こくら物語 (物語シリーズ③ )

✿モンテ✣クリスト✿

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第2章 こくら物語 Ⅱ 標準語

第25話(2) シンガポール行きの機上

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 ところで、コロンボ-シンガポール便は、ベンガル湾を斜め下、南南東に横切る。北緯6度のコロンボと赤道直下のシンガポール。その途中で、インド領アンダマン諸島、ニコバル諸島上空も通過する。

 この海域は、低気圧が発生すると荒れることが多く、それもしばしば低気圧が発生する。海水面の温度も高いので、積乱雲の発生が非常に多い。だから、エアポケットに落ち込むことも多いし、積乱雲に突っ込まないといけないことも多い。もちろん、積乱雲の中は雷が四方八方でとどろいている。

 そういうフライトなのだ。

 フライト中のセックスをスカイハイと呼ぶ。これが予想外に多いのだ。知り合いの男女、見知らぬ男女が、1気圧以下の機内圧の中で大酒を飲む。そうすると、アルコールの回りが地上の5倍にも達する。結果、機内で欲情して、が多いということだ。

 スチュワーデスは、この行為を注意して、停止しなければいけない義務がある。機内は、所属する国家の領海ということ。つかまれば、厳重注意、やめなければ、その国家の法律に従い処罰される。実刑も多い。

 ただし、他の乗客の迷惑にならなければ、乗務員はお目こぼしをすることも多い。むしろ、目の保養と考えている乗務員だっている。これは、乗務員から聞いた話だ。

 と、

 よからぬ想像を私とアイーシャの間でされた方も多いだろうが、私よりも酒の強いアイーシャ、ブランディーが半瓶空いても別に変わった様子もない。

 彼女の専門の血液学の話、彼女の彼氏の外科の話、病院で起こったこと、医師と看護婦の不倫の話。

 私も病院でアルバイトをしていたので、内視鏡の話、最新のファイバースコープ、手術室の話。淫靡な看護婦寮の話。話はドンドン落ちていく。

 周囲はひっそり。乗客は大多数が眠りについている。メインの照明はおとされ、手元灯だけ。読書をしている乗客ははるか前方の2~3名にしか過ぎない。CAも飛行機前部に移っていて、飛行機後部には私たちしかいない。

 かといって、私とアイーシャが身体を接するなんてこともなく、ただ、他の乗客に迷惑がかからないように、小声で次から次へとバカ話しを繰り出していく。

 スリランカの女性というのは、旅行者から見ると真面目で大人しく、貞節そうに見えるが、実際には、ジョークが好きで、猥談が好きで、不倫などもかなり多い。非常に気さくで話しやすい女性達なのだ。もちろん、社会階層、家庭の状態で、その差はあるものだが。

 なぜか、彼女と飲んでいると卑猥なジョークを思い出した。

「アイーシャ、イタリア語を知っている?」
「知らないわ、明彦」
「ふむ、日本語は?」
「もちろん、ノーよ」
「そう、ええっと、イタリア人は女性に手が早いよね?」
「英国人でも早い人がいるわよ?」
「でも、平均でいうと、イタリア人男性、非常に女性に手が早い。日本人女性は、非常にウブな面がある」
「ふんふん」
「ある日のローマで、その典型的なイタリア人が街を歩いていたとしたまえ」
「それで?」
「そのイタリア人、歩いていて、オープンキャフェで本を読んでいる可愛い日本人女性を見た。このイタリア人、日本語のある単語を経験上知っていたんですな」
「うんうん」
「この男性、つかつかと日本人女性に歩み寄って、声をかけたということ」

-∞- -∞- -∞- -∞- -∞- -∞-

イタ公「お嬢さん、こんばんわ、いいお天気で」
日本女「こんばんわ、本当にいいお天気!」
イタ公「どちらからお越しで?」
日本女「東京からまいりました」
イタ公「おお!日本人の方でしたか?ご旅行で?」
日本女「そうですわ(見ればわかるじゃない!)」

