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総撃編
第45話 連合軍結成
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大和の歓待から皇都へと戻ってきた瑞穂たち一行。戦中に皇都を離れた一週の間、皇国を取り巻く情勢は変化していた。
その中でも特に瑞穂が驚いたのが、宇都見国による長きに続いた東征の突然の終結と、敗北した諸国連合の滅亡。
宇都見国が数年前から、東の小国家が結束した諸国連合を征服するために、東征と呼ばれる侵略を行っていることは、情勢に詳しい者たちの間では周知の事である。
個々の国力は宇都見国の足元に及ばない諸国連合ではあるが、結束した上で、表向きは中立を保っている神居古潭から、支援を裏で受けており強固な力を持つに至っている。
その結果、大国である宇都見国の侵略を今日まで退けていた。
そう、今日までは。
「それは、誠なの右京?」
右京からの報告に、瑞穂はまだ半信半疑であった。
「神居古潭の使者からもたらされた情報ですので、間違いないかと」
「不眠不休で戦うならまだしも、六国もある諸国連合を一週間で征服するなんて、そんなのあり得ないわ…」
「某も、当初は信じることができずにおりました。しかし、各地に放っております志能備の情報を統合したところ、神居古潭の使節がもたらした情報と合致いたしました故に…」
「諸国連合は、あの宇都見国が何年も手を焼いていた相手よ。それがこうも簡単に終結すると思う?」
「何らかの大きな力を利用したか、或いは…」
「指揮を優秀な将に移譲させたか…」
瑞穂はにわかに信じられずにいたが、新たな情報として東征軍の指揮を執ったのがあの咲耶波姫であることを知り、ようやく納得がいった。
そこで瑞穂は、ある決断を下した。
それが皇国、斎国、胡ノ国の三ケ国による連合軍の結成。そして、連合軍による宇都見国への速やかな侵攻、占領であった。
◇
私は胡ノ国、そして斎国に対して三国連合軍の結成を呼びかけた。背後に沈黙を保ちつつも、不穏な動きを見せる迦ノ国を抱える私たちにとって、国土防衛のための戦力を保持しつつ、かつ大国である宇都見国と一戦を交えるには、連合軍の結成が妥当だと判断した。
同盟国同士の連合軍の結成は速やかに行われた。特に、斎国は自国に対する宇都見国の侵攻に懸念があったためか、早急に応じていた。
その対宇都見国の重要拠点となるのが、斎国東部の城壁都市である嶺浜。ここは宇都見国との国境近くに位置しており、宇都見国と袂を分かつことを選択した斎国が最重要視する場所である。
すでに東征を成功に収め、宇都見国が軍の主力を西へ向けるまでの間に、連合軍の本隊をこの嶺浜へと駐留させる。
今回、私は直々に軍を率いることはせず、あくまで裏方に徹する。
これは侍大将である仁からの進言があったからである。そもそも、一国の皇が迦ノ国や斎国との戦の時の様に、前線で剣を振るうのは危険が伴う。それが可能なのは、よほどの実力がある者。
例えば、迦ノ国の武皇であるウルイや、皇ではないが宇都見国の咲耶波姫。
妖鬼如きを相手に苦戦を強いられるような私では、例え大御神の力を使ったとしても不安は拭えないだろう。御剣たちに聞いても、同じ意見だった。我ながら、これまで己の力を過信し周囲に不安を与えていた自分を嘆いた。
そこで、此度の連合軍を統括する総指揮を仁に任せることにし、私は皇都で戦いの推移を見守ることにした。
ここで、遠征部隊について説明する。
仁の率いる皇国軍遠征部隊は、第6軍を中核とするが、各軍から募った志願兵が大半を占めるように編成した。これは、第6軍の兵士たちが先の戦で極度に疲弊しているためである。
妖の乱入もあり、死傷者や戦線に復帰できない傷を負った者も多い。
そこで、継続して戦に参戦する意志のある者を第6軍から募りこれを抽出、さらに各軍からこれも志願で抽出した兵士で充足させた。
