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第三章 戴冠式は波乱含み
51.波乱の日① Side.ディア王女
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いよいよディオが王位につく日がやってきた。
ロキお父様はやっとこの日が来たと朝から上機嫌。
ディオも夜にたっぷりルーセウス王子と愛しあえたのか、幸せいっぱいの表情でツヤツヤ輝いている。
羨ましいことだ。
(私はまだ処女なのに…)
一人だけ先に大人になってズルい。
でも以前本当にルーセウス王子は上手いのかが気になって、ちょっとだけ興味本位で覗いた事があるのだけど、あれは凄かった。
あのディオが身悶えねだりながら余裕なく喘がされていて、すごく気持ちよさそうに抱かれていたんだから。
(初夜が待ち遠しいわ。手を抜いたら指摘してやるんだから)
自分だって最高の夜を経験したい。
そう思いながら来たるべき日を楽しみにしていた。
だから────。
(貴方なんてお呼びじゃないのよ!)
私は意識朦朧となりながらも、目の前の見知らぬ人物を睨み上げた。
***
事の発端は戴冠式での襲撃だった。
ニッヒガングの手の者が発煙筒を投げ込んで襲ってきたのだ。
幸いすぐに鎮圧されはしたものの、襲撃してきた者達だけが全てではないはず。
仲間がどこかにいるかもしれない。
だからディオの指示で裏稼業の者達と暗部を両方動かした。
実質ディオにとっての王としての初仕事だ。
とは言えディオはちょっとだけ抜けているところもある。
いや。抜けていると言ったらダメか。
自己過信しているところがあると言い換えるべきかもしれない。
ディオは裏稼業の仕事経験も豊富で、実践だって積んでいるある意味プロの暗部と言っていいくらいの実力者だ。
それだけの努力も実力も経験も積み重ねている。
王太子の仕事と並行してそれだけの実力を得たのは心底すごいとは思う。
けれどそこにこそ油断が出る。
そう。自分に護衛は一人いれば十分。なんだったら不要くらいの勢いだ。
王太子時代ならまだそれでもギリギリ許された。
でも今は王だ。
そこら辺の認識は変えるべきだと思う。
そう思って私は自分の持つ暗部達にディオの護衛を指示した。
バレたらいらないと言われるだろうから、バレないよう細心の注意を払った上で護衛に徹しなさいと。
その事に後悔はしていない。
私は必要だと判断したからこそそう指示を出したのだから。
今日は私も剣を持っているし、暗部も二人連れている。
問題はない。
そう。普段ならそれで何も問題はなかったのだ。
「ディア王女」
「ブラン皇子」
パーティー会場を抜け手洗いに行ったところでブラン皇子から呼び止められた。
「さっきの…発表の件で少し話したい。庭に出ないか?」
なるほど。
ルーセウス王子の正妃ではなく側妃として迎えられると知って、再度交渉しに来たらしい。
逆に言うとこれが最後の交渉になるだろう。
きっぱり諦めさせるにはちゃんと話す事も必要だと考えて、一緒に庭園へと向かった。
そっと手渡されるグラスを受け取りベンチへと腰掛ける。
今日は天気も良く、庭には心地良い風が吹いていた。
賊さえ出なければ最高の晴れの日と言えただろう。
こうしていると平和そのもの。
(はぁ…さっさとこんな雑事は終わらせて、残党がいないかチェックしに行きたいわ)
完全に気が抜けていたと言っていいかもしれない。
だって私にとってブラン皇子は昔からよく知る仲で、多少変態ではあっても警戒する対象ではなかったからだ。
戦っても負けない自信があったし、そもそも彼は私にベタ惚れだから害そうとするはずがないと思い込んでいた。
「…ルーセウス王子の側妃になると聞いた」
「ええ」
「ルーセウス王子はディオ王子が本命だったと言うことか?」
「そうですわ。あの二人はとても愛し合っているんです。それこそ砂糖を吐きそうなほど甘過ぎて嫌になるくらいに」
「…っ、ならどうして俺の手を取らない?!」
「好きじゃないからですわ」
何度も言わせないでほしいと冷たい目で見つめると悔しそうな顔で睨んでくる。
そして落ち着こうとするかのようにグイッとグラスを煽ったから、私もそっと手元のグラスを傾けた。
