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統一編
第84.5話 年の瀬
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各地の復興も進み始めた冬の日の夜、私は政務に一区切りをつけ、自室の外に出る。新たな軍の編成についての申し出や、各地の食糧事情、課題は山積みだ。一向に減らない巻物の量を見て、流石の私も一息入れたいと思い、起毛の羽織りを纏って廊下を歩く。
雪は深々と降り、皇宮の中庭に白銀の絨毯を敷いていた。廊下の柵に手をつき、何も考えずにその光景を眺める。
心を無にして、雪が降るのを眺める。雪がしんしんと降る様は不思議といつまでも眺めていられる。それほど、自分の心と体に疲れが溜まっていたのだろう。
「いづれほど、彩り飾りて、着飾れど、無垢なる白雪に、勝ることなし」
「良い歌ですね、瑞穂様」
私が振り返ると、そこには同じように分厚い羽織を纏った千代が、手を擦りながら立っていた。
「千代…」
「ふふ、盗み聞きをお許しください。その詩は、如何なる意味に御座いましょうか?」
「どれだけ着飾ったりしたとしても、美しく、心を奪われる雪の純粋無垢な白さには敵わないって意味ね」
「確かに、雪ってこうしてずっと眺められますし、綺麗ですものね。それにしても、瑞穂様は昔からよく詩をお詠みになられますね。私は歌を詠むなんて才能はないので、瑞穂様の才には羨ましく感じてしまいます」
「まぁ、ぶっちゃけ下手くそだがら、あまり他人には聞かれたくないのだけどね。ほら、何というか。私だって素人だし、詩人が聞いたら落第点だろうし」
「そういうものですか??私はとても素敵だと思いますよ??」
何も媚びることなく、ただ純粋に自分の詩を褒める千代の笑顔を見て、深く考えることがどうも馬鹿らしくなってしまった。
私も思わず、笑いをこぼしてしまう。
「実は、この詩にはもう一つの意味があるの」
「もうひとつ??」
「白雪千代、あなたに掛けた詩よ。あなたのような純粋無垢の心の持ち主、迷いや憂い、怒りなどに染まらず、常に自分を見据えて真っ直ぐに生きている子には敵わないって」
「ふふ、持ち上げ過ぎですよ瑞穂様。それに、たった今考えたのでは⁇」
「ばれちゃった⁇」
「ばればれですよ」
「ははは」
「ふふふ」
千代は私と同じように柵に手を掛けると、深々と降る雪の結晶を手のひらで優しく受ける。
「淡雪の、降り積もる様を、眺むと、己に寄り添ふ、友のごとし…」
「え…千代、あなた」
「瑞穂様に習って、即興で詠んでみました。淡雪が降り積もる様を眺めていると、まるで自分に寄り添う友のように感じるという意味です。今日は、朝まで雪が降るみたいです。明日の朝には、もっと深く積もっているかもしれませんね」
「そうね。何だかんだで今年も、もう終わるのね…」
私と千代はしばらく、雪の降る様を眺めることにした。
◇
雪が降る中、俺は道場である心刀殿の傍らに立ち、精神を集中させる。例え雪が降ろうとも、例え強大な敵を討ち取ろうとも、俺は一日たりとも剣術の錬磨を怠らない。
自分は、まだ半人前なのだ。
先の大和での戦い、かつての俺が倒すことのできなかったタタリ。刃を交えて分かったのが、今の俺の実力では敵わなかったと言う事。
瑞穂を始め、仲間の手助けがなければ勝てなかったこの悔しさは、自分自身にしか分からない。そして、己がもっと強ければ、タタリを、タタリの配下を凌駕していれば、死する者すらいなかったはずだ。
「………」
寒さで悴む指、しかし、業火に呪力を纏わせれば、その寒さすら感じなくなっていた。煮えたぎるような釜の中の様に、呪力は燃え盛っていた。
「ふんっ‼︎」
居合斬りで抜き出した業火の刀身は、舞い落ちる一粒の雪結晶を真横に切り裂く。切り裂かれた雪は互いに違う方向へ向いてゆっくりと地面に落ちる。
「ふぅ…」
刀身を回転させ、鞘へと納める。集中させていた精神をゆっくりと緩めると、口から白い息が漏れる。
