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第17話 新大陸の賓客
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──王都帰還の鐘が鳴り渡る王宮埠頭。帆船《セレスティア号》は優雅に接岸し、待ち受けた群衆から歓声が湧き上がった。美咲は胸元に大切そうに抱えた小箱を、レオンにそっと渡し、二人で足を揃えて浅瀬に降り立つ。
「ただいま戻りました!」
レオンの声に、子どもたちが「王子様!」「お帰りなさい!」と声援を飛ばす。海軍将校や学舎の教師、護衛隊長も整列し、凱旋を祝福した。
美咲は微笑みつつ、小箱の蓋を開ける。中には南方の原生林で採取した、青白く透き通る「聖なる樹脂」が詰まっている。
「この樹脂は、古代遺跡で見つけた薬効成分を抽出したもの。傷の治癒や航海灯の染料としても応用可能です」
エリオット医師が説明すると、宰相や貴族、学会の学者たちが興味深げに首を傾げた。
──その中で、保守派の老貴族・シェルドン侯爵は腕を組み、難色を示す。
「外来の薬品に頼るとは愚かなことよ。我が国の伝統薬草を軽んじるのか?」
美咲は侯爵の視線を真っ直ぐに受け止め、落ち着いて答えた。
「伝統薬草は大切に守ります。ただ、新大陸の秘薬が加われば、さらに多くの命を救える——それに、学び舎の学生たちも実験と研究を望んでいます」
宰相が頷き、常緑の学舎長もメモを取りつつ賛同の意を示す。
「では、試験的にこの樹脂を限定的に調合させてはどうか。成功すれば各地の診療所へ展開可能です」
しかし侯爵は首を横に振った。
「我々の市民は外来物質を恐れる。まずは輸入禁止を議題にすべきだ」
その言葉に、老海将の妹分とも言うべき若貴族エルザ女史が鋭い眼差しを向けた。
「恐れではなく、知識を持てば恐怖は消えるの。まずは実証実験を許可すべきでは?」
論戦は紛糾し、場の空気は重くなっていく。美咲は一度深く息を吸い、静かに言葉を紡いだ。
「侯爵殿、私は王国の医療長として責任を持っています。もし輸入禁止を強行するなら、民衆の健康は後退します。ここにいる学者・医師・海軍・部族の盟約を重んじ、まずは小規模実験から開始するお許しを――」
その時、少女貴族の姿をした外交官アルマがステップを踏みつつ前に進み出た。
「私はシリオス王国からの親善使節です。この樹脂をシリオスでも研究し、互いの医療技術を交換しましょう。貴国の禁輸判決は、同盟を脆弱にします」
会場がどよめき、侯爵も思わず言葉を止めた。宰相が慌てて椅子を立ち、王の名代として一礼する。
「それでは実験的貿易協定を、シリオスと結ぶことを前向きに検討しよう。会議を一時停止し、両国折衝委員会を立ち上げる――」
歓声と拍手が巻き起こる中、美咲はレオンと顔を見合わせ、ほっと小さく笑んだ。
「これで、学び舎の発見が王国だけでなく、隣国にも希望を与えられるわね」
「うん! これからまた、新しい発見がたくさん生まれるよ!」
南の海で得た恵みは、王国とその周辺に広がる友好の光となった。二人は小さな樹脂のかけらを手に、「新大陸の賓客」としての責務を胸に刻んだのだった。
「ただいま戻りました!」
レオンの声に、子どもたちが「王子様!」「お帰りなさい!」と声援を飛ばす。海軍将校や学舎の教師、護衛隊長も整列し、凱旋を祝福した。
美咲は微笑みつつ、小箱の蓋を開ける。中には南方の原生林で採取した、青白く透き通る「聖なる樹脂」が詰まっている。
「この樹脂は、古代遺跡で見つけた薬効成分を抽出したもの。傷の治癒や航海灯の染料としても応用可能です」
エリオット医師が説明すると、宰相や貴族、学会の学者たちが興味深げに首を傾げた。
──その中で、保守派の老貴族・シェルドン侯爵は腕を組み、難色を示す。
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美咲は侯爵の視線を真っ直ぐに受け止め、落ち着いて答えた。
「伝統薬草は大切に守ります。ただ、新大陸の秘薬が加われば、さらに多くの命を救える——それに、学び舎の学生たちも実験と研究を望んでいます」
宰相が頷き、常緑の学舎長もメモを取りつつ賛同の意を示す。
「では、試験的にこの樹脂を限定的に調合させてはどうか。成功すれば各地の診療所へ展開可能です」
しかし侯爵は首を横に振った。
「我々の市民は外来物質を恐れる。まずは輸入禁止を議題にすべきだ」
その言葉に、老海将の妹分とも言うべき若貴族エルザ女史が鋭い眼差しを向けた。
「恐れではなく、知識を持てば恐怖は消えるの。まずは実証実験を許可すべきでは?」
論戦は紛糾し、場の空気は重くなっていく。美咲は一度深く息を吸い、静かに言葉を紡いだ。
「侯爵殿、私は王国の医療長として責任を持っています。もし輸入禁止を強行するなら、民衆の健康は後退します。ここにいる学者・医師・海軍・部族の盟約を重んじ、まずは小規模実験から開始するお許しを――」
その時、少女貴族の姿をした外交官アルマがステップを踏みつつ前に進み出た。
「私はシリオス王国からの親善使節です。この樹脂をシリオスでも研究し、互いの医療技術を交換しましょう。貴国の禁輸判決は、同盟を脆弱にします」
会場がどよめき、侯爵も思わず言葉を止めた。宰相が慌てて椅子を立ち、王の名代として一礼する。
「それでは実験的貿易協定を、シリオスと結ぶことを前向きに検討しよう。会議を一時停止し、両国折衝委員会を立ち上げる――」
歓声と拍手が巻き起こる中、美咲はレオンと顔を見合わせ、ほっと小さく笑んだ。
「これで、学び舎の発見が王国だけでなく、隣国にも希望を与えられるわね」
「うん! これからまた、新しい発見がたくさん生まれるよ!」
南の海で得た恵みは、王国とその周辺に広がる友好の光となった。二人は小さな樹脂のかけらを手に、「新大陸の賓客」としての責務を胸に刻んだのだった。
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