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第五章 油断大敵
96.パーシバル来訪 Side.ディオ
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「ディオ。来てやったぞ?」
ワイバーンから降り立ち、堂々と言ってきたパーシバル。
別にこっちが来てくれと頼んだわけでもないのに、随分偉そうだ。
「来たんだ」
「嬉しいだろう?」
「別に。それより俺の婚約者がビックリするから、先触れくらいは出そうか?正装で来るくらいなんだし、公式訪問ならそれくらい常識だと思うけど?」
「仰々しくされたくなくてな」
ああ言えばこう言う。
減らず口は相変わらずだ。
こうなったらもう何を言っても無駄だろう。
「まあ良いけど」
特にその辺は煩く言う気はない。
俺も結構あちこちの王宮に不法侵入をしてきたし、パーシバルはそんな俺とは違って堂々と正面切ってやってきただけだから、注意だけしておけばいいだろう。
「じゃあ用件だけさっさと終わらせようか」
「つれないな。労いの言葉くらい言えないのか?」
「礼を尽くさない相手にはこれで十分だろう?」
ニコリと微笑み言ってやったらちょっとバツが悪そうになった。
「…すまなかった」
そう言って態度を改め、正式な礼に則り挨拶をしてくる。
「ディオ陛下には御機嫌麗しく。どうか非礼をお許しを。今回我がバロンと貴国ガヴァムとの正式な取り決め及び交渉の為、遥々足を運ばせていただいた。寛大な心で我らの王宮滞在を許して頂けないだろうか?」
「遥々ようこそパーシバル陛下。貴国との交流は喜ばしいが、私の伴侶が自分の不在の間ここにいる婚約者、ヴィオレッタ王女同席の元で交渉をと願っているため、お聞き入れいただける場合のみ滞在を許可致したく」
その言葉を受けてヴィオレッタ王女が綺麗なカーテシーをしながら挨拶を行う。
「パーシバル陛下にはお初にお目にかかります。アンシャンテ国王女、ヴィオレッタ=ダリア=シャンティと申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
「アンシャンテの目覚ましい発展は聞き及んでいる。これを機に親しく交流を持てれば嬉しい」
「ありがとうございます」
取り敢えず一応正式な挨拶も終わったことだし、一先ず応接間へと移動して、パーシバルが連れてきた護衛の者達の部屋なども至急用意するよう手配をかけた。
「ディオ様。ルーセウス王子が私の同席を願ったと言うのは本当ですか?」
コソリと小声で確認を取ってくるヴィオレッタ王女に、俺は小さく頷き肯定する。
「ルーセウスはパーシバルが俺の貞操を狙ってるって言って譲らないんだ。挨拶も終わったし、同席云々の条件は最低限満たしたと言っていいから、ヴィオレッタ王女は帰ってくれても大丈夫。帰るところだったのに引き留めて悪かった」
体裁さえ整えば良いだろうとそう言ったのだけど、ヴィオレッタ王女はニッコリ笑ってこのまま王宮に自分も泊まると言い出した。
「お部屋は結婚後使う予定で用意していただいているあの部屋で大丈夫ですし、是非協力させてくださいませ」
「うーん…でもシャイナー陛下に怒られないかな?」
「全然大丈夫ですわ。寧ろ喜んで『泊まってこい』と言ってきそうです」
「ならいいけど」
別に泊まったからと言っても何があるわけでもないし、ヴィオレッタ王女が良いならそれでいい。
「じゃあゆっくりして行ってくれ」
「ええ。そうさせていただきますわ。折角ですし、将来を見据えて、パーシバル陛下の為人も知れれば嬉しいですわ」
どうやらヴィオレッタ王女はパーシバルとの付き合いが長くなりそうだと踏んで、今から積極的に関わることにしたらしい。
(まあいいか)
この婚約がなくなることはないのだから、彼女が望むのなら俺としても特に反対する気はなかった。
「ディオ。婚約者との内緒話は終わったか?」
ソファーで寛ぎながらパーシバルから問われ、溜息混じりに前を向く。
「終わったよ。パーシバルが滞在中、ヴィオレッタ王女も城に留まって俺と一緒に接待してくれるそうだ」
「俺はディオだけの方が嬉しいが?」
「この先俺をフォローしてくれる予定の彼女を蔑ろにする気なら、別に今すぐ帰ってくれても構わないけど?」
「冗談だ。そう怒るな。ヴィオレッタ王女。すまなかった。ディオとはこの通り軽口を叩き合う親しい仲だからな。これから仲良くしてもらえたら嬉しい」
「まあ。これはルーセウス王子が嫉妬するわけですわ。うふふ。しっかり目を光らせておかないと」
