たった五分のお仕事です?

オレンジペコ

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Ⅱ.セカンド・コンタクト

閑話2.俺の嫁 Side.ラフィンシア

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※いつもユウジかエレンドス視点なので初のラフィ視点を入れてみました。
イメージ変わったらすみません。

****************

毎日毎日仕事仕事仕事。
これが自分に与えられただけの仕事だったら別に効率考えてこなしたら済む話だったんだ。
でもそうじゃない。
俺のところに回ってくる仕事は第二王子の仕事だけじゃなくて、兄の分と妹の分が上乗せされてやってくるんだ。
しかも一日や二日じゃないんだ。
ここ最近は毎日だ。
大臣や官吏達は段々『ラフィ王子に任せておけば大丈夫』みたいな空気になってくるし、兄は兄で調子に乗って『あ、これもついでにやっといて』だぞ?!ふざけんな!
まだ妹のメリーベルみたいに『グスッ。お兄様。私の要領が悪いせいで手伝っていただいて申し訳ないですわ』って言ってる方がずっとマシだ。
ちょっとずつだけどあいつはコツだって掴めてきてるし、成長がみられる。
後五年くらい頑張ったらきっと一人でできるようになってるだろ。
まあ、嫁に行く方が先かもしれないけどな。
嫁ぎ先で苦労しないよう、今のうちから頑張ってほしい。

で、まあストレスが溜まるわけだ。
思うように自由時間も取れないし、いい加減俺も限界でイライラしっぱなし。
そこに火に油を注ぐかのように『ラフィ王子に縁談話が沢山来てますよ』だと?!
吟味するような時間もなければ暇もない。
このくそ忙しい中、女の相手なんてできるか!
ただでさえちょっと放っておいただけで「仕事と私、どっちが大切ですの?」とか言い出すんだろ?
いつだったか兄にそのセリフを言ってた女がいたけど、俺はそれをたまたま聞いてしまった時、女なんて面倒な奴はいらんと思ったんだ。
でも癒しは欲しい。
どこかにそんな相手はいないだろうか?

そんな都合がいい相手、いるはずがないけどどこかにいてほしいと願う微妙な男心。
だから疲れに任せて俺は叫んだ。

「嫁が欲しい!」

なのに言われた方の側近は俺の気持ちをまるで分っていない。

「好きに選んだらいいのでは?」

求婚の姿絵の山に目をやって、好きに選べと言わんばかりにそう言ってきたのだ。

(俺が言いたいのはそうじゃない!)

「俺は恋がしたいんだ!」

できれば相手とは好き合って結婚したい。
でないと癒しにならないからだ。

「…はあ」

なのにエレンドスはわからないとばかりに首を傾げてくる。
それに対して余計にイラついた。

「男は獲物を追う生き物だろう?!寄ってくる中から選り好みするものじゃない!追うんだ!逃げる相手を追い掛けて捕まえたいんだ!」

『お前は違うのか?!』そう思いながら魂の叫びを口にしたのに全く分かってもらえなかった。
最悪だ。
ちょっとは共感くらいしようって気はないのか?
腹立つな。

「何とかしろ」

普段の自分ならそんな無茶ぶりはしなかったと思うけど、もう本当に色々限界だったんだ。
せめてさっき共感がもらえていたらこんなことは言い出さなかっただろうに。

「では…どのような相手をご希望なのかお教え下さい」

エレンドスは困った顔はしたものの、俺がへそを曲げたら困るとでも思ったのか、ここで聞く姿勢を取った。
そのことに少しだけ溜飲が下がる。
でもどんな相手か…。
考えたこともなかったな。
取り敢えず癒し系くらいにしか考えてなかったからちょっと考えてみるか。

「すぐには落ちそうになくて、甘い言葉にも靡かなくて、ボディータッチもしてこなくて、迫れば逃げるようなタイプがいい!」

取り敢えず媚びを売ってくる女とかは嫌いだし、演技派もウザい。
ここはこっちから追いかけないとダメな相手に絞った方が無難だろう。
これでだいぶ俺好みの理想の相手に近づくはず。

「容姿諸々はどう致します?」

容姿か。容姿はやっぱり癒し系だよな。
癒し系と言えばこれだろ。

「優しくて可愛いタイプがいい!あ、あと家庭的で、一途な!これは譲れないぞ!」

最初に言った条件で絞り込んだ後ならこの手のタイプ一択だ。
こんな相手に出会えたら俺は一生大事にする。絶対だ!

「そんな相手なら僕の嫁に欲しいですが?」

エレンドスはそう言ったけど、こいつは俺ほど仕事で疲れてるわけじゃないんだから、特別癒し系の相手に拘る必要なんてないのにな。

そう思いながら『気分転換もできたことだし』と改めて仕事へと取り掛かった。


***


「ん~…!終わった終わった」

やっと一山超えて仕事の目途が立ったと思いながらトイレ休憩に立ち、そのまま気分転換に庭を見下ろしながら歩いていると、庭に不審人物がいることに気が付いた。
なんだかコソコソしていてとっても怪しい。
他国からのスパイや暗殺者の可能性もなくはないなと思ったから、鬱憤晴らしにとっ捕まえてやろうとそのまま相手の真ん前に来るよう窓から飛び降りた。
でもいざその相手を目の前にして俺は拍子抜けした。

(え?子供?)