そうすることで、第6軍の総兵力である2万を超える規模の臨時編成軍が結成することができた。
もちろん、この編成はこれまでの統一された指揮系統とは異なり、部隊間の意思疎通をより緻密に行わなければ、効果的な戦略は生み出せない。将官たちによる指揮系統の統一が急がれた。
戦は兵士の質とそれらを動かす戦略が均衡していなければ、効果的な戦闘を展開する事ができない。
その兵の数、おおよそ2万2千。また、ここに胡ノ国軍1万5千、斎国軍5千、さらには義勇兵として各地から集まった2千が加わる。緋ノ国の侍大将として大軍を率いていた仁であれば、私は安心して指揮を託すことができる。
そして、計4万4千の大規模な連合軍が嶺浜へと集結した。
◇
嶺浜の中央にそびえ立つ彦山城では、今回の連合軍の指揮を執る各軍の将たちが一同に介していた。
皇国軍
侍大将(総大将) 仁
参謀 ホルス
隊将 嶺、宝華、翔鶴
胡ノ国軍
将軍(大将) 咲洲凶月
副将 観山琉水
隊将 智尤院織、壬生灘木
斎国軍
将軍(中将) 紫紅
参謀 劃尾
隊将 豊海、義高
「さて、皆さまお集まりのようですので今回の軍議を始めたいと思います。今は一刻も時間が惜しいので前置きは省かせていただき手短に説明します。ホルス、地図を」
「はい」
ホルスは将たちが囲む卓の上に周辺の地図を広げる。
「我らが皇は、皇国はもちろんのこと、胡ノ国、斎国の兵の命と国の命運、そのどちらも責任を持って預かると申されました。皇から此度の連合軍運用を含めた全権を委任された私は、宇都見国の国都である王都の占領を、ひと月以内に完了させたいと考えています」
「宇都見国の王都占領を、ひ、ひと月で!?」
「大和と肩を並べる大国だぞ…」
「いささか、無理があるのでは…」
将たちが否定的な言葉を口にする中、ある人物だけは腹を抱えて笑っていた。
「はっはっは、いやぁ、おったまげた。ひと月で国盗り、なかなかぶっ飛んでいやがるぜ!」
その者は、この軍議の場で豪快に浴びるように酒を飲む女武将であった。金色の髪に胸元が露わになっている着物と羽織り。
「筆頭、飲み過ぎです」
「けちくせぇ事いうな観山、これから戦だぞ、大戦。今度いつ飲めるか分からねぇじゃないか」
「筆頭は戦中も飲むので、あまり関係ないのでは…」
着物から溢れそうになる胸に、その場にいた男衆の視線が揺らぐ。
筆頭、そう呼ばれる彼女の名は咲洲凶月。またの名を殲滅の凶月と云う。元は宇都見国の任侠一派、咲洲衆の筆頭であったが、胡ノ国独立後は将軍に冠された経歴の持ち主である。
任侠者の彼女が将軍に冠された理由、それは彼女の強さにあった。
彼女の胸元に発現している呪詛痕。その呪詛痕によって引き出される強力な力を持ちながら、両親が神居古潭の神威子である事からその血を濃く受け継いでいる。
ゆえに、強者。
宿に押し入った100人の刺客を原型を止めないほど殴り殺したや、独立する前に参戦した東征では激戦地から敵を壊滅させ、たった一人帰還したなど、並外れた噂を持つ者である。
「ひと月であの宇都見国を倒そうなんて、普通の奴じゃあ考えないぜ」
「凶月、何かご不満でも?」
「いんや、ないさ」
親しげに凶月の名前を呼ぶ仁に、ホルスは問い掛ける。
「総大将、あの、か、彼女とお知り合いなのですか?」
「えぇ、緋ノ国時代に何度か手合わせしました」
一同が驚愕する中、盃に注がれた酒を飲み干した凶月はにやりと笑う。
「人外怪力、大酒飲み、戦狂い、正真正銘の化け物ですよ彼女は」
「くくく、人を化け物扱いしよってからに」
しかし凶月は、それ以上何も言わずに再び瓢箪から注いだ酒を呑み始めた。
「中断させてしまってすまんかった。続けてくれよ」
「では改めて、対宇都見国戦の全容を説明しましょう」
仁は地図の上に敵軍、そして自軍を模した駒を置き、作戦の概要を説明する。
「みなさんご存知のとおり、ここ嶺浜の彦山城は、対宇都見国戦において重要な役目を担うこととなります」
宇都見国と唯一山に隔てられていない国境を持つ斎国。障壁がない故に攻めるのが容易い土地でもあった。
