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第一章 俺がディオを堕とすまで

1.※プロローグ

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「ディオ!」

俺は会いたかったその人物の姿を目に留めて、笑顔で手を上げた。
それに応えるように彼もまた笑顔で手を上げてくる。

「ルーセウス。お待たせ」
「俺も今来たところだから気にしなくていい。それより早く行こう。今日も美味しい店をチェックしてるから」
「それは楽しみだな。ルーセウスのお勧めは外したことがないから」

クスクスと笑うのは俺の想い人。ガヴァムの王太子 ディオ=ハイルング=ヴァドラシアだ。

癒し系な雰囲気と生真面目さを表すような凛とした雰囲気を合わせ持つ、栗色の髪とヘーゼルの瞳の色白美人な王子と言えるだろう。
背の高さも170ちょっとくらいで俺より低い。
腕に囲えばすっぽり収まるちょうどいいサイズだ。
俺より二つ年下でまだまだ成長期のはずだからもう少しくらいは伸びるかもしれないが、遺伝的に俺より大きくなるということはないだろう。

身体の相性も良く、俺は恋人にしたいと思ってるのにちっとも頷いてもらえないのが不満だった。
誘えば抱かせてもらえるし、最中は俺に夢中になってくれるのに、終わればじゃあまたとあっさり離れていかれる。
これじゃあセフレ同然だ。

(こんなに好きなのに!)




俺達の出会いは数ヶ月前へと遡る。
その頃やっと魔石列車であるヴァレトミュラがゴッドハルトまでレールが敷かれ、浮かれた気持ちで見に行ったんだ。
ディオはガヴァム国の代表としてその列車でゴッドハルトへとやってきた。

第一印象は穏やかで誠実な人物といったところだろうか?
友好的に付き合えそうな相手だなと素直に思えた。

それから挨拶をして歓迎の晩餐へも招待し、極普通にもてなした。
何も問題はなく、後はそのまま明日ガヴァムに帰る予定だった。
なのに、夜たまたま剣でも振ろうかと散歩に出たらディオが庭にいて、月の光に照らされながら物憂げに佇んでいるのを見て目を奪われてしまったんだ。
これまで誰かに見惚れたことなんてなかった俺が、だ。

「ディオ王子」
「ルーセウス王子?どうかされましたか?」
「俺は剣でも振ろうかと思って出てきただけです。それよりもこんな時間にどうされました?もしかして枕が合わず眠れませんでしたか?」

もしそうだったら申し訳ないと口にすると、そんなことはないと返してくれた。
とは言えなんとなくそのまま放って置く気にもなれなくて、手を差し伸べ庭園を一緒に歩きながらなんとか話を引き出すことに成功した。

それによるとディオはここに来る前、幼い頃からずっと好きだった相手に振られたらしい。
相手の令嬢はディオよりも年上だったようで、結婚すると聞かされて慌てて『自分と結婚してくれるんじゃなかったのか』と聞いたが、その場限りの子供への口約束であり、ディオのことはずっと弟のようにしか思えなかったと悲しげに告げられてしまったのだとか。

「俺は本気だったのに、彼女にとってはそうじゃなかった。ただそれだけの話です」

その落ち込んでいる姿があまりにも痛々しくて、気づけばそっとその唇を塞いで、素で『慰めてやる』と口にしてしまっていた。
思い返せばきっともうこの時には恋に落ちていたんだろう。

「ルーセウス…王子?」
「俺が、失恋なんて忘れさせてやる!」

肩を掴んで真っ直ぐに伝えたらディオは困った顔にはなったものの、『忘れさせてくれるなら』と俺に応えるように唇を重ねてくれて、部屋に行こうと蠱惑的に微笑んだ。

それを見て実は経験者なのかと思ったのに、ディオも俺と同じで初めてだった。
これにはびっくりだ。
思い切りがいいにも程があるだろう。
本当にいいのかと思わず何度も確認してしまったくらいだ。
でも知識だけは豊富だからとアレコレと俺が知らない事を沢山教えてくれた。
どうやらガヴァムには国王監修の最新閨指導本というのがあるそうで、それに沿ってやれば誰でも上手くやれるらしい。
これは是非俺も手に入れて熟読してみたいものだ。