明るく笑ってなんでもないことのようにサラッとそう言い放つヴィオレッタ王女に、パーシバルはちょっと目を丸くした。
「これは驚いた。物怖じしない姫君だ。流石ディオが側妃にと望んだ女性だ。ルーセウスもこの感じで認めさせたのか?なかなかの手腕だな」
「お褒めのお言葉、素直に受け取らせていただきますわ。そう言えばヴァレトミュラのレールをバロン国へと伸ばす事になったと先日父から小耳に挟んだところでしたの。今回はその件でのご訪問でしょうか?」
「そこはディオから聞いたわけではないのか?」
「ええ。ディオ様はルーセウス王子とご一緒でしたし、私はお二人の仲に割り入ってまでディオ様の時間を奪う気はございませんもの。分は弁えているつもりですわ」
「側妃の座で満足するとは。欲のない」
「私にはそれくらいの地位がちょうど良いのですわ。ディオ様の隣に立ち、支えることができるのはルーセウス王子だけかと」
「あの脳筋にディオを支え切れると?」
「うふふ。少なくとも現在国王としてバロン国に心血を注いでいらっしゃるパーシバル陛下と比べれば、ずっと身軽でございましょう?将来ルーセウス王子がゴッドハルトを継ぐ際にはガヴァムも落ち着いているでしょうから、ディオ様もゴッドハルトの方へ手を尽くせるようになっておられるでしょうし、正にベストなお相手ですわ」
二人とも笑顔だが何故か火花が散ったような気がした。
ヴィオレッタ王女はシャイナー陛下の娘なだけあって、本当に堂々としたものだ。
「はぁ…。時間ももったいないし、取り敢えず雑談はその辺にしてさっさと話をしようか」
今日はまだまだ政務は山積みだ。
いつまでもパーシバルに構ってはいられない。
ルーセウスと話す夜の時間がなくなったら困る。
そう思って、資材調達用に用意していたいくつかの見積もりを提示して、パーシバルに好きに選べと渡してやった。
「ちなみにディオの一押しはどこだ?」
「個人的にはブルーグレイがお勧めかな。バロン国からは一番近いし、あそこは大きな鉱山から良質な物が産出されているから」
「……一番避けていた国をサラッと勧めてくるな」
「どうして避ける必要が?」
「あそこは冷酷非道なセドリック王子が実権を握っているだろう?」
「だから?」
どうやらこれまで下手を打ってブルーグレイに潰された国々が頭をチラついて、避けたかったようだ。
「セドリック王子は基本的に怒らせさえしなければ理性的で交渉しがいのある人だって聞いてるけど?」
「……お前は怖くないのか?」
「特には?」
「グッ…!わかった。それなら一応候補に入れておこう」
「そうしてみてくれ。ああ、そうだ。ニッヒガングは今国が荒れ始めてて、粗悪品のミスリルがジワジワ出回り始めているから、格安で話を持ち掛けられたら気をつけるといい。それで折角のヴァレトミュラ開通がレール事故で台無しになったら最悪だから」
一応そっちも忠告はしておいてあげよう。
「わかった」
「じゃあ今日は本当に時間がないから、他に何かあれば晩餐の時にでも言ってくれ」
突然やってきたんだし、スケジュールが空いているはずもないとパーシバルもわかってはいたんだろう。
特にそれ以上引き留めてくることなく見送ってもらうことができた。
「ではディオ様。お仕事頑張ってくださいませ」
ヴィオレッタ王女からも笑顔で送り出され、俺は笑顔で仕事へと戻り、書類の山をサクサクと片付けていった。
その後の晩餐の席でもヴィオレッタ王女が積極的にパーシバルと話していたから、特に何があるわけでもなく時間は過ぎ、あっという間にルーセウスとの癒しのツンナガールタイムへと突入した。
仕事で疲れた夜もルーセウスの声が聞ければそれだけで心は幸せに満ちていく。
(ああ、でもそうだ。パーシバルの件は一応言っておかないと)
二人だけの時間をパーシバルの話題で台無しにしたくはないけれど、言わなかったら絶対に後で叱られるだろう。
そう思ってさっさと言ってサクッと話題を変えようと口にしたのが間違いだった。
物凄く嫉妬されて、夜這い対策までしろと言われる始末。
そう簡単に俺を襲える相手なんていないのに。
ルーセウスは大袈裟だな。
でもちょっとどころではなく嬉しく感じる自分もいる。
だってそれだけルーセウスが俺を愛してくれている証だから。
そんな思いでサラッと話を終わらせようとしたら、ルーセウス的には気に入らなかったらしく、『お仕置きするからな?』なんて言われてしまった。
お仕置きというのは俺の中ではロキ父様が基準なんだけど、ルーセウスのお仕置きとは?
『言っておくが、俺は体力だけは馬鹿みたいにある。一日中抱くのだって、やろうと思ったらできるんだ』
「嘘…」
体力はある方だと思っていたけど、そんな事が本当に可能なんだろうか?
『本当だ。半日焦らされ続けて快楽地獄に突き落とされたくなかったら、絶対にパーシバルとは寝るな。わかったな?』
厳しい口調で言われるけど、俺の頭の中は一日中ルーセウスに愛される幸せな妄想で染まっていく。
ハッキリ言ってそれはお仕置きではない。
俺にとってはただのご褒美だ。
「ルーセウス…それ、ただのご褒美なんじゃ…」
『ディオ?』
でもどうやらルーセウス的にはそれが『お仕置き』らしい。
ここは早急にスケジュール調整を考えておかないと。
(お仕置きでそれなら、ご褒美はもうちょっと伸びたりしないかな?)
二日間完全にスケジュールが空けられるよう仕事を頑張って、おねだりしたら聞いてもらえるだろうか?
ヴィオレッタ王女が協力してくれそうだし、できればパーシバルの相手をお願いしてサクサク仕事に取り組みたい。
昼にチェスの時間だけ取って、後は任せて大丈夫か明日聞いてみよう。
「んんっ。えっと、仕事の調整はしておく。パーシバルは適当にあしらっておくから。その…早く帰ってきて…ほしいな」
早く戻ってきてほしい。
「ルーセウス。帰ったらその……いっぱい愛してくれたら嬉しい」
ルーセウスに愛されたい。
『ディオ。明日にはここを発つから、待っていてくれ。最速で戻る』
「うん。でも無理はしないでくれ」
『大丈夫だ。今日はツンナガール越しに抱いていいか?』
こう言われて断るはずがない。
「久し振りだからちょっと恥ずかしいな」
ツンナガール越しは久し振りだ。
ゴソゴソと枕元を漁って取り出したのは、今日届いたばかりのルーセウスのものを模したディルド。
(バレなかったらフェラくらいしてもいいよな?)
本当は後ろに挿れてみたい気持ちもあるけど、そこは我慢。
約束は約束だ。
「ルーセウス。いっぱい愛して」
うっとりディルドを見つめながらツンナガール越しにルーセウスの声を聞く。
そうして俺はルーセウスで頭の中をいっぱいにしながら、そっとディルドにキスをした。
ワイバーンから降り立ち、堂々と言ってきたパーシバル。
別にこっちが来てくれと頼んだわけでもないのに、随分偉そうだ。
「来たんだ」
「嬉しいだろう?」
「別に。それより俺の婚約者がビックリするから、先触れくらいは出そうか?正装で来るくらいなんだし、公式訪問ならそれくらい常識だと思うけど?」
「仰々しくされたくなくてな」
ああ言えばこう言う。
減らず口は相変わらずだ。
こうなったらもう何を言っても無駄だろう。
「まあ良いけど」
特にその辺は煩く言う気はない。
俺も結構あちこちの王宮に不法侵入をしてきたし、パーシバルはそんな俺とは違って堂々と正面切ってやってきただけだから、注意だけしておけばいいだろう。
「じゃあ用件だけさっさと終わらせようか」
「つれないな。労いの言葉くらい言えないのか?」
「礼を尽くさない相手にはこれで十分だろう?」
ニコリと微笑み言ってやったらちょっとバツが悪そうになった。
「…すまなかった」
そう言って態度を改め、正式な礼に則り挨拶をしてくる。
「ディオ陛下には御機嫌麗しく。どうか非礼をお許しを。今回我がバロンと貴国ガヴァムとの正式な取り決め及び交渉の為、遥々足を運ばせていただいた。寛大な心で我らの王宮滞在を許して頂けないだろうか?」
「遥々ようこそパーシバル陛下。貴国との交流は喜ばしいが、私の伴侶が自分の不在の間ここにいる婚約者、ヴィオレッタ王女同席の元で交渉をと願っているため、お聞き入れいただける場合のみ滞在を許可致したく」
その言葉を受けてヴィオレッタ王女が綺麗なカーテシーをしながら挨拶を行う。
「パーシバル陛下にはお初にお目にかかります。アンシャンテ国王女、ヴィオレッタ=ダリア=シャンティと申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