「気持ちは変わらないのか?」
「変わりませんわ」
「そうか。わかった」
そう言ってブラン皇子は何かの錠剤をワインと共に口に含んだかと思うと、グイッと私の身を引き寄せてそのまま口移しで飲めとばかりに流し込んでくる。
あまりにあっという間の出来事で、完全に思考が停止して思わずコクリと飲み込んでしまう。
「な…にを…」
「ただの睡眠薬だ。心配はいらない」
その言葉と同時に急激な睡魔に襲われてぐらりと身体が傾ぐ。
「目が覚めれば君はもう俺の花嫁だ」
そんな声がどこか遠くで聞こえた気がした。
***
【Side.ブラン皇子】
ディア王女を首尾よく庭園へと連れ出す事に成功する。
この庭園には秘密の通路へと繋がる抜け道があって、まだ子供の頃、ディオ王子達とかくれんぼをしていた時に偶然見つけたんだ。
ただ、父から『ガヴァムの地下には暗殺者が彷徨いているから、もし万が一秘密の通路なんて見つけても絶対に入ったらダメだぞ?冗談抜きで皇太子と言えど殺されるから』と聞かされていたから、怖くなって一番最初に見つけた出口から外に出た。
そこは目立たない馬車止めのすぐ側で、ホッとしたのをよく覚えている。
距離にすればごく僅か。
けれど今回の件では目眩しにもってこいとも言える抜け道だった。
今日はその抜け道を使ってディア王女を攫うのだ。
ただ最後にチャンスだけはあげようと思った。
もしここで俺の手を素直に取ってくれたなら、酷い事はせず優しく抱いてあげよう。
でもそうでなかったら、陵辱コースまっしぐらだ。
優しさのかけらもなく抱いて、そのまま強制的に孕ませ、泣こうとどうしようと妃にしてしまうつもりだった。
彼女の意思を尊重する気は一切ない。
そして彼女が選んだ答えは────。
「ブラン皇子。ディア王女の暗部二人はどうなさいますか?」
「そうだな。下手に殺すと後がマズい。放置しても騒ぎになる。連れて行け」
「はっ」
ディア王女と同じく、彼女の護衛についていた暗部の二人も油断し切っていた。
こちらの暗部とも顔見知りだから、簡単に睡眠薬入りの茶を飲んでくれた様子。
『いつもお疲れ』と笑顔で軽く手渡すだけで終了だった。
実に容易い。
それだけこちらを信頼してくれていたと言う事だが、今回は完全にそれが仇となった。
「行くぞ」
そして抜け道を素早く抜け、馬車止めに用意しておいた馬車へとディア王女を運び込む。
暗部に外を見張ってもらっている間にディア王女の衣服を全て剥ぎ取り、用意しておいたガウンを着せ、靴と装飾品も全部没収しておいた。
髪飾り一つ残してはいない。
これで完全に彼女は丸腰だ。
強力な睡眠薬を飲ませたから、そう簡単には目覚めないはずだが、万が一ということもある。
だから手足を拘束しつつ、口にも猿轡を咬ませ、ガウン一枚にしておいたのだ。
流石にその格好で裸足で逃走なんてできないはず。
ガウンに着替えさせる際、白く輝く裸体を見てすぐにでも抱きたくなったが、今はまだ我慢だ。
純潔を散らすのは彼女の意識がちゃんとある時に、誰に抱かれているのかを思い知らせてやりながらがいい。
そんな強い思いがあった。
「ディア王女。ディオ陛下に挨拶を済ませたらすぐに戻るから待っていてくれ」
そのまま途中の街まで移動して、その後はワイバーンで鉱山ホテルまでひとっ飛び。
それで彼女は自分のものになる。
俺はその瞬間に思いを馳せて、そっと一房彼女の髪を手に取り口づけを落とすと、疑われる事のないよう元来た道を通りパーティー会場へと戻ったのだった。
ロキお父様はやっとこの日が来たと朝から上機嫌。
ディオも夜にたっぷりルーセウス王子と愛しあえたのか、幸せいっぱいの表情でツヤツヤ輝いている。
羨ましいことだ。
(私はまだ処女なのに…)
一人だけ先に大人になってズルい。
でも以前本当にルーセウス王子は上手いのかが気になって、ちょっとだけ興味本位で覗いた事があるのだけど、あれは凄かった。
あのディオが身悶えねだりながら余裕なく喘がされていて、すごく気持ちよさそうに抱かれていたんだから。
(初夜が待ち遠しいわ。手を抜いたら指摘してやるんだから)
自分だって最高の夜を経験したい。
そう思いながら来たるべき日を楽しみにしていた。
だから────。
(貴方なんてお呼びじゃないのよ!)
私は意識朦朧となりながらも、目の前の見知らぬ人物を睨み上げた。
***
事の発端は戴冠式での襲撃だった。
ニッヒガングの手の者が発煙筒を投げ込んで襲ってきたのだ。
幸いすぐに鎮圧されはしたものの、襲撃してきた者達だけが全てではないはず。
仲間がどこかにいるかもしれない。
だからディオの指示で裏稼業の者達と暗部を両方動かした。
実質ディオにとっての王としての初仕事だ。
とは言えディオはちょっとだけ抜けているところもある。
いや。抜けていると言ったらダメか。
自己過信しているところがあると言い換えるべきかもしれない。
ディオは裏稼業の仕事経験も豊富で、実践だって積んでいるある意味プロの暗部と言っていいくらいの実力者だ。
それだけの努力も実力も経験も積み重ねている。
王太子の仕事と並行してそれだけの実力を得たのは心底すごいとは思う。
けれどそこにこそ油断が出る。
そう。自分に護衛は一人いれば十分。なんだったら不要くらいの勢いだ。
王太子時代ならまだそれでもギリギリ許された。
でも今は王だ。
そこら辺の認識は変えるべきだと思う。
そう思って私は自分の持つ暗部達にディオの護衛を指示した。
バレたらいらないと言われるだろうから、バレないよう細心の注意を払った上で護衛に徹しなさいと。
その事に後悔はしていない。
私は必要だと判断したからこそそう指示を出したのだから。
今日は私も剣を持っているし、暗部も二人連れている。
問題はない。
そう。普段ならそれで何も問題はなかったのだ。
「ディア王女」
「ブラン皇子」
パーティー会場を抜け手洗いに行ったところでブラン皇子から呼び止められた。
「さっきの…発表の件で少し話したい。庭に出ないか?」
なるほど。
ルーセウス王子の正妃ではなく側妃として迎えられると知って、再度交渉しに来たらしい。
逆に言うとこれが最後の交渉になるだろう。
きっぱり諦めさせるにはちゃんと話す事も必要だと考えて、一緒に庭園へと向かった。
そっと手渡されるグラスを受け取りベンチへと腰掛ける。
今日は天気も良く、庭には心地良い風が吹いていた。
賊さえ出なければ最高の晴れの日と言えただろう。
こうしていると平和そのもの。
(はぁ…さっさとこんな雑事は終わらせて、残党がいないかチェックしに行きたいわ)
完全に気が抜けていたと言っていいかもしれない。
だって私にとってブラン皇子は昔からよく知る仲で、多少変態ではあっても警戒する対象ではなかったからだ。
戦っても負けない自信があったし、そもそも彼は私にベタ惚れだから害そうとするはずがないと思い込んでいた。
「…ルーセウス王子の側妃になると聞いた」
「ええ」
「ルーセウス王子はディオ王子が本命だったと言うことか?」
「そうですわ。あの二人はとても愛し合っているんです。それこそ砂糖を吐きそうなほど甘過ぎて嫌になるくらいに」
「…っ、ならどうして俺の手を取らない?!」
「好きじゃないからですわ」
何度も言わせないでほしいと冷たい目で見つめると悔しそうな顔で睨んでくる。
そして落ち着こうとするかのようにグイッとグラスを煽ったから、私もそっと手元のグラスを傾けた。
「気持ちは変わらないのか?」
「変わりませんわ」
「そうか。わかった」
そう言ってブラン皇子は何かの錠剤をワインと共に口に含んだかと思うと、グイッと私の身を引き寄せてそのまま口移しで飲めとばかりに流し込んでくる。
