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余談編
贈り物
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あれほど暑かった夏がいつの間にか終わり、季節は冬となった。
「クリスマス?」
突然、皇宮の中で呼び止められたローズは、小夜から懐かしい言葉を聞く。
「はいです。西洋の文献に師走の25日、西洋の神子様の誕生をお祝いすると書いていたのです。ローズさんならご存知かと思ったです」
「懐かしいわねぇ。まさか、小夜ちゃんからそんな言葉が出てくるなんて。うん、小夜ちゃんの知識で間違っていないわ。クリスマスって言うのはね…」
小夜はローズから、クリスマスが西洋における宗教の神子の誕生を祝う日、そして、純粋な子供たちに贈り物が届くということを教えられた。
「贈り物なのですか?」
「普段からちゃんといい子にしてたら、サンタっていう白い髭をしたおじさんが、枕元に贈り物を置いてくれるわ。小夜ちゃんにも届くかもね」
「そうなのですか。で、でも、私は子どもじゃないのです。だから、別に…」
別に要らないという顔をするが、ローズには小夜が内心期待していることを見透かしていた。
「ふふ…"いい事思いついちゃった"」
小夜と分かれたローズは彼女の姿が見えなくなると、ある場所へと向けて歩いていった。
皇宮 餐ノ部屋
いい匂いにつられてやって来た餐ノ部屋と呼ばれる皇宮の食堂では、女中や侍女たちが慌ただしく食事の準備に勤しんでいた。その中には、急遽人手不足を補うために手伝いに来た、ユーリ、ミィアン、千代の姿もあった。
「あら、小夜ちゃん」
「失礼しますです。何を作っておられるのですか?」
「今日は皇宮にて皇様主催の晩餐会が行われますから、その席にお出しする御馳走です」
「うちはお酒が呑めたらええんやけどなぁ」
「ミィアン様、くすねたお客様用のお酒の件、懲りていない様ですね?」
ミィアンにそう言う千代の顔は笑っていない。どうやら、こっそり賓客用のお酒を飲んでしまったのが発覚し、罰として手伝わされている様であった。
千代の顔を見て、ミィアンは罰の悪そうな表情になる。
「うぅ、そんな怒らんといてぇな、千代はん」
「怒ってません。寧ろ、懲りていない様で呆れています」
「ふえぇ、いつもの千代はんに戻ってぇ」
「私も、お手伝いしても良いですか?」
小夜の言葉を聞いたユーリは、にっこりと笑顔を見せる。
「えぇ、小夜ちゃんが良ければ是非とも」
「はいです!」
晩餐会に向けた準備に小夜も加わり、予定よりも半刻ほど早く準備が完了した。
料理を皿に盛り付け、座卓に料理を並べていく。
「ふぅ、やっと終わったぇ…」
「皆様、お疲れ様でございました。後は、無事に晩餐会が終わる事を祈りましょう」
「小夜ちゃん、わざわざお手伝いありがとう」
ユーリはそう言って、小夜の頭を優しく撫でる。
「い、いえっ、その…あっ」
小夜は当たり前のことをしただけ、と言おうとしたが、あまりにも心地よかったため、なかなか言い出せなかった。
皇宮 渡り廊下
晩餐会の準備を終えた小夜は、いつもの様に巻物の束を盆に載せ、政務室へと向かった。
「失礼しますです。あれ?」
「おぉ、小夜。追加分はそこに置いておいてくれ」
政務室では瑞穂のほか、御剣に仁、右京の姿があった。皆、山積みになった巻物の束を、一つ一つ分配して処理していた。
「ありがとう小夜」
「いえいえ。では、お茶をお淹れするです」
小夜は巻物を山に載せると、部屋の隅にある棚に仕舞っていた茶箱から茶葉を取り出し、火鉢で温めていたお湯を急須に注いでお茶を作った。
「姉様、はいです」
「うん、ありがとう」
瑞穂たちにお茶を淹れた小夜は、右京の隣に座り、手付かずの巻物を手に取る。
「私も手伝うです」
「本当に?じゃあ、遠慮なくお願いするわ。小夜が手伝ってくれるから、晩餐会までに全部終わりそうね」
「そうだな。助かる」
「なんたって、俺の自慢の妹だからな。がっはっは」
