少年は春風に酔います

no.0 卒業の季節が訪れた。

自分も師匠になる

実験室に戻った江川一郎は、机にうずくまって一息つき、酔いを冷まそうとしました。そして文書を開き、新しい国家火のトーチ高技術基金の申請書を書かなければならないことに気づきました。江川一郎は心の中で、この申請書には実際には技術的な要素がほとんどないことを理解していました。国内の技術の未開拓領域に挑戦し、国際的なリーダーシップを発揮するという高い目標を掲げることは、ますます難しくなっていると感じていました。国内ではそのような取り組みを行っている人はほとんどおらず、今開発されているものはおそらく10年前のドイツと同じ水準に過ぎないだろうと考えていました。それどころか、彼らはすでにその技術を大規模に商業化している可能性もあるでしょう。しかし、上司がこの申請書の初稿を自分に任せてくれたことは、大きな信頼の証だと江川一郎は感じており、そのことについて数人の後輩たちが羨望の念を抱いていることも理解していました。

実際に江川一郎は理論的にはもう卒業しているが、就職先での活動はまだ2ヶ月続くことになっています。加えて、彼の会社は同じ都市にあり、技術ディレクターや上司との関係もあります。したがって、江川一郎はここで最後まで力を発揮する必要があると自覚していました。しかし、これはハードウェアやソフトウェアのデバッグよりも複雑で、洗練された作業が求められるものでした。江川一郎は1時間も考えたが、3回も修正したが、さらに3行も書くことができなかったのです。仕方なく、メールをチェックしにインターネットを開いて、少しリラックスすることにしました。

未読のメールの件名は「大師兄、夜の飲み会、参加できる？」でした。

内容を見ていると、申請書に悩まされていた江川一郎はやっと気づきました。大師兄とは自分のことだと。彼はついつい呟いてしまいました、「歳月は人を老いさせるな、若い頃の夢は白髪になる。私もとうとう大師兄になったんだな。」

夜の飲み会は、「海上明月天」というレストランで開催されることになっており、昼食を取る場所よりも格上の場所で行われることとなりました。このイベントは、中学の同窓会が企画したものでした。かつて江川一郎が青大に入学した頃、その大学はまだ名前が知られていない時期でした。重要な大学ではありましたが、評価は一流から二流の間でした。しかし、最近では青大の発展が目覚ましく、名声も急速に高まっており、故郷からの入学者も増えている状況です。若い世代の学生たちは人間関係の重要性を理解し始め、中学の同窓会を通じて感情を深め、お互いに助け合うこともできるようになっています。これは現代の言葉で言うところのWin-Winの関係であり、さらにはマルチWinの関係とも言えるでしょう。

江川一郎は会長の同級生に電話をかけ、自分が飲み会に出席すること、少し遅れることを伝えました。その際に今回のイベントの理由を尋ねると、なんと自分が主催者の一人であることに気づきました。この飲み会は大四の学生と江川一郎を送り出すためのものでした。この一年間、江川一郎はプロジェクトで忙しく、頻繁に出張していたため、何度かイベントを欠席していました。しかし、今回は主催者の一員として参加することになっているので、欠席するわけにはいきません。ただし、客が主催者に今日はおごりますと伝え、その後で電話やメールで通知する必要があるのは、なんとも皮肉なことだと江川一郎は思いました。

時刻が6時40分になり、江川一郎が部屋のドアを開けると、中はすでに活気に満ちていました。大きなテーブルがあり、17、8人が座っており、中には見知らぬ顔もいました。会長は細身のメガネをかけた男性で、今年大学三年生です。彼は江川一郎を歓迎するために立ち上がり、「大師兄は本当に忙しい人だから、招待が難しいですね。初めて会う一、二年生もいますよね。紹介しましょう。」と言いました。

江川一郎は会長の言葉に頷き、同じく大師兄の席に座っている彭帥に挨拶をし、そして隣に座っている林墨に微笑みかけました。「最近、だいぶスリムになったみたいですね」と言いました。林墨は眉をひそめて、「以前、太っていたんですか？」と尋ねました。江川一郎は戸惑いながら、「あの、褒め言葉だと思ったんですけど、やっぱり失敗しましたね」と答えました。林墨は笑いながら、「実際、太っていましたよ。今回、決意して7、8キロ減量したんです」と答えました。

江川一郎は、その明るい女性に心を奪われ、彼女をじっと見つめました。正直に言えば、以前は彼が注意深く見ることはありませんでしたが、彼女は清楚な印象を与えていました。彼女は白い花柄のTシャツに淡い青のジーンズを穿き、肩まで届く黒い髪と輝く目、痩せた顎と小さなホクロが彼女の魅力を引き立てていました。

