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再思編
第33話 決意
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7つの部隊に分かれた第6軍は、別々の山道を通り合流地点を目指していた。
辺りが暗闇に包まれる中、各部隊は斎国軍の兵による夜襲を受けることとなる。各部隊とも、想定外の夜襲に当初は統率が乱れつつあったが、部隊を率いる隊長の迅速適格な指揮によって速かに立て直しが図られ、押されながらも対抗する事ができた。
皇国第6軍に対して攻撃を行なったのは、古賀より領内に侵入した斎国兵たちであった。
瑞穂たちがこの場に来たときには、すでに古賀の地は斎国軍に占領されており、斎国軍は千羅城を後ろから攻めるべく、部隊を二つに分け、片方を第6軍の足止め、もう片方を千羅城の背後へと向かわせていたのだ。
何よりも、想定より早く古賀の地を守護していた皇国第3軍の落水部隊長率いる守備隊が敗走していた。
その理由は、斎国は国軍の半分以上を古賀の地へ投入しており、質の差を量で圧倒した結果、中規模守備隊程度しか戦力を持っていない落水隊を撃破、落水は討ち死に、唯一の山脈の切れ目からの侵攻を許してしまっていた。
◇
二身一刀流とは、その名の通り二人で一本の刀による攻撃を創りだすものだ。
姉さんからこの剣術を教わり会得することができたのは、俺と藤香の組だけであった。この剣術の問題は、二人が一心同体とならなければ、技の真価を発揮できないことであった。
実際にこの剣術は、俺たちの中で剣の腕が1番だった藤香が、2番目の俺の力に合わせた成り行きで出来たものだった。
それでも、当時は2対1で対決した姉さんを圧倒することができた。
「ほう、二人で妾に挑む気か。捻り潰してやるわ!」
「行くよ」
「あぁ」
俺たちは同時に地面を蹴り、一気に飛び出して敵将湖琴との距離を一気に詰める。呪詛痕の影響で身体能力が人一倍抜き出ている俺の動きに、藤香は軽々と合わせてくる。
湖琴が右手を横に振るうと、地が割れ豪炎が噴き出す。その炎は身体にまとわりつこうとする。不気味だ。燃え盛る炎からは、憎しみ、或いはそれに似た感情が伝わってくる。
先制攻撃を仕掛けるも、豪炎によって防がれてしまう。
藤香は木々の合間を縫う様に動き、撃ち出された炎の礫を避けている。
そして、飛び上がり、湖琴の喉元目掛けて一直線に刀を突き刺そうとする。
「無駄だ」
湖琴の周りに現れた術式から、炎の壁が創り出される。術式の範囲内にいた藤香は、噴き出した炎の勢いによって吹き飛ばされる。
「藤香!」
俺は噴き出した炎を斬り、中にいる湖琴に向けて斬りかかった。
「甘い、甘すぎるわ貴様ら」
「うぐっ!?」
「妾が呪術しか使えぬと侮っていた様だな」
湖琴の右脚から繰り出された重い蹴りが、腹部へと打ち込まれる。
「ハァア!!」
俺が体術による攻撃を受けた瞬間、先ほど炎によって吹き飛ばされた藤香が、空中から湖琴に斬りかかった。湖琴は横に避けるが、俺はその隙を見計らい、湖琴の右胴体に刀を滑らせる。
「っく!?」
しかし、その攻撃も刀を持つ腕を叩くことで軌道をずらし、湖琴の胴体を切り裂くはずであった刀身は目標を失う。
二身一刀流、二人同時に攻撃を加えるが、湖琴はそれをいとも簡単に防ぎ切る。
圧倒的、不利な状況。
隣に立つ藤香の外套が焼け、焦げた臭いを放っている。
「大丈夫か、藤香」
「…」
藤香は俺の問いには答えず、湖琴から目を離そうとしなかった。
「御剣」
「なんだ」
「このままでは、おそらくあいつには勝てない」
「ッ!?」
