こくら物語 (物語シリーズ③ )

✿モンテ✣クリスト✿

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第2章 こくら物語 Ⅱ 標準語

第23話(2) 原田先生が私のバーに来てくださった!

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 カルテを書きながら、原田先生が「木村さん、お相手がいて羨ましいわ。私なんかご無沙汰だもの」とボソッと言う。率直だわ。

「原田先生みたいにキリッとした美人が、ですか?」
「お恥ずかしい話、婚活パーティーなんかに出るけど、ダメね。女医ってモテない」

「私だって同じですよ。私は美大の院卒で、その学歴を男性が知ると、俺には無理だ!って断られました」昨日まではね。・・・今は一夫多妻だけど・・・
「美大の院卒?珍しいなあ」
「美術品の鑑定が専門でした。でも、それじゃあ、職がなくって、関係ない会社に就職して、セクハラ受けたので、辞めちゃったんです。今は、バーの雇われママさんをやってます」
「美術品の鑑定?すごい世界。想像つかないわ。でも、オーバーキャリアは男性には負担なんだろうなあ。あ、ゴメンナサイ。関係ない話をして」

「かまいませんよ。婦人科を受診して、雑談するのは肩の力が抜けます」
「ねえねえ、木村さん、問診票に『飲酒、毎日』って書いてあったけど、お酒、好きなの?バーに勤めているんだから、好きよね?」
「まあ、健康に差し障りがない程度に」
「ねえねえ、木村さん、そのバーってどんな?」
「オーソドックスな木のカウンターとバックバーに酒瓶が並んでいる、という感じです」
「あら、いいわねぇ~。場所、差支えなければ教えてくださらない?飲みに行きたい。みんな結婚しちゃって、女性の飲み仲間がいないのよ。バー勤めならちょうどいい。木村さんとお話してみたい」
「構いませんよ。これ」とバーの名刺を出した。「ここです。ぜひ、いらして下さい。私も原田先生といろいろお話してみたい」彼女は名刺を受け取って、わぁ~、うれしい、近々お伺いします、と言った。

 ミキちゃんが次の順番で、同じ2番の部屋に入った。支払いを終えて、処方箋を受け取った。近くの薬局でお薬、受け取ってくださいね、と言われる。私は、2番の部屋の前の椅子に腰掛けた。中から、アハハ~というミキちゃんの声が聞こえる。何を話してるんだろう?

 ミキちゃんも受診を終えて、支払いを済ませて処方箋を受け取った。薬局に行って、アフターピルとか、吐き気止め、妊娠検査薬をもらう。

 マンションに帰って、早速、薬を飲んだ。ミキちゃんも飲む。でも、彼女、安全日じゃないの?

「まあ、これでひと安心。妊娠したら、起業なんてできないものね」と私。
「私、妊娠しても良かったけどなあ」
「こら、抜け駆けはいかん!ところで、原田先生と何をお話していたの?あなたの笑い声が外まで聞こえたわよ」
「あ~、あれ。あのね、先生が私の問診票を見て、アフターピル?あら?今の方と一緒ねえ?おっと、ゴメン、個人情報だわ、忘れてね、って言うの。それで、『ハイ、木村は私のお世話になっている姉みたいな人です。同じところで働いてます』って言ったら、『同じバーなんだ。今度お伺いするわね』と言うのよ。直美さん、バーの場所を原田先生に教えたんだね。で、『あれして、36時間?偶然、同じなのね』と言うから、『ハイ!相手も同じです。アハハ』って思わず答えちゃってさ」

「・・・ミキちゃん!!」
「ゴメンナサイ。思わずよ、思わず」
「あなた!原田先生に知られたじゃない!私とミキちゃんが同じ相手としちゃったことを!」
「別にいいじゃん!顔見知りじゃないんだから」
「彼女がバーに飲みに来たら、私はどういう顔をすればいいのよ!」
「え~っとですね、その時には、この横にいる小娘と同じ相手とセックスした35才の美人でぇ~す!小娘ともレズりました!という顔をすればいいのよ」
「・・・」
「え?ダメ?」
「・・・やっぱり、ミキちゃん、頭のネジがはずれちゃったわね・・・」
「もう、ぶっ飛んじゃったから怖いものはありません。三位一体じゃない、3P一体したんで、無敵です!」
「やれやれ」

