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決戦編
第57話 迦ノ国、大和へ侵攻す
しおりを挟む大和南方 登勢
皇国と宇都見国による戦が終結してから幾時が経ち、夏が過ぎた頃。大和の南方に位置する登勢では、今まさに大国同士の戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
地を揺らすほどの振動。平野を埋め尽くすほどの迦ノ国の大軍を平野に築かれた陣地で迎え討つのは、大和朝廷の七星将のコチョウ、そしてゴウマ率いる大和朝廷軍。
迦ノ国が大和朝廷に宣戦を布告したのだ。
「蛆虫どもが。大和に牙を剥くとは愚かな」
「作戦はどうされますか、ゴウマさん?」
満を辞して迦ノ国の侵攻を迎え討つのは、七星将、豪傑のゴウマと冷血のコチョウ。そして2人が率いる1万の大和朝廷軍であった。
「作戦など不要だ。我が奴らを殲滅する。貴様はここにいるとよいわ」
「はいはい、分かりました。じゃあ、私はお邪魔みたいですので守りに徹させてもらいますね」
ゴウマの返答にそもそも期待していなかったコチョウは、そう言って天幕の中へ戻っていく。そんなコチョウを睨みつけるゴウマであったが、すでに彼の意識は目の前の迦ノ国軍に集中していた。
一方、相対する迦軍。
「敵は大和の七星将、ゴウマとコチョウ。2人はあまり気が合わないみたいですので、よほどの事がなければ連携を取ってくることはないでしょうね。しかし、個々の力は卓越しているので油断は出来ませんが」
「大和も阿呆よ。自国を本気で滅ぼそうとしている相手を前に、仲の悪い将同士を組ませるなど。余程、我らを下に見ているのか。迦ノ国程度に大和の威光は揺らぐまいと」
平原を進む迦ノ国軍の本陣では、左大臣のジュラと右大臣のオルルカンの姿があった。
「しかし、我らが皇も思い切ったことを決断されましたね。まさか、大和と一戦交えることになるとは」
「俺も驚いた。しかし、皇のことだ。我らには想像もつかない秘策を持っているのだろう」
「その手始めが、七星将の討伐といったところですか。七星将は大和の要。はてさて、結果はどうなることか」
「もう後には引けぬ。対皇国のために増軍しておいた部隊も、全軍がすでにこちらに合流している。開戦から全力で行くぞ」
甲冑を身に纏ったジュラは、大刀を手に陣形の合間を通り先頭へと向かう。迦国兵たちの視線は眼前の敵に注がれており、すでに迦軍は戦闘準備を終えていた。あとはジュラの一声だけであった。
「では諸君。大和の連中に寝ても覚めない悪夢を見せるとしようではないか。全軍、前進だ!」
銅鑼の音が鳴り響くと、迦ノ国の大軍が一斉に動き始める。多数の部族によって構成されている迦軍は、部隊ごとに特色のある防備を整えているのが特徴的である。
「鳥牙族、前へ!」
先頭を任された部隊は、鳥牙族。身体能力が飛び抜けて高い上、彼らの騎乗する馬は他の部族の馬よりも脚が速いことで知られている。1千騎の鳥牙族の騎兵たちは、大和兵たちの予想よりも遥かに早く、大和の先頭と会敵することになった。
「さぁ、料理の時間だ」
鳥の仮面を身に付け、異様な雰囲気を醸し出す鳥牙族の騎馬兵は、自らが得意とする槍を手に大和の防御陣へと突撃する。本来であれば会敵する前に弓兵による迎撃が行われるはずであったが、予想外の脚の速さに掃射された大和兵の矢は間に合わず、ほぼ無傷の状態で騎馬兵は大和軍と激突する事になった。
「ぎゃあ!?」
「こいつら馬鹿みたいに速いぞ!」
「通すな!」