確かに、相手は強い。しかし、道場のころから弱音を一切吐かなかった藤香が、何の迷いもなしにそうつぶやいたことに驚いてしまう。
「私を信じて、御剣」
「えっ?」
先ほどの言葉に続くその一言の意味を理解するのに、数秒の時間を要した。
「どういうことだ…?」
「あの敵を相手にあとどれだけ保つかわからない。だから、もう一度。私を信じて戦って」
その時、俺はようやく藤香の言っている言葉の意味が理解できた。
先に飛び出した藤香に続き正面に肉薄すると、湖琴は俺と藤香に向けて呪術で炎の礫を撃ち出す。
避けた礫が地面に落ち、土煙を巻き上げる。当たればただでは済まないだろう。
そう、当たればだ。
藤香は持ち前の身のこなしで、軽々とそれを避ける。
「ちょこまかと動きよって!」
湖琴の呪術『炎符火礫』は、威力こそ高いものの、数をそこまで出す事ができないのだろう。
そして、その攻撃を掻い潜ると待ち受けているのが『護符炎上壁』。
この炎の壁によって先ほど俺たちの攻撃は防がれ、藤香も吹き飛ばされてしまった。炎の勢いは凄まじく、常人であれば身体を焼かれるほどの威力である。
そこで、俺はあえて突っ込むことにした。炎は湖琴を囲む様に上に向けて噴き上がっている。しかし、壁自体の奥行きの厚さはそこまで厚くない。
「何!?」
故に、持ち前の突破力を駆使して、燃え盛る炎の壁に割れ目を作り出す。
俺が作り出した割れ目から、藤香が中へと侵入する。そして、湖琴に向けてまず一太刀が浴びせられる。
◇
皇都 皇宮
瑞穂が率いる第6軍が北へと出征している最中、皇が皇都を留守にしている間、皇国における全権を委任されている仁は、残った面々を集めて情報収集に奔走していた。
「なぜ、彼らが今になって攻めてきたのか…」
仁の中では、斎国と宇都見国がこの時期に皇国へ攻め込んできた理由が判然とせずにいた。
これについては、密偵である琥珀を始め、外務省の有する優秀な草が情報収集活動を続けているが、一向にその結果が結びついていない。
「侍大将、いくつか気になることがあります」
「何でしょうか」
そう切り出したのは、瑛春。
「今回の二国による侵攻。あまりにも不自然な点が多いとは思いませんか」
「例えば?」
「二国にとって、現時点で迦ノ国、そして胡ノ国と同盟関係にある我が国と敵対するのは、得るものがない。例えば、元王の突発的な意思によるものだとしても…」
瑛春は台座に敷かれた地図で朝廷を指差す。
「この刻を合わせ、朝廷軍が迦ノ国に圧力を掛けているの真意は?」
「まさか…」
「私は、朝廷、若しくは第三者が何らかの意図が働いているのだと思っています」
もともと、緋ノ国では文官としても名を馳せていた瑛春は、こうした勘が鋭い。
「ユーリ様、朝廷と胡ノ国への使者は何と?」
「はい。朝廷は今回の武力衝突には一切関与しないとのことでした。胡ノ国は、輝夜様から直々に呪術を介して援助援軍の意向を示してくれました」
ユーリが神居古潭の巫女でありながら、皇国において序列第3位にあたる宰相に任命されたのには理由があった。
それは、宰相に任命することにより、大神の眠る地とされる聖地神居古潭と繋がりを持つのも一つであるが。
何よりも、斎ノ巫女と同等ほどの呪術の実力を持つユーリが、各地に散らばる使者たちから報告を思念として受けることができるからである。
これにより、情報が早い段階で集まり、迅速な判断を下せるのだ。他国の動向をいち早く知り対処することが、この戦の世を生き抜く手段でもあった。
「そうですか。では、胡ノ国には後ほど援軍、物資を融通していただく意向をお伝えください」
「分かりました。シ、イエル、スニアラ、ファミェ…」
