花衣ー皇国の皇姫ー

AQUA☆STAR

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決戦編

第65話 武人の魂

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 胡ノ国 国都 水蓮園


 湿地であり、人々からは水と緑の都、そう呼ばれる胡ノ国の国都『水蓮園』。

 その中心に胡ノ国の君主、月姫と称される華宵輝夜姫が座する水蓮亭がある。

 周囲は池で囲まれ、水面には蓮の葉が浮かぶ。そこに豊かに咲き誇る水蓮の花が、この場所、水蓮亭の名前の由来となっている。

「輝夜殿、わざわざこの様な場に私をお招きいただいのは、如何なる御用件でございますか?」

 斎国の元首烈丕。

 すでに崩壊した宇都見国からの独立後も、斎国の元首としてその地位に立ち、彼が率いる斎国は連合軍の中核を担い、そして王なき宇都見国の再興に尽力していた。

 そんな彼をこの場に呼んだのは、他でもない輝夜だった。

「瑞穂之命の忠臣、宰相のユーリから親書が届いたわ。此度の大和と迦ノ国の戦、皇国は第3の勢力として参戦すると」
「さ、参戦⁉︎それに、第3と言うことは、どちらにも付かず…ということでしょうか?」
「表向きはね。実際には、皇国は大和との同盟は結んでいないけど、迦ノ国との同盟を解消し、迦ノ国に対して宣戦を布告したわ」
「我々はどうすれば。ここは皇国に追従し、迦ノ国と戦を交えるべきでしょうか…」

 烈丕の質問に、応接間の窓から池を眺めていた輝夜は答える。

「私たちは動かないわ」
「戦に参戦しないのですか?」
「西に戦力を備え防備を固めよ、これは皇国皇からの言葉。私たちは軍を西に集結させ、不測の事態に備える」
「不測の事態、ですか?」
「此度の戦、何か違和感を感じるの。情報では、同盟を提案するために皇国に来た大和の皇女が、落石のせいで帰国には遠回りを余儀なくされていると聞く」
「はい。確かに我が国、そして胡ノ国における大和と皇国を結ぶ主要な道は、軒並み落石や橋の崩落で寸断されています」

 輝夜の耳にも、自国内における不自然な落石の事が入っていた。まるで、大和本国に皇女を帰国させない。そう言った意図が感じられる事態であった。

「まさか…」
「どうかされましたか、輝夜殿?」
「烈丕、なるべく早急に西の守りを固めなさい。それと、民を出来る限り東へと疎開させること。いい?」
「承知しましたが、一体何が起こると言うのです?」
「今はまだ分からない。でも、用心するに越したことはないわ…」