大和の盾兵たちが騎馬兵の行く手を阻もうとするが、恐ろしく速い騎馬の勢いに蹴散らされ、徐々に突破されていく。遅れて後方に配置されていた大和騎馬兵による迎撃が行われ、何とか戦線を維持することができていた。
しかし、騎馬兵の突撃も束の間、混乱し崩壊仕掛けていた先頭に後続の迦軍歩兵隊が進入する。一度崩壊しかけた防御陣はすぐに立て直すことが出来ず、一時形勢は迦ノ国側に傾くことになった。
◇
大和と迦ノ国による戦いが始まる中、ここ大和の帝宮では帝ミノウ、そして防衛に出たゴウマとコチョウを除く七星将、皇女であるカヤを交えた朝議が行われていた。
議題は主に二つ。一つは突如として大和に侵攻を開始した迦ノ国への対応策。そしてもう一つは、宇都見国を打ち倒し東の大国となりつつある皇国、自らを大御神と宣言した瑞穂之命についてだった。
「聖上、登勢に対する迦ノ国の侵攻は、迦軍のほぼ全ての兵力を結集したものであると考えられます。迦軍は部隊を、南の国境地帯である登勢に密集した状態で配置し、そのまま平野を北上する見込みです」
「解せんな」
「聖上?」
「解せぬのじゃ。あのウルイがなぜ今更大和へ刃を向けた。迦ノ国は建国より15年、歴史は浅くも大和の力は大いに解しておるはずじゃ。ハクメイよ、何かおかしいとは思わんか」
「実は、私も薄々感じておりました。すでに迦ノ国へ放っている草から、不確かではありますがいくつか気になることが」
「申してみよ」
「報告は2つ、半月ほど前、神滅刀と呼ばれる一振りの刀が迦ノ国皇、ウルイの手に」
神滅刀の名を聞いたミノウの表情が一気に強張る。
「なん、じゃと…」
「聖上、神滅刀とは一体…?」
「神滅刀とは、彼の禍ツ大和大戦で大御神を斬ったと言われる伝説の妖刀じゃよ」
そう答えたのは、見た目は幼女と言わんばかりの幼さを持つ七星将の一人、調律のレイセンであった。
滅多に内裏から出ることのない彼女が、珍しく朝議の場で言葉を発したことに、ミノウをはじめその場にいた者たちは驚愕する。
「レイセンの言う通り、神滅刀はかつて、大和大神たちが時の刀匠、獅子神刻庵に造らせた代物。それは文字通り、大神ですら斬ることの出来る曰く付きの妖刀じゃ…」
「大神を斬る。それは誠でございますか?」
「左様。大戦の後、神滅刀は大御神の初代斎ノ巫女によって、明風神社に封印されておったはずじゃ。なぜ、それが…」
「しかし、今の時点では信憑性に欠ける。本当だとすれば、その様な大層な妖刀を手にしたことで、ウルイが大和に刃を向けて来たのも得がいく」
「ハクメイ、もう一つは?」
「迦ノ国は、海運国家である詠と手を組んだとの事です」
「奴らは伽浪灘、和泉湾を牛耳っておる海運国家。奴らは大和の港を狙っておる。勝つと見込んで、迦ノ国に付いたのじゃろう」
詠が迦ノ国についた事に、さして驚きを見せないムネモリ。それは帝ミノウも同じであった。
大和の南側、伽浪灘と和泉湾に挟まれる内海に位置する詠は、小島ではあるが穏やかな内海と外海への経路が確保できることから、古くから海運で栄えていた。詠は正確に言うと国家ではなく、島内で一番力を持つ海運組合の所有地であり、その実権を握るのは加茂海運商会の会長、加茂であった。
「詠は私設の海上部隊を有している。先日、迦ノ国の西側へと上陸しようとした大和の軍船が尽く返討ちにあっています。陸では無双の力を発揮する我らですが、彼らの前では武装漁民程度と言ったところでしょう」
「皇国に助力を頼むのはどうかな。僕たちだけでも負ける気はしないけど、宇都見国を倒すくらい強力な皇国なら、西から攻め入ってもらうだけでこっちの負担は少なくなると思うけど」