ユーリは仁たちに理解できない言葉を呟く。これは、神威言葉と言われ、神居古潭に生まれた神威子にしか理解できないと言われている特別な言葉である。
言葉は聞き取れないが、ユーリが呟いたのは秘術式の呪術『伝達』である。神居古潭の呪術は、一般的な呪術と仕組みは同じであるが、特別な言語を使ったりと一風変わったものとなっている。
「ホルス、招かれざる者たちはどうですか?」
「現時点で約54名、内11名が省や部の中にも入り込んでいました。有害活動を行った者は、刑部と検非違使によって拘束しています」
ホルスがそう言ったのは、皇国内において皇国に対する有害活動を行った他国の密偵や自国の反体制派のことである。国内で違法行為を行うために来ている密偵とは違い、国内で皇に反対する勢力は少なからず存在しており、活動も行われている。
国と指導者があれば、指導者の意見に賛成、反対する者が出てきるのは当たり前のことである。全員が皇に忠誠を誓うのであれば、それに越したことはない。
しかし、実際には前政権であるヤズラによって資産を保証され、悠々自適に暮らしていた元大金持ちや、地頭などは、国の再建によってそれまでに得ていた財産を手放すことになり、皇国に対して反感を抱いている。
また、国内には大御神を信仰しない無神論者や、皇という君主に従うのを良しとしない思想、貧富の差別をなくすため、平等な社会を実現することを目指す宗教などが、これまで確認されている。
瑞穂の意向により、これらの反体制派に対しては、法に触れる行為や、臣民や国家に危害を加える恐れがなければ、取り締まりや規制を講じていない。
これは国家、それよりも人の本質として当たり前に起こる事象であるからだ。これを抑え込んだところで、結局別のところで同じような事が起こる。そして、抑え込んだことにより反感が生まれ、悪循環がとなる。
瑞穂の中では、すでにそれが、国家としての必要な存在であるという結論に至っていたのだ。無論、野放しにはせず、あくまで手綱をつけた状態といえる。
現在、刑部と検非違使によって拘束されているのは、戦の勃発を機に国内において工作・妨害活動を行った者たちであった。
「報告では、まだ国内に複数潜伏しているとのことです」
「ならば、ここにいる者に対しても、何らかの工作は行ってくることでしょう。皆、自分の事にも充分気をつけて過ごしてください。戦況はまだ分かりませんが、こちらはこちらで出来る限りのことをしましょう」
会議が終わり、各々が自室や持ち場へと戻る中、仁を引き留める者がいた。
「仁様、少しよろしいでしょうか」
そう言ったのは、右京の妹である小夜だった。
「少しお話があります」
「わかりました。政務室へどうぞ」
仁は小夜を政務室へと招いた。普段は皇である瑞穂が使用する場所であるが、彼女が不在の時は仁をはじめとした面々が使っている。
「あ、お帰りなさい仁様」
政務室では、仁が不在の間に書簡の整理をしていた百合がいた。
「百合、小夜殿にお茶を」
「はい。かしこまりました」
百合がお茶を淹れるために部屋を離れる。
「さて、いかがなさいましたか」
「仁様に、ご相談があるのです」
「相談ですか。私で良ければお聞きしましょう」
すると、小夜は真剣な眼で仁を見据えて口を開く。
「私、軍師になりたいのです」
「軍師、ですか…」
まさか、小夜の口からその様な言葉が出てきると思わなかった仁は、少し戸惑ってしまう。
軍師、それは軍において戦略や戦術を立案し、指揮を補助する役職である。その特性上、素人が唐突に申し立てて出来るようなものではない。
「差し支えなければ、私に軍師になると言った理由をお聞かせいただけますか?」