 巷の噂では、神居古潭の大宮司であるアムルが、先日から姿を消し行方が分からなくなっていると聞く。

 何かが起こる。

 咲夜はそう感じ、心の中でまだ予想のつかない事態への不安を感じていた。


 ◇


 大和 帝京


 帝京の聖廟では、迦ノ国軍討伐のための第二陣が出立するのを、帝ミノウを初めとする面々が見送っていた。

 第二陣を率いる総大将は七星将、謀聖のカゲロウ。七星将の中でも一風変わった戦術を駆使する将であり、軍略家としても知られている。

 何よりも彼は、七星将ハクメイの弟子の1人であり、軍略においては迦ノ国右大臣であるオルルカンと同等か、それ以上の実力を持つと言われている。

 カゲロウがその若さながら七星将に任命されたのには、その才を彼の初陣の際にいち早く気付いたハクメイの口利きがあったからでもある。

「ふふ、ようやく僕の出番かぁ。全く、遅すぎるんだよなぁ」
「カゲロウ様、顔に出ておられます」
「おっと、いけないいけない。気をつけないと」

 自らの出番を先送りされていたカゲロウは、部下であり副官のランカに表情を注意されてしまう。

「まさか、ゴウマがやられ、コチョウが撤退するとは。ちと想定外だったの、ミノウよ」
「ふむ…」

 その様子を内裏から見下ろしていたミノウは、古い馴染みであり七星将のムネモリにそう言われて唸ってしまう。

「確かに、余は迦ノ国の連中を見誤っておった。これほどの力を蓄えていたとは」
「仕方がなかろう。迦ノ国はこれまで幾度も、大和に攻め入り、それを大和は返り討ちにしてきたのだ」
「その事実だけを根拠に、余は不仲な者同士を組ませ、討伐に当たらせてしまった…。結果は無惨なものよ」
「ミノウ、知っておるかと思うが、其方の娘が皇国をこちら側に引き摺り込んだそうじゃ。皇国に同調する胡ノ国や斎国も、表向きは参戦の意思を示していないが、こちらの味方と見て良いじゃろう」

 それを聞いたミノウは、顔には出さないが心の中で安堵していた。

「さて、儂も出来る限りのことをするつもりじゃ。若いもんばかりに負担を強いらせる訳にもいかんからな。それに、主の娘に付いておる弟子の事も心配じゃ…」
「シオンなら、必ずや責務を果たしてくれる筈じゃ。それよりもムネモリ…例の件のことじゃが…」
「ふむ。昔馴染みの頼みじゃ、儂も一肌脱ごうか。暫し、京を離れるぞ。儂が不在の間、気をつけるのじゃぞ」
「其方もな。愛娘たちを頼むぞ」

 その言葉を聞いたムネモリは、それ以上何も言わずに内裏から立ち去る。

「ふぅ…」

 緊張の糸が切れたミノウは、ゆっくりと玉座に腰掛ける。迦ノ国との開戦以来、ほとんど休まずに政務をこなしてきたミノウ。彼の疲れは限界に達していた。

 疲れのせいで自然に閉じそうになった目蓋を見開き、頬を叩いて意識を取り戻す。

「いかんいかん…」

 ミノウは玉座の側に置かれていた台座から、茶の入った急須を手に取り、湯呑みに注ぐ。

 この茶には疲れを緩和する効能があり、ミノウは激務の際は欠かさず口にしていた。

「ふぅ………」

 茶が喉を通る。いつものように茶葉の深みが舌に伝わる。しかし、ミノウは自分の視界が揺らいでいることに気づく。

「なん…じゃ…」

 手にしていた湯飲みを落とし、玉座から前に倒れ込む。

 最初は疲れのせいと感じたミノウであったが、どうも違う。

 咳き込み、締め付けるような胸の痛み。立てられないほどの激痛。息が詰まるような苦しみ。

「誰か…誰ぞおらんか…」

 床に這いつくばり、遠のいてゆく意識の中。ミノウは必死に声を出す。

 そして薄れゆく視界に、何者かの足元が見えた。

“カヤ……“


 ◇


「ち、父上ッ⁉︎」

 声を張り上げて目を覚ましたカヤ。そんなカヤを側にいたシオンが心配そうに見る。

「カヤ様、どうかなされたのですか?」
「い、いや、何でもない…」

“嫌な予感がする…父上の身に何か…“

「カヤ、起きたのね?」

 困惑するカヤに声を掛けたのは、重症から回復して洞窟に戻ってきた瑞穂だった。

「瑞穂殿、其方怪我は?ウルイに刺され、重傷を負ったと聞いておったが…」
「皆のおかげで助かったわ。ありがとう」

 そう言った瑞穂であったが、刺されて穴が開き、穴の周りに血が滲んでいる装束が痛々しい。

「まずは、皆に心配を掛けてしまったことを謝りたい」
「ええよ瑞穂はん。結果みんな無事やったし。なぁ、藤香はん」
「同感」
「ありがとう。さて、これで全員揃った訳だし、改めて現状の説明をするわ。千代、例の件を」
「はい。ですが、まず私が話す前に皆さんに知っておいてもらいたいことがあります」
「それは何じゃ、千代殿」
「はい。私たち呪術師は、思念という呪術を使えます。高位になればなるほど、距離や対象を絞って思念を送ることができます。しかし、現在。何らかの強力な呪力により、思念を妨害する呪術、強いて言えば妨害思念が発せられています」
「妨害思念だと?」
「左様でございます。唯一、高位の呪術師であるユーリ様との思念にのみ成功しました」