「連合軍はこの彦山城を拠点とし、攻守に分かれます。攻めは軍を率いて宇都見国の王都へ。守りはこの彦山城の守りに徹します」
「攻撃と防御、仁殿はどちらに主軸を置かれるのですか?」
「もちろん、攻撃です。そして、この戦いでは攻守の均等性が必要不可欠です」
なぜなら、嶺浜を落とされてしまった場合、皇国との戦によって軍の大半を失い、急遽徴兵によって兵士を埋め合わせした斎国に宇都見国の軍勢が流れ込んでくる。
それは毒と同じだ。一箇所から侵入した毒が瞬く間に体中の血の管を通して広がる様に、斎国、胡ノ国、皇国とその支配領域が失われていく。
それほど油断ならない相手なのだ。
「しかし、そうなると攻守のために連合軍は約4万を半分に分けると言うことですか?」
「いいえ、ここには元々の城の守護兵のみを残し、ほぼ全軍で一気に王都へと駆け上がります」
「なっ!?」
「ぜ、全軍が宇都見国攻めに回ると言うのですか?」
この言葉には、参謀であるホルスですら想定していないものだった。
「宇都見国の西方、王都までには5の砦が存在します。恐らく、宇都見国はこちらの動きをすでに察知しているはずです。彼らが守りに入るまでよりも早く、連合軍の全軍はこれら5つの砦を攻め落とし、一気に王都へと駆け抜けます」
「攻撃は最大の防御ってやつか?」
「えぇ、もし万が一宇都見国が我々の軍勢を避けて嶺浜に攻め行ったとしても、我々の方が早く王都を落とすということです。唯一の懸念は、我々が敗北すれば三国は一気に蹂躙されるということです」
どれだけ短時間で砦を落とし、短期間で王都へ向かうことができるかが、今回の勝敗の分かれ目であった。
そして、絶対に負けることの出来ない戦いでもある。
「それでは、まず最初の砦【烈】へと進攻します。凶月、この砦攻めの指揮をあなたに執ってもらいます」
「あたしにか?」
「あなたなら、自ら先陣を買って出ると思いましたが?」
仁のその言葉に、凶月は笑みを溢す。
「分かってるじゃないか仁」
「何日で落とせますか?」
その質問に、凶月は盃を手にしながら答えた。
「2日で十分さ」
◇
皇国 皇宮 瑞穂の私室
皇宮の奥に皇の政務室があり、その横が皇である瑞穂の私室となっている。調度品といった余計な物はほとんど置かれておらず、装飾は単純な水墨画くらいである。これは派手な装飾を嫌い、書道や水墨画を嗜む瑞穂の性格が表れている部屋であった。
その私室の中央、低めに造られた座卓を挟み、瑞穂と真神シラヌイは向き合っていた。
「大戦の前、カミコ殿には多くの大神が付き従っておった。妾はそのひとり。大神が信仰を失い、妖が跋扈するこの現世。なんと虚しいことかのぅ」
「シラヌイ。大戦が始まる前、今と当時はどんな違いがあったの?」
「違いのぅ。そうじゃな、人から恐怖が感じられんかった。あの頃は今と違い、戦によっていつ自分の生命がその終焉を迎えるかなど、考えもしなかったのじゃろう。戦に怯えて日々を暮らす人からは、幸福といった感情が感じられぬ」
戦によってもたらされるのは、恐怖、怒り、痛み、苦しみ、悲しみ。
人は本来であれば助け合って生きなければならない。それが殺し、殺される関係となってしまった今、人を飲み込もうとする怨嗟の渦は容易には取り除けない。
私は人の心を白い布に例えている。
白い布は他の染料の色に染まる。言い換えれば、心は感情という色に染まりやすい。
そして、一度染まり切った布の色は容易く落ちることはない。
「カミコ殿は戦によってもたらされるものを理解しておいでじゃった。争いが起きれば、その身を挺してでも争いを止められた。しかし、ある者が現れたことによって、カミコ殿は守るための戦いをされるようになったのじゃ」
◇
それは、今からだいぶと前のことだ。
そのころはまだ、妾のような真神でないにしろ、人に信仰される大神たちが現世に存在していた。
その大神たちは神器として各々が象徴となるものを生み出し、人の姿を得て存在していた。
妾が忠誠を誓う祖なる大神、大御神のカミコ殿。
