」
ルークさんは少年のようにニッと笑い、そう言った。
この人は・・・・・・きっと長生きするだろうな、とその笑顔を見てそう思った。
ーーーー
それからしばらくして、一つの部屋に二十近くの臣下や貴族の奴らが集まり、ルークさんを中心とした会議が開かれた。
中央には丸いテーブルがあり、それを囲んでいるところから円卓会議とでも呼ぼうか。
そしてこの集められた原因である俺はそのテーブルから外れ、ルークさんの後ろで壁に寄りかかっている。
同じ当事者であるメアはルークさんの隣に座り、完全部外者となるミーナは応接室でそのまま待機となった。
集まり始めてから五分、正直言うともう帰りたかった。
貴族たちのあからさまな敵意のある視線が俺に向けられ、居た堪れない気持ちになっている。
今までは色んな対処の仕方をしてきたが、対処できない場にいるというのが苦痛だ。
メアに迷惑をかけないように、というのもあるが、この円卓会議では貴族の階級を持たない俺はただの平民という事で、発言権などほぼ皆無なのだ。
もちろん、ルークさんから問答があった場合は答えられるし、許可されれば発言できる。
しかし、ルークさんが俺ばかりを優遇すれば、きっと反感を買うだろうし、話がさらにややこしくなるだろう。
という事で、俺はどんな視線を向けるれても嫌味を言われても、我慢しなくてはいけない。
「全く、臭いな・・・・・・今日に限ってはこの部屋が臭く感じるぞ?」
「もっともですな。ここには高貴な者のみがいるはずなのに、下賎の臭いがする・・・・・・」
「しかもなぜですかな?獣の臭いも混じってる。この城のどこかに亜人でもいるのではないか?」
さっそくニヤニヤクスクスとしながら俺を見る貴族が複数名。
すげぇな、今の貴族。この部屋にいないはずのミーナの臭いを嗅ぎとったのか?亜人並に鼻がいいじゃないか。
なんて挑発じみた事は口には出さずに思うだけにしていると、メアが自分の体を嗅ぎ出す。
「やべぇ、どうしよう?まだ風呂入ってねぇんだけど・・・・・・もしかして俺のせいか?」
メアの自重しない発言に貴族たちが黙り、ルークさんも頭を抱える。
今の貴族たちがしていた話でそう思ったのかもしれないが・・・・・・違う、お前の事じゃない。
そうツッコミたいけど何も言えなくてもどかしい。
するとメアが今度は首を傾げる。
「でもおかしいよな・・・・・・今日はまだそんなに動いてねぇし、石鹸もアヤトのと同じのを使ってるはずだしな・・・・・・」
その言葉に貴族の中でざわつく。
「平民と同じ物を・・・・・・?一体どういう事だ、それは!?」
「まさか平民と同じ風呂に!?」
「なんとふしだらな!いいえ、もはや汚らわしい!」
「決まりだ、そいつを不敬で罰しろ!」
ぎゃあぎゃあとカラスのように騒ぎ立てる貴族たち。最後の奴は短絡的過ぎて、俺が消えてほしいというのがよく伝わってくる。
まさか貴族たちよりメアの発言に頭を痛める事になるとは・・・・・・
するとルークさんの雰囲気が変わる。
「静まれ。その『高貴な者』が場を掻き乱すような発言をしてどうする」
今までに聞いた事のないような重い声を発するルークさん。
その姿にはいつもの穏やかな雰囲気はなく、王らしい威厳を兼ね備えていた。
メアもその姿を見るのは初めてらしく、目を見開いて驚いている。
「一人の人間を糾弾するためにこうやってお主らを呼んだのではない。わしの考えは変わらんのでな」
「ワンド王、本当に考え直す気はないのですか!?」
背筋のピンッと伸ばした初老の男が、そう発言した後に俺を睨む。
「彼の事は少し伺っております。貴族でありながらSSランクの冒険者をしているミランダ・ワークラフト殿を倒した者だと・・・・・・」
「しかも彼も最近、冒険者でSSランクになったと言うではないか」
「ああ、しかしありえない事だ。なんせ、その者が冒険者になったのはほんの一ヶ月前だと聞いているぞ。にも関わらずSSランク冒険者?怪しさしかないではないか!」
別の初老金髪の男が俺を指差して叫ぶ。
「たしかに・・・・・・たとえそやつがSSランクの強さを持とうとも、DやCからこの短期間でいきなりSSに到達するのは不可能に近いのではないか?」
「この者の実力はわしが保証する」
貴族たちの疑問にルークさんは堂々と答えるが、貴族たちは『いやだが・・・・・・』『しかし・・・・・・』などと引き下がろうとしない。
そんな中、一人の男が手を挙げる。
「発言、よろしいでしょうか?」
それは銀色の綺麗な長髪で、ダンディに髭を生やした男だった。
あのキリッとした表情かどことなく見覚えがあるのだが、まさかな・・・・・・
「構わない。何か言いたい事があるなら言ってくれ、ワークラフト侯爵」
ワークラフトという名に『ああ、やっぱり』と思ってしまう。
あれはミランダの、そしてアルニアの父親だろう。
しかし侯爵というと・・・・・・貴族の低い階級から数えて『男爵』『子爵』『伯爵』『侯爵』『公爵』となっていたな。
という事は上から二番目で、そこそこ地位があるのか。
って、そんな事を考えてる場合じゃなかったな。ミランダの父親って事は、あいつを叩きのめした俺を憎んでいたりするんじゃないのか、そのワークラフト侯爵ってやつは?
