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第一章 俺がディオを堕とすまで
8.謝罪訪問
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擬似結婚式を堪能して、初夜で抱き潰したらディオに激怒された。
気分はまさに『実家に帰らせていただきます』と嫁に出て行かれたようなもの。
会ってもらえない以前に、毎日のツンナガールでの通話さえ拒否されて死ぬかと思った。
「…マズい。このままだと捨てられるかも…」
会いに行って、俺が悪かったと懸命に謝ったら許してもらえるだろうか?
一ヶ月の音信不通に凹みまくっていたら、珍しく父が剣での打ち合いでもどうだと誘ってくれる。
そんなに打ちひしがれて見えたんだろうか?
でも身体を動かしたら幾分スッキリはしたし、父には感謝だ。
「父上。ありがとうございます」
「ああ。元気が出たなら良かった。その…もしかして後悔してるのか?」
「何をです?」
「え?!…えっと…その、ディ、ディオ王子との仲を、だな?」
「知ってたんですか?」
ディオとの仲は誰にも言ってなかったのに、まさか父に知られているとは思わなくて驚いた。
流石一国の王。
俺の拙い隠し事なんてお見通しのようだ。
「俺は大好きなんですけど、なかなか恋人にはなってもらえなくて…」
「…うん?」
「王太子同士だからって全然本気にしてもらえないんです」
「え?!そ、そうなのか。ちなみに二人はいつから?」
「ヴァレトミュラ開通でここに来た日です。ちょうどディオがずっと好きだった女性に振られたって言うから、慰めたくて抱いたんです」
「っ、アウト…ッ!」
「…?何かダメでしたか?」
「い、いや。なんでもない。それで?お前は本気になったのか?」
「ええ。でもディオは『王太子同士だし、無理』って毎回言うんです。俺は諦めきれなくて会う度に精一杯口説いてるんですけど、なかなか上手くいかなくて」
「……っ!」
「全然応えてもらえないから、この間擬似的にでも結婚できたらってダメ元で話を振ってみたら、なんとOKがもらえたんです!もう嬉しすぎて朝まで抱き潰してしまいました。でもそれが悪かったのか、激怒されて音信不通になってしまったんです」
やっぱりあれがまずかった。
反省している。
「父上…会いに行ったら許してもらえると思いますか?」
「この馬鹿がぁあ!!一ヶ月もちんたら何をやってたんだ!100%お前が悪いだろ?!今すぐ嫁に土下座して謝ってこい!!いい加減殺されるぞ?!」
それから大急ぎでワイバーン部隊が編成されて、ガヴァムへと送り出された。
大袈裟ではあるけど、一人で行くよりは誠意は伝わるかもしれない。
(でも会ってくれるのか?)
会ってもらえるのか物凄く不安だけど、このままだと三ヶ月くらい放置されそうで怖いし、腹を括るしかない。
俺は大きく息を吐き出すと、ガヴァムへとワイバーンを飛ばした。
ガヴァムの城はワイバーンで二日半ほどで着いた。
追い風が良かったのか案外近く感じた。
これならもっと早く来れば良かったと思ったくらいだ。
歴史ある古い街並みに最新の魔道具が溢れる不思議な光景が眼下に見える。
その誰もが明るい表情なのは国が豊かな証拠だ。
ゴッドハルトも新興国として頑張ってはいるが、脳筋が多いせいか法整備が甘かったり、国全体にはまだまだ目が行き届いていなかったりと問題点は多い。
もっともっとこうして他国を参考にしていかないとと改めて思った。
そうこうしているうちにガヴァムの王城へと辿り着く。
貫禄あるその佇まいに気が引き締まる思いがする。
先触れは出したものの緊張してしまう。
何せ初めての訪問だ。
緊張しない方がおかしいだろう。
「ようこそ、ルーセウス王子」
そしてワイバーンで降り立った俺へと一番に声を掛けてきたのはまさかまさかの国王陛下その人だった。
ビビるなと言う方が無理だ。
「お、お初にお目に掛かります。ゴッドハルト国王太子、ルーセウス=ヘルト=ゴッドハルトと申します。ロキ陛下におかれましては────」
「ああ、そう言うのは気にしなくていいから。私的訪問なんだし、気軽にしてくれないかな?」
なんだかとってもフレンドリーだ。
ニコニコ笑顔だし、見たところ噂に聞くような怖い空気は一切感じられない。
そう思ってホッと息を吐く。
「話はちょっと前からディオに聞いていたんだけど、うちのディオが融通効かなくてなんだか申し訳ないな」
「え?!」
「あまりにも頑なだったら嵌めてでも問答無用で捕まえてくれていいけど、泣かせるようなことだけはしないようにね。俺はある程度許容できるけど、裏の皆は過保護だから」
ニコッと笑われるけど、なんだかとっても物騒なことを言われた気がした。
良い方に受け取れば『二人を応援してるよ。頑張って』と言う意味だけど、深読みすると『泣かせたら闇に葬るよ?』って言われたようなもの。
チラリ…。
(うん。前者だな)
大丈夫。
ロキ陛下はきっと味方になってくれる気がする。
「その…ディオはまだ怒っていますか?」
「ああ、一ヶ月前のアレかな?まあ怒ってるのは怒ってるんだろうけど、あれは自分が先に堕とそうとしたのに逆に堕とされそうになったから悔しいって思ってるだけだと思うな。わかりやすい」
「え?」
「ふふふ。攻防戦っていいよね?」
何故か勝手に楽しまれてる?!