カミコ殿はもともと、明風神社に祀られる葦原の土地神であったが、その所以は太陽を司る大神であられた。
温和な性格で義理に厚く、どんな者に対しても対等に接することから、いつしか大神たちにとってカミコ殿は自らを照らす太陽の様な存在となり、祖なる大神、大御神と呼ばれるようになった。
「カミコ殿、どうしてあの様な者どもに頭を下げられた…」
「私のお辞儀一つで争いが起こらないなら、お辞儀なんて安いものよ」
「じゃが、奴らは人じゃ。名を明かしていないとは言え、大御神である御身が人ごときに頭を下げるなど、御身には誇りというものがないのか!」
「ないわ。その人ごときに頭も下げられない様な薄っぺらい誇りなんて捨ててしまいなさい。大神であるあなたなら分かるでしょう、シラヌイ。私たちは信仰があるからこの現世に存在することができる。同時に、その信仰がなければこの現世に存在できないような矮小な存在なのよ」
妾は、カミコ殿が申したその言葉の真意について、その時はまだ解らなかった。
「ねぇ、シラヌイ。今日から私の従者になる男を紹介するわ。剣史郎よ」
「剣史郎だ。よろしく頼む」
「よ、よろしくなのじゃ」
カミコ殿の周囲には、いつしか人が集まる様になっていた。
「カミコお姉ちゃん!」
「カミコ姉ちゃん!」
「この二人の名前はクロとシロ、今日から私のお手伝いをしてくれるの」
「お姉ちゃん、お名前は?」
「シラヌイじゃ」
「よろしくね、シラヌイお姉ちゃん!」
動物の大神である妾にとって、なぜカミコ殿が人と寄り添うのかが理解できなかった。
「あ、あの。白雪舞花と申します。よろしくお願いします、え、えっと…」
「シラヌイで構わぬぞ、舞花」
カミコ殿の周囲の人と関わるにつれ、妾も自分の中の何かが変わっていく様に感じた。
やがて、人の中に自らを現人神と称する者が現れ、これを利用し大神による現世の支配を目論む大和大神と、大御神であるカミコ殿のもと、これまでの大神と人の関係を継続しようとする旧大神に分かれ、対立が表面化した。
当初、カミコ殿は大和大神に人と大神の今の関係を保つことが、争いのない平和な世となることを説いて回っていた。時には、己より格下の神格である大神に頭を下げることもあった。
全ては、人と大神が共存する平和な世を保つため。カミコ殿は自らを犠牲にしてでも、世に争いを起こさぬ様に尽力なされた。
しかし、この対立を引き起こした禍ツ神の一柱が、カミコ殿が愛娘の如く愛情を注いでいた斎ノ巫女を傷つけたことにより、これまで争いを避け続けてきたカミコ殿は一転し、大和大神との争いに身を投じたのだった。
◇
シラヌイからカミコの話を聞いた私は、初めて聞く名前があることに気付いた。
それは、カミコの従者であった剣史郎という人物と、手伝いをしていたというクロとシロの3人。
この3人についてシラヌイに話を聞いてみようとするが、どれだけ頼み込んでも一向に話してくれなかった。
「当分は私の元にいてくれるっていうことで良いのかしら?」
「うむ。そのつもりじゃ」
「じゃあ、ひとつだけお願いを聞いてくれないかしら?」
私はシラヌイに、普段の姿である狼の姿になってもらう。
雪の様に真っ白な毛並みに、ふわふわと揺れる尻尾。私は伏せる白狼に抱きついた。そう、私のお願いは白狼の姿になったシラヌイを心ゆくまで愛でることであった。
「ふぁ、やっぱりふわっふわで気持ちいい!」
「さ、左様か。よ、喜んでもらえたのなら、良かったのじゃ…」
顔を夢中で擦り付け、柔らかい毛並みを堪能する私に、シラヌイは戸惑っていた。
「うん、テンもふわふわだけど、シラヌイはもっとふわっふわ。それに、何だかとても良い匂いがする」
「い、良い匂いじゃと!?妾、そんな匂うのか?」
「はぁ、癒されるぅ。仕事の悩みも全部吹っ飛んじゃう、はぁ、はぁ」
「んなっ!こ、これっ!鼻息を吹きかけるでない。く、くすぐったいのじゃ!」
「瑞穂様、失礼しますです。お茶をお持ちしま…し」
やってきたのは、お盆に湯飲みを載せた小夜。小夜は私が白狼と戯れている姿を見て、目を輝かせた。