「カゲロウ、其方は何を言っておるのじゃ」
カゲロウの言葉に異を唱えたのは、朝議の場に出席していたカヤだった。
「其方は是非曲直で皇国救援を否定したはずじゃ。なのに、今更厚かましく皇国に救援を求めると申しているのか。其方も知っておるじゃろう、皇国と迦ノ国は仮にでも同盟関係であることを」
「えぇ、存じていますよ皇女様。だから、同盟関係を逆手に取り、油断している迦ノ国に攻め入ってもらうということです」
「戯言を抜かすでないわ!其方は皇国皇に、裏切り者の名を着させようと言うのか!」
「カヤ、カゲロウ。双方とも静かにせよ」
ミノウは低い声でカヤとカゲロウの口論を収める。いつもは温厚で優しさに溢れるミノウが、帝の威厳を全面に出して制する。
「カヤよ、其方はシオンと共に皇国へと行くのだ」
「お父上、それは一体…?」
「皇国皇に会い、儂の言葉を伝えてくるのじゃ」
「まさか、お父上は皇国をこの戦いに巻き込むと言うのか!?」
「追って其方に書状を渡し言葉を伝える。シオン、任せるぞ」
「承知にございます」
「朝儀はこれにて終了する。下命はハクメイを通じて其方らに伝える。ハクメイ、儂の部屋に来い」
「承知いたしました」
「これより大和は、全戦力をもって迦ノ国と勝敗を決する。大和に楯ついた代償、しかと払わせる。全員、心して掛かれ」
折しも、朝儀の終結と時を同じくして登勢の地で大和と迦ノ国が激突する。
◇
皇国 皇宮
皇城の中にそびえ立つ皇宮では、ある者達を出迎えるため、上は文官から下は女官まで大忙しに動き回っていた。それも、宇都見国との戦に勝利した皇国、胡ノ国、斎国、そして神居古潭と琉球王国の従軍者を称するため、この皇都には輝夜を初めとする各国の重鎮達が軒並み顔を揃えているのだ。
連合軍として参加し、各々武勲を納めた者達は主君達にその武勲を称される。特に、連合軍の将として宇都見国の元王をその手で討ち取った将軍凶月は、輝夜から直接褒美を賜った。
「話は日和から聞いたわ、皇国皇。いえ、今は大御神様と呼べば良いかしら」
「今までの呼び方で構いません。一国の皇に変わりはありませんから」
「ふふ、あなたらしい謙遜ね」
会食の場、席が隣り合わせとなった瑞穂と輝夜。片や自らも刀を振るう美しき大御神、片や月姫と称される麗人。この2人が壁を感じられないほど親しく話す様子に、その場にいる者達は自然と目を奪われる。
そんな2人のもとに、女官の1人である葵が、盆に果実酒の入った硝子瓶を持ってくる。
「皇様、果実酒をお持ちいたしました」
「ありがとう葵、あなたが注いでくれるかしら」
「わ、私などでよろしいのですか!?」
「えぇ、お願いできるかしら」
「こ、光栄でございます。では!」
葵は手慣れた手つきで瑞穂と輝夜の杯に果実酒を注ぐ。手慣れているとはいえ、一国の長2人を目の前に緊張しないはずもなく、彼女の手が小刻みに震えていることに瑞穂は気づいた。輝夜に果実酒を注ぐ葵の手に、そっと自分の手を添えてやる。
「あの子、顔を真っ赤にして喜んでいたわ」
「それは良かった」
「瑞穂、少し2人で話せないかしら」
「構いません。では、席を外しましょうか」
輝夜はあえて、瑞穂のことを名で呼ぶ。彼女がこうして人の名を呼ぶときは、対等な立場であり、なおかつ心を許せる間柄であることを暗に示しているからである。
瑞穂は会食の場を離れ、輝夜を自らの自室へと招く。
「迦ノ国のことは、すでに耳に入っているわ。大和の南の地、国境付近の登勢に攻め入ったと…」
「何かおかしいとは思わない?」