 それから、昼は小倉市の起業窓口に行ったり、オフィスの内見をしたりした。バーのオーナーに起業するので辞めたいと相談したら、え~、木村さん、まいったなあ、続けらんないの?と言われた。じゃあ、しばらく、岡田美雪と交代でどうでしょうか?その間に私たちも代わりを探します、ということでしぶしぶ納得してくれた。長い間にお世話になったんだから、ちゃんとした代わりを見つけないと。

 4日ほどして、私とミキちゃんが一緒にバーにいる時、原田先生が入ってきた。「今晩わ~」あああ、私はミキちゃんの顔を見る。どういう顔を原田先生にすればいいのよ!ミキちゃんは、ニコッとして「あ!原田先生!ほんとに来てくれたんだ!いらっしゃいませ」と平気な顔をして言った。やれやれ。

 今日は、私もミキちゃんも黒のベスト、白のブラウスに黒のズボン、黒い蝶ネクタイというバーテンダースタイル。ガールズバーじゃないだから、色気で売ってるわけじゃないのよ。でも、まあ、珍しい女性のバーテンがいるバーってことで、人気はあるんだけどね。だから、代わりを見つけるのが難しいってわけ。

「い、いっらっしゃいませ。原田先生」と私。あ~、どういう顔をすればいいんだ?この横の小娘と同じ相手としちゃったアラフォーの女は?
「カッコいい!いいわねえ、そのバーテンダーの制服。中性的魅力だわ。宝塚みたい」と言う。おい、先生もレズかよ?

 彼女はカウンターの私たちの正面に座った。「なににしようかしら?お勧めのウィスキーは?」と聞かれた。

 まずは、コスパのいいものだろうか?「スコッチ?ジャパニーズ?ああ、このバランタインの7年なんてどうでしょう?」と中堅どころの値段のものを勧めてみた。「あら、私もこれよく飲むのよ。ブレンデットウィスキーで、味もいいわ。決めた!ダブル、ロックでお願いします」

 あら、ロックなんだ。ミキちゃんがロックグラスを用意して、チャッチャと作った。まあ、彼女も長い間手伝っているので、大抵のカクテルだってできるのだ。原田先生が「ねえ、お二人共、一緒に飲もうよ」と言う。「え?」「だってさ、お話するのに、相手が素面じゃイヤだもの」「わかりました。ミキちゃん?同じものをいただく?」

 ミキちゃんがもう二つ、ロックを作った。乾杯する。何に?

「ねえ、原田先生、ママはね、この前の受診の時、私が先生に『同じ相手です!』って言っちゃったのを話したら、『私は原田先生にどういう顔をすればいいのよ!』と言うから、『この横にいる小娘と同じ相手とセックスした35才の美人でぇ~す!』って言えばいいのよ、って言ったの。怒ったけど」
「アハハ、岡田さんって面白い。でも、木村さん、『岡田さんの男性、同じ相手とセックスした35才の美人でぇ~す!』という顔はしてないわね。怒ってる。岡田さん、睨みつけられているわよ」
「・・・は、原田先生・・・」
「面白い!私の悲しい婚活の愚痴をしにきたんだけど、そっちの話の方が面白い!ねえねえ、岡田さん、何があったの?」とチェシャ猫が喉を鳴らしてそうなニタニタ笑いで言う。

 こ、小娘、一切合切、話しやがった!レズの話も。私、止めたのにぃ~。原田先生、舌なめずりをして聞いている。こ、こいつも変態なのか?

「へぇ~、そんな偶然の出会いがあるんだぁ~。羨ましいわあ」とミキちゃんが話し終えて言う。「いいなあ、私も仲間に入りたい!」
「ハイィ?三位一体の?レズの?」と思わず私が言って口を押さえた。何、言ってるんだよ、私。女医さんと4P??

「そっちも興味あるけど・・・木村さん、キレイだし。岡田さん、可愛いし」おいおい、レズなのか?あなたは?「それは機会があったらしてみたいけど、その美術品の鑑定と買付、ネットやオークション出品のビジネスの話。ねえねえ、私も出資したいんだけど、ダメかな?」
「ハア?」と私とミキちゃんが同時に言った。
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