最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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3巻

3-2

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 俺が立ち上がる間もなくノワールがリビングから出ていき、しばらくしてリナとエリーゼを連れて戻ってきた。

「おはっ……おはよう、ございます……!」
「おはようございます、皆様。今日は絶好の遠足日和でございますね」

 前髪に隠れて見えにくい顔を真っ赤にしながら、どもりつつ挨拶するリナと、相変わらずの無表情で微妙な冗談じょうだんを飛ばしてくるエリーゼ。
 リナは水色のシャツにピンクの短いスカート姿、エリーゼはシンプルな白いシャツに黒の長いスカートと、可愛い系とシック系の、なんとも対照的な二人だった。
 そんな二人に、メアたちも各々に挨拶を返す。

「遠足日和ってほど晴れてないし、そもそも魔族大陸行きは遠足じゃねえよ……ところで二人共、飯は食ったか?」

 俺の質問にエリーゼは首を縦に振り、逆にリナは横に振る。

「宿でとりましたので、問題ありません」
「急いでたから、忘れてました……あっ、これ、お母さん、が渡しなさいって……」
「リナの母親から? っていうか、いきなり学内の屋敷に引っ越したいだなんて、なんて言って説得したんだ?」

 リナから受け取った袋の中身を覗きながらそう聞く。

「特別に無料で、住める家が学園に、あるって、言いました。あっ、それ……コルクって名前の、お菓子かし、です。よかったら、皆さんで食べて、ください」

 そう言って微笑むリナ。
 マジか、いいお母さんだな。今度リナが帰省するタイミングでちゃんとしたお土産みやげを持たせてやるか。

「では、私からはこちらを。ちょうど、甘いお菓子に合うお茶の葉を持ってきました。ご一緒にお召し上がりください」

 エリーゼはそう言って、机の上に袋を置いた。

「悪いな……あ、とりあえず二人共席に着いてくれ」

 俺はそう言って二人を座らせ、リナには食事を、エリーゼにはお茶を出すよう、ノワールとココアに指示を出す。
 そうして二人が戻ってきたところで、皆を見渡しながら話を切り出した。

「――さて、魔族大陸に行くって話までは昨日したと思うが、ここで話を整理しておこう」

 俺の言葉に、皆は食事の手を一旦いったん止め、視線をこっちに向ける。

「まず、俺たちは今日これから、魔族の大陸へ向かう。目的は二つだ。一つは現魔王グランデウスを倒すこと。もう一つは、グランデウスに捕らえられている元魔王ペルディアの奪還だ」

 そこで一度区切り、言葉を続ける。

「グランデウスは、なぜか俺のことを勇者と勘違いしている。そのまま放っておいた場合、攻め込んでくる可能性があるから、先に殴りに行こうって話だ。で、ペルディアの件についてはフィーナからのお願いってのと、シトからも頼まれたからだな」

 俺はそこまで言うと軽くため息を吐いて、コップに入った水を口にする。
 するとカイトが首を傾げる。

「あれ、待ってください……魔王を倒しに行くってだけじゃありませんでしたっけ?」
「ああ、そういえばお前らにはそんな話しかしてなかったか。ちょっと前にクーデターで魔王が代わったらしくてな、元魔王が捕らえられてるんだと。で、その元魔王ってのがフィーナの大事な人で、ついでにシトのお友達だからってことで助けるつもりなんだよ」

 そこまで説明してやると、カイトもリナも黙ってしまった。あまりの情報量に頭がついていかないんだろう。
 そんな二人の様子に苦笑しながら、本題に戻す。

「魔族の大陸までの足になる船は、学園長が用意してくれるらしい。そんで、向こうに着くまでは船上生活なわけだけど、時間が勿体無もったいないからその間に魔空間を使ってカイトたちに修業をつける。向こうに到着してからも魔空間は利用するつもりだ」

