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武人祭
決起する者たち
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「っ……!?」
「ほう、声は上げず、か。この二閃で退場にさせられると思ったのだが……根性は相当鍛えられたらしいな」
そう言って見下ろすジスタを、腹部を押さえてうずくまるカイトは普段では見せないような睨み方で見返す。
「お前のそれ……何なんだ……!?」
憎々しげに呟くカイトの視線の先には、瞳を黄金色に輝かせたジスタが立っている。
その立ち振る舞いからは覇気のような神々しささえも感じさせ、観客や司会者さえも言葉を失って見惚れてしまっていた。
「我が王家に代々伝わる継承スキル『覇の極意』。人が持ち得る力を超越するスキルだ」
「……ハッ、それってただの身体能力向上させるのを大げさに言ってるだけじゃないのか?」
カイトが苦しそうにしながらも挑発的な発言をして笑みを浮かべる。
「そんな状態になっても強気とはな。しかしそれは違うぞ、カイト。たった今し方言っただろう、『継承スキル』だと。これは今まで習得してきた王家の者たちの『強さ』を受け継ぐスキルであり、それは魔法の適性や魔力も影響を受けるということだ!」
そう言い放ったジスタの周りに火、水、風、土、雷の属性の魔法が展開された。
五属性をジスタが使用したという事実に、静まっていた会場が騒然とし始める。
【……ハッ!し、失礼しました、ジスタチオ選手が放つ神々しいオーラに実況を忘れてしまっていました!しかしまだまだ驚かされます!なんとジスタチオ選手、光と闇以外の全ての属性を使用している!剣の才能だけでなく、魔術師の才能も天才的なようだ!】
と、熱狂的に実況している間にもサイがダウンしていまい、レチロラを相手にしていたミーナも魔力が切れる寸前で息が切れかかってしまっていた。
【サイ選手も倒れ、ついに三対五!圧倒的実力差を見せ付けられ、劣勢に立たされたコノハ学園チームはここから形勢逆転を狙うことができるのでしょうかっ!?】
「カイ、カイト君っ……きゃっ!?」
カイトの身を案じたリナに魔術が放たれる。ギリギリ当たりはしなかったものの、満身創痍のダメージを負ってしまう。
「……劣勢?違ぇな」
「む……?」
するとカイトが不敵な笑みを浮かべて立ち上がり、黒い刀をジスタに向ける。その彼の頭に機械的な音声が直接流れてくる。
――【一定条件を満たしました。「コピープログラム」の深層意識30%を開放されます】
カイトはその声を気にした様子も無く、ジスタを指差して言葉を続ける。
「ちょっと強くなっただけの程度でテメェが俺に勝ったつもりになってんじゃねえよな?だったら片腹痛ぇよ」
その雰囲気は普段のカイトとは違い、いつもの彼を見ていたリナとミーナも唖然としていた。
「もう……我慢できんっ……!」
するとレチロラが怒りの形相で走り出し、呆然としていたミーナの横を通り過ぎてカイトに斬りかかっていった。
「しまっ……!」
「王族に対する不敬の数々!無礼講の場とはいえ、貴様はやり過ぎている!この場で……死ねっ!!」
命に関わらないよう結界が張られていることも忘れ、レチロラは殺気と共に神衣を纏った攻撃を繰り出す。
だがカイトは相変わらず笑みを浮かべたままふらりと揺らぐ。
――【「コピープログラム」の深層意識50%を開放します】
再びカイトの頭に響く機械音声。そしてカイトがおもむろに手を伸ばし、急速に接近してきたレチロラの胸を鎧越しに鷲掴んでしまった。
【おおっと、これは……ア・ク・シ・デ・ン・ト、だぁぁぁぁぁっ!!鎧の上からとは言え、ちゃっかり女性の胸を鷲掴み!なんというラッキースケベでしょう!これではこの試合に勝っても負けても変態のレッテルを張られてしまうのではないか?】
場を和ませる司会者の実況に会場から笑いが起こり、カイトの両親は顔を赤くして俯いてしまっていた。
「なっ……な、な、なな……!?貴様、こんな時に一体――」
「離れろ、レチロラッ!」
胸を触られて体を震わせて困惑するレチロラに対し、ジスタが大きく叫ぶ。
「……え?」
「絶技『絶掌』」
