16 / 28
第九話 柚葉視点
しおりを挟む
15歳春 入学
柚葉と両親は長い道のりを経て寮に着いた。
柚葉の部屋は3階の角部屋でエレベーターの隣だ。
シャワールーム、トイレがついた部屋でベッド、デスク、冷蔵庫、電話機が備えられていた。荷解きが済んだ所で寮の係員から食堂、大浴室、ランドリールームの順に案内された。とても綺麗な設備で心配していたお母さんも自分が住みたいと言うほどだった。
両親はその日に帰って行った。寮生活を許し遠路はるばる来てくれた両親に柚葉は感謝した。
高校の入学式は中学校同様に辞退した。
登校初日、クラスと席順を確認して柚葉は教室に入った。席は1番後ろで柚葉は気が軽くなった。
「プリント配るから、前の席から渡して下さい。」
前の席から順々にプリントが配られていく。柚葉は前の席の男子から渡されるのを待った。前の男子が後ろを振り返った時、
「うわっ!ヤベエ!」
柚葉の顔を見て言ったのだ。
なんだろうと柚葉はキョトンとして男子を見つめる。
男子はみるみる内に顔が紅くなり、口をパクパクさせた。
「あっごめん!」
と、急いで振り返ってしまった。
柚葉は少し気になり、名簿で彼の名前を確認した。
柿崎晴人くん
柚葉と晴人の最初の出会いだった。
お昼になるとクラスの半分が食堂に向かった。
柚葉はお弁当持参だった。まだ足の不自由な柚葉に、寮母さんが特別に作ってくれたのだ。
柚葉が自分の席でお弁当を出してると何人かのクラスメートが集まって、一緒に食べようと誘ってくれた。
クラスの中で県外から来ているのは柚葉だけで、寮はどうか。とか柚葉の地元は何があるか。など沢山聞いてくれた。みんな暖かい優しい人で柚葉は嬉しかった。
帰宅時間になると各々が教室を出て行って。柚葉も皆んなの流れにそって帰ろとした時に声がかかる。
「栗原さん!時間ある?」
呼び止めたのはさっきの柿崎晴人くんだった。
柚葉に今日の予定はない。はい。と答えると、柿崎くんは、ついて来てと柚葉のリュックを持ち上げた。柚葉はリュックについてやんわり断った。しかし柿崎くんは柚葉の足を心配しておんぶすると言い出した。柚葉はブンブンと力強く首を振った。すると抱っこの方がいい?と両手を広げてきた。この人、どうしてナナメ上を選択するのか柚葉は開いた口が塞がらなかった。
柿崎くんが連れてきたのは、学校のプール施設だった。
施設というだけあって温水プール、飛び込み台まであった。柚葉が感心して見回してると、水泳部の人たちが入ってきた。
「よう晴人。入学おめでとう」
「ちわっす。」
え、もう知り合いなの?柚葉がビックリしていると、部長らしき人が柚葉を見て柿崎くんに尋ねた。
「この子は?」
「マネージャーです。」
ちょっと待って。柚葉は水泳部もマネージャーも希望していない。何も説明なしに柿崎くんに連れて来られたのに。柚葉が否定しようとすると。
「よっしゃー!!」
部員全員から大歓声が上がる。当の柿崎くんはというと、よくやった晴人!と背中を叩かれてまんざらでもない様子。
ちょっと待ってよー。柚葉はもう後には引けなくなっていた。
柚葉と両親は長い道のりを経て寮に着いた。
柚葉の部屋は3階の角部屋でエレベーターの隣だ。
シャワールーム、トイレがついた部屋でベッド、デスク、冷蔵庫、電話機が備えられていた。荷解きが済んだ所で寮の係員から食堂、大浴室、ランドリールームの順に案内された。とても綺麗な設備で心配していたお母さんも自分が住みたいと言うほどだった。
両親はその日に帰って行った。寮生活を許し遠路はるばる来てくれた両親に柚葉は感謝した。
高校の入学式は中学校同様に辞退した。
登校初日、クラスと席順を確認して柚葉は教室に入った。席は1番後ろで柚葉は気が軽くなった。
「プリント配るから、前の席から渡して下さい。」
前の席から順々にプリントが配られていく。柚葉は前の席の男子から渡されるのを待った。前の男子が後ろを振り返った時、
「うわっ!ヤベエ!」
柚葉の顔を見て言ったのだ。
なんだろうと柚葉はキョトンとして男子を見つめる。
男子はみるみる内に顔が紅くなり、口をパクパクさせた。
「あっごめん!」
と、急いで振り返ってしまった。
柚葉は少し気になり、名簿で彼の名前を確認した。
柿崎晴人くん
柚葉と晴人の最初の出会いだった。
お昼になるとクラスの半分が食堂に向かった。
柚葉はお弁当持参だった。まだ足の不自由な柚葉に、寮母さんが特別に作ってくれたのだ。
柚葉が自分の席でお弁当を出してると何人かのクラスメートが集まって、一緒に食べようと誘ってくれた。
クラスの中で県外から来ているのは柚葉だけで、寮はどうか。とか柚葉の地元は何があるか。など沢山聞いてくれた。みんな暖かい優しい人で柚葉は嬉しかった。
帰宅時間になると各々が教室を出て行って。柚葉も皆んなの流れにそって帰ろとした時に声がかかる。
「栗原さん!時間ある?」
呼び止めたのはさっきの柿崎晴人くんだった。
柚葉に今日の予定はない。はい。と答えると、柿崎くんは、ついて来てと柚葉のリュックを持ち上げた。柚葉はリュックについてやんわり断った。しかし柿崎くんは柚葉の足を心配しておんぶすると言い出した。柚葉はブンブンと力強く首を振った。すると抱っこの方がいい?と両手を広げてきた。この人、どうしてナナメ上を選択するのか柚葉は開いた口が塞がらなかった。
柿崎くんが連れてきたのは、学校のプール施設だった。
施設というだけあって温水プール、飛び込み台まであった。柚葉が感心して見回してると、水泳部の人たちが入ってきた。
「よう晴人。入学おめでとう」
「ちわっす。」
え、もう知り合いなの?柚葉がビックリしていると、部長らしき人が柚葉を見て柿崎くんに尋ねた。
「この子は?」
「マネージャーです。」
ちょっと待って。柚葉は水泳部もマネージャーも希望していない。何も説明なしに柿崎くんに連れて来られたのに。柚葉が否定しようとすると。
「よっしゃー!!」
部員全員から大歓声が上がる。当の柿崎くんはというと、よくやった晴人!と背中を叩かれてまんざらでもない様子。
ちょっと待ってよー。柚葉はもう後には引けなくなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
冷淡姫の恋心
玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。
そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。
我慢すれば済む、それは本当に?
貴族らしくある、そればかりに目を向けていない?
不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。
※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
伯爵令嬢の婚約解消理由
七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。
婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。
そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。
しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。
一体何があったのかというと、それは……
これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。
*本編は8話+番外編を載せる予定です。
*小説家になろうに同時掲載しております。
*なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。
だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。
異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。
失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。
けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。
愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。
他サイト様でも公開しております。
イラスト 灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる