王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第五章 油断大敵

97.朝食 Side.ディオ

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朝。朝食を食べながらヴィオレッタ王女へと声を掛ける。

「ヴィオレッタ王女。後で少し相談したいことがあるんだけど、いいかな?」
「ええ。勿論」

笑顔で請け負ってくれる彼女にお礼を言って、今度はパーシバルへと声を掛けた。

「パーシバル。どこにするか決めたか?」

資材の調達先がすぐにでも決まるようなら今日にでも相手先に連絡を入れて仲介すればいいし、国に持ち帰って検討するのならさっさと今日にでも送り出そう。
そう思って尋ねたら、なんとも煮え切らない答えが返ってくる。

「条件的にブルーグレイは良さそうだが、本当にあの値で良質なミスリルを快く融通してもらえるのか?」
「勿論。心配ならセドリック王子に連絡を取って、直接確約してもらおうか?」
「……そんなに親しいのか?」
「うちはロキ父様が親しくしていたから、その関係で昔から付き合いがあるんだ。まあこの後聞いてみるよ」

そして食後、ツンナガールで連絡してみると、ちょうどいいからルカ王子に交渉をさせてみたいと言われた。
どうやら次代の王として鍛えるために、同世代の俺達を使うことにしたようだ。

『二人揃ってブルーグレイへ来い。できればルカに交渉とは下手を打てば大損をするのだと、思い切り思い知らせてもらえればありがたいな』
「それだとまるでむしり取れと言っているようですよ?」
『ルカも流石にそこまで馬鹿ではないだろう。とは言え痛い目に合わせてくれても構わんぞ?他でいくらでも補填はきくしな』
「ではパーシバル陛下にそうお伝えしておきます」
『ああ。楽しみにしている。ちなみにお前はいつ俺を楽しませてくれるんだ?』
「そうですね。ではパーシバル陛下とは別の手段で王宮入りしてみましょうか?お忍びで」
『それは面白そうだ。お前がどんな手段でやってくるのか、楽しみにしておこう』

そんな感じで和やかに通話を切った。

「セドリック王子がルカ王子に対応を任せるから、好きに交渉してくれだって。パーシバル次第だけど、交渉次第で安く買い叩けそうではあったかな」

頑張れって言ってやったら『怖くてできるか』って怒られた。
折角のチャンスなのに、馬鹿だな。
やるだけやってみたらいいのに。

(そうだ!ついでにゴッドハルトに有利な交渉ができないか考えて、セドリック王子に提案してみよう。ブルーグレイはゴッドハルトから海を渡ってすぐだし、やり甲斐があるな)

何がいいだろう?
後で資料を見ながら検討してみよう。

「…ディオ」
「何かな?」
「いや。なんだか以前より余裕があるなと思ってな」
「そうかな?」

まあ前回はルーセウスが離れていくって信じ込んでいて、睡眠不足もあってかなりボロボロだったし、それに比べればずっと余裕はあるだろう。

(昨日もいっぱい愛してもらったし)

『ディオ。いっぱい奥に注いで、孕ませたい』

切実な声でそう言われて、『孕ませて』ってねだったら『帰ったら絶対孕ませてやる』って言ってもらえた。
やっぱり二日間目一杯抱いてもらいたいものだ。

(気合いで孕めたらいいのにな)

ルーセウスの赤ちゃんなら何人でも産んでみたいのに、現実はままならない。

「でもまあ…ルーセウスに早く帰ってきてほしいかな」
「ルーセウス…ね。あんな奴のどこがいいんだか」

そう忌々しげに言われたものの、パーシバル的に気になったのか、続けて聞かれる。

「ちなみにディオはあいつのどこが一番好きなんだ?」
「え?真っ直ぐで健全なところ」
「健全って…。そこは普通優しいとか強いとか言うところじゃないのか?」
「いや。健全なのが大事なんだ。ここは変態が多くてウンザリしてたから」
「それを言うなら俺だって健全だぞ?」

パーシバルが呆れたように言ってくる。

「うーん。パーシバルは健全かもしれないけど、耐性が低そうだから、すぐに染まりそうな気がする。却下」
「なんだそれは。ハハハッ!染まるって、変態にか?冗談が過ぎるぞ」

パーシバルは可笑しそうに笑うけど、冗談じゃなかったんだけどな。
これまでロキ父様に変態の性癖に目覚めさせられた者達を多く見てきた俺が言うんだから、間違いない。
パーシバルは多分プライドを叩き折られたらあっという間にドMに堕ちるタイプだ。
まあ言わないけど。

(そう言った観点から見ると、ルーセウスもヴィオレッタ王女も本当に『健全』なんだよな)

この二人がドMに堕ちる姿は全く想像ができなかった。
かと言ってSかと言うとそうでもないのだ。
だからやっぱり結論から言うと彼らは健全としか言えない。

「まあいい。それよりディオ。今日は久し振りにチェスで勝負をしよう。俺が勝ったら今夜は飲みに付き合ってもらうぞ?土産の甘いアイスワインをまだ手渡せていなかったからな。是非飲んで感想を聞かせてほしい」
「それくらいなら別にわざわざチェスの賭けに持ってこなくても、付き合ったのに」
「本当か?ちゃんと俺が満足するまで付き合うんだぞ?」
「はいはい。わかったよ」

そんなやり取りをしていたら、ヴィオレッタ王女が是非一緒に飲んでみたいと言い出した。

「アイスワインは甘いお酒でしょう?初心者の私も飲みやすいかと思いまして」
「確かにいいかも。パーシバル。彼女も一緒にいいかな?」
「……別に構わないが?」
「なら今夜は三人で飲もう。それならルーセウスも特に何も言わないだろうし、心置きなく飲める気がする」
「…!そうか。それなら色んな話をしながら楽しく飲もう。そうだ。折角だし、ガヴァムの酒も飲ませてもらえないか?どんなものがあるのか全然知らないしな」
「俺も詳しくは知らないけど、昔からあるのは神の酒っていう無色透明な酒かな?上質な物はまろやかな味わいなんだって聞くけど、まだ飲んだことはないんだ」

あれはゴクゴク普段から飲むものじゃなく、祝いの席や故人を偲ぶ席でちょっと嗜む酒として昔からガヴァムにある酒らしいのだけど、裏では普通にワインなどと同じように飲まれていると誰かから聞いた。
昔と違って今は種類も豊富なんだとか。

「これを機に飲んでみてもいいかもしれないな」
「それなら私も飲んでみたいですわ」

興味津々とばかりにヴィオレッタ王女も乗ってくる。

「じゃあ夜までにそれも用意しておけ。一緒に飲もう」
「わかった」

これはちょっと楽しみだ。

「じゃあそろそろ仕事に戻るよ。二人は夜まで好きに過ごしてくれていいから」

そう言って立ち上がって執務室へと戻ると、小一時間ほどしてからお茶を手にヴィオレッタ王女がやってきた。

「今朝お話しがあると仰っていたので、休憩がてらお話しを聞かせて頂こうと思って参りました」
「そう言えばそうだった」

そしてパーシバルの接待を出来るだけ引き受けてもらえないかとダメ元でお願いしたら、ヴィオレッタ王女は快く引き受けてくれた。

「そう言うことならお任せください。ディオ様のために私も一肌脱ぎますわ」
「ありがとう。助かるよ」

これで心置きなく仕事に励める。
そう思ったのに、彼女がとある人物の防波堤になってくれていたと知らなかった俺は、午後になって久し振りにその相手と遭遇することになったのだった。



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