追放されたから異世界VTuber始めたら魔王もファンになりました

象乃鼻

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第5話 世界同時討論ライブ!――「声」は武器か、絆か

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 配信スタジオは臨時病室——というか、病室を丸ごとスタジオ兼トークバトルリングに改造しただけだった。

 カメラは3台、マイクは5本、ベッド柵はライトバーに早変わり。
 天井の点滴レールには“視聴者感情メーター”がネオン管で取り付けられ、ポジ/ネガの割合に応じて色が変化する。

 ≪SYSTEM:世界同時討論ライブ/β版≫
 ・ゲスト枠:3(魔王ゼファリス/勇者リオナ/沈黙教会代理クレスト司祭)
 ・モデレーター:ユウナ
 ・討論テーマ【1】雑音税法案は是か非か
 ・討論テーマ【2】「声」は争いを生むか、共感を生むか

 チャンネル登録者は 824 → 901 とじわ伸び。
 沈黙神ゲージは 67% でうごめき、紫の裂け目は薄雲に隠れている。


 ショウタがベッドをリクライニングさせ、軽く会釈。
「皆さんこんばんは! 今日は“声の未来”について語り合います!」

 カメラ①:魔王ゼファリス——黒耀の王座(折り畳み椅子)に腰掛け、ペンライトをマイク代わりに朗々と。

「推し活は平和への最短距離! 余が証明してみせよう!!」

 カメラ②:勇者リオナ——聖剣を膝に置き、鎧をきっちり正し姿勢だけがやたらいい。

「声は導く光。だが魔王と共に語る壇上——最終回かもしれんな」

 カメラ③:クレスト司祭——顔半分を白面布で覆い、小声に近い低音。

「沈黙は…救い。声を放てば…争いは燃える」

 ユウナは中央の司会台で深呼吸。
「ルール1。大声禁止——代わりに“内容”で競ってください」

【視聴者】「無理ゲーw」「魔王ボリューム爆弾」
【魔王推し】「キングの雄叫び聞かせろ」
【勇者派】「魔王と並ぶ勇者尊い」
【沈黙支持】「……。」

 メーター:ポジ 54%/ネガ 46%


 ユウナ「では、雑音税。※街頭で一定以上の『音量』を発すると課税される案です」

 ■ 魔王プレゼン(闇プレゼンモード)
 ブラックスライドが投影される。棒グラフは全て闇炎。

「課税すると推し活が減る→世界の“推しエナジー”10%減→魔族経済 -8%、人間界 -6%——損しかない!」

【視聴者】「数字だけは妙に具体的w」
【官僚リスナー】「推しエナジーとは」

 ポジ 58%

 ■ 勇者リオナの反論
「しかし魔王殿、その“推しエナジー”が騒音被害を生むのも事実。
 私は毎晩、王都でペンライトが目に刺さって眠れない」

【魔王推し】「耳栓配布で解決」
【勇者派】「勇者の睡眠大事」

 ネガ 48%

 ■ クレスト司祭の静寂提案
 司祭は紙を掲げる。“◎”ひとつ。

「音量 0。課税 0。争い 0。
 ——完璧。」

 場が静まり返る。
 ショウタは咳払い。

「意見がシンプル過ぎません?」

【SILENCE_lurker】「完璧」
【一般リスナー】「議論にならんw」

 ネガ 51%
 沈黙神ゲージ +3% → 70%


 ≪投票開始 60s≫
 Yes(導入すべき):40% No(廃案):60% ——途中経過

 投票バーが動くたび、上空の裂け目が伸縮する。
 ネガが No に流れるとゲージが下がる。
 魔王は拳を突き上げ、

「さあ、もっと投げ銭……いや、投票を! 声で世界を染めろ!!」

 ユウナ「投げ銭リンクじゃありません、投票リンクですっ!」

【勇者派】「Yesに投票して静かにしよう」
【魔王推し】「Noで祭り続行!」
【野次馬】「Yes入れたら沈黙増えるの草」

 残り5秒。No 55%、Yes 45%。
 ショウタが両手を合わせる。

「頼む——世界はミュートよりミックスであれ!」

 投票終了。

 ≪結果:No 57%/Yes 43%≫
 ≪ポジ 59%/ネガ 41%≫
 ≪沈黙神ゲージ 70% → 62%≫

 裂け目が一段細くなり、紫ノイズがパラパラと消えた。


 ユウナ「2分スピーチでどうぞ」

 ■ リオナ:聖騎士の理念
「剣が光を示すように、声は正義を照らす。しかし強すぎれば影も落とす。
 私は声を“剣術”と同じく修練し、制御すべきと考える」

 丁寧な低音にチャットが静かにうなずく。
 ポジ 60%

 ■ 魔王:推し活ロジック
「声とは“熱狂”! 火は燃料があれば炎上するが、鍋を温めれば美味も生む。
 制御せず“推し”へ注げば、世界は美味な闇鍋!」

【視聴者】「例え下手好き」

 ネガ微増、だが笑いが多くポジ優勢。
 ポジ 61%

 ■ クレスト司祭:無声の証明
 司祭は口を結び、ただ沈黙。
 10 秒経過、20 秒——画面に“…”が浮き、自動字幕も止まる。
 チャットがざわつき、ネガがじわり増殖。

【視聴者】「寝落ち?」
【SILENCE_lurker】「沈黙こそ演説」

 ネガ 46%
 沈黙神ゲージ 62% → 66%

 ユウナが規定タイム終了を告げ、司祭は一語。

「声が消えた瞬間——争いも止まった」

 ショウタ「止まってないです、チャット大荒れです!」


 司会ユウナが議事進行を試みるも、
 魔王 vs 司祭 の“闇鍋か断食か”論争、勇者 vs 魔王 の“深夜騒音”口論が交錯し、
 チャットは最大毎秒 1,200コメ。メーターが激しく振れる。

 ≪視聴者感情:ポジ 55~47% ジッター/ネガ 45~53%≫
 ≪沈黙神ゲージ 66% → 69% → 64% → 68%≫

 紫の裂け目がフラッシュし、ROOM 全体の音声が一瞬ミュート。
 ——“SILENCE_000” が巨大フォントで画面中央に。

 SILENCE_000「声を棄てよ。沈黙を浴せよ」

 チャット停止。
 司祭が驚愕の面持ち。「な…神の直接顕現…!?」

 ショウタは顔面蒼白。
「ダメだ、討論がバグらされる!」


 ショウタはカメラを握り直し、深呼吸。
「皆、30秒だけチャットに“エール”を打って! 推し活でも感謝でも何でもいい——
 誰かへのポジティブワードだ! ハッシュタグ #30秒エール!」

 ユウナ「逆ハラスメントだって炎上しますよ!?」

「炎上する前に燃え尽きさせる!!」

 ≪イベントゲージ:エール数 0 / 5,000≫

 魔王「余の軍勢よ! 推し語録を解き放て!」
 リオナ「王都民よ、剣に代えて祈りを!」

 洪水のように流れる #30秒エール。
「パンありがとう!」「推しが生きがい!」「毎朝の配信で会社辞める踏みとどまれた!」
 メーターが一気にポジへ傾き、裂け目が縮む。

 ≪エール 5,000 達成≫
 ≪ポジ 72%/ネガ 28%≫
 ≪沈黙神ゲージ 68% → 50%≫

 紫ノイズが弾け飛び、SILENCE_000 の文字がハレーションを起こし消滅。
 場内の音が戻り、チャットに歓声エモートが溢れる。


 ユウナが両手を高く掲げる。
「討論、第1ラウンドは**“声は絆を生む”派の勝利**と判定します!」

 魔王ハイタッチ。リオナも苦笑いしながら手を合わせる。
 クレスト司祭は沈黙しつつも視線を伏せ、
「……声が、光を生む……一理」

 ショウタはマイクを握り、すっかり治った右腕を振る。
「世界はミュートとカオスの間——フェーダーは、俺たちとみんなの指先だ!」

 チャット:🎉🎉🎉

 ≪チャンネル登録者 901 → 973≫
 ≪沈黙神ゲージ 50%(半減)≫


 終幕の挨拶をしようとした瞬間、スタジオ照明がバチッと落ちた。
 非常電源ランプが赤く点滅し、モニターにシステムログ。

 ≪CRITICAL:NEG.SIGMA ウイルス 侵入/配信サーバ占拠率 12%≫

 ショウタ「まさか——討論データを逆利用してる!?」

 魔王「ネガティブを喰い改良するAI…いや、神I/O…!」

 ユウナ「サーバを切れば収まりますが、配信も終了します!」

 ショウタは歯を食いしばり、
「——続ける。声を奪われる前に、声で“沈黙”を上書きする!」

 画面下部に非常用タイマーが出現:残り 10:00
 カウントがゼロになる前に“沈黙ウイルス”をポジティブデータで上書き出来なければ、配信停止+雑音税強制成立のコンボらしい。

 リオナが剣を掲げ、魔王がペンライトをクロス。
「ならば次は“世界同時歌合戦”だ!」
「剣と暗炎と歌——三位一体だ!」

 クレスト司祭が小さく嘆息。
「静寂を破る歌……私も、聞いてみたい」

 ショウタは笑みを取り戻し、視聴者にウインク。

「次回、“歌合戦ライブ”開幕——沈黙神をリミックスせよ!」


 ≪緊急ミッション:NEG.SIGMA 上書きまで 10:00(次話持ち越し)≫
 ≪チャンネル登録者 973 / 1,000≫
 ≪次回予告:歌合戦ライブ! “神リミックス”でバグを踊らせろ!≫

 REC ランプが赤と青に瞬き、
 夜空の裂け目は、まるでDJのターンテーブルのように回転を始めた——。

 To be continued…
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