一方、江川一郎が美しい女性を見つめている間に、別の場所で小さな争いが始まっていました。

見知らぬ女性が江川一郎に向かって、「大師兄が来ても、師姉と話すだけで、遅れたからといって3杯の酒を罰するわよ」と言いました。

江川一郎は、会社の先輩たちと一年以上も酒を飲んできた経験から、小さな女性に怯えることはありませんでした。彼は笑って言いました。「今日は僕が招待するんだし、客は主人に従うものだ。もし師妹がおごってくれるなら、僕も客として罰酒を三杯受けるよ。」

ル姓の師妹は、まったく怯えることなく反撃しました。「大師兄、お金の話をするのは俗っぽいわね。私たちはまだ学校に入って指導を受ける前に、あなたがすでに卒業してしまう。初対面なのに、おごりたくないの？それに、あなたはもうすぐ大金持ちになるんでしょ？私たちはまだプロレタリアートよ。」

江川一郎は頷いて言いました。「私の指導を受けるのは簡単だよ。初対面の師妹として敬意を表すために一杯飲むべきだ。私の立場としては自由だよ。」

ル師妹は軽蔑的に言いました。「ちょっと気品が欲しいわ。男性が飲んで女性が自由にするべきよ。」
江川一郎は首を振りながらため息をつき、「わかった、男性として一杯飲むよ。師妹としても一杯飲んでくれるかな？これで公平だろう？」と言いました。小さな女性との口論は、江川一郎にとってそれほど面白くありませんでした。果たして私の精神は30代の人と合っているのでしょうか、18、19歳とは共感できないのでしょうか？本当に老け込んでしまったのか、と思いながら、江川一郎は笑顔を浮かべました。

ル師妹はすでにターゲットを変え、会長同学に酒を注いでいました。

林墨は小声で言いました。「何を笑っているの？不気味だよ？」

江川一郎はル師妹の奇妙な顔立ちを見つめて、「自信のある人は最も美しい」と口にしてしまいました。

林墨は笑って、「冷たいわね、私だって若い女の子なのに」と言いました。

江川一郎は真剣な顔で言いました。「ただ感心しているだけだよ。毎日鏡を見るたびに、その自信を探しているんだ。」

林墨は彼を白い目で見ましたが、その瞬間、江川一郎は心臓がドキッと跳ねるのをはっきりと感じました。

何が起こっているのだろう？江川一郎は自分自身に尋ねました。最近、感情が激しく変動している。それは卒業症候群か？余光で林墨をちらっと見ると、江川一郎は自分の心が何度も急速に跳ねるのを感じ、まるで恋愛経験のない17歳の少年のようでした。彼は気を取り直し、彭帅と些細な話題で話し合うことにしました。

席上には、神奈川師範大学と神奈川医科大学の2人もいます。今日は賑やかに参加しています。数人が熱心に、他校の友好的なルームシェアや情報共有について話し合っています。

江川一郎は林墨に向かって言いました。「これから数年後、これらの若者たちと競争することになると思うと、ちょっと怖いですね。彼らを見てください。すでに環境に速やかに適応することを学んでおり、社交性に満ち、人間関係を築く能力に長けています。拘束されず、他人に自然に接することができます。実を言うと、私は最近1、2年で少し学びました。だからこそ、若者は次々と成長しています。」

林墨は深みを帯びた声で語りました。「どうか、私を古風な人間と見なさないでください。ただし、その意見には賛同します。今と昔の間にはたった2年の差がありますが、世代の違いを感じることがあります。以前は大学に入学し、研究生や博士課程の学生を見ると、緊張し、教訓を受けることを切望していました。」

江川一郎は笑顔で続けました。「まあ、それはお互い様ですね。ただ、私たち自身に少し元気付けの言葉を述べてみましょう。現代の若者はまだ幼さが残っているところが多いです。私たちは関連する学部生を研究室に招き、体力を要する実験記録のような仕事を手伝ってもらったところ、あからさまに興味を示さない姿勢を見せました。私たちが学生だった頃は、ただ実験記録をつけるだけでも喜びを感じ、学ぶことを楽しみにしていました。」

林墨は頷きながら付け加えました。「その言葉は少し若々しいかもしれませんね。」

宴会は終盤に近づき、会長は卒業生の先輩たちに何か話をしてもらい、後輩たちに貴重な経験を伝えることを提案しました。もちろん、大学4年生たちも江川一郎の意見を支持し、彼こそが真の先輩であり、成長の経験を共有すべきだと述べました。

