彼女たちの屋根裏 (生活シリーズ① 新版)

✿モンテ✣クリスト✿

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第8話 パワードユニット2

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「これ、お高いんですよね?」とビジネス脳の響子が木村に聞いた。
「え~、安いんですよ。左右倶利伽羅紋紋クリカラモンモン製品ですと、原価五万円です」
「五万円!」
「ゲルのポリマーが特殊ですが、採寸して3Dのポリゴンメッシュを作成したら、後はほぼ自動でできます。あ!これ、内緒です。自衛隊や警察の防弾チョッキの入札価格が20~25万円です。それで売り込むならちょっとお安くして18万円とか。まだ我が社に内緒で開発していて、開発に目処が立ったら、我が社と私の共同特許にしたいなと思ってます。難点はS・M・Lサイズとか大雑把なサイズでは無理で、宇宙服のように一人ひとりオーダーメイドになることでしょうか」
「五万円!木村さん、一着10万円で私と安納さんと佐藤さんの分を作っていただけないかしら?」と響子が図々しく言う。

「響子さん、こんなもの、何に使うんですか?」と佐藤。
「決まってるじゃない!ゴレンジャーごっこをするのよ。私がアカレンジャーで、安納さんがモモレンジャー。佐藤クンがアオレンジャー。木村さんはクロレンジャーでひとり足りないけどマンションの屋上で対戦ごっこしましょう」
「…何を言っているんだか…理解できない…」
「このご時世、何が起こるかわからないでしょ?ストーカーに刺されるかもしれないし、半グレと格闘しないといけないかもしれない」
「そういうのは警察に任せましょう。安納さんもおられるでしょう?」とこの人、何を考えているんだという顔で佐藤が言った。

「佐藤、いいじゃないか。まだ試作品だし、これを実際どう使うのか、何の役に立つのか、考えてもらうのも良いアイデアだ。ゴレンジャーごっこでも役に立つ」
「そうでしょう?ねえ、木村さん」と響子が勝ち誇った表情で佐藤を見る。「でも、採寸しないといけないんでしょう?今ここでスマホで採寸できるんですか?」と響子が言うと、安納が唐突に「え?脱ぐんですか?ブラも取るんですよね?」とジャージの蛍光イエローのパーカーを脱ぎだした。いくら美人でも警察脳になっている体育会系女子が安納の中身だ。

「安納さん!脈絡なく脱ぎだすのはおやめください!」と佐藤は響子に安納を止めろと目で合図した。女性警察官は体育会系ゴリラとマンガで読んだことがあるが、美人の安納さんもその類かと佐藤は思った。天然のゴリラだ。「おい!木村!採寸はどうするんだ?」
「ぼくのスマホでできますが…九条さん」と木村が響子に採寸方法の画像撮影を説明した。「上半身裸で、このスマホで胸部から肩、脇の下、肩甲骨を撮影して、上腕部、前腕部、手首、手を360度撮影してください。私たちは後ろを向いてますから」

 佐藤と木村が後ろを向いた。「胸部からよね」と響子。「まあ、キレイなおっぱい!ねえ、木村さん、乳首は勃っていた方がいいの?パワードユニットの装着前では乳首が普通の状態で、装着して硬化した後に乳首が勃ったら押されて痛いじゃない?」木村が死にそうな顔をした。「九条さん、硬化後擦れて痛そうなところは、適切に処置してください」適切?

「陥没乳首だったらどうするんだろう?」と響子。
「あ!九条さん!捻らないで!アアン」変な声を出す安納。
「沙織ちゃん、勃たせないとダメでしょ!擦れて痛くなるわよ!」
「九条さん、それ、ダメだって!」
「ほら胸部は終わった。次は、脇の下…肩甲骨を撮影して…上腕部…前腕部…手首…手…終了」

「次は九条さんの番ですからね。早く脱いで…あら!39歳なのにこの体型!まず、乳首ね、乳首!」
「あなた報復しようとしているでしょ?大丈夫よ。27歳の小娘に負けるもんですか。乳首ぐらい勃つわ」
「九条さん、カチンカチンです」
「負けるもんですか」何してるんだ、と佐藤は思った。