「まだまだだな…」
強さと精神は連動していると考えている。自分の実力が上がれば、自ずとその精神は高揚してしまう。何も考えずにただ錬磨を続けていれば、精神に驕りを生むだけだ。
それでは駄目なのだ。幾多の戦いに身を投じてきたからこそ分かる。
剣術に完成はない。どれだけ極めようとも、それは未完成に過ぎない。極限を超えた更なる高みを目指すためには、そう考えるのが必要不可欠である。
「少し休んで、もう一度だ…」
◇
「乾杯」
「乾杯やぇ」
藤香の私室では、彼女に招かれたミィアンが藤香と盃を傾けていた。振る舞われたのは、互いの秘蔵の酒である。
「年の瀬に雪見酒って、中々風流な感じがしてええなぁ。寒いけど」
「飲んだら温まる」
「ふふ、藤香はんええ飲みっぷりやぇ、今日はどっちが先に飲み潰れるか、勝負しようかぁ」
「望むところ」
◇
「全く、お前はいつになっても子どもみたいだな」
「何をぉ!あんたみたいな筋肉馬鹿に言われたくないわ!」
「まぁまぁ、二人とも。久しぶりに再会したのですから、仲良くしましょうよ。せっかく、御二方の大好きな甘味をご用意したのですから、ね!」
常世、黄泉の国の瑞穂の屋敷では、珍しく剣史郎を交えた葦原の面々が集まっていた。
「ふんだ!たまには顔を見せに来いって言っても、全然来てくれないし」
「なら、そう言うお前が来てくれたら良いだろ。俺も忙しいんだ」
「それに、この前だって供物の大福ほとんどこいつに食べられたし‼︎」
「お前だって10個も食ってたろ」
「最低でも20個は食べたかったの‼︎」
「あはは…」
舞花は二人の痴話喧嘩に呆れつつも、3人分の茶を淹れる。かつては大御神と神器、今では次代の若者にその役目を譲り、ただの人同士になってしまったカミコと剣史郎。年の瀬には、こうしてカミコの屋敷に集まり、昔話に花を咲かせる。
「常世だと、どうしても季節の変化と縁がないから、現世との感覚もずれちゃうのよね」
「ここじゃあ一年中桜が満開だからなぁ。まぁ俺も、これはこれで好きだが」
「私も、ここの桜が大好きですね」
舞花が振る舞ったのは、桜の花びらが添えられた甘味『羊羹』だった。
皇暦一年、建国から今宵に至るまで、波乱に包まれた皇国最初の年が、静かに終わりを告げようとした。
雪は深々と降り、皇宮の中庭に白銀の絨毯を敷いていた。廊下の柵に手をつき、何も考えずにその光景を眺める。
心を無にして、雪が降るのを眺める。雪がしんしんと降る様は不思議といつまでも眺めていられる。それほど、自分の心と体に疲れが溜まっていたのだろう。
「いづれほど、彩り飾りて、着飾れど、無垢なる白雪に、勝ることなし」
「良い歌ですね、瑞穂様」
私が振り返ると、そこには同じように分厚い羽織を纏った千代が、手を擦りながら立っていた。
「千代…」
「ふふ、盗み聞きをお許しください。その詩は、如何なる意味に御座いましょうか?」
「どれだけ着飾ったりしたとしても、美しく、心を奪われる雪の純粋無垢な白さには敵わないって意味ね」
「確かに、雪ってこうしてずっと眺められますし、綺麗ですものね。それにしても、瑞穂様は昔からよく詩をお詠みになられますね。私は歌を詠むなんて才能はないので、瑞穂様の才には羨ましく感じてしまいます」
「まぁ、ぶっちゃけ下手くそだがら、あまり他人には聞かれたくないのだけどね。ほら、何というか。私だって素人だし、詩人が聞いたら落第点だろうし」
「そういうものですか??私はとても素敵だと思いますよ??」
何も媚びることなく、ただ純粋に自分の詩を褒める千代の笑顔を見て、深く考えることがどうも馬鹿らしくなってしまった。
私も思わず、笑いをこぼしてしまう。
「実は、この詩にはもう一つの意味があるの」
「もうひとつ??」
「白雪千代、あなたに掛けた詩よ。あなたのような純粋無垢の心の持ち主、迷いや憂い、怒りなどに染まらず、常に自分を見据えて真っ直ぐに生きている子には敵わないって」
「ふふ、持ち上げ過ぎですよ瑞穂様。それに、たった今考えたのでは⁇」