 俺の言葉で我に返ったカイトがたずねてくる。

「っていうことは、俺たちはずっと魔空間にいて、魔族大陸に直接降り立つことはないんですか?」
「いや、そんなことはないぞ?」
「え?」

 口をポカンと開けるカイト。

「冒険者志望だから強くなりたいって言ってたよな。冒険者になったら魔物と戦うことになるってのは理解してるよな?」
「そりゃあまぁ、はい……って、もしかして?」
「ああ、多分お前が考えてる通りだ……魔物と実戦で戦わせる」
「「えぇっ!?」」

 カイトとリナ、二人の驚く声が屋敷に響く。
 色々と質問攻めにされるかなと思っていたが、二人はあまりの衝撃しょうげきに固まってしまっていた。
 そんなカイトたちよりも先に、メアが口を開く。

「なあなあアヤト、その魔空間ってのはよく分かんないけど、俺も向こうの大陸で魔物と戦っていいんだよな?」

 カイトたちとは逆に、虫捕むしとり少年のようにワクワクした表情を浮かべてそう聞いてくるメア。

「うーん、正直あまり戦わせたくはないんだよな。俺がお前を鍛えてきたのはあくまで自衛用であって、暴れさせることが目的じゃなかったし……」

 そもそもメアが俺たちと行動を共にしているのは、引きこもっていた彼女を復学させ、護衛するように王様から依頼されていたからだ。
 万が一俺の目が届かない時に最低限の自衛のすべは必要になるだろう、と考えて鍛えてはいるが、そもそも姫様に戦い方を教えているという時点でおかしな話なのである。
 それを、積極的に魔物との戦いの最前線に出してしまうような事態になれば、ますます話がおかしくなる。もはや護衛でも何でもなくなってしまうんじゃないか。
 しかし、守られる立場であるメアが自ら戦いたいと言っているのはどうするべきか……

「まぁ、そうだな。怪我をしないようにフィーナたちと一緒に戦えば……大丈夫か?」

 結論を曖昧あいまいにしながら、フィーナに視線を向ける。
 いつもなら『なんであたしを見るのよ?』とか『こっち見ないでよ!』みたいな反応をしてくれるので、そのままこの話題を終わらせられないかなと思っていたのだが……

「……メアがお姫様だとか関係なく、やりたいって言うならやらせてあげれば? それでもう戦いたくないって言ったらそれまでにすればいいし……何よ?」

 フィーナの助言に、思わず目を見開いて驚いてしまう。いや、内容的には至極しごく真っ当なことを言っているんだが……
 周りを見渡せば、俺だけでなく、ミーナやココアでさえも同じような反応だった。

「いや、まさかまともに答えてくれるとは思わなかったから……」
「っ! い、今のは別に優しさとかそういうんじゃなくて……」

 俺の言葉に、失言だったと言わんばかりに慌てるフィーナ。

「分かってる分かってる。お前もメアに怪我してほしくないんだろ?」

 そうからかってやると、フィーナは一瞬で顔を真っ赤にして、持っていたフォークを投げつけてくる。

「危ねぇな」

 俺は飛んできたフォークをキャッチすると、それを使って肉を食べた。

「あぁあああっ!? 何、あたしが使ってたフォークを当たり前のように使ってるのよ、変態!」

 その手の嗜好しこうの人間がいたら『ありがとうございます!』とでも喜ばれそうなセリフで怒鳴どなってくるフィーナ。
 そんな彼女を見ていると、さらにからかいたくなってしまう。

「え、これを使えってことじゃなかったのか? 優しいフィーナ様」
「死ねっ!」

 激怒げきどしながら代わりのフォークを取るために席を立つフィーナ。
 俺たちは軽く笑いつつ、食事を続けるのだった。



 第3話 港街へ


 食事を終えて屋敷を出た俺たちは、学園の入り口へと向かった。
 今一緒にいるメンバーは、俺、メア、ミーナ、カイト、リナ、フィーナ、ヘレナ、ノワールの計八名である。とはいえこれが魔族大陸行きの全員というわけではない。
 精霊王たちは俺の体の中で待機中だし、ウルとルウ、そしてベルとクロについては魔空間に移ってもらった。
 正直なところ、そのまま屋敷にいてもらってもいいのだが、たまには広々とした魔空間で遊ばせようと思っているのだ。
 それに、もしかすると魔族大陸で出番があるかもしれないしな。
 ちなみにエリーゼだけは、ずっと屋敷にいるそうだ。どれだけかかるか分からないが、かといってずっと屋敷を放置して汚くするわけにはいかないんだとか。たしか初めて会った時に『本業はメイド』とか言ってたから、気になってしまうのだろう。
 早朝の学園前は、夏休み初日ということもあってか生徒の姿は全くなく、何台かの馬車と学園長ルビアの姿があるだけだった。