「もふなのです!」
「ひゃっ!?そ、そこはやめるのじゃ!耳はっ、耳はだめなのじゃあ!!」
私と小夜に体中をもふられたシラヌイは、それから当分の間、体に触れさせてくれなかった。
その中でも特に瑞穂が驚いたのが、宇都見国による長きに続いた東征の突然の終結と、敗北した諸国連合の滅亡。
宇都見国が数年前から、東の小国家が結束した諸国連合を征服するために、東征と呼ばれる侵略を行っていることは、情勢に詳しい者たちの間では周知の事である。
個々の国力は宇都見国の足元に及ばない諸国連合ではあるが、結束した上で、表向きは中立を保っている神居古潭から、支援を裏で受けており強固な力を持つに至っている。
その結果、大国である宇都見国の侵略を今日まで退けていた。
そう、今日までは。
「それは、誠なの右京?」
右京からの報告に、瑞穂はまだ半信半疑であった。
「神居古潭の使者からもたらされた情報ですので、間違いないかと」
「不眠不休で戦うならまだしも、六国もある諸国連合を一週間で征服するなんて、そんなのあり得ないわ…」
「某も、当初は信じることができずにおりました。しかし、各地に放っております志能備の情報を統合したところ、神居古潭の使節がもたらした情報と合致いたしました故に…」
「諸国連合は、あの宇都見国が何年も手を焼いていた相手よ。それがこうも簡単に終結すると思う?」
「何らかの大きな力を利用したか、或いは…」
「指揮を優秀な将に移譲させたか…」
瑞穂はにわかに信じられずにいたが、新たな情報として東征軍の指揮を執ったのがあの咲耶波姫であることを知り、ようやく納得がいった。
そこで瑞穂は、ある決断を下した。
それが皇国、斎国、胡ノ国の三ケ国による連合軍の結成。そして、連合軍による宇都見国への速やかな侵攻、占領であった。
◇
私は胡ノ国、そして斎国に対して三国連合軍の結成を呼びかけた。背後に沈黙を保ちつつも、不穏な動きを見せる迦ノ国を抱える私たちにとって、国土防衛のための戦力を保持しつつ、かつ大国である宇都見国と一戦を交えるには、連合軍の結成が妥当だと判断した。
同盟国同士の連合軍の結成は速やかに行われた。特に、斎国は自国に対する宇都見国の侵攻に懸念があったためか、早急に応じていた。
その対宇都見国の重要拠点となるのが、斎国東部の城壁都市である嶺浜。ここは宇都見国との国境近くに位置しており、宇都見国と袂を分かつことを選択した斎国が最重要視する場所である。
すでに東征を成功に収め、宇都見国が軍の主力を西へ向けるまでの間に、連合軍の本隊をこの嶺浜へと駐留させる。
今回、私は直々に軍を率いることはせず、あくまで裏方に徹する。
これは侍大将である仁からの進言があったからである。そもそも、一国の皇が迦ノ国や斎国との戦の時の様に、前線で剣を振るうのは危険が伴う。それが可能なのは、よほどの実力がある者。
例えば、迦ノ国の武皇であるウルイや、皇ではないが宇都見国の咲耶波姫。
妖鬼如きを相手に苦戦を強いられるような私では、例え大御神の力を使ったとしても不安は拭えないだろう。御剣たちに聞いても、同じ意見だった。我ながら、これまで己の力を過信し周囲に不安を与えていた自分を嘆いた。
そこで、此度の連合軍を統括する総指揮を仁に任せることにし、私は皇都で戦いの推移を見守ることにした。
ここで、遠征部隊について説明する。
仁の率いる皇国軍遠征部隊は、第6軍を中核とするが、各軍から募った志願兵が大半を占めるように編成した。これは、第6軍の兵士たちが先の戦で極度に疲弊しているためである。
妖の乱入もあり、死傷者や戦線に復帰できない傷を負った者も多い。
そこで、継続して戦に参戦する意志のある者を第6軍から募りこれを抽出、さらに各軍からこれも志願で抽出した兵士で充足させた。
そうすることで、第6軍の総兵力である2万を超える規模の臨時編成軍が結成することができた。
もちろん、この編成はこれまでの統一された指揮系統とは異なり、部隊間の意思疎通をより緻密に行わなければ、効果的な戦略は生み出せない。将官たちによる指揮系統の統一が急がれた。