江川一郎はしばらく考えた後、いつもの軽快な態度を取り戻し、一人前の先輩らしい姿勢を示しました。彼は水を飲み、喉を潤した後に言いました。「率直に言いますと、年齢だけで私が座っている皆さんよりも優れているわけではありません。私もただ2食堂での食事を長く続けているだけです。」

彼は師弟たちに向けて目をやり、「しかし、私の成長過程での数年間の経験は、成功や失敗、あるいは日々の普通さでも、時には非常に貴重なものになります。皆がそれぞれ異なる道を歩んでいますから、専門性も性格も違うし、機会も違いますが、共通点もあるでしょう。だから私が話すことが、誰か一人でも少しでも影響を与えることができれば、私のこの大先輩講演は無駄にはならないでしょう。」

みんなは微笑み合った。江川一郎は一呼吸置いてから、以下のように続けました。「2つの重要な点に触れてみたいと思います。まず第一に、言葉は簡素ですが、四字熟語にも通じる重要性がある──時間を大切にすることです。しかし、私が特に強く感じるのは、研究所に籠もっていた大学時代を終え、現在の職場で仕事をしているときに、同僚たちや出張から帰ってきたときに耳にする言葉です。『ああ、当時は時間を無駄に使っていた』と。専門知識を学ぶか、自らの情熱に従うべきだったと後悔する声が絶えません。その中には毎日昼過ぎまで寝ている人もいれば、深夜まで麻雀をしている人もいます。当時、時間を大切にすることは冗談半分でしか捉えられていませんでした。自分の興味に没頭し、楽しむことを最優先にするのが至上の理想だったのです。しかし、社会に足を踏み入れると、あらゆる面で未熟さに気づき、厳しい現実に直面することになります。学校とは奇妙な場所です。時がとても速くも遅くも感じられます。速く過ぎると、4年という期間はあっという間に過ぎ去ります。遅く過ぎると、何もしないでただ時を過ごす日々があります。大学は比較的閉鎖的で、中学校のように管理が行き届いているわけでもありません。仕事後のストレスもありません。そのため、多くの人がリラックスし、時間の経過を見逃してしまいます。これは間違いではありません。大学生活には初々しい恋や最後の休暇を楽しむことも大切です。ただし、計画を立てることを忘れないでください。以前の先輩が私に言った言葉を思い出します。『あなたが羨ましいのは、4年の歳月だけだ』と。しかし今では、妻もおばあさんになり、同様にあなたたちを羨む立場になりました。だからこそ、この数年間が何よりも貴重なのです。楽しむこと、エネルギーを充電すること、困難に立ち向かうこと、全力で取り組んでください。振り返ったとき、何も学ぶことがなく、楽しむこともなく、曖昧なまま過ぎ去ってしまうのが最も避けたい結末です。」

江川一郎は深い感慨に耽りながら次のように語りました。「ここ数年の研究所での経験から感じることは、大学を卒業し仕事を始めた同窓生たちと再会し、一緒に食事をする機会が増えたことです。彼らは出張や休暇から戻ってきて、昔は時間を無駄にしていたと口々に言います。専門知識を学ぶか、自分の興味に従うか、その選択を怠ったことを後悔しています。大学は本当にユニークな場所ですね。時には時間が非常に速く経過し、時には遅く感じます。速く過ぎればあっという間に4年が過ぎ去りますが、遅く感じると何もしない日々があります。寝転がって過ごしたり、散歩したり、図書館でぼんやりと過ごすと、夕暮れが遅々として訪れます。大学は比較的閉鎖的な場所です。中学校のように言葉一つ一つが監視されるわけでもなく、仕事後のプレッシャーが常に存在するわけでもありません。そのため、多くの人がリラックスしてしまい、時間の流れに身を委ねてしまうのです。これは間違いではありませんが、大学で初めての恋愛を楽しむことや、最後の休暇を満喫することも大切です。当然、私はあなたたちの中には小学生時代から恋をした人もいることを理解していますが、計画を立てることを忘れないでください。かつての先輩が言った言葉を思い出します。「あなたが羨ましいのは、私よりも4年長く若いことだ」と。今では、私の妻も年を重ね、あなたたちを見て同じ羨望を抱いています。ですから、この数年間が何よりも貴重です。楽しむこと、学ぶこと、挑戦すること、全てを全力で取り組んでください。最悪なことは、振り返った時に何も学べず、楽しむこともできず、ただ時が過ぎ去ってしまうことです。」

江川一郎は話が終わった後、驚くほどの拍手を浴びました。彼は笑顔でグラスを持ち上げ、「ご参加いただきありがとうございます」と言いました。