「おはよう、皆。約束の時間ピッタリだね……初日に出発するって話は聞いてたけど、こんな早朝に出発するならもっと早く言ってほしかったよ。準備は整えてあったからいいんだけどさ」

 学園長は自分の腕時計を見ながら、苦笑気味にそう言う。
 学園で会う時と同じタキシード姿のままだ。どうやら、学生が夏休みになっても教員の仕事はまだあるらしい。

「悪いな」

 と俺が答えると、学園長は肩をすくめて言葉を続ける。

「まあ君の無茶苦茶っぷりは今に始まったことじゃないからいいさ。ところで……そこにいるのが、例の魔族の彼女、なのかな?」

 俺の隣に立っている、全身をローブで隠したフィーナを見ながら、学園長が聞いてくる。
 フィーナが羽織はおっているローブは、ミーナが初めて俺と会った時に着ていたものだ。
 相手の認識を阻害して正体を隠す『ハーミットローブ』というアイテムらしい。
 多少手足が出てしまっていても、効果はちゃんとあるそうだ。俺からは青い肌が丸見えで、本当に効果があるのか疑わしいのだが……これで正常な状態なんだそうだ。
 どうやら、着ている者の素顔を知る者、着るところを見た者、本人が姿を見せてもいいと思っている者、この三者相手には効果が無くなるらしい。
 俺たちはその全てに該当がいとうしているためにフィーナだと認識できているが、学園長は彼女の素顔をしっかりと見たことがなかったため、ちゃんと効果が発動しているようだな。
 ちなみにこのローブの認識阻害効果は、『見破り』というスキルを持っている相手には通用しないそうだ。
 俺が学園長の問いに頷くと、学園長はまじまじとフィーナを見つめる。

「……うん、そのハーミットローブ、性能はしっかり保たれてるみたいだけど、かなり古いね? 新しいのを仕入れてあるから、こっちのを使ってくれ」

 学園長はそう言って、近くに停めてある馬車から大きめの箱を持ち出す。
 ふたを開ければ、新品のハーミットローブが十数着入っていた。これなら俺たち全員分と、多少の予備分にはなるか。

「準備がいいな?」
「当たり前だろ? これから君たちが行くのは魔族の大陸なんだ。目のかたきにされてる人間や亜人が堂々と侵入しているのを発見されたら、無駄な争いが発生するのは目に見えているからね」

 俺の言葉にドヤ顔で答える学園長の声を「ふーん」と聞き流しながら、新品のローブを皆に配っていく。
 最後にミーナにローブを差し出したのだが、ミーナは首を横に振って受け取りを拒否した。

「どうした?」
「私は自分のローブを使う。これは思い出の品だから」

 そう言ってミーナは、フィーナから返してもらったローブを羽織った。
『思い出の品』ってことは、ミーナのそれは買ったやつじゃなくて、家族の誰かのものを持ってきたんだろうか?
 少し興味がいたが、深く聞くのも気が引けたので「そうか」とだけ返した。
 そんな俺たちを見ていた学園長だったが、俺たちが落ち着いたのを確認したところで、一度大きく手を鳴らす。
 そして「さて、ところで」と前置きしてから、わざとらしい笑みを浮かべた。

「アヤト君、聞いていいかな? この前、魔族大陸行きの話をした時にはいなかった中等部の子たちが、なぜ、君らに混じってそこにいるんだい?」

 そう言ってカイトたちを手の平で示す学園長。その物腰の柔らかさが逆に怖い。
 うーむ、どう説明すれば学園長を納得させられるか……
 と、考えていたのだが、俺が何かを言うより先に、カイトとリナが前に出て頭を下げる。