場違いとも言えるジスタの叫びに困惑していたレチロラは即座に反応できず、そんな彼女の胸に手を置いていたカイトは彼の者とは思えない笑みを浮かべ、その熊手にしていた手を回転させながら突き出した。
彼女の視界は凄まじい勢いで横回転し、壁に衝突して背中へ凄まじい衝撃は走る。
「え……あっ……!?」
レチロラは何が起きたかもわからず、カイトから技を食らった胸の甲冑部分が丸く切り取られるように破壊されていた。そして彼女は糸の切れた人形のように力無く地面へぐしゃりと音を立てて崩れ落ちた。
――――
――アヤトサイド――
【あ、アヤト選手、ついに攻撃を食らってしまったぁぁぁぁっ!!先程のアヤト選手と同様に目に追い付けない動きを見せたコノハ選手!その後、攻撃を食らったらしいアヤト選手が膝を突いてしまう!この大番狂わせな戦い、一体どうなってしまうのか目が離せません!!】
痛みでうずくまるアヤトは何もなかったかのように立ち上がる。
「怪我がないってのはいいことなのか悪いことなのか……回復魔術を使っても怪我のないダメージを回復なんてできないし。精神的な負担ってわけでもないみたいだから、痛みと和らぎが同時にやってきて気持ち悪いだけ……」
アヤトは呟くようにそう言いながら首などを捻ってボキボキ音を鳴らし、黒くなったコノハの方を見る。その目はいつもの楽観視してるものではなく据わっていた。
「ああ、よかってです。今ので倒れてもらってたら、また別の場所で殺さなきゃいけなくなってしまうからね」
コノハは中腰になって武器を構える。
数秒睨み合うと、突然二人に向けて大量の魔法と魔術が放たれ砂煙が上がる。
【ここで二人に向け、凄まじい量の魔法魔術が放たれたぁぁぁぁっ!そう、忘れてはいけないのは、これはSSランク冒険者全員が集まった試合であるということ!二人で盛り上がってるところに水が差されてしまう!さぁ、二人は無事――】
司会者が言葉を終わる前にステージの中央でアヤトとコノハが衝突し、上がっていた煙が彼らを中心に晴れる。
【――なようですね。めっさ元気良さそうです!そしてどうやらその二人を打倒するため、他の冒険者たちが一斉に集中砲火を狙い始めた模様!今では学園を経営している、かの有名な天才魔術師のルビア選手も加わり、さらに苛烈な激戦となってまいりました!】
「だって……やらないといけないじゃなか。どちらも短い付き合いだけど、彼らがこの試合で殺し合うなんて」
ステージ上はもはや乱闘状態となり、爆発音が鳴り響く中で観客席も最高潮に盛り上がっていく。
二人を狙った攻撃は止まる気配はなく魔術による拘束技などが発動させられたが、とうとう目で追い付けないほどの速度で移動し始める二人に当たることはなかった。
さらには二人の攻撃がついでと言わんばかりに周りに撒き散らされ、何人かに被弾する。
「くっ……なんだ、まだ終わってなかったのか。アヤト殿がいるからすでに終わってたかと……ああ、そういえばコノハという男もいたな。本当にやり合ってるのか……」
ガーランドが爆発と煙が至るところで上がる光景と、一瞬だけ見えるアヤトたちの姿を見て呟く。
そして近くに落ちていた自分の大剣を手に取り立ち上がる。
「ん、ガーランド殿も行く気か?あの渦中に」
ガーランドの横にミランダが立ち並ぶ。
「もちろんだ。少しでもできるところを見せておかなければ、妻に申し訳が立たないからな」
そう言ってガーランドは観客席の一つに目を向けて笑う。そこにはそのガーランドと目を合わせて微笑むエリーゼの姿があった。
誰にも見られていない彼らの交わす視線はさながら、恋人のそれであった。
「……ところでずいぶん嬉しそうだが、何かいいことでもあったのか?」
ミランダのいやらしく浮かべた笑みを見たガーランドが眉をひそめる。
「いや何、今からあの激戦の中へこれから混ざるのだと思うと少しばかり心躍ってしまってな……!ああ、滾る!今すぐにでも仲間に入れてくれ、アヤト殿ォォォォッ」
「ハハハッ、ミランダ殿は生粋の戦士のようだな。守るだけの騎士より向いてるのではないか?……っと、もう行ってしまったか」
アヤトたちの戦う中央に向けて走って行ってしまったミランダを見送り、その意味を勘違いして笑うガーランド。彼も大剣を片手に走り出す。