「私も、兄様や御剣様たちと一緒に、この国を守りたいのです。でも、私は力がないからら呪術も使えない。だから、皆さんを助ける立場になりたいのです」
仁はその言葉に、小夜なりの決意を見出していた。
「いけません」
「…え」
しかし、仁からの返答は予想を裏切る結果だった。
「どうしてなのです。なぜ、駄目なのですか?」
仁は少し困った表情をする。
「確かに、小夜殿の知識は宮廷学士か、それ以上かもしれません。ですが、その知識と軍師に必要なものは別です。軍事に必要なのは状況を見極める判断力、そして10を救うために1を犠牲にできる決断力です」
「…」
小夜も、それについては理解していた。しかし、小夜は仁の質問に返す答えがなかった。
「如何か?」
「私はまだ、戦を知りません。ですが、国のために命をかけて兄様や姉様達が戦っているです。私は…私が何もせずに待っているなんて…」
「小夜殿、あなたは何をもせずに待っているわけではありませんよ」
「えっ」
「聖上をはじめ、小夜殿の兄上殿である右京殿も、みな、小夜殿たちが帰還を祈り、笑顔で出迎えてもらうために戦っております。ただ待っているわけではありません、戦う者に希望と勇気を与えているのです」
「…」
「ですが、小夜殿の決意を無碍に扱うことはできません。私が軍師として必要な知識、必要最低限の剣術を教示致しましょう。軍師として戦場に赴くか否かは、あなたに委ねましょう」
こうして、小夜は仁のもとで軍師になるために修行を始めることとなった。
◇
藤香に一太刀を浴びせられた湖琴は、顔から上半身にかけて裂傷を受ける。藤香の太刀筋は浅いため、湖琴は傷から血を流すだけにとどまった。
「くっ」
湖琴は俺たちから間合いをとると、傷口を押さえていた手に炎を纏わせ、傷口を高温で焼く。
「かっ、がああ!」
高温の炎によって焼かれた傷口は火傷を起こし、出血していた血を止める。
「はぁ、はぁ…貴様らの顔…覚えたぞ…」
湖琴は両手を振るい、その場に大きな爆発を起こす。俺はそばにいた藤香を抱き、湖琴から離れる。
「逃げられた…」
爆発の土煙が晴れたその場には、湖琴の姿はなかった。どうやら、情勢が不利と判断したのか、その場から撤退を決めた様だ。
「怪我はないか、藤香」
「ない。大丈夫」
藤香は刀を鞘に納めると、自分の天幕へと戻っていく。
「誰か、他の状況を教えてくれ」
「はっ、はい。敵将が撤退したためか、他の部隊を攻撃していた敵も撤退を開始した模様です」
「そうか」
報告を聞いた俺は、出来る限り今回の襲撃で負傷又は死亡した兵士たちの状況を把握したのち、瑞穂の待つ天幕へと戻った。
「おかえり御剣、ご苦労様」
「敵将と思わしき女を逃してしまった。敵は撤退、こちらの損害は兵士約20名に、馬4頭」
「そう…」
今では2万5千の兵力にとって、20という数字は微々たるものかもしれない。しかし、瑞穂は違った。緋ノ国時代から数少ない兵力で戦ってきた彼女にとって、失われた兵士の数に多いも少ないもないのだ。
だからこそ、その命の重さを理解しなければならない。それが皇、強いては軍を率いるものの責務であると、瑞穂は言っていた。
「あなたは大丈夫なの?」
「俺は問題ない、ありがとう。そう言えば、千代の姿が見えないが…」
「千代なら、藤香に呼ばれて彼女の天幕にいるわ。治癒をしていると思う」
「そうか。少し藤香の様子を見てくる」
「御剣…」
天幕から出ようとした時、俺は瑞穂に呼び止められた。
「どうした?」
「いや、何でもない。藤香の様子、見てきたら報告して」
「分かった」
その時の瑞穂の顔は、少し寂しそうだった。
藤香の天幕は直ぐ近くにあった。物見の女性兵士が何かを言いかけたが、俺は藤香の天幕へと入る。
「藤香、入るぞ」