「…確かに肌に直接は擦れて痛いという問題があるなあ。草薙素子役のスカーレット・ヨハンソンが着ていたようなボディースーツをブラだけ作って…ラテックスで…」と木村がブツブツ言う。
「正雄、だったら男性はどうするんだ?下半身までおおう場合、股間はどう処理するんだ?」
「それも問題だ。なるほど、実際に製品化する際に色々考えることが多い」多いって、まあ、私にはどうでも良い問題だよなあ、と佐藤。
「あのな、正雄、ポッチリやモッコリが出たそんなパワードスーツ、誰が着るんだ?」
「う~ん…あ!だからギリシャやローマのアマゾネスの甲冑は、胸部に渦巻き状の文様を書いたのか!」
「おまえ、今、凄い真理をついたと思うぞ。塩野七生だってそんなこと気づいていないだろう…じゃあ、モッコリはどうするんだ?渦巻文様か?」
「…竜の文様でもデザインするか?」
「…」

 採寸のための動画撮影が終わった。「後はこの動画を社のサーバーにアップロードすればオッケーです。サーバーが動画を自動でポリゴンメッシュ化してくれます。多少時間がかかります」と木村が言うと、「じゃあ、飲み直しよ!」と酒好きの響子が即座に言う。

 響子の部屋のリビングに四人とも移って酒を飲み直した。「木村さん、これ、ワンダーウーマンが細長い手甲のようなブレスレットで銃弾を跳ね返す場面があるじゃないですか?そういうことはできるんですか?」と安納。
「まだそこまでの段階に至ってません。それで科学警察研究所や防衛装備庁の新世代装備研究所、JAXAなどと共同研究を進めたいなと思っています。ただ、理論的には、弾丸を正面から受けたら凹みが出来て肉体の損傷が発生するでしょうが、弾丸の弾道をそらす程度のことはできるかもしれません」
「早く完成品が見てみたいわ」
「二週間くらいお時間をください。ポリゴンメッシュのデータを元に発泡ウレタン製の型を作ります。それから下地のケプラー繊維が肌に直に触れないように胸の部分だけ通気性のある素材でアンダーウェアを作成、その上からケプラー繊維の下地、金属ポリマーの注入と配線、関節部分の細工、ケプラー繊維の上地、塗装という手順です。でも…本当にゴレンジャーカラーでいいんですね?」
「もちろん!アイアンマンみたいな金の縁取りもお願い!でも、手間がかかるわね」と響子。
「本業が建築の安全具の開発なので、服を仕立てるような作業はよくやります。研究室には工業用ミシンもあって、慣れてます。それに最近は3Dプリンターで何でもできてしまいます。手作業の工程が減って、今や80%は自動化されています。失業しても服飾デザイナーになれますね」

「警察でも木村さんの会社の製品は使われていそうだわ」と安納。
「警察関連で我が社の製品は採用されていますよ。安全靴とか刺股《サスマタ》とか。防犯防災製品も作っているんです。私もワンタッチで犯人を捕縛できる刺股《サスマタ》を開発しました」
「私も訓練であの刺股《サスマタ》、使ったことがあります。犯人捕縛で、距離をおいてワンタッチで手足を瞬時に拘束してロックできますものね」
「今開発しているのは、懐中電灯よりちょっと太いぐらいのランチャーで、クリスマスのクラッカーみたいに発射紐を引くと捕縛ネットが射出されて犯人を絡み取れるという製品。本当は、スタンガンみたいにネットに電流を流せれば良いんですが、上司に『アメリカじゃないんだよ、日本は。売れるわけないじゃん!』と却下されました」

「日本でもスタンガンを警察で導入できれば良いんですけどね。銃の発砲はもちろんダメ、警棒の使用も相手を傷つけない保証がない限りダメ、ダメばっかりで、アメリカなら一人、二人で犯人を捕縛できるのに、日本だと警官四、五人がかりになっちゃうんですよ」
「警察官の死傷よりも犯人の体を優先なんて本末転倒ですね」
「このパワードユニットにスタンガンの機能はつけられないかしら?」
「肩の部分にコンデンサーを仕込めば、AEDみたいな電気ショックを相手に与えられると思いますが」
「それ、欲しいわ」