「確かに、お兄様より誠実で、何より自発的ですからね」
「い、言ってくれるねぇ、侍大将」
「間違った事は言っておりませんが」
小夜も加わり、政務は晩餐会までに終了した。
晩餐会の後、小夜は寒さに耐えながら、自室へと戻り布団を敷く。
すぐに寝るわけでもなく、暗くなった部屋を灯籠の灯りで照らし、棚から取り出した古代学の文献を広げる。
「くりすます、ですか…」
小夜は遠い西洋の異国の文化に憧れを持つ。その根端にあるのは、彼女の尽きることのない探究心だろう。
「あっ…」
小夜はふと、文献で読んだ一文を思い出し、枕元に自分の足袋を置く。
"きっと作り話です。でも、雰囲気は味わいたいので、とりあえず置いておくです"
暫くして、まぶたが限界になった小夜は、灯籠の明かりを消して静かに目を閉じた。
「何なのです、これは…」
翌朝、目を覚ました小夜は、目の前に置かれていた箱に目を疑う。身体を起こし布団から這い出ると、綺麗に袋に包まれた箱を指先で突っつく。
持ち上げようとすると、少し重かった。
「むぅ…」
その後も、何度も何度も箱を突き、箱と睨み合いを続けること半刻ほど。ついに決心がついた小夜は、袋を破り、箱の蓋を開けて中を覗く。
「こ、これは…」
目を輝かせながら箱から取り出したのは、小夜が以前から欲しいと思っていた懐中筆と墨硯、良質な紙の束、髪飾り、防寒着、帽子、文献、動物の置き物、飴細工、短刀と様々な物が入っていた。
「ひえっ、一体何が何なのです!?これは…」
小夜は箱の底からある紙切れを拾い上げた。
『めりぃくりすます。今夜はほぉりぃないとじゃ、良い子していた君に贈り物を贈ろうぞ。大切に使っておくれよ』
「めりぃ…ほぉりぃ?」
小夜は暫くの間考えこむ。そして、昨日のローズとの会話を思い出す。
「ま、まさか、さんたさん!?」
余談ではあるが小夜の他に、琥珀の枕元にも、同じ大きさの箱が置かれていた。
その後、自室で贈り物の筆を嬉しそうに使う小夜を、大人たちがこれまた嬉しそうに眺めていたというお話。
『Merry Christmas!and Happy Holidays!皆さんのもとには、サンタさんは来ましたか?2020年も良いお年を!作者より』
「クリスマス?」
突然、皇宮の中で呼び止められたローズは、小夜から懐かしい言葉を聞く。
「はいです。西洋の文献に師走の25日、西洋の神子様の誕生をお祝いすると書いていたのです。ローズさんならご存知かと思ったです」
「懐かしいわねぇ。まさか、小夜ちゃんからそんな言葉が出てくるなんて。うん、小夜ちゃんの知識で間違っていないわ。クリスマスって言うのはね…」
小夜はローズから、クリスマスが西洋における宗教の神子の誕生を祝う日、そして、純粋な子供たちに贈り物が届くということを教えられた。
「贈り物なのですか?」
「普段からちゃんといい子にしてたら、サンタっていう白い髭をしたおじさんが、枕元に贈り物を置いてくれるわ。小夜ちゃんにも届くかもね」
「そうなのですか。で、でも、私は子どもじゃないのです。だから、別に…」
別に要らないという顔をするが、ローズには小夜が内心期待していることを見透かしていた。
「ふふ…"いい事思いついちゃった"」
小夜と分かれたローズは彼女の姿が見えなくなると、ある場所へと向けて歩いていった。
皇宮 餐ノ部屋
いい匂いにつられてやって来た餐ノ部屋と呼ばれる皇宮の食堂では、女中や侍女たちが慌ただしく食事の準備に勤しんでいた。その中には、急遽人手不足を補うために手伝いに来た、ユーリ、ミィアン、千代の姿もあった。
「あら、小夜ちゃん」
「失礼しますです。何を作っておられるのですか?」
「今日は皇宮にて皇様主催の晩餐会が行われますから、その席にお出しする御馳走です」
「うちはお酒が呑めたらええんやけどなぁ」
「ミィアン様、くすねたお客様用のお酒の件、懲りていない様ですね?」
ミィアンにそう言う千代の顔は笑っていない。どうやら、こっそり賓客用のお酒を飲んでしまったのが発覚し、罰として手伝わされている様であった。
