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総撃編
第56.5話 今年の夏は
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宇都見国との戦いが終結を迎え、戦後処理に追われていた瑞穂。
特に、王がいなくなり過去の大国となってしまった宇都見国の今後については、早急にことを進めなければならなかった。宇都見国については、胡ノ国の皇である華宵咲夜と、斎国の烈丕、さらには宇都見国に併合されていた旧諸国連合の代表たちを交えて話が進んだ。
瑞穂は領土拡張が目的ではないため、宇都見国の統治について皇国は一切介入しないとした。宇都見国はもともと都ごとに首長が力をもっており、元王が都を傘下に治めることで創られた大国であるという特徴を持っていたため、元王なき今は各首長が都とその周辺を分割統治することとなった。
そして、全ての首長たちが皇国、しいては皇国皇である瑞穂に忠誠を誓った。
全ての戦後処理を終えた後、瑞穂は戦に従事した者達に順次休暇を与えることにした。戦時体制から緊急時招集体制へと格下げし、従軍兵士にも恩賞と休暇を与えることとなった。
「やっぱり、自分の屋敷が一番落ち着くわね…」
御剣たちと共に故郷である葦原村へと戻ってきた瑞穂は、村長だった頃に自分が住んでいた屋敷へと来ていた。今はもう、故郷に里帰りした彼女達を出迎えてくれる者は少なくなったが、今だに生き残った村人たちは瑞穂の帰りを喜んだ。
風に吹かれた風鈴が心地よい音色を奏でる。あれほどの戦火の中でこの屋敷が焼け落ちずにいたのも、命を落としてでも守りきるべき葦原の宝として、亡き信濃たちが戦ったおかげであった。
「瑞穂」
縁側で涼んでいると、御剣が瑞穂のもとへとやってくる。
「少し付き合ってくれないか?」
「構わないけど、みんなして何処に?」
「兎にも角にも、ついてきてほしい」
やってきたのは、村の西側を南北に流れる川だった。子どもの頃、瑞穂達がよく遊んでいた思い入れのある場所だった。その川辺には、装束を捲り上げた千代たちが待っていた。
「あなた達、屋敷にいないと思ったら…」
「瑞穂様、遊びましょう!」
「えっ!?」
「先にずぶ濡れになった方が負けだ」
「みっちゃん、勝負!」
「えっ、え!?」
川に到着してすぐ、御剣達は川に入り水浴びをする。凛に手を引かれた瑞穂は、普段着の装束のまま川の中へと引きずり込まれてしまった。
子どもの頃ならいざ知らず、この歳になってまで川で遊ぶの仲間を見て、瑞穂は戸惑っていた。
「そりゃ!」
「きゃっ!」
御剣のすくった水が瑞穂にかかる。体が火照っていたせいか、ひんやりとした水が気持ち良く感じる。
「やったなぁ!」
戸惑いつつも童心に返った瑞穂は、これでもかと御剣達に水を浴びせる。一通り落ち着いた頃には、全員の装束は水浸しになり、藤香に至っては寝転ぶ様に川に浸かって涼んでいる。
「はぁ、はぁ、疲れた」
「気持ち良かっただろう。暑い時は水に入るのが一番だ」
「もう、服がずぶ濡れよ」
「たまには良いですね。こうして昔みたいに遊ぶのも」
昔は暇さえあれば、夏場はこうして川に来ては、瑞穂達は無邪気に遊んでいた。今は各々が責任ある立場となり、こうして遊ぶことすらままならない。
蝉の鳴き声が響く中、瑞穂は足を川に浸けて空を見上げる。この時期特有の大きな入道雲が、青空に浮かんでいた。
「こんな日が、ずっと続けばいいのに…」
誰もが戦に怯えることなく、こうして夏の1日を満喫できる世界。それが本当の平和な世界なのではないかと、瑞穂は呟いた。
「さえずるは、小鳥の歌と、蝉の声、何を伝えし、何を思し」
「その歌、どういう意味だ?」
隣に座った御剣がそう聞く。
「小鳥や蝉の鳴き声は、綺麗だけど私たちに一体何を伝えようとしているのかなってこと。皇という一国の長になれば、それまで理解しようとしなかったことを理解しようする。ただ心地よい、鳥や蝉の鳴き声の意味すら、ね」
「それ相応の立場になれば、考えることも多くなるってことか。真面目だな」
「真面目じゃなきゃ、こんな政なんて出来っこないわ。私利私欲しか脳がない奴が国の長になれば、不幸になるのは民草よ。ひゃっ!?」
すると御剣は、瑞穂の肩を揉む。
「肩の力を抜け。瑞穂はいつも真面目にやってるんだ。今日くらいは目一杯楽しめばいい」
「そうね。そうするわ」
「瑞穂さまー!お魚が焼けましたよ!」
香ばしい匂いが鼻をくすぶる。
こうして、瑞穂は葦原の面々と休暇を満喫する。
