たった五分のお仕事です?

オレンジペコ

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Ⅱ.セカンド・コンタクト

閑話1.そんな馬鹿な?! Side.国王

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いつもいつも反発し、我儘を通して第一王子であるシュナイデルに苦労を掛ける第二王子ラフィンシア。
妃は第一王子であるシュナイデルにはいつも厳しい苦言を口にするが、ラフィンシアは甘やかし放題だ。
「貴方は知ろうとしませんけれど、ラフィはしっかりやっていますよ?」だと?
第二王子の仕事などたかが知れているのだからそれくらい当然だ。
私からすれば、それくらいさっさと終わらせて兄の補佐をしろと言ってやりたい。
シュナイデルの仕事量はラフィの倍はあるのだから。
それにしても────。

「ラフィンシアが仕事を放り出して城の外に出ただと?!」
「あ、いえ。急ぎの仕事はきちんと終わらせておられま……」
「うるさい!大臣のお前まであやつを甘やかしてどうする?!仕事を放り出したことに変わりはなかろう?!」

いくらエマーリンの知り合いをもてなしているとは言っても、第二王子としての仕事はきっちり終わらせておくべきだ。

「あいつはそんな基本的なことも理解せず遊びまわるとは…」

イライラしながらそう溢していると、宰相が思い切り溜息を吐いてきた。
きっと宰相はじめ他の大臣達も皆呆れていることだろう。
昨日はしおらしく『分を弁えて暫くおとなしくしておきます』と言っていたが、舌の根も乾かぬうちに今朝は城を飛び出していったらしい。

「本当にいくら言っても聞かん奴だ」

あんな奴は謹慎処分を受けてちょうどいいくらいだと思い、早速帰ったらそれを伝えるようにと命じておいた。
第二王子の仕事など一週間かそこら放っておいても何ら問題はない。
精々自分の立場を思い知り、しっかりと反省してほしいものだ。
そう思っていたのに────。

二日、三日、四日と経過していくにつれて、何故かシュナイデルから回ってくる書類が激減した。

「そう言えば例の洪水対策の件の書類が回ってきていないな」

他にも第一王子に任せていたあれこれの書類が決裁書類としてほとんど上がってこない。
いずれもそれなりに重要な案件なのに何故滞っているのか。
そう思い官吏に尋ねたら、そりゃそうですよと疲れたように返ってきた。

「ラフィンシア王子の謹慎が終わるまで、回ってこないのでは?」

そんな馬鹿な話があるか。
あれは第二王子の仕事ではなく第一王子の仕事なのに、こいつは何を言っているんだと思い他の者にも聞いてみたが、皆が皆同じ答えを返してきて腹が立った。

「もういい!直接シュナイデルに訊きに行く!」

本人から話を聞けば納得がいく答えが返ってくるだろうと思い、自らの足でシュナイデルの執務室へと足を向けたのだが……。

「シュナイデル!」

バァンッ!と開け放ったシュナイデルの執務室の中には書類がかつて見たことがないほど書類が山積みになっていて、そのほとんどが手つかず状態。
しかも本人は危機感が乏しいのか、女を連れ込んで膝の上に乗せ、菓子を食べさせてもらっていた。

「な…な、な、なっ…」
「ち、父上?!こ、これはその、違うのです!ちょっと仕事に疲れたので息抜きをと思っていただけで…っ」

あたふたとしながら言い訳を探す姿に苛立ちが込み上げる。

「…………仕事はちゃんとしていたと?」
「ええ!もちろんです!」
「ではすぐに洪水対策の件の書類と騎士団の経費削減案、それと来季の予算見直しについての提案書を出せ」
「へ?」
「へ?ではない!予算の見直しについては先週あそこまできっちり纏めていたんだ、修正さえ入れればすぐだろう?!」
「え?ええと…?すみません。ちょっとすぐには…」
「では騎士団の経費削減にあたっての問題点の洗い出しは?」
「えっ、えっと…それはですね…」
「それもできていないというのか?!急ぎだと官吏から言われているはずだぞ?!」
「は、はい!すみません!すぐに取り掛かりますので!」

そう答えはしたものの、シュナイデルは書類の山をひっくり返しながら『ない!ない!』というばかり。
分類わけさえできていないようだ。

(どうなっている?)