あまりにあっという間の出来事で、完全に思考が停止して思わずコクリと飲み込んでしまう。
「な…にを…」
「ただの睡眠薬だ。心配はいらない」
その言葉と同時に急激な睡魔に襲われてぐらりと身体が傾ぐ。
「目が覚めれば君はもう俺の花嫁だ」
そんな声がどこか遠くで聞こえた気がした。
***
【Side.ブラン皇子】
ディア王女を首尾よく庭園へと連れ出す事に成功する。
この庭園には秘密の通路へと繋がる抜け道があって、まだ子供の頃、ディオ王子達とかくれんぼをしていた時に偶然見つけたんだ。
ただ、父から『ガヴァムの地下には暗殺者が彷徨いているから、もし万が一秘密の通路なんて見つけても絶対に入ったらダメだぞ?冗談抜きで皇太子と言えど殺されるから』と聞かされていたから、怖くなって一番最初に見つけた出口から外に出た。
そこは目立たない馬車止めのすぐ側で、ホッとしたのをよく覚えている。
距離にすればごく僅か。
けれど今回の件では目眩しにもってこいとも言える抜け道だった。
今日はその抜け道を使ってディア王女を攫うのだ。
ただ最後にチャンスだけはあげようと思った。
もしここで俺の手を素直に取ってくれたなら、酷い事はせず優しく抱いてあげよう。
でもそうでなかったら、陵辱コースまっしぐらだ。
優しさのかけらもなく抱いて、そのまま強制的に孕ませ、泣こうとどうしようと妃にしてしまうつもりだった。
彼女の意思を尊重する気は一切ない。
そして彼女が選んだ答えは────。
「ブラン皇子。ディア王女の暗部二人はどうなさいますか?」
「そうだな。下手に殺すと後がマズい。放置しても騒ぎになる。連れて行け」
「はっ」
ディア王女と同じく、彼女の護衛についていた暗部の二人も油断し切っていた。
こちらの暗部とも顔見知りだから、簡単に睡眠薬入りの茶を飲んでくれた様子。
『いつもお疲れ』と笑顔で軽く手渡すだけで終了だった。
実に容易い。
それだけこちらを信頼してくれていたと言う事だが、今回は完全にそれが仇となった。
「行くぞ」
そして抜け道を素早く抜け、馬車止めに用意しておいた馬車へとディア王女を運び込む。
暗部に外を見張ってもらっている間にディア王女の衣服を全て剥ぎ取り、用意しておいたガウンを着せ、靴と装飾品も全部没収しておいた。
髪飾り一つ残してはいない。
これで完全に彼女は丸腰だ。
強力な睡眠薬を飲ませたから、そう簡単には目覚めないはずだが、万が一ということもある。
だから手足を拘束しつつ、口にも猿轡を咬ませ、ガウン一枚にしておいたのだ。
流石にその格好で裸足で逃走なんてできないはず。
ガウンに着替えさせる際、白く輝く裸体を見てすぐにでも抱きたくなったが、今はまだ我慢だ。
純潔を散らすのは彼女の意識がちゃんとある時に、誰に抱かれているのかを思い知らせてやりながらがいい。
そんな強い思いがあった。
「ディア王女。ディオ陛下に挨拶を済ませたらすぐに戻るから待っていてくれ」
そのまま途中の街まで移動して、その後はワイバーンで鉱山ホテルまでひとっ飛び。
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俺はその瞬間に思いを馳せて、そっと一房彼女の髪を手に取り口づけを落とすと、疑われる事のないよう元来た道を通りパーティー会場へと戻ったのだった。
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