「ばれちゃった⁇」
「ばればれですよ」
「ははは」
「ふふふ」
千代は私と同じように柵に手を掛けると、深々と降る雪の結晶を手のひらで優しく受ける。
「淡雪の、降り積もる様を、眺むと、己に寄り添ふ、友のごとし…」
「え…千代、あなた」
「瑞穂様に習って、即興で詠んでみました。淡雪が降り積もる様を眺めていると、まるで自分に寄り添う友のように感じるという意味です。今日は、朝まで雪が降るみたいです。明日の朝には、もっと深く積もっているかもしれませんね」
「そうね。何だかんだで今年も、もう終わるのね…」
私と千代はしばらく、雪の降る様を眺めることにした。
◇
雪が降る中、俺は道場である心刀殿の傍らに立ち、精神を集中させる。例え雪が降ろうとも、例え強大な敵を討ち取ろうとも、俺は一日たりとも剣術の錬磨を怠らない。
自分は、まだ半人前なのだ。
先の大和での戦い、かつての俺が倒すことのできなかったタタリ。刃を交えて分かったのが、今の俺の実力では敵わなかったと言う事。
瑞穂を始め、仲間の手助けがなければ勝てなかったこの悔しさは、自分自身にしか分からない。そして、己がもっと強ければ、タタリを、タタリの配下を凌駕していれば、死する者すらいなかったはずだ。
「………」
寒さで悴む指、しかし、業火に呪力を纏わせれば、その寒さすら感じなくなっていた。煮えたぎるような釜の中の様に、呪力は燃え盛っていた。
「ふんっ‼︎」
居合斬りで抜き出した業火の刀身は、舞い落ちる一粒の雪結晶を真横に切り裂く。切り裂かれた雪は互いに違う方向へ向いてゆっくりと地面に落ちる。
「ふぅ…」
刀身を回転させ、鞘へと納める。集中させていた精神をゆっくりと緩めると、口から白い息が漏れる。
「まだまだだな…」
強さと精神は連動していると考えている。自分の実力が上がれば、自ずとその精神は高揚してしまう。何も考えずにただ錬磨を続けていれば、精神に驕りを生むだけだ。
それでは駄目なのだ。幾多の戦いに身を投じてきたからこそ分かる。
剣術に完成はない。どれだけ極めようとも、それは未完成に過ぎない。極限を超えた更なる高みを目指すためには、そう考えるのが必要不可欠である。
「少し休んで、もう一度だ…」
◇
「乾杯」
「乾杯やぇ」
藤香の私室では、彼女に招かれたミィアンが藤香と盃を傾けていた。振る舞われたのは、互いの秘蔵の酒である。
「年の瀬に雪見酒って、中々風流な感じがしてええなぁ。寒いけど」
「飲んだら温まる」
「ふふ、藤香はんええ飲みっぷりやぇ、今日はどっちが先に飲み潰れるか、勝負しようかぁ」
「望むところ」
◇
「全く、お前はいつになっても子どもみたいだな」
「何をぉ!あんたみたいな筋肉馬鹿に言われたくないわ!」
「まぁまぁ、二人とも。久しぶりに再会したのですから、仲良くしましょうよ。せっかく、御二方の大好きな甘味をご用意したのですから、ね!」
常世、黄泉の国の瑞穂の屋敷では、珍しく剣史郎を交えた葦原の面々が集まっていた。
「ふんだ!たまには顔を見せに来いって言っても、全然来てくれないし」
「なら、そう言うお前が来てくれたら良いだろ。俺も忙しいんだ」
「それに、この前だって供物の大福ほとんどこいつに食べられたし‼︎」
「お前だって10個も食ってたろ」
「最低でも20個は食べたかったの‼︎」
「あはは…」
舞花は二人の痴話喧嘩に呆れつつも、3人分の茶を淹れる。かつては大御神と神器、今では次代の若者にその役目を譲り、ただの人同士になってしまったカミコと剣史郎。年の瀬には、こうしてカミコの屋敷に集まり、昔話に花を咲かせる。
「常世だと、どうしても季節の変化と縁がないから、現世との感覚もずれちゃうのよね」
「ここじゃあ一年中桜が満開だからなぁ。まぁ俺も、これはこれで好きだが」
「私も、ここの桜が大好きですね」
舞花が振る舞ったのは、桜の花びらが添えられた甘味『羊羹』だった。
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