千代の顔を見て、ミィアンは罰の悪そうな表情になる。
「うぅ、そんな怒らんといてぇな、千代はん」
「怒ってません。寧ろ、懲りていない様で呆れています」
「ふえぇ、いつもの千代はんに戻ってぇ」
「私も、お手伝いしても良いですか?」
小夜の言葉を聞いたユーリは、にっこりと笑顔を見せる。
「えぇ、小夜ちゃんが良ければ是非とも」
「はいです!」
晩餐会に向けた準備に小夜も加わり、予定よりも半刻ほど早く準備が完了した。
料理を皿に盛り付け、座卓に料理を並べていく。
「ふぅ、やっと終わったぇ…」
「皆様、お疲れ様でございました。後は、無事に晩餐会が終わる事を祈りましょう」
「小夜ちゃん、わざわざお手伝いありがとう」
ユーリはそう言って、小夜の頭を優しく撫でる。
「い、いえっ、その…あっ」
小夜は当たり前のことをしただけ、と言おうとしたが、あまりにも心地よかったため、なかなか言い出せなかった。
皇宮 渡り廊下
晩餐会の準備を終えた小夜は、いつもの様に巻物の束を盆に載せ、政務室へと向かった。
「失礼しますです。あれ?」
「おぉ、小夜。追加分はそこに置いておいてくれ」
政務室では瑞穂のほか、御剣に仁、右京の姿があった。皆、山積みになった巻物の束を、一つ一つ分配して処理していた。
「ありがとう小夜」
「いえいえ。では、お茶をお淹れするです」
小夜は巻物を山に載せると、部屋の隅にある棚に仕舞っていた茶箱から茶葉を取り出し、火鉢で温めていたお湯を急須に注いでお茶を作った。
「姉様、はいです」
「うん、ありがとう」
瑞穂たちにお茶を淹れた小夜は、右京の隣に座り、手付かずの巻物を手に取る。
「私も手伝うです」
「本当に?じゃあ、遠慮なくお願いするわ。小夜が手伝ってくれるから、晩餐会までに全部終わりそうね」
「そうだな。助かる」
「なんたって、俺の自慢の妹だからな。がっはっは」
「確かに、お兄様より誠実で、何より自発的ですからね」
「い、言ってくれるねぇ、侍大将」
「間違った事は言っておりませんが」
小夜も加わり、政務は晩餐会までに終了した。
晩餐会の後、小夜は寒さに耐えながら、自室へと戻り布団を敷く。
すぐに寝るわけでもなく、暗くなった部屋を灯籠の灯りで照らし、棚から取り出した古代学の文献を広げる。
「くりすます、ですか…」
小夜は遠い西洋の異国の文化に憧れを持つ。その根端にあるのは、彼女の尽きることのない探究心だろう。
「あっ…」
小夜はふと、文献で読んだ一文を思い出し、枕元に自分の足袋を置く。
"きっと作り話です。でも、雰囲気は味わいたいので、とりあえず置いておくです"
暫くして、まぶたが限界になった小夜は、灯籠の明かりを消して静かに目を閉じた。
「何なのです、これは…」
翌朝、目を覚ました小夜は、目の前に置かれていた箱に目を疑う。身体を起こし布団から這い出ると、綺麗に袋に包まれた箱を指先で突っつく。
持ち上げようとすると、少し重かった。
「むぅ…」
その後も、何度も何度も箱を突き、箱と睨み合いを続けること半刻ほど。ついに決心がついた小夜は、袋を破り、箱の蓋を開けて中を覗く。
「こ、これは…」
目を輝かせながら箱から取り出したのは、小夜が以前から欲しいと思っていた懐中筆と墨硯、良質な紙の束、髪飾り、防寒着、帽子、文献、動物の置き物、飴細工、短刀と様々な物が入っていた。
「ひえっ、一体何が何なのです!?これは…」
小夜は箱の底からある紙切れを拾い上げた。
『めりぃくりすます。今夜はほぉりぃないとじゃ、良い子していた君に贈り物を贈ろうぞ。大切に使っておくれよ』
「めりぃ…ほぉりぃ?」
小夜は暫くの間考えこむ。そして、昨日のローズとの会話を思い出す。
「ま、まさか、さんたさん!?」
余談ではあるが小夜の他に、琥珀の枕元にも、同じ大きさの箱が置かれていた。
その後、自室で贈り物の筆を嬉しそうに使う小夜を、大人たちがこれまた嬉しそうに眺めていたというお話。
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