戦は兵士の質とそれらを動かす戦略が均衡していなければ、効果的な戦闘を展開する事ができない。
その兵の数、おおよそ2万2千。また、ここに胡ノ国軍1万5千、斎国軍5千、さらには義勇兵として各地から集まった2千が加わる。緋ノ国の侍大将として大軍を率いていた仁であれば、私は安心して指揮を託すことができる。
そして、計4万4千の大規模な連合軍が嶺浜へと集結した。
◇
嶺浜の中央にそびえ立つ彦山城では、今回の連合軍の指揮を執る各軍の将たちが一同に介していた。
皇国軍
侍大将(総大将) 仁
参謀 ホルス
隊将 嶺、宝華、翔鶴
胡ノ国軍
将軍(大将) 咲洲凶月
副将 観山琉水
隊将 智尤院織、壬生灘木
斎国軍
将軍(中将) 紫紅
参謀 劃尾
隊将 豊海、義高
「さて、皆さまお集まりのようですので今回の軍議を始めたいと思います。今は一刻も時間が惜しいので前置きは省かせていただき手短に説明します。ホルス、地図を」
「はい」
ホルスは将たちが囲む卓の上に周辺の地図を広げる。
「我らが皇は、皇国はもちろんのこと、胡ノ国、斎国の兵の命と国の命運、そのどちらも責任を持って預かると申されました。皇から此度の連合軍運用を含めた全権を委任された私は、宇都見国の国都である王都の占領を、ひと月以内に完了させたいと考えています」
「宇都見国の王都占領を、ひ、ひと月で!?」
「大和と肩を並べる大国だぞ…」
「いささか、無理があるのでは…」
将たちが否定的な言葉を口にする中、ある人物だけは腹を抱えて笑っていた。
「はっはっは、いやぁ、おったまげた。ひと月で国盗り、なかなかぶっ飛んでいやがるぜ!」
その者は、この軍議の場で豪快に浴びるように酒を飲む女武将であった。金色の髪に胸元が露わになっている着物と羽織り。
「筆頭、飲み過ぎです」
「けちくせぇ事いうな観山、これから戦だぞ、大戦。今度いつ飲めるか分からねぇじゃないか」
「筆頭は戦中も飲むので、あまり関係ないのでは…」
着物から溢れそうになる胸に、その場にいた男衆の視線が揺らぐ。
筆頭、そう呼ばれる彼女の名は咲洲凶月。またの名を殲滅の凶月と云う。元は宇都見国の任侠一派、咲洲衆の筆頭であったが、胡ノ国独立後は将軍に冠された経歴の持ち主である。
任侠者の彼女が将軍に冠された理由、それは彼女の強さにあった。
彼女の胸元に発現している呪詛痕。その呪詛痕によって引き出される強力な力を持ちながら、両親が神居古潭の神威子である事からその血を濃く受け継いでいる。
ゆえに、強者。
宿に押し入った100人の刺客を原型を止めないほど殴り殺したや、独立する前に参戦した東征では激戦地から敵を壊滅させ、たった一人帰還したなど、並外れた噂を持つ者である。
「ひと月であの宇都見国を倒そうなんて、普通の奴じゃあ考えないぜ」
「凶月、何かご不満でも?」
「いんや、ないさ」
親しげに凶月の名前を呼ぶ仁に、ホルスは問い掛ける。
「総大将、あの、か、彼女とお知り合いなのですか?」
「えぇ、緋ノ国時代に何度か手合わせしました」
一同が驚愕する中、盃に注がれた酒を飲み干した凶月はにやりと笑う。
「人外怪力、大酒飲み、戦狂い、正真正銘の化け物ですよ彼女は」
「くくく、人を化け物扱いしよってからに」
しかし凶月は、それ以上何も言わずに再び瓢箪から注いだ酒を呑み始めた。
「中断させてしまってすまんかった。続けてくれよ」
「では改めて、対宇都見国戦の全容を説明しましょう」
仁は地図の上に敵軍、そして自軍を模した駒を置き、作戦の概要を説明する。
「みなさんご存知のとおり、ここ嶺浜の彦山城は、対宇都見国戦において重要な役目を担うこととなります」
宇都見国と唯一山に隔てられていない国境を持つ斎国。障壁がない故に攻めるのが容易い土地でもあった。
「連合軍はこの彦山城を拠点とし、攻守に分かれます。攻めは軍を率いて宇都見国の王都へ。守りはこの彦山城の守りに徹します」
「攻撃と防御、仁殿はどちらに主軸を置かれるのですか?」