そこには、裸になり千代から治癒を受ける藤香の姿があった。俺は千代に天幕を追い出され、しばらく中に入れてもらえなかった。
辺りが暗闇に包まれる中、各部隊は斎国軍の兵による夜襲を受けることとなる。各部隊とも、想定外の夜襲に当初は統率が乱れつつあったが、部隊を率いる隊長の迅速適格な指揮によって速かに立て直しが図られ、押されながらも対抗する事ができた。
皇国第6軍に対して攻撃を行なったのは、古賀より領内に侵入した斎国兵たちであった。
瑞穂たちがこの場に来たときには、すでに古賀の地は斎国軍に占領されており、斎国軍は千羅城を後ろから攻めるべく、部隊を二つに分け、片方を第6軍の足止め、もう片方を千羅城の背後へと向かわせていたのだ。
何よりも、想定より早く古賀の地を守護していた皇国第3軍の落水部隊長率いる守備隊が敗走していた。
その理由は、斎国は国軍の半分以上を古賀の地へ投入しており、質の差を量で圧倒した結果、中規模守備隊程度しか戦力を持っていない落水隊を撃破、落水は討ち死に、唯一の山脈の切れ目からの侵攻を許してしまっていた。
◇
二身一刀流とは、その名の通り二人で一本の刀による攻撃を創りだすものだ。
姉さんからこの剣術を教わり会得することができたのは、俺と藤香の組だけであった。この剣術の問題は、二人が一心同体とならなければ、技の真価を発揮できないことであった。
実際にこの剣術は、俺たちの中で剣の腕が1番だった藤香が、2番目の俺の力に合わせた成り行きで出来たものだった。
それでも、当時は2対1で対決した姉さんを圧倒することができた。
「ほう、二人で妾に挑む気か。捻り潰してやるわ!」
「行くよ」
「あぁ」
俺たちは同時に地面を蹴り、一気に飛び出して敵将湖琴との距離を一気に詰める。呪詛痕の影響で身体能力が人一倍抜き出ている俺の動きに、藤香は軽々と合わせてくる。
湖琴が右手を横に振るうと、地が割れ豪炎が噴き出す。その炎は身体にまとわりつこうとする。不気味だ。燃え盛る炎からは、憎しみ、或いはそれに似た感情が伝わってくる。
先制攻撃を仕掛けるも、豪炎によって防がれてしまう。
藤香は木々の合間を縫う様に動き、撃ち出された炎の礫を避けている。
そして、飛び上がり、湖琴の喉元目掛けて一直線に刀を突き刺そうとする。
「無駄だ」
湖琴の周りに現れた術式から、炎の壁が創り出される。術式の範囲内にいた藤香は、噴き出した炎の勢いによって吹き飛ばされる。
「藤香!」
俺は噴き出した炎を斬り、中にいる湖琴に向けて斬りかかった。
「甘い、甘すぎるわ貴様ら」
「うぐっ!?」
「妾が呪術しか使えぬと侮っていた様だな」
湖琴の右脚から繰り出された重い蹴りが、腹部へと打ち込まれる。
「ハァア!!」
俺が体術による攻撃を受けた瞬間、先ほど炎によって吹き飛ばされた藤香が、空中から湖琴に斬りかかった。湖琴は横に避けるが、俺はその隙を見計らい、湖琴の右胴体に刀を滑らせる。
「っく!?」
しかし、その攻撃も刀を持つ腕を叩くことで軌道をずらし、湖琴の胴体を切り裂くはずであった刀身は目標を失う。
二身一刀流、二人同時に攻撃を加えるが、湖琴はそれをいとも簡単に防ぎ切る。
圧倒的、不利な状況。
隣に立つ藤香の外套が焼け、焦げた臭いを放っている。
「大丈夫か、藤香」
「…」
藤香は俺の問いには答えず、湖琴から目を離そうとしなかった。
「御剣」
「なんだ」
「このままでは、おそらくあいつには勝てない」
「ッ!?」
確かに、相手は強い。しかし、道場のころから弱音を一切吐かなかった藤香が、何の迷いもなしにそうつぶやいたことに驚いてしまう。
「私を信じて、御剣」
「えっ?」
先ほどの言葉に続くその一言の意味を理解するのに、数秒の時間を要した。