 その内容は、後発として仁が率いる皇国遠征軍が、皇都から西へ、国境を越えて信貴の都へと向かっているということだった。

 遠征軍は、宇都見国との戦で戦力を削ぎ落とされた第6軍が中心であるが、比較的安全となった他方面の軍から必要数を抽出し、即席ではあるが2万に及ぶ軍勢が結成されていた。

 再編成にひと月は掛かると言われている中、仁が遠征軍の結成を急いだのには、迦軍の大半が大和へ向けて侵攻している今こそが、迦ノ国への攻め時であると判断したためだった。

 急造ではあるが、今は一刻でも惜しい。

 この機を逃してしまえば、万が一大和が敗北した際に、皇国は圧倒的に不利な状況に陥ってしまう。

「この思念ですら、妨害のせいでほとんど聞き取れなかったほどです」
「千代、その妨害は一体いつから?」
「迦ノ国に入り、信貴の都に居た時から行われていました。当初は、この地特有の呪力の流れのせいと思っていましたが。どうやら、何者かが呪力の波長を合わせ、妨害しているようでした」
「誰かが、私たちの邪魔をしているというわけね」
「そう考えてもよいかと…」
「承知したわ。琥珀、ウルイ達の動向は分かる?」
「うん。一刻前に、迦国軍は大和へ向かって北上を始めたよ」

 本来であれば、瑞穂達はこの隙をついて迦ノ国の国都へ向かい、手薄になった長居城を落とすのが定石だ。しかし、瑞穂の優先目的はあくまで、神滅刀の奪還である。

 また、当主がいないといえ国都の城には、相当数の兵士が配置されているのは間違いない。

 つまり、城を落とすには本国からこちらに向かっている遠征軍の到着を待たなければならず、それでは神滅刀を持つウルイにより、大和は危機に瀕する。

「ウルイを追って北上するわ」
「良いのか、瑞穂殿…」

 その答えに、カヤが少し遠慮しがちに聞き返す。

「この戦いは、もともと大和と迦ノ国の戦いじゃ。そもそも余が皇国を巻き込んだのだ。同盟でない以上、大和の勝敗は皇国には…」
「何を言ってるの、カヤ」
「えっ?」
「私たちは巻き込まれたんじゃないわ。自分たちの意思でここにいるの。同盟なんて上辺だけの関係のために、私たちは動いていない。神滅刀の奪還はもちろんのこと。でもそれ以上に、貴女の父上、友である帝を救いたいという意思があるの」
「父上を…」
「何とか回復したとはいえ、私をここまで追い詰めたウルイと神滅刀。これを野放しにすれば、大和や皇国、強いてはこの世の終幕よ」