「愛撫は触れるか触れないかの力加減で、でも緩急も大事だから時折強弱をつけるって書いてあったかな」
「やってみる」
「相手が緊張してるのを感じたらキスで気を逸らして…反応を見ながら試すのは必須って、ンンッ…」
「ディオ、可愛い」

なるほど。愛撫で官能を引き出すと感度も上がると言うわけか。
そこからも色々教えてもらいながら後ろの準備もしっかりやって、俺はゆっくりとディオの中へと猛った雄を沈め込んだ。

「あ…ッ」

流石に初めてで苦しいのか、腰が逃げそうになるディオ。
そんなディオの腰を自分の方へと引き寄せて、逃がさないとばかりにグッと腰を押し込んだ。

「やっ!ぁああっ!」

その衝撃に身体を強張らせ、フルフルと震えるディオにそっとキスの雨を降らせる。

「ディオ。大丈夫か?落ち着くまでちゃんと待つから。力を抜け」

本当は辛い。
今すぐにでも射精してしまいそうなくらいいっぱいいっぱいだ。
こんなに気持ちいいなんて予想外過ぎる。
それでも意地で我慢した。
俺にだってプライドはある。

(ディオより俺の方が年上なんだ。絶対これくらい耐えて見せる!)

グッと堪えて暫く待ったら、やがてディオが呼吸を整えて緩く微笑んだ。

「ゴメン。ありがとう」

そこからはユラユラと誘うように腰を揺らしてきて、『ルーセウスも気持ち良くなって』なんて甘く囁いてくるからたまらない。
聞けばガヴァムではお互いに気持ち良くなってこその交わりだと教育されるらしく、一方的なのはただの自慰そのものでしかなく、下手くその言い訳なんだとか。
なんて辛辣なんだろう?
流石有名な裏の世界を仕切る王の国。
厳し過ぎる。

でもそういうことなら暴走することなく、ちゃんと一緒に気持ち良くならないと。
ディオの反応をちゃんと見て、気合を入れ直してあっちもこっちも可愛がる。
ディオも俺を見ながらそれとなく愛撫をしてくるからより興奮してしまう。

抱き潰したい。
無茶苦茶に蹂躙してしまいたい。

そんな感情に何度も見舞われながら、俺はなんとか理性を保ち、ディオの余裕を奪おうと頑張って攻めた。

「ディオ、ディオッ!」
「あ…ルーセウス…ッ」
「ここが好きか?それともこっち?好きなところを擦ってやる」
「んんっ…そこ、気持ちいっ」
「ここか。わかった」
「あぁっ!イイッ!」

俺の腕の中、気持ち良さそうによがる姿が愛おしくて、何度もその白い肌へと口づけを落としていく。
すると応えるようにキュッと入り口を締めつけて、もっと頭が真っ白になるくらいしてとねだられた。

そういえば失恋を忘れたいんだったか。
そういうことならもっと攻めよう。

「ディオ。失恋相手なんて忘れて、今は俺だけを見て感じてくれ」

俺のだ。
この身体は俺だけの────。

気づけばそんな思いに囚われていた。
もしかしたらそれだけ夢中になるほど身体の相性が良かったということなのかもしれない。

そうして溺れあって、気づけば二人で朝を迎えていた。

「ん……」

ディオの寝起きの気怠げな姿が妙に色っぽくてドキドキする。
昨日この身体を抱いたのだと思い出すだけで下腹が熱くなって仕方がない。
落ち着かなければ。

それから二人で湯を浴びて、メイドに口止めしてシーツを替えてもらって、昼までベッドで休ませてからガヴァムへと帰した。

本当は帰したくなんてなかった。
何度でも抱きたかった。
でもそういうわけにもいかなかったから、また連絡すると言って別れたんだ。

それが俺達の始まり。


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