王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第一章 俺がディオを堕とすまで

7.※ルーセウスとの疑似結婚式② Side.ディオ&他視点

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口づけから始まった交わりは愛撫へと繋がり、そのまま立ったまま互いに欲情を高め合っていく。
久しぶりにルーセウスに触れられて、身体は歓喜に震えていた。
これまで何度も抱かれてきたからルーセウスの手を覚え込んでいるのだ。

「あ…ルーセウス……」
「ディオ。そろそろいいか?」

熱っぽい眼差しで促されて考えるまでもなく頷く俺。
だってこの後は繋がって互いに溺れあうだけだと知っているんだから、断るはずがない。

「っと…立ったままだとちょっと難しいな。抱き上げてもいいか?」
「え?ああ、うん」

身長差があるから立ったままだといつもと勝手が違うらしい。
なるほど。案外気づかないものだ。
とても勉強になる。

「しっかり掴まっててくれ」

そういうや否や、片足を持ち上げて肩へと引っ掛けると、もう片方の足も抱え上げられて、そのまま狙いを定めるように男根を俺の後孔の入口へと寄せてきた。

「ちゃんとゆっくりするけど、怖かったら言ってくれ」

そんな言葉にちょっとだけ苦笑が漏れてしまう。
まるで初めての時のようなセリフだ。

(もう何度も抱いてるくせに)

今更────そう思ったのに…。

「あっあぁっ!」

いつもと勝手が違うのだと言うことに挿れられてからやっと気づいた。
自分を支えてくれているのはルーセウスだけで、縋れるものもルーセウスだけだったのだ。
これは確かに怖い。

「やっ…ルー…!ルーセウスッ!」

不安から抱き着いて名を呼ぶと、大丈夫だと安心させるように腰を引き寄せられる。

「絶対落とさないから、安心してそのまま抱き着いててくれ」

初めての日と同じように俺を安心させてくれる優しい声。
そんな声にホッと息を吐く。
がっしりとした安心感がある身体に甘えるように身を寄せ、抱き着いた。

それと同時にググッと腰が進んで、繋がりはより一層深くなっていく。

慣れ親しんだルーセウスの熱が自分を貫いていくのが気持ちよくて、全身が歓喜に満ちていく。
目の端に映るのは神が居る祭壇。

(あぁ…神様の前で…抱かれてる)

光が降り注ぐ神聖な場で抱かれるガヴァムの結婚式。
立会人は居なくても、これはまさに結婚式そのものとしか言いようがなかった。
だってこの場で愛を囁かれながら熱く求め合って抱かれているのだから。

(俺が王太子じゃなかったら…応えてあげられたのかな?)

初めてそんな事をチラリと考えたけど、そんな思考はあっという間に掻き消えてしまう。

キスをしながら揺さぶられ、段々激しく腰を打ち付けられて、互いに夢中になって貪り合ってたら、まだ一度も侵入を許していなかった奥深くへと初めて受け入れさせられてしまったからだ。

「ひっ…!ルー…っ!」
「うっ…ディオ…すまない。奥に嵌った」

これが噂の結腸責め。
驚いて半泣きになったけど、動かないからと言ってひたすら優しく宥めてくれるルーセウスに段々申し訳なくなってしまって、ある程度馴染んだところで『動いていいよ』と許可を出した。

「いいのか?」
「ん…。ルーセウスなら」
「ディオ!ありがとう。ちゃんと責任は取るからな!」
「そういうのはいいから」

責任なんて取れるはずがないし、取ってほしいとも思わない。
無理なことは口にするだけ無駄だ。

「ツレないな?!こんなに大事に思ってるのに」
「でも無理だから」
「……っ!…………絶対に堕としてやる」
「無理だと思うけど?」

何度も言うけど、王太子同士の俺達に許されるのは友人関係のみだ。
だから素直にそう言ったのに、何がルーセウスに火をつけたのかその後腰砕けになるほど散々啼かされて、『終わりの言葉は?』と訊かれたから、だどたどしく『それは一応立会人がするものだから』と口にした。
予行練習だし必要ないだろう。

「ルー…疲れた。動けないからベッドに運んで。落ち着いたら部屋に食事を運んでもらおう」
「ああ。今日は泊まるんだよな?初夜だし、一晩中しような!」
「無理。寝る」

俺はルーセウスほど体力馬鹿じゃないんだ。
回復力は高いけど、連続は無理。
そう主張したのに朝まで付き合わされて、散々啼かされた。

(もう暫く寝てやらない!)

