初恋を諦めたら、2度目の恋が始まった

suguri

文字の大きさ
26 / 28

閑話 桃花視点

しおりを挟む
後日談

 なぜ茜先輩と晴人くんは現場に居合わせたんですか?柚葉が聞くと茜先輩があぁと言って話してくれた。
 どうやら茜先輩と晴人くんは新入生の勧誘で外にいたらしい。その時、柚葉とそっくりさんを見て気づいてくれた。茜先輩には恋の話をしていたことがあったし、晴人くんは一回奏と会っている。すぐに行動に移せたということだった。

 あれ、でもどうして奏が入学していると分かっていたんですか?柚葉が再度聞くと今度は晴人くんが答えた。
 なんでも入学式でずっと柚葉を見て、ずっと晴人くんを睨んでいる奴がいるから気になっていたら奏だったということだった。

 気が付かなかったぁ、奏ったら何やってるの。柚葉は苦笑いした。

 ――――――

 柚葉が去った後、桃花は1人で家に帰った。
 そのまま、柚葉の部屋だった場所に向かう。ベッドにドサッ腰を下ろし、爪を噛んだ。

奏「これ以上、柚葉に執着するな。」

 桃花は否定出来なかった。
 奏ちゃんが好きって言えなかった。
 もっと大好きな柚葉がそばにいたから。

 小さい頃から柚葉と一緒にいた。
 柚葉はいつも褒められて桃花にとって自慢の姉だった。
 桃花が泣けば柚葉が助けに来てくれる。
 柚葉の目には桃花だけが映ればいいんだ。

 そう思っていたけど、柚葉が急に桃花を見なくなった。
 奏ちゃんを見ているからだ。
 柚葉は奏を見ていること隠していたけれど、桃花はずっと柚葉を見ていたから気付くに決まってる。
 もう一度、柚葉の目に桃花を映してほしくて、柚葉の一番になりたくて、恋路を何度も邪魔をした。

 高校生になって柚葉がいなくなって毎日遊び歩いた。どこかに桃花のぽっかり開いた胸を埋めたくて友達をいっぱい作ったし彼氏を何人も作った。
 だけどダメだった。だれも柚葉に敵わない。
 気付くと友達も彼氏も桃花から去っていった。

 ある時、奏ちゃんが家にやってきた。リビングのドアが閉まってたから音だけを聞いていた。

「柚葉の進学先を教えてください。」

 奏ちゃんはパパに頭を下げていた。パパは少し考えた後、奏ちゃんに柚葉が行く大学名から学部まで教えた。
 桃花には到底行けっこない。
 柚葉に会う口実を探した。

 奏ちゃんの入学先はパパが行っていた柚葉の進学先と同じだった。入学式に行きたいと奏ちゃんに言えば絶対断られる。桃花は黙って着いていく事にした。

 柚葉と会って、同じ顔なのに前と全然違う人になってて。寂しかった……。
 私をもう一度見て。前みたいに笑って、そして桃花のことを許して。お姉ちゃん。

 桃花はひっそりと誰にも知られることなく嗚咽した。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷淡姫の恋心

玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。 そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。 我慢すれば済む、それは本当に? 貴族らしくある、そればかりに目を向けていない? 不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。 ※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

偽りのの誓い

柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する 人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる

あなたが遺した花の名は

きまま
恋愛
——どうか、お幸せに。 ※拙い文章です。読みにくい箇所があるかもしれません。 ※作者都合の解釈や設定などがあります。ご容赦ください。

白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。 だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。 異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。 失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。 けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。 愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。 他サイト様でも公開しております。 イラスト  灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様

イケメン恋人が超絶シスコンだった件

ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

処理中です...