綺麗に短く整えられた黒髪は手入れが行き届いているかのように艶やかで、身長は俺より頭一つ分低い。
どんぐり眼の可愛らしい少年だ。
見る限り完全に丸腰で、しかもド素人丸出しの狼狽えぶり。
どこからどう見ても何らかの理由でここまで迷い込んできただけの相手にしか見えなかった。

「えっと…誰?」

しかも第二王子の俺の顔を知らない様子。
貴族でこれはあり得ない。
じゃあ誰だという話になるんだけど…。

「俺はラフィンシア。気軽にラフィと呼んでくれ。お前は?」
「え?あ、俺は優次。ユウジだ」

俺が名乗っても全く気づきもしない上に名前がかなり独特だった。
これはもしやという気がしてちょっと話を聞いてみることに。

それから色々聞きだしてみると、どうやらエレンドスがエマーリンに頼んで俺の嫁を召喚してくれたらしいと判明した。
なんで男なんだよとちょっと思ったが、どうせあいつのことだ。
うっかり条件に『女』というワードを入れ損ねたんだろう。

(まあいいけどな。どっちでも)

俺は別に相手を女に限る気はないし、取り敢えず友人になってから考えようと思って仲良くしてみることに。
だってこれまで忙しすぎて友達だって碌にできなかったんだぞ?
学園だってスキップで卒業したし、仲の良い奴なんて一人もできなかった。
だから嫁でも友達でも誰でもいいから、俺を癒してほしかったんだ。
聞けばユウジがここにいるのは五日間だけだって言うし、短い間だけでも仲良くしてもらえたら嬉しい。

(人生初の友人万歳!)

そう思って接していたはずなのに────気づけばすっかりその人柄に惚れていた。




ユウジが無事に向こうに帰った後、エマーリンは俺にこんなことを言ってきた。

「どうでした?ユウジは貴方の理想そのものの相手だったでしょう?」

エマーリンは召喚の際、特に世界を指定はしなかったと言っていた。
つまりここアレファンドラに俺の理想の相手がいれば、その相手が召喚されても全くおかしくはなかったと。
それにもかかわらず異世界からユウジが召喚されたということは、この国に俺を癒せる奴はいなかったということに他ならない。

一番今の俺にぴったりだったのがユウジなんだと断定されてしまった。
でも言われてみれば確かにそうで、気が合って一緒にいて楽しいだけじゃなく気持ちも楽で、凄く癒される相手だった。
だからエマーリンの言葉は素直にそうかと受け止められたんだけど…。

「さあさあ。宰相から貴方のやる気を引き出してほしいとお願いされたんですよ。もう一度彼を呼び出してほしいなら、積極的にお仕事頑張ってくださいね」

ふふふと笑う性悪魔術師に舌打ちして、俺は見てろよとばかりに仕事の効率化を図った。
だって折角ユウジを召喚してもらっても、一緒に遊べなかったら意味がないだろう?

(俺の本気を見せてやる!)

そう思いながら仕事に励み、一週間かからず無事にユウジを再召喚してもらうことができた。

(俺の嫁。本当に癒される~)

父や兄にかなりイラつかされたけど、頑張った甲斐があった。
よく考えたら友人兼嫁って最高だよな?
ユウジとの日々は俺にとってのご褒美だ。

え?条件通り追いかけなくていいのかって?
馬鹿だな。そういうのは相手を見てやるもんだ。
どうやって落とせばいいのかなんてすぐわかる。
ユウジを落とすなら搦め手だ。
焦ったらダメ。押しすぎてもダメ。
素の俺を出しつつ俺自身をアピールし好感度を上げる。
そしてその合間合間にさり気なくアプローチしていくんだ。
絶対に逃げられないようにしないと。

そう言ったらエレンドスに『腹黒王子!』って言われたけど勝手に言え。
俺は絶対にユウジを落としてみせる!
そんなことを考えながら日々を過ごしたけど、実際は俺が深みにはまっただけだった。
ユウジが可愛すぎてたまらない。

料理上手な嫁、最高!
たまに甘えてくる姿も、輝く笑顔も、お人よしなところも、時に無防備なところも、全部全部大好きだ!
狙ってそれをやってる令嬢達とは全然違う天然だからいいんだよな。
それに父や兄の理不尽に対して怒る俺を慰め癒してくれるところが更にいい!

無事に落とせた暁にはいっぱい癒してもらおうと思いながら、俺は将来の嫁と沢山楽しい時間を共有したのだった。



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