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いつもの通学路
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たったったったったったったったったった…
たったったったったったったったったった…
サヨは一生けん命走りました。
クロイモヤに追いつかれないように。
「はぁっ、はぁっ…!」
「はぁっ、はぁっ…………あ!」
気がつくと、いつの間にか、最初の通学路に戻ってきていました。
サヨは、はあはあと息をきらしながら、キョロキョロします。
クロイモヤも、もう追ってきていません。
「はあっ、はあっ‥‥戻ってこれたんだぁ…はあ~よかったぁ……はあぁ……」
いつもの通学路には、いつも通り、ひとがいっぱい歩いています。
いつも通りの様子に、サヨは一安心です。
「はあぁ……戻れたんだ……」
サヨが安心していると、サヨの頭にしがみついていたチョウチョが、パタパタッと飛び上がって、サヨの目の前をクルクルまわりました。
そして。
「ありがとう。」
それはまるで小さな男の子のような声でした。
「しゃべれるようになったんだね。よかった。おうちの場所わかる?」
「うん。」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫。このまま飛んでいくから。」
気がつくとチョウチョは涙を流しながらそう答えました。
「気をつけて帰ってね!」
「うん!おねえちゃんも!」
「えへへ。うん!」
そうふたりで話していると急に強い風が吹いて、チョウチョを空高くまい上げました。
高く高くまい上がり、やがて小さくなってチョウチョの姿は見えなくなりました。
「ばいばい」
チョウチョが飛んでいったほうを見ながら、サヨはお別れを言いました。
チョウチョがいなくなった空を、しばらくながめた後、サヨは来た道を振り返りました。しかし、そこにはついさっき出てきたはずのトビラも、最初に見つけた知らない道もありません。
本当にただいつも通りの道があるだけでした。
「あ!ふうせん。なくなっちゃったなぁ。」
クマさんにもらったふうせんは、どこかでなくしてしまったようです。そう思ってサヨが自分の手もとを見ると、ネコさんにもらったお花は、ちゃんとしっかりにぎりしめていました。
「えへへ。ネコさんがくれたお花だ。」
サヨは、大切に、大切に、そのお花をお家に持って帰りました。
サヨがお家に着くと「おかえりー」と、おにいちゃんが迎えてくれました。
サヨが毎日見ている夕方からのアニメも、ちょうど始まったところです。
「ただいまー…」
向こうに、それなりに長い時間いたはずなのに、こちらでは、それほど時間はたっていなかったようでした。だから、なんとなくだけど。サヨは向こうに行ってきたことは誰にも言わないで、自分だけの秘密にしようと思いました。もちろん、おにいちゃんにも秘密です。
この日の夜。
サヨが、家族みんなで、夕ご飯を食べているとき。
テレビのニュースで、『先週から行方不明になっていた男の子が、今日夕方、無事に保護されました。』と流れました。『学校の帰宅途中、行方がわからなくなり、捜索が続いていましたが、自宅近くでうずくまっているところを近所の住人が見つけ保護に至ったとのことです。』とアナウンサーが言っていました。
サヨは、すぐにあのチョウチョさんだと思いました。
「よかった。お家に帰れたんだ…。」
そう思うと、安心した気持ちと、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
ネコさんにもらったお花は、押し花にして、いつもランドセルにいれて、持ち歩いています。
サヨは、今でもたまに、あの道を探します。
でも見つかりません。
でも『またいつか、あの道と、あの町に出会えるといいな』。そう思っています。
たったったったったったったったったった…
サヨは一生けん命走りました。
クロイモヤに追いつかれないように。
「はぁっ、はぁっ…!」
「はぁっ、はぁっ…………あ!」
気がつくと、いつの間にか、最初の通学路に戻ってきていました。
サヨは、はあはあと息をきらしながら、キョロキョロします。
クロイモヤも、もう追ってきていません。
「はあっ、はあっ‥‥戻ってこれたんだぁ…はあ~よかったぁ……はあぁ……」
いつもの通学路には、いつも通り、ひとがいっぱい歩いています。
いつも通りの様子に、サヨは一安心です。
「はあぁ……戻れたんだ……」
サヨが安心していると、サヨの頭にしがみついていたチョウチョが、パタパタッと飛び上がって、サヨの目の前をクルクルまわりました。
そして。
「ありがとう。」
それはまるで小さな男の子のような声でした。
「しゃべれるようになったんだね。よかった。おうちの場所わかる?」
「うん。」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫。このまま飛んでいくから。」
気がつくとチョウチョは涙を流しながらそう答えました。
「気をつけて帰ってね!」
「うん!おねえちゃんも!」
「えへへ。うん!」
そうふたりで話していると急に強い風が吹いて、チョウチョを空高くまい上げました。
高く高くまい上がり、やがて小さくなってチョウチョの姿は見えなくなりました。
「ばいばい」
チョウチョが飛んでいったほうを見ながら、サヨはお別れを言いました。
チョウチョがいなくなった空を、しばらくながめた後、サヨは来た道を振り返りました。しかし、そこにはついさっき出てきたはずのトビラも、最初に見つけた知らない道もありません。
本当にただいつも通りの道があるだけでした。
「あ!ふうせん。なくなっちゃったなぁ。」
クマさんにもらったふうせんは、どこかでなくしてしまったようです。そう思ってサヨが自分の手もとを見ると、ネコさんにもらったお花は、ちゃんとしっかりにぎりしめていました。
「えへへ。ネコさんがくれたお花だ。」
サヨは、大切に、大切に、そのお花をお家に持って帰りました。
サヨがお家に着くと「おかえりー」と、おにいちゃんが迎えてくれました。
サヨが毎日見ている夕方からのアニメも、ちょうど始まったところです。
「ただいまー…」
向こうに、それなりに長い時間いたはずなのに、こちらでは、それほど時間はたっていなかったようでした。だから、なんとなくだけど。サヨは向こうに行ってきたことは誰にも言わないで、自分だけの秘密にしようと思いました。もちろん、おにいちゃんにも秘密です。
この日の夜。
サヨが、家族みんなで、夕ご飯を食べているとき。
テレビのニュースで、『先週から行方不明になっていた男の子が、今日夕方、無事に保護されました。』と流れました。『学校の帰宅途中、行方がわからなくなり、捜索が続いていましたが、自宅近くでうずくまっているところを近所の住人が見つけ保護に至ったとのことです。』とアナウンサーが言っていました。
サヨは、すぐにあのチョウチョさんだと思いました。
「よかった。お家に帰れたんだ…。」
そう思うと、安心した気持ちと、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
ネコさんにもらったお花は、押し花にして、いつもランドセルにいれて、持ち歩いています。
サヨは、今でもたまに、あの道を探します。
でも見つかりません。
でも『またいつか、あの道と、あの町に出会えるといいな』。そう思っています。
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