イタ公「もう、ローマは長いのですか?」
日本女「3週間になります」
イタ公「3週間も!それでは、さすがに日本食が恋しくなっているんじゃありませんか?ローマ、日本食レストランも少ないし」
日本女「そうですねえ・・・そういわれれば、パスタやシーフーヅばかりで、日本食を食べていませんわ」

イタ公「日本で、え~、ツナのことをなんて言いましたっけ?え~と・・・」
日本女「カツオのこと?」
イタ公「(ゾクゾクして)、そうそう、カツオゥ(と、ちょっとイタリア風に訛る)!」
日本女「カツオかぁ~、食べたいわぁ~(イタ公がますますゾクゾクするのにも気付かず・・・)」

イタ公「私のアパートメントに、新鮮な、もちろん生ですよ、カツオがあるんですよ、大きくてウェットでとりたて。生きているみたいな・・・」
日本女「あら?!」
イタ公「でも、なんでしたっけ?日本の『サシミ』?っていうんですか?それの調理方法を知らないんですよ、ボクは・・・」
日本女「まあ?!」

イタ公「『ワサビ』っていうのと、ソヤソウスもあります」
日本女「まあまあ・・・」
イタ公「どうです?いいワインもある。ボクのアパートメントで、カツオゥをつまみにワインで一杯というのは?」
日本女「え~、どうしましょ?」
イタ公「カツオゥも悪くなってしまいますし、是非是非、お寄りください、今からでも!」
日本女「お言葉に甘えましょうかしら?」
イタ公「そうと決まれば話が早い!ちょ、ちょっと、お勘定!」

 日本女性は、イタ公のカツオゥを見せられて、最初は躊躇しましたが、そこはイタ公、ウブな日本女性をホイホイうまく持っていくのが得意。彼女にカツオゥの調理法をいろいろ伝授して、彼女はその調理法に非常に関心を示して、おいしくおいしく、イタリアのカツオゥを頂きましたとさ。食後にはおいしいワインを。ワインを飲んだら、また、カツオゥを賞味して・・・

-∞- -∞- -∞- -∞- -∞- -∞-

「おしまい」と私。
「ちょっと、ジョークのポイントがわからないんだけど・・・」
「ああ、忘れていたな。アイーシャ、日本語のツナの意味の『カツオ』、イタリア語の『カツオゥ』になるとどういう意味か、想像できる?」
「まったく想像出来ないわ」

 私は小さい声で彼女の耳元に囁いた。「イタリア語の『カツオゥ』の意味は、男性性器、だよ」
「ま!明彦ったら!」
「ホントだよ、この話」
「キャハハハ」

 非常に楽しい2時間が過ぎていった。

 そして、飛行機はアンダマン諸島を越えて、ニコバル諸島上空に。

 急に、機内のメインの照明がつく。"Fasten Sheet Belt"のサインが点灯する。機内アナウンスが流れる。

「現在本機はニコバル諸島に近づいておりますが、前方に低気圧、積乱雲が発生している模様です。乗客の皆さんは席に戻り、シートベルトをしっかりしめてください」

 おっと、やれやれ、とシートベルトをする。アイーシャも同じ。ブランディーの瓶を座席の前のポケットに突っ込んで、テーブルを戻す。グラスは・・・ちょっと残っているのを飲み干して、やはりポケットにいれる。

 急にエアポケットに入ったようで、機が数百メートル落ち込んだ。ジェットコースターの下りと同じ。普通のエアポケットよりもかなりひどい。

 機はまた上昇した模様だが、ガタガタと振動が続き、窓の外は雷光が見える。それがどんどん近づいてきて、機体の付近をかすめるのがわかる。

 アイーシャは怖がっている。

 私は、「よくあることだよ、アイーシャ」といった。「でも、明彦、怖いわ」と彼女。

 しかし、よくあること?今日のよくあることはちょっとひどい。気象予報で回避出来ない話だったのか、気象予報がはずれたのか?こんな雷雲にまともに突っ込むことはあまりない。機体の周囲でそこいら中が雷光で満ちている。