「アンシャンテの目覚ましい発展は聞き及んでいる。これを機に親しく交流を持てれば嬉しい」
「ありがとうございます」
取り敢えず一応正式な挨拶も終わったことだし、一先ず応接間へと移動して、パーシバルが連れてきた護衛の者達の部屋なども至急用意するよう手配をかけた。
「ディオ様。ルーセウス王子が私の同席を願ったと言うのは本当ですか?」
コソリと小声で確認を取ってくるヴィオレッタ王女に、俺は小さく頷き肯定する。
「ルーセウスはパーシバルが俺の貞操を狙ってるって言って譲らないんだ。挨拶も終わったし、同席云々の条件は最低限満たしたと言っていいから、ヴィオレッタ王女は帰ってくれても大丈夫。帰るところだったのに引き留めて悪かった」
体裁さえ整えば良いだろうとそう言ったのだけど、ヴィオレッタ王女はニッコリ笑ってこのまま王宮に自分も泊まると言い出した。
「お部屋は結婚後使う予定で用意していただいているあの部屋で大丈夫ですし、是非協力させてくださいませ」
「うーん…でもシャイナー陛下に怒られないかな?」
「全然大丈夫ですわ。寧ろ喜んで『泊まってこい』と言ってきそうです」
「ならいいけど」
別に泊まったからと言っても何があるわけでもないし、ヴィオレッタ王女が良いならそれでいい。
「じゃあゆっくりして行ってくれ」
「ええ。そうさせていただきますわ。折角ですし、将来を見据えて、パーシバル陛下の為人も知れれば嬉しいですわ」
どうやらヴィオレッタ王女はパーシバルとの付き合いが長くなりそうだと踏んで、今から積極的に関わることにしたらしい。
(まあいいか)
この婚約がなくなることはないのだから、彼女が望むのなら俺としても特に反対する気はなかった。
「ディオ。婚約者との内緒話は終わったか?」
ソファーで寛ぎながらパーシバルから問われ、溜息混じりに前を向く。
「終わったよ。パーシバルが滞在中、ヴィオレッタ王女も城に留まって俺と一緒に接待してくれるそうだ」
「俺はディオだけの方が嬉しいが?」
「この先俺をフォローしてくれる予定の彼女を蔑ろにする気なら、別に今すぐ帰ってくれても構わないけど?」
「冗談だ。そう怒るな。ヴィオレッタ王女。すまなかった。ディオとはこの通り軽口を叩き合う親しい仲だからな。これから仲良くしてもらえたら嬉しい」
「まあ。これはルーセウス王子が嫉妬するわけですわ。うふふ。しっかり目を光らせておかないと」
明るく笑ってなんでもないことのようにサラッとそう言い放つヴィオレッタ王女に、パーシバルはちょっと目を丸くした。
「これは驚いた。物怖じしない姫君だ。流石ディオが側妃にと望んだ女性だ。ルーセウスもこの感じで認めさせたのか?なかなかの手腕だな」
「お褒めのお言葉、素直に受け取らせていただきますわ。そう言えばヴァレトミュラのレールをバロン国へと伸ばす事になったと先日父から小耳に挟んだところでしたの。今回はその件でのご訪問でしょうか?」
「そこはディオから聞いたわけではないのか?」
「ええ。ディオ様はルーセウス王子とご一緒でしたし、私はお二人の仲に割り入ってまでディオ様の時間を奪う気はございませんもの。分は弁えているつもりですわ」
「側妃の座で満足するとは。欲のない」
「私にはそれくらいの地位がちょうど良いのですわ。ディオ様の隣に立ち、支えることができるのはルーセウス王子だけかと」
「あの脳筋にディオを支え切れると?」
「うふふ。少なくとも現在国王としてバロン国に心血を注いでいらっしゃるパーシバル陛下と比べれば、ずっと身軽でございましょう?将来ルーセウス王子がゴッドハルトを継ぐ際にはガヴァムも落ち着いているでしょうから、ディオ様もゴッドハルトの方へ手を尽くせるようになっておられるでしょうし、正にベストなお相手ですわ」
二人とも笑顔だが何故か火花が散ったような気がした。
ヴィオレッタ王女はシャイナー陛下の娘なだけあって、本当に堂々としたものだ。
「はぁ…。時間ももったいないし、取り敢えず雑談はその辺にしてさっさと話をしようか」