「戦士ガーランド、参る!」
ガーランドもまた気合を入れて走り出す。
その速さは先に走って行ったミランダを追い越すほどだった。
「ほう、声は上げず、か。この二閃で退場にさせられると思ったのだが……根性は相当鍛えられたらしいな」
そう言って見下ろすジスタを、腹部を押さえてうずくまるカイトは普段では見せないような睨み方で見返す。
「お前のそれ……何なんだ……!?」
憎々しげに呟くカイトの視線の先には、瞳を黄金色に輝かせたジスタが立っている。
その立ち振る舞いからは覇気のような神々しささえも感じさせ、観客や司会者さえも言葉を失って見惚れてしまっていた。
「我が王家に代々伝わる継承スキル『覇の極意』。人が持ち得る力を超越するスキルだ」
「……ハッ、それってただの身体能力向上させるのを大げさに言ってるだけじゃないのか?」
カイトが苦しそうにしながらも挑発的な発言をして笑みを浮かべる。
「そんな状態になっても強気とはな。しかしそれは違うぞ、カイト。たった今し方言っただろう、『継承スキル』だと。これは今まで習得してきた王家の者たちの『強さ』を受け継ぐスキルであり、それは魔法の適性や魔力も影響を受けるということだ!」
そう言い放ったジスタの周りに火、水、風、土、雷の属性の魔法が展開された。
五属性をジスタが使用したという事実に、静まっていた会場が騒然とし始める。
【……ハッ!し、失礼しました、ジスタチオ選手が放つ神々しいオーラに実況を忘れてしまっていました!しかしまだまだ驚かされます!なんとジスタチオ選手、光と闇以外の全ての属性を使用している!剣の才能だけでなく、魔術師の才能も天才的なようだ!】
と、熱狂的に実況している間にもサイがダウンしていまい、レチロラを相手にしていたミーナも魔力が切れる寸前で息が切れかかってしまっていた。
【サイ選手も倒れ、ついに三対五!圧倒的実力差を見せ付けられ、劣勢に立たされたコノハ学園チームはここから形勢逆転を狙うことができるのでしょうかっ!?】
「カイ、カイト君っ……きゃっ!?」
カイトの身を案じたリナに魔術が放たれる。ギリギリ当たりはしなかったものの、満身創痍のダメージを負ってしまう。
「……劣勢?違ぇな」
「む……?」
するとカイトが不敵な笑みを浮かべて立ち上がり、黒い刀をジスタに向ける。その彼の頭に機械的な音声が直接流れてくる。
――【一定条件を満たしました。「コピープログラム」の深層意識30%を開放されます】
カイトはその声を気にした様子も無く、ジスタを指差して言葉を続ける。
「ちょっと強くなっただけの程度でテメェが俺に勝ったつもりになってんじゃねえよな?だったら片腹痛ぇよ」
その雰囲気は普段のカイトとは違い、いつもの彼を見ていたリナとミーナも唖然としていた。
「もう……我慢できんっ……!」
するとレチロラが怒りの形相で走り出し、呆然としていたミーナの横を通り過ぎてカイトに斬りかかっていった。
「しまっ……!」
「王族に対する不敬の数々!無礼講の場とはいえ、貴様はやり過ぎている!この場で……死ねっ!!」
命に関わらないよう結界が張られていることも忘れ、レチロラは殺気と共に神衣を纏った攻撃を繰り出す。
だがカイトは相変わらず笑みを浮かべたままふらりと揺らぐ。
――【「コピープログラム」の深層意識50%を開放します】
再びカイトの頭に響く機械音声。そしてカイトがおもむろに手を伸ばし、急速に接近してきたレチロラの胸を鎧越しに鷲掴んでしまった。
【おおっと、これは……ア・ク・シ・デ・ン・ト、だぁぁぁぁぁっ!!鎧の上からとは言え、ちゃっかり女性の胸を鷲掴み!なんというラッキースケベでしょう!これではこの試合に勝っても負けても変態のレッテルを張られてしまうのではないか?】
場を和ませる司会者の実況に会場から笑いが起こり、カイトの両親は顔を赤くして俯いてしまっていた。
「なっ……な、な、なな……!?貴様、こんな時に一体――」
「離れろ、レチロラッ!」
胸を触られて体を震わせて困惑するレチロラに対し、ジスタが大きく叫ぶ。
「……え?」
「絶技『絶掌』」
場違いとも言えるジスタの叫びに困惑していたレチロラは即座に反応できず、そんな彼女の胸に手を置いていたカイトは彼の者とは思えない笑みを浮かべ、その熊手にしていた手を回転させながら突き出した。