「おはようございます、学園長。俺たちも魔族大陸に行かせてください!」

 カイトの言葉にリナも頷く。
 おお、しっかりと自分の意思を主張するとは……なんとなく感動してしまう。
 しかし学園長が、それで許可を出すはずもなかった。

「……何をバカなこと言ってるんだい? 遊びじゃないんだぞ、これは!」

 早朝の学園に響き渡るほどの、学園長の怒号。その声量と険しい表情に、カイトたちは小さく悲鳴を上げてしまっていた。
 そして学園長の怒りの矛先ほこさきは俺へと向く。

「魔族大陸は危険な土地だ、それは分かっているだろう? ああ、君はいいだろうね、僕よりも遥かに実力のある人間だから。しかし彼らは違うぞ、アヤト君……彼らはただの学生だ! なのになんで彼らを……!」
「もう、『ただの』学生じゃないからだ」

 俺がそう言い放つと、激しくいきどおっていた学園長は理解不能とでも言いたげな表情を浮かべた。

「それは、どういう……?」
「こいつらは正式に俺の弟子になった。だから修業の一環として連れていく」
「で、弟子!?」

 学園長は一言そう叫び、口をパクパクとしながら唖然とする。
 ん? 俺、何かおかしなことを言ったか?

「それは……『正式に』ってことは、それだけ真剣に彼らを育てるつもりがある、ということかい……?」
「そうだ。できれば俺と同じレベルになってほしいと考えてる」

 俺の言葉にうなりながら頭を抱える学園長。

「色々言いたいことは分かったけれど……」

 中々納得してくれない学園長の肩にポンッと手を置く。

「カイトたちは冒険者になるのが目標だし、どうせいつかは魔物と戦うことになるんだ。だったら一足先に経験させてやるのも先生の役目ってやつじゃないのか?」

 とりあえずそれっぽいことを適当に言ってみる。
 その言葉に学園長が揺らいでいるのが、よく分かった。

「先生として……そう、かな?」
「そうだ。間違った知識を仕入れて無駄死にすることになる前に、俺がしっかり鍛えてやるから」

 要訳すれば、『お前の学園は間違った育て方をしてる』と言っているようなもんだけど、怒られるかな?

「……分かったよ、カイト君とリナさんの同行を認める。でもその代わり、全員必ず生きて帰ること。いいね?」

 ……よし、許可は貰えた。しかも教育方針を否定されたことに気付いてないみたいだ、ちょろいな。
 学園長の言葉に、俺たちは力強く頷いた。

「それじゃあ皆、馬車に乗ってくれ。早いところ決着をつけてもらった方が、僕の胃が痛まないで済む……」

 そう言って腹の上の方をさすりながら馬車に乗り込む学園長。
 責任者の立場も大変なんだなー、なんて他人事ひとごとのように思いつつ、俺たちも続いて馬車に乗り込んでいく。
 行先は、ここから馬車で二時間くらい離れた港街だ。そこに学園長が船を用意してくれているらしい。
 全員が乗り込んだか確認するために外を見たのだが、ただ一人、ノワールだけが乗らずに外で待機していた。
 何をしているのかと聞こうとすると、その前にノワールが口を開いた。

「私は一足先にあちらで待っています。それでは皆様、二時間ほどの馬車の旅を、どうぞごゆっくり……」

 ノワールはそう言って足元に裂け目を作り、落ちていった。空間魔術か、アレ。

「「「「「「「「……」」」」」」」」

 今この場にいる者が考えていることは、大体一致してるだろう。
 ――ズルいなぁ、と。
 俺も、一度でも行ったことがある場所なら同じように一瞬で向かえるのだが、今回の目的地である港街には、残念ながらまだ行ったことがない。