そんな決意を胸に翌日ガヴァムへと帰り、ツンナガールでの着信も無視して、本気で1か月会ってやらなかった。
こんな暴挙はこれっきりにしてほしいものだ。


***


【Side.ロキ】

「え?ディオが付き合うのを飛び越して、ルーセウス王子と勝手に結婚した?本当に?」
「ブフッ…。ククッ…。そ。まあ本人達は予行練習とか言ってたけど、始めの言葉もちゃんと口にしてたし、成立してると言えばしてる状況だったな」
「あー…立会人がいないから大丈夫とか思ってやってしまったパターンか…」

ディオの護衛についてた裏稼業の男が笑いながら報告してきたのは驚きの内容だった。
護衛がついてるのをすっかり忘れていたのがディオの失敗と言えるだろう。
たとえ口を挟まなくとも立会人はそこに居さえすれば一応は成立する。

互いに神の前で相手への気持ちを報告して、そこで愛を示せば婚儀として認められるのだ。

「一応ちゃんと締めの言葉はこっそり俺が祝福を込めて口ずさんでおいたぜ?」
「本人達に聞こえてなかったなら詐欺だろう?まあ別にいいけど」

お遊びの略式でなんちゃって結婚式をしていたなら兎も角、きっちり手順を踏んで抱き合ってたならお互いそれなりに本気なんだろう。

(無自覚とは言え、完全に堕とされてるなぁ…)

流石兄上とアンヌの子。そっち方面に弱過ぎだ。
でもそれだけなら結婚式までしようとは思わないだろう。
ディオはあれでも兄そっくりな一面があって、やたらと王太子としての自覚が強い。
だからこそ適当な気持ちで神の前で抱かれたりはしないだろう。
絶対にルーセウス王子だからこそいいかと思って抱かれたはず。

取り敢えずディオとルーセウス王子との結婚が成立したという書類だけは作っておこうか?
これは絶対に二人の関係を後押しする切り札になるだろう。
ガヴァムとしては側妃だって持てるし、この先結婚したい相手ができたとディオが言い出しても特に問題はない。

どうせそこまでしたのならそのうち二人は勝手にくっつくだろうし、何かの機会にさりげなく教えてあげればいい。

一応ゴッドハルトのトルセン王にだけ事情説明の手紙は出すけど、『ルーセウス王子が嫁を取る際、離婚するなら連絡してください』と書いておけばなんとかなると思う。
細かいことは気にしない、気にしない。
上手くやらないとこっちの退位が遠のくだけだし、それだけは絶対に避けないと。

勿論兄上にだって内緒だ。
絶対大事にしてしまうのがわかるから、口の堅い一部の人間だけに小ぢんまりと周知しておこう。


***


【Side.トルセン】

俺はガヴァムから届いた手紙を手にフルフルと震えていた。

そこにはルーセウスとディオ王子がミラルカで勝手に二人で結婚式挙げちゃったんで、嫁認定をよろしくみたいなことが書かれてあったからだ。

「嘘だろ?!」

何故よりにもよってガヴァムの王太子と?!

「いやいやいやっ!ないだろ?!」

しかもガヴァム式でガッツリうちのルーセウスがディオ王子を抱いたらしい。
シャレにならない事態だ。
どう考えてもこっちが責任を取る側だし、どう落とし前つけてくれるんだと言われているようで、久し振りに身震いがした。

剣で戦える相手なら兎も角、ロキ陛下は裏社会のトップとも言える人物だ。
しかも後ろ盾は大国ブルーグレイ。
セドリック王子は俺とも親しくはしてくれるが、ロキ陛下との方が仲は良いと聞く。
下手に敵対する方向に動いたら、暗殺されるか経済的に圧を掛けられてプチッと潰されてしまう気がする。

(ここはロキ陛下の言う通りにする方がいいんだろうな)

手紙と一緒に同封されていた婚姻成立の書類を見ながら溜め息を吐く。

本人達はあくまでも予行練習のつもりだったようだから、今は問いたださず、ちゃんとくっつくまではそっと見守って、万が一にでもルーセウス王子に他に結婚したい相手ができたら離婚にも対応しますよ。

ロキ陛下の手紙を要約すればつまりはそう言うことだった。
別に慰謝料を請求されたわけでもないし、特に何かが変わるわけでもないようだから異論はない。

「…よし。了承の手紙を書こう」

そう結論を出し、俺はそっとその封書を鍵付きの引き出しにしまい込んでガヴァムへと返事を返した。

「でもルーセウス。こんな大事な話、頼むから一言くらい相談してくれ」

父親としてちょっと悲しくなった午後だった。



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