 目的は同じであれ、瑞穂とウルイの考える平和な世には大きな差がある。

 己が私欲、そして他を滅することで世を統一せんとするウルイ。その考えは留まることを知らず、やがて外は外へと歯止めの効かない領土拡張を繰り返していく。

 その行く末に、戦のない未来などない。

「ウルイが帝京にたどり着くまでに、奴を討ち、神滅刀を取り戻す。例え、どんな手を使ってでも…」


 ◇


 迦ノ国 某所


 人の目がつかない山奥、連なる山々の尾根に、黒い装束を見に纏った2人の少女が祈りを捧げている。

 彼女達の容姿は瓜二つ。違いといえば、唯一目の色が青と黄色になっていることくらいだろう。尾根の一角、予め地に張られた術式の中で両膝をつき、呪術を発動していた。

 彼女たちが発動しているのは、呪術の思念。しかし、その思念は特定の誰かに伝えるものではなく、他の呪力と同じ波長に合わせて、内容のない思念を発しているだけである。

 つまり、他の思念を利用して妨害していると言っていい。

「どうかしら、歌音、詩音」
「「はい、お母様。他の思念は聞こえなくしています」」

 歌音、詩音と呼ばれた双子は、まるで1人だけが話しているように、言葉を重ねて返答する。

 2人の髪には、銀色の鈴が括り付けられていた。

「その調子で続けなさい」
「「はい、お母様」」


 ◇


 雨が止んでから、俺たちはウルイの後を追って迦ノ国の地を北上することになった。

 雨のせいでぬかるんだ山道を歩きつつ、俺は腰に携えた二振りの刀を見る。

 父上から譲り受けた形見『業火』。

 戦嫌いの墨染様が村長の頃、葦原村の代表としてたった1人、緋ノ国の兵士として戦場を渡り歩いた父上の愛刀。自由に扱えなかった幼少期から今に至るまで、俺を支えてくれた刀。

 そしてもう一振りは、根の国で剣史郎と名乗る男から受け取った刀『草薙剣』。

 剣史郎はこの刀が、俺のために打たれた代物だと言っていた。正確には、大御神の神器たる御剣のために打たれた、と言うのが正しいだろか。根の国で傀儡を斬り、妙に握り慣れた感覚の剣。

 これほどまでに素晴らしい刀を二振り持ちながら、俺はウルイに手も足も出せずに負けた。

 刀のせいではない。

 単純に、己の弱さ故である。

「御剣」

 そんな事を考えていると、隣を歩いていた藤香が話しかけてくる。

「ごめん…」
「どうしたんだ。いきなり謝って」
「私が弱かったから、御剣も瑞穂も、大怪我して。だから、次は絶対…あっ」

 俺はそう言った藤香の頭に手を置き、そっと撫でた。

「藤香のせいじゃない。謝る必要なんてないぞ?」
「でも…」
「昔から、藤香は何でも自分一人で背追い込む癖があるよな。考えたって仕方がないだろ。今度、ウルイと刃を交えた時、奴に絶対に勝つ方法だけを考えていればいいんだ」
「それで、何か策があるの?」
「あっと、なんだ。その、まだだ…」
「ふふっ、何それ」

 そう言った藤香は、少しだけ笑った。

 藤香の笑った顔を見たのは、いつぶりだろうか。

 俺は藤香にそっと拳を突き出した。

「その時は、頼りにしてるぞ」
「してもらわないと困る」

 差し出した拳に、藤香は自分の拳を合わせてくれた。

「お兄さん、お姉さん」
「どうしたの、琥珀?」

 前方の警戒のために前に出ていた琥珀が、何かを見つけたのか突然立ち止まる。

「敵、気をつけて」

 琥珀が後方に飛び退くと、先ほどまで無名が立っていた位置に黒い液体が降り注ぐ。

「あはは、見ぃつけた」

 そう言って俺たちの前に現れたのは、あの迦ノ国の暗殺者の女だった。女は不気味に笑いながら、正面から俺たちの方へと歩み寄ってきた。

 しかし、その姿は人のそれとはかけ離れている。

 それは紛うことなき異形の姿。

 その目は赤く輝き、口は鋭い牙と長い舌が見え隠れしていた。

「あ、あの方、呪力が暴走して妖に…」
「妖に堕ちたか…」

 千代の言葉を聞きつつ、俺と藤香は瑞穂の前に出て、刀の柄に手を添える。

 瑞穂が背中に語りかける。

「2人とも、任せたわ」
「承知した」
「任された」
「きゃは、全員纏めて殺してやんよ!あぁっ、あぁぁ!」

 暗殺者は突然悶え始めると、体から青黒い水のようなものが流れ落ちる。それは地面に流れると、液体の様な生物が湧き出てくる。

「濡れ女…」

 濡れ女、そう呼ばれた暗殺者は徐々に人の体から変態し、人と大蛇が混じり合ったような姿へと変貌する。

「○◇△☆□‼︎」

 獣と女の声が混じった様な金切り声。

 その体から溶けるように流れる黒い液体。それらは蛇のような形を成すと、まるで意思を持った生物のように動き出す。

「きゃっ⁉︎」
「うぐっ⁉︎」

 濡れ女の甲高い咆哮に、思わず耳を塞ぐ。鉄を引っ掻いたように甲高い咆哮のせいで、体が固まり金縛りのような状態となる。

 初動が遅れた俺たちに向けて、濡れ女が飛びかかってくる。その攻撃を何とか飛びつきを横に飛んで避けるが、濡れ女の着地点から噴き出した黒い液体が蛇となり飛びついてくる。