その父親の方に視線を向けると、向こうも俺が気になっていたらしく、一瞬だけ視線が合った。
「彼がSSランクである証拠を提示すればいいのではないかと進言します」
「証拠・・・・・・というと、ギルドカードか?」
「はい。しかしただギルドカードを見せるだけではなく、どれだけの魔物を倒したかという詳細を知りたく存じます・・・・・・」
「っ!」
侯爵の提案に、思わず俺は息を飲んでしまった。
ギルドカードの詳細提示・・・・・・上級や超級をどれだけ倒したかがわかれば、たしかに理解させるには確実かもしれない。
しかし俺がSSランクになった原因は、恐らく神話級に値するチユキを複数回殺し続けた事だ。
であれば、もし詳細が乗った紙があるとすれば、神話級を複数回倒した事が記されていて、この場にいる全員に知れ渡ってしまう。
事実の改竄と言われるか、はたまた化け物と呼ばれて、結局メアとの話が有耶無耶になるか・・・・・・やっぱり、どの道面倒な事にしかならないみたいだな。
・・・・・・いっその事、メアを攫うか?
そんな物騒な考えをした時、ルークさんが話の流れを変えてくれる。
「それはいい案じゃ。しかしギルドカードの内容はあくまで機密情報。外部に漏らしていいものではない」
ルークさんがそういうと、初老の男が立ち上がる。
「しかしそれでは皆納得がーー」
「だからこそ、この場で『口封じの契約』をする根性のあるものだけを選出しようと思う」
「「っ!?」」
「く、『口封じの契約』、ですと!?」
ルークさんの発言にその場にいる全員が驚き、初老の男もまた狼狽える。
口封じの契約?普通に聞くと物騒な名前が出てきたな・・・・・・
「わかっておいでですか、王!口封じの契約をした者は、契約の内容に記されたものに関してが今後一切喋れず、下手に解約しようとすればその者の命が失われてしまうのですぞ!?」
はい、ご説明ありがとう。
たしかにデメリットは大きいが、それだけ『この情報が重要である』という意味を持たせている。
もちろんハッタリと考える奴も出てくるかもしれないが、その情報を目にしてしまえばこっちのものだ。
「この意味を理解し、踏み込む勇気のある者だけ見せよう。しかし、これを見ればこの者がメアとの婚姻を認めざるをえなくなるであろう」
まるで予言のように言うルークさん。
メアも横で頭に手を回し、『たしかになー』と呟いていた。
もはや脅迫じみているが、もしこれで全員が大人しくしてくれるのであれば、それもいいかもしれない。
「ちなみに、ワークラフト侯爵はすでに契約を済ませている」
ルークさんがそう言い、貴族たちにざわめきが出てくる。ずいぶん早いな?そういうのを先にバラすとグルだと思われるんじゃ・・・・・・?
と、誰かが疑問を口にする前に侯爵が口を開く。
「彼は私の娘、ミランダを負かした男。婚姻やランクの飛び級以前に、彼の事を知りたかったから起こした行動だ。そして一足先に拝見させていただいた私からアドバイスが一つ・・・・・・」
男は人差し指を口に当て、シーッというジェスチャーをする。
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