「……ま、俺たちは俺たちで、馬車の旅を楽しむか」

 そう言った直後、あることに気付く。

「誰が馬車の運転をするんだ?」

 そう、ここにいる誰も、御者ぎょしゃの経験がないのだ。
 この世界に来たばかりの俺、お姫様、中等部生二人、ちょっと前まで籠手こてだった竜。ミーナとフィーナならばと思って視線を向けるが、首を横に振られてしまった。
 どうするんだと思いながら学園長の方を見ると、飄々ひょうひょうとした態度で答えてくれた。

「ああ、それならもうすぐが来るはずだよ」

 彼女? と俺たちが首を傾げたその時、遠くからゆったりとした声が聞こえてきた。

「遅れてすみません~」

 その声のする方を馬車の中から覗くと、なぜか俺たちのクラス担任であるカルナーデ先生が走ってきているのが見えた。

「……なんでカルナーデ先生?」
「彼女も君たちの事情を知っている一人なんだ。といっても、僕が教えたのだけれど」

 秘密をバラした、という言葉に、俺はまゆをひそめて学園長を見る。
 学園長は俺の視線を気にした様子もなく、窓から身を乗り出して「こっちこっち」と叫んでカルナーデ先生を手招きしていた。
 少し息を切らしながら馬車の前に来たカルナーデ先生は、微笑みを崩さないまま頭を下げて挨拶してくる。

「おはようございます~。これからアヤト君たちが魔族の大陸に行くということで、港までの馬車を私が運転することになりました~」

 相変わらず緊張感のない口調で話すカルナーデ先生。
 再び頭を上げた時にポヨンと弾んだ胸にカイトの目がチラチラといってしまい、その頭をリナが弱々しくチョップしていた。
 そんな二人を横目に、俺は学園長に問いかける。

「なんでカルナーデ先生に……っていうか、他の奴にも話したのか?」
「いや、カルナーデは僕が一番信頼している教職員だ。君たちの担任でもあるんだし、事情を話しておいた方がいいかと思ってね」
「信頼……信頼ねぇ?」

 カルナーデ先生を見ると、頭にハテナマークを浮かべて首を傾げていた。

「……まあ、この先生なら俺たちの情報を悪用することはないか」

 普段ののほほんとした言動を見る限り、他人を利用したりおとしめたりするような人ではなさそうだしな。学園長と先生を信用することにしよう。

「それにしても、カルナーデ先生が御者をできるなんて……ちょっと意外でしたよ」

 俺がそう言うと、カルナーデ先生は両手の指を胸の前で絡ませながら、嬉しそうに「うふふ」と笑った。

「私、白馬の王子様に迎えに来てもらうのが夢なんです~♪」
「……?」

 えっと、どういうことだ?
 困惑していると、カルナーデ先生が答えてくれた。

「馬に乗れない子を好きになっても、教えられるように馬の勉強をしたんです。それで、御者もできるようになったんです~」
「白馬の王子様ってのは、女の子らしい夢であるとは思うんだけどね……」

 学園長はそうフォローするけれど、なにがなんでも夢をかなえようとするその姿勢、正直軽いホラーだと思う。
 俺はそう考えながら、ほおを引きつらせるのだった。


 ひとしきりカルナーデ先生に恐怖したところで、馬車は出発した。
 港街には予定通り二時間ほどで到着し、ノワールと合流した俺たちは、早速港へと足を運ぶ。
 港街というだけあって漁業も盛んなのだろう、港にはそれなりの数の船が並べられている。
 そんな中、他の漁船と比べて一際大きな船が隅の方に停泊していた。

「あの隅のやつが僕の船だよ。どうだい、立派だろ? 冒険者をしていた頃にプレゼントされたものなんだ」

 そう言って自慢げに胸を張る学園長。

「船をプレゼントって、どんな金持ちだよ……っていうか学園長、実は冒険者の頃はモテてたのか?」
「ハッハッハ……あまりふざけたことを言ってると、君たちが乗る予定の船を魔術で壊すよ?」

 学園長が額に青筋を浮かべて笑顔で言う。
 おお、怖い怖い。いや、あんまバカにしたつもりはなかったんだけど。

「違うのか? プレゼントっていうからてっきり……まぁいいや、さっさと行こう」

 俺はそう言って皆と一緒に船に乗り込み、船内を見て回る。
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