彼女の視界は凄まじい勢いで横回転し、壁に衝突して背中へ凄まじい衝撃は走る。
「え……あっ……!?」
レチロラは何が起きたかもわからず、カイトから技を食らった胸の甲冑部分が丸く切り取られるように破壊されていた。そして彼女は糸の切れた人形のように力無く地面へぐしゃりと音を立てて崩れ落ちた。
――――
――アヤトサイド――
【あ、アヤト選手、ついに攻撃を食らってしまったぁぁぁぁっ!!先程のアヤト選手と同様に目に追い付けない動きを見せたコノハ選手!その後、攻撃を食らったらしいアヤト選手が膝を突いてしまう!この大番狂わせな戦い、一体どうなってしまうのか目が離せません!!】
痛みでうずくまるアヤトは何もなかったかのように立ち上がる。
「怪我がないってのはいいことなのか悪いことなのか……回復魔術を使っても怪我のないダメージを回復なんてできないし。精神的な負担ってわけでもないみたいだから、痛みと和らぎが同時にやってきて気持ち悪いだけ……」
アヤトは呟くようにそう言いながら首などを捻ってボキボキ音を鳴らし、黒くなったコノハの方を見る。その目はいつもの楽観視してるものではなく据わっていた。
「ああ、よかってです。今ので倒れてもらってたら、また別の場所で殺さなきゃいけなくなってしまうからね」
コノハは中腰になって武器を構える。
数秒睨み合うと、突然二人に向けて大量の魔法と魔術が放たれ砂煙が上がる。
【ここで二人に向け、凄まじい量の魔法魔術が放たれたぁぁぁぁっ!そう、忘れてはいけないのは、これはSSランク冒険者全員が集まった試合であるということ!二人で盛り上がってるところに水が差されてしまう!さぁ、二人は無事――】
司会者が言葉を終わる前にステージの中央でアヤトとコノハが衝突し、上がっていた煙が彼らを中心に晴れる。
【――なようですね。めっさ元気良さそうです!そしてどうやらその二人を打倒するため、他の冒険者たちが一斉に集中砲火を狙い始めた模様!今では学園を経営している、かの有名な天才魔術師のルビア選手も加わり、さらに苛烈な激戦となってまいりました!】
「だって……やらないといけないじゃなか。どちらも短い付き合いだけど、彼らがこの試合で殺し合うなんて」
ステージ上はもはや乱闘状態となり、爆発音が鳴り響く中で観客席も最高潮に盛り上がっていく。
二人を狙った攻撃は止まる気配はなく魔術による拘束技などが発動させられたが、とうとう目で追い付けないほどの速度で移動し始める二人に当たることはなかった。
さらには二人の攻撃がついでと言わんばかりに周りに撒き散らされ、何人かに被弾する。
「くっ……なんだ、まだ終わってなかったのか。アヤト殿がいるからすでに終わってたかと……ああ、そういえばコノハという男もいたな。本当にやり合ってるのか……」
ガーランドが爆発と煙が至るところで上がる光景と、一瞬だけ見えるアヤトたちの姿を見て呟く。
そして近くに落ちていた自分の大剣を手に取り立ち上がる。
「ん、ガーランド殿も行く気か?あの渦中に」
ガーランドの横にミランダが立ち並ぶ。
「もちろんだ。少しでもできるところを見せておかなければ、妻に申し訳が立たないからな」
そう言ってガーランドは観客席の一つに目を向けて笑う。そこにはそのガーランドと目を合わせて微笑むエリーゼの姿があった。
誰にも見られていない彼らの交わす視線はさながら、恋人のそれであった。
「……ところでずいぶん嬉しそうだが、何かいいことでもあったのか?」
ミランダのいやらしく浮かべた笑みを見たガーランドが眉をひそめる。
「いや何、今からあの激戦の中へこれから混ざるのだと思うと少しばかり心躍ってしまってな……!ああ、滾る!今すぐにでも仲間に入れてくれ、アヤト殿ォォォォッ」
「ハハハッ、ミランダ殿は生粋の戦士のようだな。守るだけの騎士より向いてるのではないか?……っと、もう行ってしまったか」
アヤトたちの戦う中央に向けて走って行ってしまったミランダを見送り、その意味を勘違いして笑うガーランド。彼も大剣を片手に走り出す。
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