 何とか刀で振り払うが、蛇を斬ったところでそれは黒い液体となり飛散し、また濡れ女の体へと吸い込まれていく。

 千代が空中に術式を描く。

「火符、火炎輪!」

 隙をついて、千代が2つの火の輪を創り出し撃ち放つ。それらは濡れ女の両側へと地を伝い接近し、周囲に流れ出す黒い液体を焼きながら濡れ女へと近づく。

「☆○◇‼︎」

 しかし、濡れ女はこれに気づき、後ろへ飛び退くと同時に、口から液体を吐き出す。

 液体が直撃した火の輪は爆発飛散する。俺たちの頭上に、爆発した火炎輪の火の粉が降り注いだ。

「伏せるのじゃ!」

 カヤの声に反応した俺たちは、反射的に頭を下げる。すると、頭上を続け様に3本の矢が通り越し、鋭い勢いを保ったまま濡れ女へと突き刺さった。

「ッッッ⁉︎」

 しかし、カヤが放った矢を受けてもなお、濡れ女は全く動じることなく攻撃を続けた。

"くそっ、どうやって倒せば⁉︎"

 濡れ女の攻撃を避けながら、業火に呪力を込める。やがて、業火の刀身から火花が散り、炎を纏った。

「てりゃぁ‼︎」

 俺は濡れ女の左腕に向けて刀身を振るう。

「□カ◇○ワ‼︎」

 しかし、左腕を捉えたかと思った業火は、その腕に纏わり付く黒い液体を被り、刀身に纏っていた火が消えてしまった。

 この液体には、呪力をかき消す力があるのだろう。

 その上、濡れ女の放つ液体から絶え間なく形成され、そして倒しても死ぬことのない蛇のせいで、瑞穂たちがこちらを援護できずにいた。

 濡れ女と真っ向勝負ができるのは、現時点で俺のみ。しかし、驚異的な再生能力と、呪力を阻害する力を持つ濡れ女に、有効な手立てが見つからないでいた。

「どうすれば…」

 刀身に付いた液体を払い、再び呪力を込める。

"己を信じよ"

 不意に、ある人物の言葉が頭によぎった。


 ◇


「良いか御剣、呪装刀とは普通の刀と違い、持ち手の呪力を注ぎ込むことで、その刀の持つ力を発揮できる代物だ」

 それは御剣が若き日に、亡き父に教わった剣術の記憶。

 川辺に備えられた巨石の前に、御剣の父親が立つ。

「どうすれば、呪装刀の力を最大限に発揮できると思う?」
「自分の持てる呪力を、全て注ぎ込む」
「仮にそうだとしよう。しかし、もしも全ての呪力を注ぎ込んだはずの呪装刀が、最大限の力を発揮できなければどうする?」
「それは…」
「見よ………ツラァッ‼︎」

 抜刀した業火の刀身に炎が纏い、たった一撃で真っ二つに叩き斬る。

「呪装刀に限らず、刀というのは武人の魂、いわば己を写す鏡だ。己が未熟であれば、たとえ全力で呪力を込め戦ったとしても、良い結果にはならんだろう」

 御剣の父は刀を鞘に納める。

「強敵との戦いに次などない。その一戦に全てを込め、己が魂を心から信じ、想い、そして伝えるのだ。さすれば、刀は自ずとその想いに応えてくれる。その時、お前は呪装刀の本当の力を見出すことができるだろう」
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