今年の夏は、ゆっくりと、そして静かに過ぎ去る。
特に、王がいなくなり過去の大国となってしまった宇都見国の今後については、早急にことを進めなければならなかった。宇都見国については、胡ノ国の皇である華宵咲夜と、斎国の烈丕、さらには宇都見国に併合されていた旧諸国連合の代表たちを交えて話が進んだ。
瑞穂は領土拡張が目的ではないため、宇都見国の統治について皇国は一切介入しないとした。宇都見国はもともと都ごとに首長が力をもっており、元王が都を傘下に治めることで創られた大国であるという特徴を持っていたため、元王なき今は各首長が都とその周辺を分割統治することとなった。
そして、全ての首長たちが皇国、しいては皇国皇である瑞穂に忠誠を誓った。
全ての戦後処理を終えた後、瑞穂は戦に従事した者達に順次休暇を与えることにした。戦時体制から緊急時招集体制へと格下げし、従軍兵士にも恩賞と休暇を与えることとなった。
「やっぱり、自分の屋敷が一番落ち着くわね…」
御剣たちと共に故郷である葦原村へと戻ってきた瑞穂は、村長だった頃に自分が住んでいた屋敷へと来ていた。今はもう、故郷に里帰りした彼女達を出迎えてくれる者は少なくなったが、今だに生き残った村人たちは瑞穂の帰りを喜んだ。
風に吹かれた風鈴が心地よい音色を奏でる。あれほどの戦火の中でこの屋敷が焼け落ちずにいたのも、命を落としてでも守りきるべき葦原の宝として、亡き信濃たちが戦ったおかげであった。
「瑞穂」
縁側で涼んでいると、御剣が瑞穂のもとへとやってくる。
「少し付き合ってくれないか?」
「構わないけど、みんなして何処に?」
「兎にも角にも、ついてきてほしい」
やってきたのは、村の西側を南北に流れる川だった。子どもの頃、瑞穂達がよく遊んでいた思い入れのある場所だった。その川辺には、装束を捲り上げた千代たちが待っていた。
「あなた達、屋敷にいないと思ったら…」
「瑞穂様、遊びましょう!」
「えっ!?」
「先にずぶ濡れになった方が負けだ」
「みっちゃん、勝負!」
「えっ、え!?」
川に到着してすぐ、御剣達は川に入り水浴びをする。凛に手を引かれた瑞穂は、普段着の装束のまま川の中へと引きずり込まれてしまった。
子どもの頃ならいざ知らず、この歳になってまで川で遊ぶの仲間を見て、瑞穂は戸惑っていた。
「そりゃ!」
「きゃっ!」
御剣のすくった水が瑞穂にかかる。体が火照っていたせいか、ひんやりとした水が気持ち良く感じる。
「やったなぁ!」
戸惑いつつも童心に返った瑞穂は、これでもかと御剣達に水を浴びせる。一通り落ち着いた頃には、全員の装束は水浸しになり、藤香に至っては寝転ぶ様に川に浸かって涼んでいる。
「はぁ、はぁ、疲れた」
「気持ち良かっただろう。暑い時は水に入るのが一番だ」
「もう、服がずぶ濡れよ」
「たまには良いですね。こうして昔みたいに遊ぶのも」
昔は暇さえあれば、夏場はこうして川に来ては、瑞穂達は無邪気に遊んでいた。今は各々が責任ある立場となり、こうして遊ぶことすらままならない。
蝉の鳴き声が響く中、瑞穂は足を川に浸けて空を見上げる。この時期特有の大きな入道雲が、青空に浮かんでいた。
「こんな日が、ずっと続けばいいのに…」
誰もが戦に怯えることなく、こうして夏の1日を満喫できる世界。それが本当の平和な世界なのではないかと、瑞穂は呟いた。
「さえずるは、小鳥の歌と、蝉の声、何を伝えし、何を思し」
「その歌、どういう意味だ?」
隣に座った御剣がそう聞く。
「小鳥や蝉の鳴き声は、綺麗だけど私たちに一体何を伝えようとしているのかなってこと。皇という一国の長になれば、それまで理解しようとしなかったことを理解しようする。ただ心地よい、鳥や蝉の鳴き声の意味すら、ね」
「それ相応の立場になれば、考えることも多くなるってことか。真面目だな」
「真面目じゃなきゃ、こんな政なんて出来っこないわ。私利私欲しか脳がない奴が国の長になれば、不幸になるのは民草よ。ひゃっ!?」
すると御剣は、瑞穂の肩を揉む。
「肩の力を抜け。瑞穂はいつも真面目にやってるんだ。今日くらいは目一杯楽しめばいい」
「そうね。そうするわ」
「瑞穂さまー!お魚が焼けましたよ!」
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こうして、瑞穂は葦原の面々と休暇を満喫する。
今年の夏は、ゆっくりと、そして静かに過ぎ去る。
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