「もちろん、攻撃です。そして、この戦いでは攻守の均等性が必要不可欠です」
なぜなら、嶺浜を落とされてしまった場合、皇国との戦によって軍の大半を失い、急遽徴兵によって兵士を埋め合わせした斎国に宇都見国の軍勢が流れ込んでくる。
それは毒と同じだ。一箇所から侵入した毒が瞬く間に体中の血の管を通して広がる様に、斎国、胡ノ国、皇国とその支配領域が失われていく。
それほど油断ならない相手なのだ。
「しかし、そうなると攻守のために連合軍は約4万を半分に分けると言うことですか?」
「いいえ、ここには元々の城の守護兵のみを残し、ほぼ全軍で一気に王都へと駆け上がります」
「なっ!?」
「ぜ、全軍が宇都見国攻めに回ると言うのですか?」
この言葉には、参謀であるホルスですら想定していないものだった。
「宇都見国の西方、王都までには5の砦が存在します。恐らく、宇都見国はこちらの動きをすでに察知しているはずです。彼らが守りに入るまでよりも早く、連合軍の全軍はこれら5つの砦を攻め落とし、一気に王都へと駆け抜けます」
「攻撃は最大の防御ってやつか?」
「えぇ、もし万が一宇都見国が我々の軍勢を避けて嶺浜に攻め行ったとしても、我々の方が早く王都を落とすということです。唯一の懸念は、我々が敗北すれば三国は一気に蹂躙されるということです」
どれだけ短時間で砦を落とし、短期間で王都へ向かうことができるかが、今回の勝敗の分かれ目であった。
そして、絶対に負けることの出来ない戦いでもある。
「それでは、まず最初の砦【烈】へと進攻します。凶月、この砦攻めの指揮をあなたに執ってもらいます」
「あたしにか?」
「あなたなら、自ら先陣を買って出ると思いましたが?」
仁のその言葉に、凶月は笑みを溢す。
「分かってるじゃないか仁」
「何日で落とせますか?」
その質問に、凶月は盃を手にしながら答えた。
「2日で十分さ」
◇
皇国 皇宮 瑞穂の私室
皇宮の奥に皇の政務室があり、その横が皇である瑞穂の私室となっている。調度品といった余計な物はほとんど置かれておらず、装飾は単純な水墨画くらいである。これは派手な装飾を嫌い、書道や水墨画を嗜む瑞穂の性格が表れている部屋であった。
その私室の中央、低めに造られた座卓を挟み、瑞穂と真神シラヌイは向き合っていた。
「大戦の前、カミコ殿には多くの大神が付き従っておった。妾はそのひとり。大神が信仰を失い、妖が跋扈するこの現世。なんと虚しいことかのぅ」
「シラヌイ。大戦が始まる前、今と当時はどんな違いがあったの?」
「違いのぅ。そうじゃな、人から恐怖が感じられんかった。あの頃は今と違い、戦によっていつ自分の生命がその終焉を迎えるかなど、考えもしなかったのじゃろう。戦に怯えて日々を暮らす人からは、幸福といった感情が感じられぬ」
戦によってもたらされるのは、恐怖、怒り、痛み、苦しみ、悲しみ。
人は本来であれば助け合って生きなければならない。それが殺し、殺される関係となってしまった今、人を飲み込もうとする怨嗟の渦は容易には取り除けない。
私は人の心を白い布に例えている。
白い布は他の染料の色に染まる。言い換えれば、心は感情という色に染まりやすい。
そして、一度染まり切った布の色は容易く落ちることはない。
「カミコ殿は戦によってもたらされるものを理解しておいでじゃった。争いが起きれば、その身を挺してでも争いを止められた。しかし、ある者が現れたことによって、カミコ殿は守るための戦いをされるようになったのじゃ」
◇
それは、今からだいぶと前のことだ。
そのころはまだ、妾のような真神でないにしろ、人に信仰される大神たちが現世に存在していた。
その大神たちは神器として各々が象徴となるものを生み出し、人の姿を得て存在していた。
妾が忠誠を誓う祖なる大神、大御神のカミコ殿。
カミコ殿はもともと、明風神社に祀られる葦原の土地神であったが、その所以は太陽を司る大神であられた。
温和な性格で義理に厚く、どんな者に対しても対等に接することから、いつしか大神たちにとってカミコ殿は自らを照らす太陽の様な存在となり、祖なる大神、大御神と呼ばれるようになった。