「どういうことだ…?」
「あの敵を相手にあとどれだけ保つかわからない。だから、もう一度。私を信じて戦って」
その時、俺はようやく藤香の言っている言葉の意味が理解できた。
先に飛び出した藤香に続き正面に肉薄すると、湖琴は俺と藤香に向けて呪術で炎の礫を撃ち出す。
避けた礫が地面に落ち、土煙を巻き上げる。当たればただでは済まないだろう。
そう、当たればだ。
藤香は持ち前の身のこなしで、軽々とそれを避ける。
「ちょこまかと動きよって!」
湖琴の呪術『炎符火礫』は、威力こそ高いものの、数をそこまで出す事ができないのだろう。
そして、その攻撃を掻い潜ると待ち受けているのが『護符炎上壁』。
この炎の壁によって先ほど俺たちの攻撃は防がれ、藤香も吹き飛ばされてしまった。炎の勢いは凄まじく、常人であれば身体を焼かれるほどの威力である。
そこで、俺はあえて突っ込むことにした。炎は湖琴を囲む様に上に向けて噴き上がっている。しかし、壁自体の奥行きの厚さはそこまで厚くない。
「何!?」
故に、持ち前の突破力を駆使して、燃え盛る炎の壁に割れ目を作り出す。
俺が作り出した割れ目から、藤香が中へと侵入する。そして、湖琴に向けてまず一太刀が浴びせられる。
◇
皇都 皇宮
瑞穂が率いる第6軍が北へと出征している最中、皇が皇都を留守にしている間、皇国における全権を委任されている仁は、残った面々を集めて情報収集に奔走していた。
「なぜ、彼らが今になって攻めてきたのか…」
仁の中では、斎国と宇都見国がこの時期に皇国へ攻め込んできた理由が判然とせずにいた。
これについては、密偵である琥珀を始め、外務省の有する優秀な草が情報収集活動を続けているが、一向にその結果が結びついていない。
「侍大将、いくつか気になることがあります」
「何でしょうか」
そう切り出したのは、瑛春。
「今回の二国による侵攻。あまりにも不自然な点が多いとは思いませんか」
「例えば?」
「二国にとって、現時点で迦ノ国、そして胡ノ国と同盟関係にある我が国と敵対するのは、得るものがない。例えば、元王の突発的な意思によるものだとしても…」
瑛春は台座に敷かれた地図で朝廷を指差す。
「この刻を合わせ、朝廷軍が迦ノ国に圧力を掛けているの真意は?」
「まさか…」
「私は、朝廷、若しくは第三者が何らかの意図が働いているのだと思っています」
もともと、緋ノ国では文官としても名を馳せていた瑛春は、こうした勘が鋭い。
「ユーリ様、朝廷と胡ノ国への使者は何と?」
「はい。朝廷は今回の武力衝突には一切関与しないとのことでした。胡ノ国は、輝夜様から直々に呪術を介して援助援軍の意向を示してくれました」
ユーリが神居古潭の巫女でありながら、皇国において序列第3位にあたる宰相に任命されたのには理由があった。
それは、宰相に任命することにより、大神の眠る地とされる聖地神居古潭と繋がりを持つのも一つであるが。
何よりも、斎ノ巫女と同等ほどの呪術の実力を持つユーリが、各地に散らばる使者たちから報告を思念として受けることができるからである。
これにより、情報が早い段階で集まり、迅速な判断を下せるのだ。他国の動向をいち早く知り対処することが、この戦の世を生き抜く手段でもあった。
「そうですか。では、胡ノ国には後ほど援軍、物資を融通していただく意向をお伝えください」
「分かりました。シ、イエル、スニアラ、ファミェ…」
ユーリは仁たちに理解できない言葉を呟く。これは、神威言葉と言われ、神居古潭に生まれた神威子にしか理解できないと言われている特別な言葉である。
言葉は聞き取れないが、ユーリが呟いたのは秘術式の呪術『伝達』である。神居古潭の呪術は、一般的な呪術と仕組みは同じであるが、特別な言語を使ったりと一風変わったものとなっている。