「アイーシャ、大丈夫?」
「明彦、私の手を握っていて」
「わかった」

 アイーシャの右手を左手でしっかりと握った。それでも、彼女はガタガタふるえる。彼女の左で雷光が炸裂する。悲鳴を上げる彼女。

 私は窓から彼女を遠ざける(いまさら席をかわれるわけもない)ために、席の間のハンドホルダーを持ち上げて、彼女の肩を抱く。私の方に身体をよせる彼女。

 私の方に身体を傾け、彼女は上体を預けてくる。彼女の頭の後ろを左手でささえ、右手で彼女の背中をさする。彼女は私の胸に顔を埋める。私は彼女を抱きしめる。この状態が20分ほど続いた。

 そのうちに、雷雲群を通過したのか、だんだんと機体の震動は収まり、機は常態を取り戻しつつあった。

 変な話で、勃起してしまった。これは、美人を抱きしめているのと、人間が本能的に危険な状態になったとき、性的興奮を覚えるという理由からじゃないかと思う。ちょっと恥ずかしい。気付かれないことを祈るだけだ。しかし、彼女の右肘が私の勃起した部分に触れてしまう。

 後から彼女が言った話だが、危険な状態で性的興奮を覚えるのは、何も男性だけではないということ。彼女も濡れてしまったそうなのだ。いや、そうなのだ、ではなく、数時間後、実際にその濡れがひどいことを確認した。

 アイーシャは、顔を上げて私の顔を見る。「ゴ、ゴメン・・・」と私。無言で首を振るアイーシャ。
 
「落ち着いたみたいだね、もう大丈夫のようだよ・・・」
「このままでいて・・・」
「ちょっと困っているんだけど・・・」と私。
「いいから、このままでいて・・・」 私の股間の状態を知ってか知らずか彼女。

 その内、CAが回ってきて、大丈夫ですか?と聞くので、水、アイス、グラスを下さい、と頼んだ。飲まないではいられない。 いや、雷が怖い、という話じゃなくて・・・

 水、アイス、グラスがくる。CAが、照明をおとしますけど、必要で有れば機内灯をつけてくださいね、という。ありがとう、という私。私の胸に顔をつけたままのアイーシャ。

 メインの照明がおち、周囲は薄暗い。アイーシャに抱きつかれて、姿勢がキツイ中で、なんとかブランディーロックを作り、「アイーシャ、ブランディーだよ」という。「ふるえてグラスが持てないわ、明彦」という彼女。

「う~ん」とどうしたものかと思っていると、「飲ませてくれない、口移しで」というアイーシャ。

 私はちょっとためらったが、ブランディーを口に含み、彼女の唇に触れる。ブランディーが私の口から彼女の口に移る。ブランディーを飲み込むと、彼女は舌を私の口に差し入れてきた。

 ニコバル上空から、シンガポール上空で機体が着陸姿勢になるまで、私たちはずっとキスをしていた。シンガポールの日の出は、365日午前6時30分。朝焼けが窓から差し込み、彼女の漆黒の髪が輝く。

 彼女が唇を離して、「明彦、今日はどうするの?」ときく。「ホテルはアーリィチェックインの予約を入れていないから、2時までは荷物を預けて、街をぶらつこうかと思っていたんだ」と私。

「ねえ?」
「何?」
「・・・ブオナ・ビスタの私の部屋に来る?」
「ちょっと、アイーシャ、それは・・・」
「ハズバンドは、今、ヨークシャーに戻っていないのよ。だから、私の部屋にはだれもいない・・・」
「・・・い、いくよ」と私。

 イミグレの通過も、ラゲッジが出てくるのを待っている時間もいらだたしかった。

 空港タクシーをひろい、「ブオナ・ビスタ!」という。車内で、私たちの手はお互いの太腿の上に。

┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈

 3時間後。

「あのねえ、明彦?」
「ん?」
「あの時、私も濡れていたのよ、あなたのカツオゥと同じように・・・」
「わかるよ。この部屋に入って5分後にわかった。キミの下着、使い物にならなくなっているじゃないか?」
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