「カミコ殿、どうしてあの様な者どもに頭を下げられた…」
「私のお辞儀一つで争いが起こらないなら、お辞儀なんて安いものよ」
「じゃが、奴らは人じゃ。名を明かしていないとは言え、大御神である御身が人ごときに頭を下げるなど、御身には誇りというものがないのか!」
「ないわ。その人ごときに頭も下げられない様な薄っぺらい誇りなんて捨ててしまいなさい。大神であるあなたなら分かるでしょう、シラヌイ。私たちは信仰があるからこの現世に存在することができる。同時に、その信仰がなければこの現世に存在できないような矮小な存在なのよ」
妾は、カミコ殿が申したその言葉の真意について、その時はまだ解らなかった。
「ねぇ、シラヌイ。今日から私の従者になる男を紹介するわ。剣史郎よ」
「剣史郎だ。よろしく頼む」
「よ、よろしくなのじゃ」
カミコ殿の周囲には、いつしか人が集まる様になっていた。
「カミコお姉ちゃん!」
「カミコ姉ちゃん!」
「この二人の名前はクロとシロ、今日から私のお手伝いをしてくれるの」
「お姉ちゃん、お名前は?」
「シラヌイじゃ」
「よろしくね、シラヌイお姉ちゃん!」
動物の大神である妾にとって、なぜカミコ殿が人と寄り添うのかが理解できなかった。
「あ、あの。白雪舞花と申します。よろしくお願いします、え、えっと…」
「シラヌイで構わぬぞ、舞花」
カミコ殿の周囲の人と関わるにつれ、妾も自分の中の何かが変わっていく様に感じた。
やがて、人の中に自らを現人神と称する者が現れ、これを利用し大神による現世の支配を目論む大和大神と、大御神であるカミコ殿のもと、これまでの大神と人の関係を継続しようとする旧大神に分かれ、対立が表面化した。
当初、カミコ殿は大和大神に人と大神の今の関係を保つことが、争いのない平和な世となることを説いて回っていた。時には、己より格下の神格である大神に頭を下げることもあった。
全ては、人と大神が共存する平和な世を保つため。カミコ殿は自らを犠牲にしてでも、世に争いを起こさぬ様に尽力なされた。
しかし、この対立を引き起こした禍ツ神の一柱が、カミコ殿が愛娘の如く愛情を注いでいた斎ノ巫女を傷つけたことにより、これまで争いを避け続けてきたカミコ殿は一転し、大和大神との争いに身を投じたのだった。
◇
シラヌイからカミコの話を聞いた私は、初めて聞く名前があることに気付いた。
それは、カミコの従者であった剣史郎という人物と、手伝いをしていたというクロとシロの3人。
この3人についてシラヌイに話を聞いてみようとするが、どれだけ頼み込んでも一向に話してくれなかった。
「当分は私の元にいてくれるっていうことで良いのかしら?」
「うむ。そのつもりじゃ」
「じゃあ、ひとつだけお願いを聞いてくれないかしら?」
私はシラヌイに、普段の姿である狼の姿になってもらう。
雪の様に真っ白な毛並みに、ふわふわと揺れる尻尾。私は伏せる白狼に抱きついた。そう、私のお願いは白狼の姿になったシラヌイを心ゆくまで愛でることであった。
「ふぁ、やっぱりふわっふわで気持ちいい!」
「さ、左様か。よ、喜んでもらえたのなら、良かったのじゃ…」
顔を夢中で擦り付け、柔らかい毛並みを堪能する私に、シラヌイは戸惑っていた。
「うん、テンもふわふわだけど、シラヌイはもっとふわっふわ。それに、何だかとても良い匂いがする」
「い、良い匂いじゃと!?妾、そんな匂うのか?」
「はぁ、癒されるぅ。仕事の悩みも全部吹っ飛んじゃう、はぁ、はぁ」
「んなっ!こ、これっ!鼻息を吹きかけるでない。く、くすぐったいのじゃ!」
「瑞穂様、失礼しますです。お茶をお持ちしま…し」
やってきたのは、お盆に湯飲みを載せた小夜。小夜は私が白狼と戯れている姿を見て、目を輝かせた。
「もふなのです!」
「ひゃっ!?そ、そこはやめるのじゃ!耳はっ、耳はだめなのじゃあ!!」
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