「ホルス、招かれざる者たちはどうですか?」
「現時点で約54名、内11名が省や部の中にも入り込んでいました。有害活動を行った者は、刑部と検非違使によって拘束しています」
ホルスがそう言ったのは、皇国内において皇国に対する有害活動を行った他国の密偵や自国の反体制派のことである。国内で違法行為を行うために来ている密偵とは違い、国内で皇に反対する勢力は少なからず存在しており、活動も行われている。
国と指導者があれば、指導者の意見に賛成、反対する者が出てきるのは当たり前のことである。全員が皇に忠誠を誓うのであれば、それに越したことはない。
しかし、実際には前政権であるヤズラによって資産を保証され、悠々自適に暮らしていた元大金持ちや、地頭などは、国の再建によってそれまでに得ていた財産を手放すことになり、皇国に対して反感を抱いている。
また、国内には大御神を信仰しない無神論者や、皇という君主に従うのを良しとしない思想、貧富の差別をなくすため、平等な社会を実現することを目指す宗教などが、これまで確認されている。
瑞穂の意向により、これらの反体制派に対しては、法に触れる行為や、臣民や国家に危害を加える恐れがなければ、取り締まりや規制を講じていない。
これは国家、それよりも人の本質として当たり前に起こる事象であるからだ。これを抑え込んだところで、結局別のところで同じような事が起こる。そして、抑え込んだことにより反感が生まれ、悪循環がとなる。
瑞穂の中では、すでにそれが、国家としての必要な存在であるという結論に至っていたのだ。無論、野放しにはせず、あくまで手綱をつけた状態といえる。
現在、刑部と検非違使によって拘束されているのは、戦の勃発を機に国内において工作・妨害活動を行った者たちであった。
「報告では、まだ国内に複数潜伏しているとのことです」
「ならば、ここにいる者に対しても、何らかの工作は行ってくることでしょう。皆、自分の事にも充分気をつけて過ごしてください。戦況はまだ分かりませんが、こちらはこちらで出来る限りのことをしましょう」
会議が終わり、各々が自室や持ち場へと戻る中、仁を引き留める者がいた。
「仁様、少しよろしいでしょうか」
そう言ったのは、右京の妹である小夜だった。
「少しお話があります」
「わかりました。政務室へどうぞ」
仁は小夜を政務室へと招いた。普段は皇である瑞穂が使用する場所であるが、彼女が不在の時は仁をはじめとした面々が使っている。
「あ、お帰りなさい仁様」
政務室では、仁が不在の間に書簡の整理をしていた百合がいた。
「百合、小夜殿にお茶を」
「はい。かしこまりました」
百合がお茶を淹れるために部屋を離れる。
「さて、いかがなさいましたか」
「仁様に、ご相談があるのです」
「相談ですか。私で良ければお聞きしましょう」
すると、小夜は真剣な眼で仁を見据えて口を開く。
「私、軍師になりたいのです」
「軍師、ですか…」
まさか、小夜の口からその様な言葉が出てきると思わなかった仁は、少し戸惑ってしまう。
軍師、それは軍において戦略や戦術を立案し、指揮を補助する役職である。その特性上、素人が唐突に申し立てて出来るようなものではない。
「差し支えなければ、私に軍師になると言った理由をお聞かせいただけますか?」
「私も、兄様や御剣様たちと一緒に、この国を守りたいのです。でも、私は力がないからら呪術も使えない。だから、皆さんを助ける立場になりたいのです」
仁はその言葉に、小夜なりの決意を見出していた。
「いけません」
「…え」
しかし、仁からの返答は予想を裏切る結果だった。