「おかしくないといえば、偽りになるわね。大和より劣るとはいえ、迦ノ国は亡国である宇都見国と同等かそれ以上の力を有している。しかしながら、正面から戦えば、あの大和には勝ち目はない」
「大和にいる私の部下の話では、迦ノ国はいくつかの力を得て開戦に踏み切ったらしいわ。瑞穂、あなたは神滅刀という妖刀を知っているかしら?」
その名前を、瑞穂は忘れるはずがなかった。真那村の洞窟にあった遺跡の祭壇に飾られ、謎の人物によって奪取されてしまった代物。
「痛っ」
その名前も、その刀が持つ力も、全て知っていた。故に、ここしばらく感じなかった頭痛が、唐突に瑞穂を襲った。
「どうしたの瑞穂、大丈夫?」
「えぇ、少し頭痛がしたけど、大丈夫」
「そう、なら話の続きに戻るけど。それで、その刀がウルイの手に渡ったと聞けば、あなたはどうする?」
「輝夜、なぜそれを私に?」
「理由は、あなたが大御神であるから故よ。この情報はまだ不確かだけどね。もしそれが本当であれば、ウルイが全力で大和を攻めるのも理解できるわ」
瑞穂にとって、かつて、もう一人の自分であるカミコを追い詰めた刀を野放しにすることはできないと思っている。しかしながら、同盟関係にある以上、瑞穂は表立って迦ノ国に対する敵対行動をとることはできない。
「迦ノ国がどういう意図をもって皇国と同盟を結んだのかは分からない。けれど、この時だけを見れば、大和侵攻に際して障壁となる皇国に先手として楔を打った、と思っていいかもしれないわ」
輝夜の言うことが正しければ、迦ノ国はこの時を見越して、皇国と同盟関係を結ぶことでその動きを封じたということになる。
対する大和は、友好関係ではあるが同盟関係ではない。従って、迦ノ国は目の前の大和という敵にだけ集中できるこということだ。
それが、あの時。優勢であったのにも関わらず、泰縁という将軍を一人討ち取っただけで撤退し、同盟を申し出してきたウルイの策略であれば、これほど先を見通す力は恐ろしい事この上ない。
「堅い話はこれくらいにしましょう。どうだったの瑞穂」
「どうって、何が?」
「あなた、あの咲耶波と戦ったのでしょう。あの、咲耶波をその手で討ち取った時の話、ずっと聞きたかったの」
「咲耶波かぁ。あの人には、色々と学ばせてもらったわ。自分の力不足、皇としての自覚、迷いの弱さ。数えていたらきりがない…」
瑞穂は輝夜に、咲耶波との戦いの結末を話す。咲耶波が妖であったと言うことについては、意外にも輝夜は驚かなかった。
「意外ね。輝夜はあの咲耶波が人外のものであると知っていたの?」
「薄々そう感じていたわ。彼女から感じられた異様な呪力は、人では到底ないものだったから」
「私は、彼女を斬った時、その目に悲しみが溢れていた様に感じた。生まれながらにして、妖であった彼女の生い立ちが、不遇に感じたわ」
戦いの後、咲耶波の過去をシラヌイから聞いた瑞穂。
咲耶波だけではない、これまで瑞穂の前に敵として立ちはだかった者たち全員に通づる事だった。
「私は武に秀でていないし、この手で直接人を殺めたことはないわ。あなたが背負っているものを理解することはできないわ。そもそも、人を殺める気持ちは、平和な世であれば理解する必要なんてないものだけど」
「その通りね。本来であれば、万物はそうあるべき。自分が生きるために他を殺めるというのも一つ。でも、人を殺めるのには相応の重責を負う。人を殺めることのない世が普通。私はそんな責任を知らない世がいいわ」
「ふふ、宇都見国に勝利してどう変わったか確認しようと思ったけど。最初に出会った時から変わっていなくて安心した」
そう言った輝夜は微笑み、装束を整えて立ち上がる。