「えっと、一応言っておきますけど、遊びじゃなくて、俺は本気ですからね?」
「勿論。さっさと落としてイチャイチャしたらいいよ。頑張って」
『はい、ここがディオの部屋』なんて言いながら案内してくれて、ロキ陛下はあっさり去って行った。
なんだったんだろう?
揶揄いに来ただけだったんだろうか?
まあいい。
ロキ陛下のお陰で肩の力は抜けたし、気を取り直して向き合おう。
コンコンコン。
「ディオ。ルーセウスだ。入ってもいいか?」
「どうぞ」
意外にもあっさり通された。
嬉しい。
テーブルにはお茶とお菓子が用意されていて、ちゃんと俺が来るのは伝わっていたようだ。
「それで?今日はどうしてここに?」
「勿論謝罪しに。あの日、抱き潰して悪かった!」
取り敢えず謝罪だ。
思い切り頭を下げて誠意を込めて謝罪の言葉を口にする。
「ディオが好き過ぎて暴走したのは凄く反省してる。可愛い声も、そそられる表情も、ディオの全てに理性が飛びそうなほど魅了されて、どうしようもなく貪りたくなったんだ。だからってディオの意思を無視するのは間違ってた!」
「…っ。俺に堕ちて、結果的にああなったって事?」
「そうだ。すまなかった!」
「…そうか。それならいいかな?」
(いいのか?!)
ちょっとびっくりしたけど、許してもらえるなら凄く嬉しい。
「じゃあまたツンナガールでも話してくれるか?」
「ああ」
「会ってもくれる?」
「うん」
「良かった…」
心底ホッとした。
「じゃあこれで仲直りだな」
「そうだな」
そう言いながらディオが俺の膝に乗ってきて、仲直りのキスをしてくれた。
「ディオ…!」
一ヶ月ぶりにディオとの触れ合いに胸が震える。
「仲直りに抱いてもいいか?」
「別に構わないけど?」
「嬉しい。今度は暴走しないよう気をつけるから」
「まあ…わかってくれればいいんだ」
ちょっと照れた表情に嬉しくなって、そのまま抱き上げて寝室へと向かった。
気分はまさに『実家に帰らせていただきます』と嫁に出て行かれたようなもの。
会ってもらえない以前に、毎日のツンナガールでの通話さえ拒否されて死ぬかと思った。
「…マズい。このままだと捨てられるかも…」
会いに行って、俺が悪かったと懸命に謝ったら許してもらえるだろうか?
一ヶ月の音信不通に凹みまくっていたら、珍しく父が剣での打ち合いでもどうだと誘ってくれる。
そんなに打ちひしがれて見えたんだろうか?
でも身体を動かしたら幾分スッキリはしたし、父には感謝だ。
「父上。ありがとうございます」
「ああ。元気が出たなら良かった。その…もしかして後悔してるのか?」
「何をです?」
「え?!…えっと…その、ディ、ディオ王子との仲を、だな?」
「知ってたんですか?」
ディオとの仲は誰にも言ってなかったのに、まさか父に知られているとは思わなくて驚いた。
流石一国の王。
俺の拙い隠し事なんてお見通しのようだ。
「俺は大好きなんですけど、なかなか恋人にはなってもらえなくて…」
「…うん?」
「王太子同士だからって全然本気にしてもらえないんです」
「え?!そ、そうなのか。ちなみに二人はいつから?」
「ヴァレトミュラ開通でここに来た日です。ちょうどディオがずっと好きだった女性に振られたって言うから、慰めたくて抱いたんです」
「っ、アウト…ッ!」
「…?何かダメでしたか?」
「い、いや。なんでもない。それで?お前は本気になったのか?」
「ええ。でもディオは『王太子同士だし、無理』って毎回言うんです。俺は諦めきれなくて会う度に精一杯口説いてるんですけど、なかなか上手くいかなくて」
「……っ!」
「全然応えてもらえないから、この間擬似的にでも結婚できたらってダメ元で話を振ってみたら、なんとOKがもらえたんです!もう嬉しすぎて朝まで抱き潰してしまいました。でもそれが悪かったのか、激怒されて音信不通になってしまったんです」
やっぱりあれがまずかった。
反省している。
「父上…会いに行ったら許してもらえると思いますか?」
「この馬鹿がぁあ!!一ヶ月もちんたら何をやってたんだ!100%お前が悪いだろ?!今すぐ嫁に土下座して謝ってこい!!いい加減殺されるぞ?!」
それから大急ぎでワイバーン部隊が編成されて、ガヴァムへと送り出された。
大袈裟ではあるけど、一人で行くよりは誠意は伝わるかもしれない。
(でも会ってくれるのか?)