「どうしてなのです。なぜ、駄目なのですか?」
仁は少し困った表情をする。
「確かに、小夜殿の知識は宮廷学士か、それ以上かもしれません。ですが、その知識と軍師に必要なものは別です。軍事に必要なのは状況を見極める判断力、そして10を救うために1を犠牲にできる決断力です」
「…」
小夜も、それについては理解していた。しかし、小夜は仁の質問に返す答えがなかった。
「如何か?」
「私はまだ、戦を知りません。ですが、国のために命をかけて兄様や姉様達が戦っているです。私は…私が何もせずに待っているなんて…」
「小夜殿、あなたは何をもせずに待っているわけではありませんよ」
「えっ」
「聖上をはじめ、小夜殿の兄上殿である右京殿も、みな、小夜殿たちが帰還を祈り、笑顔で出迎えてもらうために戦っております。ただ待っているわけではありません、戦う者に希望と勇気を与えているのです」
「…」
「ですが、小夜殿の決意を無碍に扱うことはできません。私が軍師として必要な知識、必要最低限の剣術を教示致しましょう。軍師として戦場に赴くか否かは、あなたに委ねましょう」
こうして、小夜は仁のもとで軍師になるために修行を始めることとなった。
◇
藤香に一太刀を浴びせられた湖琴は、顔から上半身にかけて裂傷を受ける。藤香の太刀筋は浅いため、湖琴は傷から血を流すだけにとどまった。
「くっ」
湖琴は俺たちから間合いをとると、傷口を押さえていた手に炎を纏わせ、傷口を高温で焼く。
「かっ、がああ!」
高温の炎によって焼かれた傷口は火傷を起こし、出血していた血を止める。
「はぁ、はぁ…貴様らの顔…覚えたぞ…」
湖琴は両手を振るい、その場に大きな爆発を起こす。俺はそばにいた藤香を抱き、湖琴から離れる。
「逃げられた…」
爆発の土煙が晴れたその場には、湖琴の姿はなかった。どうやら、情勢が不利と判断したのか、その場から撤退を決めた様だ。
「怪我はないか、藤香」
「ない。大丈夫」
藤香は刀を鞘に納めると、自分の天幕へと戻っていく。
「誰か、他の状況を教えてくれ」
「はっ、はい。敵将が撤退したためか、他の部隊を攻撃していた敵も撤退を開始した模様です」
「そうか」
報告を聞いた俺は、出来る限り今回の襲撃で負傷又は死亡した兵士たちの状況を把握したのち、瑞穂の待つ天幕へと戻った。
「おかえり御剣、ご苦労様」
「敵将と思わしき女を逃してしまった。敵は撤退、こちらの損害は兵士約20名に、馬4頭」
「そう…」
今では2万5千の兵力にとって、20という数字は微々たるものかもしれない。しかし、瑞穂は違った。緋ノ国時代から数少ない兵力で戦ってきた彼女にとって、失われた兵士の数に多いも少ないもないのだ。
だからこそ、その命の重さを理解しなければならない。それが皇、強いては軍を率いるものの責務であると、瑞穂は言っていた。
「あなたは大丈夫なの?」
「俺は問題ない、ありがとう。そう言えば、千代の姿が見えないが…」
「千代なら、藤香に呼ばれて彼女の天幕にいるわ。治癒をしていると思う」
「そうか。少し藤香の様子を見てくる」
「御剣…」
天幕から出ようとした時、俺は瑞穂に呼び止められた。
「どうした?」
「いや、何でもない。藤香の様子、見てきたら報告して」
「分かった」
その時の瑞穂の顔は、少し寂しそうだった。
藤香の天幕は直ぐ近くにあった。物見の女性兵士が何かを言いかけたが、俺は藤香の天幕へと入る。
「藤香、入るぞ」
そこには、裸になり千代から治癒を受ける藤香の姿があった。俺は千代に天幕を追い出され、しばらく中に入れてもらえなかった。
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