「乱世の生み出す運命ね。その責任を知ることがない世界を共に創りましょう」
「もちろん」
「困ったときは遠慮せずに言って頂戴、私はいつでもあなたの味方よ」
「嬉しいわ。では、そろそろ戻りましょう」
瑞穂は立ち上がり、輝夜と共に会食の場へと戻った。
◇
「皇国は酒と言い飯といい、何もかも美味いんだなぁ」
「筆頭、会食の場でございますので、あまり粗野な言動は…」
「堅ぇこと言うな。なぁ、仁」
「今も十分美しいですが、品がある方がもっと美しいですよ、凶月殿」
仁にそう言われた凶月は、先ほどまでの粗野な態度から一変し、照れた表情を見せる。
「なっ、あ、あんたがそう言うのなら、はっ、仕方ないな」
殲滅の凶月と恐れられる鬼人の代わりように、周囲の者たちは思わず笑いをこぼす。
「ユーリ様!ホルス!」
「ヤシロ、久方ぶりね」
「おおっ、ヤシロ!」
神居古潭の特使としてこの場に列席した御伽衆のヤシロは、宰相として皇国の重鎮となったユーリと、その弟であり親友のホルスを見つける。ヤシロはホルスと体を組み合い、再会を喜ぶ。
「まさか、お前が御伽衆を率いてくるとは、驚いたよ」
「お前こそ、連合軍の采配士として宇都見国の勝利に貢献したとか。それに、この都の設計もお前みたいじゃないか」
「ホルスは子供のころから設計が得意でしたからね。ヤシロも、しばらく見ないうちに立派になりましたね」
「い、いえ、補佐殿。失礼しました、今は宰相殿で御座いましたね。私には勿体なきお言葉にございます」
各々が会食の場で昔話に華を咲かせている中、御剣はある種の危機感を抱いていた。
「どうしたの御剣、難しい顔なんかして」
「藤香か。少しな…」
「千代も皇国や神居古潭の巫女たちと楽しくしてるし、瑞穂も胡ノ国の輝夜姫と2人。この場の警護は日々斗に任せればいいわ」
御剣が日々斗の方を向くと、笑顔で親指を立てた。
「河岸を変えようか」
2人は会食の場を離れ、皇宮の中庭を歩くことにした。夏が過ぎ、徐々に青々とした木の葉が色を落とし始め、色取り取りの色合いを見せ始めていた。
「ああいうのは、あまり好きじゃない」
「そうだな。藤香は昔から騒がしいのは好きじゃなかったな」
「うん。ねぇ、御剣。さっきは何を思い詰めていたの?」
「この国の今後の事だ。俺たちは、姿の見えない敵に狙われている。例え統一を果たしたとしても、そいつらを倒さなければ俺たちの亡き世では、また新たな戦が起こる」
「そうね」
中庭の池の前に立った御剣は、懐から米を取り出すと、池の中を泳ぐ鯉たちにそれを撒いた。
「池の鯉は、池の大きさに合わせてしか育たない。人も同じだ。瑞穂は、あいつはこの地だけで収まる様な器じゃない。俺はあいつの従者、いや、大御神の御剣として、夢を果たし、龍となるまでこの身を捧げるつもりだ」
「滝を登りし鯉は、龍となりて天を舞う。宋の言葉だったかしら」
藤香はそう言うと、御剣に後ろから抱きつく。突然の出来事に御剣は混乱するが、それを受け入れる。
「矢傷は痛まないか?」
「もう傷は塞がっているわ」
「本当に、昔から変わってないな。痛いなら痛いって、はっきり言えばいい」
「痛い」
そう言った藤香は、珍しく笑顔を見せた。
「無茶はするなよ。お前に死なれちゃ、目覚めが悪い」
「相変わらず、口説き方が下手くそ」
「余計なお世話だ」
御剣たちはまだ、これから自らのもとに訪れる数々の運命に気づいてはいなかった。
待ち受けるのは花を散らす嵐か、はたまた彼らを照らす陽の光か。
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