補佐官が次々やめていったにもかかわらず仕事はしっかり回っているようだったから、それだけシュナイデルが優秀なのだと安心していたのに…。

ここでふと、先程聞いて回った官吏達の言葉が脳裏によぎった。

『ラフィンシア王子の謹慎が終わるまで、回ってこないのでは?』
『第一王子の仕事はこれまで半分以上ラフィンシア王子がご負担なさってましたし、仕方がありません。できるだけ早く謹慎処分を解かれることをお勧めいたします』
『政務が滞っているのはラフィ王子がいらっしゃらないからです!あっちもこっちも仕事が回らず悲鳴が上がっているのですぞ?!陛下!いい加減ラフィ王子を現場にお戻しください!』

「…………シュナイデル」
「は、はい?!」
「お前、ラフィに仕事を押し付けていなかったか?」
「ええ?!いえ!ちょっと手伝ってもらっていただけですが?!」
「……そうか」

まあいい。
その言葉が本当かどうかなど、ラフィの謹慎処分を解けばわかることだ。

そう思い、明日からラフィの謹慎を解くと口にしたらあからさまにシュナイデルの顔が輝いた。
もうそれだけで答えは出たようなものだ。

ついでとばかりにそのままラフィの執務室へと足を向けると、当然ながらそこにラフィ本人の姿はない。
けれど積まれた書類はしっかりと分類わけされており、謹慎が解けたらすぐにでも手が付けられるように整理されている。
きっと朝一番である程度目を通しには来ているのだろう。
これは普段から仕事を理解し自分がやりやすい方法をしっかりと確立している証拠だ。
シュナイデルとの力量の差は歴然だった。
これまでそんなことにさえ気づいていなかった自分の節穴具合に嫌気がさす。

「はぁ…。今回ばかりは私が謝るしかないか」

そう思いながら渋々ラフィの部屋へと足を運んだ。




当然だがラフィは厭味ったらしく『第二王子の自分はいらないんでしょう?』などと言ってきた。
本当に子憎たらしい。
けれど今回は自分が節穴で悪かったとちゃんと謝罪を入れる。
すると溜息を吐きながらも『明日から仕事に戻ります』と返してくれたからホッと息を吐いた。

そして復帰と共に第二王子の仕事はあっという間に一日で片付けられ、その翌日から徐々にシュナイデルの書類がこちらに回ってくるように。
内容は当然ながらこれまで同様完璧で、これには大臣や宰相達もホッと安堵の息を吐いていた。

「はぁ…謹慎処分が解けて本当に良かったです」
「本当に。我々もシュナイデル王子からの差し戻しが面倒なので、急ぎの案件は直接ラフィ王子に持っていくことが多いのですよ」

(な…なんだと?!)

「時間がかかっても大丈夫な第一王子の仕事はシュナイデル王子に持っていきますが…」
「以前は今ほどでもなかったですが、最近はラフィ王子の書類を捌くスピードがアップしたこともあって『ラフィに持ってけ』と仰ることも増えましたしね」
「ええ、ええ。これではどちらが王太子なのだか…」

やれやれとばかりに口々に大臣達がそんなことを言ってくる。

「だ、だが、ラフィは遊びまわって我儘ばかりだとお前達も言っていたではないか…っ」
「あれは『ストレスが溜まっているようだから配慮が必要です』と陛下にお伝えしていただけです。ラフィンシア王子は確かに街に遊びに出たりはなさいますが、あれはほぼ息抜きですよ?しかも仕事はきちんと片付けてから出掛けられますので、こちらも文句のつけようがないのです」
「そうです。我儘も仰いますが、大抵ストレスが溜まった故のもので、『甘いものを持ってこい!』とか『好物の○○が食べたい!シェフに言っておけ!』とか『そこの騎士、剣の相手をしろ!』とかそういう物ばかりです。皆事情は分かっておりますし、特に問題はありません」

そんな風に大臣達は皆ラフィの味方だった。

(なんということだ…!)

こんなのおかしいと思っていたら、妃がこちらへとやってきて『だから前に言ったではありませんか』などと言われてしまった。

『あの子を侮ると痛い目にあいますよ?』と確かに以前妃からは言われていた。
その時は『お前はラフィばかり可愛がり過ぎる。もっとシュナイデルにも優しくしてやれ』と窘めた記憶があるが、まさかその言葉を痛烈に思い知る日がやってくるとは。
今思えば妃がシュナイデルに厳しくしていたのは、この現状を正しく理解していたからなのかもしれない。

こうして私は大臣達と緊急会議を開き、王子二人の仕事の割り振りを見直すと共に、これからはたまにはラフィに差し入れでも持っていかせてねぎらってやるかと少しだけ反省したのだった。


****************

※以前ラフィが第一王子に仕事を混ぜ込んでくるなって怒ってたのは、ここで大臣が言ってる『急ぎではない第一王子の仕事』。
『それくらい自分でやれ!』がラフィの本音。

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