会ってもらえるのか物凄く不安だけど、このままだと三ヶ月くらい放置されそうで怖いし、腹を括るしかない。
俺は大きく息を吐き出すと、ガヴァムへとワイバーンを飛ばした。
ガヴァムの城はワイバーンで二日半ほどで着いた。
追い風が良かったのか案外近く感じた。
これならもっと早く来れば良かったと思ったくらいだ。
歴史ある古い街並みに最新の魔道具が溢れる不思議な光景が眼下に見える。
その誰もが明るい表情なのは国が豊かな証拠だ。
ゴッドハルトも新興国として頑張ってはいるが、脳筋が多いせいか法整備が甘かったり、国全体にはまだまだ目が行き届いていなかったりと問題点は多い。
もっともっとこうして他国を参考にしていかないとと改めて思った。
そうこうしているうちにガヴァムの王城へと辿り着く。
貫禄あるその佇まいに気が引き締まる思いがする。
先触れは出したものの緊張してしまう。
何せ初めての訪問だ。
緊張しない方がおかしいだろう。
「ようこそ、ルーセウス王子」
そしてワイバーンで降り立った俺へと一番に声を掛けてきたのはまさかまさかの国王陛下その人だった。
ビビるなと言う方が無理だ。
「お、お初にお目に掛かります。ゴッドハルト国王太子、ルーセウス=ヘルト=ゴッドハルトと申します。ロキ陛下におかれましては────」
「ああ、そう言うのは気にしなくていいから。私的訪問なんだし、気軽にしてくれないかな?」
なんだかとってもフレンドリーだ。
ニコニコ笑顔だし、見たところ噂に聞くような怖い空気は一切感じられない。
そう思ってホッと息を吐く。
「話はちょっと前からディオに聞いていたんだけど、うちのディオが融通効かなくてなんだか申し訳ないな」
「え?!」
「あまりにも頑なだったら嵌めてでも問答無用で捕まえてくれていいけど、泣かせるようなことだけはしないようにね。俺はある程度許容できるけど、裏の皆は過保護だから」
ニコッと笑われるけど、なんだかとっても物騒なことを言われた気がした。
良い方に受け取れば『二人を応援してるよ。頑張って』と言う意味だけど、深読みすると『泣かせたら闇に葬るよ?』って言われたようなもの。
チラリ…。
(うん。前者だな)
大丈夫。
ロキ陛下はきっと味方になってくれる気がする。
「その…ディオはまだ怒っていますか?」
「ああ、一ヶ月前のアレかな?まあ怒ってるのは怒ってるんだろうけど、あれは自分が先に堕とそうとしたのに逆に堕とされそうになったから悔しいって思ってるだけだと思うな。わかりやすい」
「え?」
「ふふふ。攻防戦っていいよね?」
何故か勝手に楽しまれてる?!
「えっと、一応言っておきますけど、遊びじゃなくて、俺は本気ですからね?」
「勿論。さっさと落としてイチャイチャしたらいいよ。頑張って」
『はい、ここがディオの部屋』なんて言いながら案内してくれて、ロキ陛下はあっさり去って行った。
なんだったんだろう?
揶揄いに来ただけだったんだろうか?
まあいい。
ロキ陛下のお陰で肩の力は抜けたし、気を取り直して向き合おう。
コンコンコン。
「ディオ。ルーセウスだ。入ってもいいか?」
「どうぞ」
意外にもあっさり通された。
嬉しい。
テーブルにはお茶とお菓子が用意されていて、ちゃんと俺が来るのは伝わっていたようだ。
「それで?今日はどうしてここに?」
「勿論謝罪しに。あの日、抱き潰して悪かった!」
取り敢えず謝罪だ。
思い切り頭を下げて誠意を込めて謝罪の言葉を口にする。
「ディオが好き過ぎて暴走したのは凄く反省してる。可愛い声も、そそられる表情も、ディオの全てに理性が飛びそうなほど魅了されて、どうしようもなく貪りたくなったんだ。だからってディオの意思を無視するのは間違ってた!」
「…っ。俺に堕ちて、結果的にああなったって事?」
「そうだ。すまなかった!」
「…そうか。それならいいかな?」
(いいのか?!)
ちょっとびっくりしたけど、許してもらえるなら凄く嬉しい。
「じゃあまたツンナガールでも話してくれるか?」
「ああ」
「会ってもくれる?」
「うん」
「良かった…」
心底ホッとした。
「じゃあこれで仲直りだな」
「そうだな」
そう言いながらディオが俺の膝に乗ってきて、仲直りのキスをしてくれた。
「ディオ…!」
一ヶ月ぶりにディオとの触れ合いに胸が震える。
「仲直りに抱いてもいいか?」
「別に構わないけど?」
「嬉しい。今度は暴走しないよう気をつけるから」
「まあ…わかってくれればいいんだ」
ちょっと照れた表情に嬉しくなって、そのまま抱き上げて寝室へと向かった。
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