「安納さん、スタンガンの機能などなくても、このパワードユニット自体で十分凶器になります。安納さん、握力は何キロくらいですか?」
「この前測定したら36キロありました」
「平均以上ですね。女性の平均はだいたい28キロくらいです。男性だと46キロくらい。だけど、パワードユニットの関節部分には、建設用のパワーアシストスーツを強化した人工筋肉を使います。そうすると、筋力はだいたい二倍くらいになる。安納さんの握力も装着後は72キロに強化されます。それにこの鋼鉄以上の硬度を持つ外骨格ですから、リンゴくらい握り潰せます」
「凄いわ」
「プロレス技のアイアンクローで、相手の顔面を鷲掴みにして圧迫すれば、相手はすぐギブします」
「力加減を覚えないと相手に致命傷を与えそうですね」
「そのとおり。筋力増加だけじゃなく、素材自体が金属バットを振り回しているようなものです。相手が生身なら相手の攻撃を自分が受けたってダメージなどありません」
「パワードユニットを装着して、天山広吉のモンゴリアンチョップをやったら、相手の鎖骨をへし折れますねえ。性犯罪者にやってみたいわ。痛快!」と警官の癖がでた凶暴な安納が言う。
「ウェスタンラリアートを食らわせたら相手のあばら骨が折れます」

 佐藤と響子が呆れた顔で二人の会話を聞いていた。「ねえ、佐藤クン、この二人、何の話をしているのかしら?」
「警察官と安全防犯器具開発会社社員の会話ですね。色気もなんにもない」
「木村さんは既婚なの?」
「いいや、独身ですよ」
「お相手はいるのかしら?」
「おい、正雄、おまえ、今、誰か女性と付き合っているのか?」

「いや、誰もいないよ」
「沙織ちゃんは?」
「いませんよ」と安納。
「あの、この前の事故の時の吉崎警部補はどうなの?」と響子が聞くと、「上司命令でペアを組んでいるだけです!自慢じゃないですが、年齢イコール男性とのお付き合いゼロの悲しい女です!」とキレて答えた。
「なら、木村さんとお試しすればいいのに」
「九条さん、ちょっと待ってください。私は42歳ですよ。こんな若くて美人の人なんて…」
「あら、沙織ちゃんもアラサーの27歳よ。たった15歳差。関係ないわよ。警察官と安全防犯器具開発会社社員で気が合うわよ。おまけに、沙織ちゃん、このパワードユニットが製品開発されて特許を木村さんが取ったら彼は億万長者。青色LEDみたいなもの。警官なんていくらキャリア組でも薄給でしょう?玉の輿じゃないの?」
「響子さん、何を言っているんですか!木村さんのお気持ちだってあるわけですし…」と安納。
「あら、木村さんさえよければ、沙織ちゃんは付き合ってもいいってことなのね?」
「私、経験ないです…」ゴリラでもはにかむのか?と佐藤は思った。
「だから、経験を積むのよ。警察関係者としか普段づきあいしてないんでしょ?違う業界の男性と付き合う経験を持つのもいいことよ。木村さんなら佐藤クンの友人なんだから、おかしな人じゃないわよ、ねえ、佐藤クン?」
「オタクという以外は正常だと思います」

 響子が立ち上がってダイニングテーブルから紙切れを持ってきた。「昨日、町内会長さんから株主優待とかで東京◯ィズニーランドのワンデーパスポートを二枚貰ったのよ。明日は土曜日なんだから、二人で行ってらっしゃい」と木村にチケットを押し付けた。「ホテルの宿泊は残念ながらついてないわよ」とニヤリと笑った。
「九条さん…」「響子さん!…」と木村と安納が声を揃えた。
「木村さん、沙織ちゃんは『年齢イコール男性とのお付き合いゼロ』の女の子よ。手つかず!まっさら!据え膳食わぬは男の恥よ!」
「正雄、安納さん、東京◯ィズニーランドのタダ券なんだし、よければ行けば良いんですよ。何も手をつなげとかキスしろとか響子さんは言ってないんだから」
「最初のデートでキスはダメ!恋人繋ぎぐらいはしないとダメ!」と響子。
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