今日はまだまだ政務は山積みだ。
いつまでもパーシバルに構ってはいられない。
ルーセウスと話す夜の時間がなくなったら困る。
そう思って、資材調達用に用意していたいくつかの見積もりを提示して、パーシバルに好きに選べと渡してやった。
「ちなみにディオの一押しはどこだ?」
「個人的にはブルーグレイがお勧めかな。バロン国からは一番近いし、あそこは大きな鉱山から良質な物が産出されているから」
「……一番避けていた国をサラッと勧めてくるな」
「どうして避ける必要が?」
「あそこは冷酷非道なセドリック王子が実権を握っているだろう?」
「だから?」
どうやらこれまで下手を打ってブルーグレイに潰された国々が頭をチラついて、避けたかったようだ。
「セドリック王子は基本的に怒らせさえしなければ理性的で交渉しがいのある人だって聞いてるけど?」
「……お前は怖くないのか?」
「特には?」
「グッ…!わかった。それなら一応候補に入れておこう」
「そうしてみてくれ。ああ、そうだ。ニッヒガングは今国が荒れ始めてて、粗悪品のミスリルがジワジワ出回り始めているから、格安で話を持ち掛けられたら気をつけるといい。それで折角のヴァレトミュラ開通がレール事故で台無しになったら最悪だから」
一応そっちも忠告はしておいてあげよう。
「わかった」
「じゃあ今日は本当に時間がないから、他に何かあれば晩餐の時にでも言ってくれ」
突然やってきたんだし、スケジュールが空いているはずもないとパーシバルもわかってはいたんだろう。
特にそれ以上引き留めてくることなく見送ってもらうことができた。
「ではディオ様。お仕事頑張ってくださいませ」
ヴィオレッタ王女からも笑顔で送り出され、俺は笑顔で仕事へと戻り、書類の山をサクサクと片付けていった。
その後の晩餐の席でもヴィオレッタ王女が積極的にパーシバルと話していたから、特に何があるわけでもなく時間は過ぎ、あっという間にルーセウスとの癒しのツンナガールタイムへと突入した。
仕事で疲れた夜もルーセウスの声が聞ければそれだけで心は幸せに満ちていく。
(ああ、でもそうだ。パーシバルの件は一応言っておかないと)
二人だけの時間をパーシバルの話題で台無しにしたくはないけれど、言わなかったら絶対に後で叱られるだろう。
そう思ってさっさと言ってサクッと話題を変えようと口にしたのが間違いだった。
物凄く嫉妬されて、夜這い対策までしろと言われる始末。
そう簡単に俺を襲える相手なんていないのに。
ルーセウスは大袈裟だな。
でもちょっとどころではなく嬉しく感じる自分もいる。
だってそれだけルーセウスが俺を愛してくれている証だから。
そんな思いでサラッと話を終わらせようとしたら、ルーセウス的には気に入らなかったらしく、『お仕置きするからな?』なんて言われてしまった。
お仕置きというのは俺の中ではロキ父様が基準なんだけど、ルーセウスのお仕置きとは?
『言っておくが、俺は体力だけは馬鹿みたいにある。一日中抱くのだって、やろうと思ったらできるんだ』
「嘘…」
体力はある方だと思っていたけど、そんな事が本当に可能なんだろうか?
『本当だ。半日焦らされ続けて快楽地獄に突き落とされたくなかったら、絶対にパーシバルとは寝るな。わかったな?』
厳しい口調で言われるけど、俺の頭の中は一日中ルーセウスに愛される幸せな妄想で染まっていく。
ハッキリ言ってそれはお仕置きではない。
俺にとってはただのご褒美だ。
「ルーセウス…それ、ただのご褒美なんじゃ…」
『ディオ?』
でもどうやらルーセウス的にはそれが『お仕置き』らしい。
ここは早急にスケジュール調整を考えておかないと。
(お仕置きでそれなら、ご褒美はもうちょっと伸びたりしないかな?)
二日間完全にスケジュールが空けられるよう仕事を頑張って、おねだりしたら聞いてもらえるだろうか?
ヴィオレッタ王女が協力してくれそうだし、できればパーシバルの相手をお願いしてサクサク仕事に取り組みたい。
昼にチェスの時間だけ取って、後は任せて大丈夫か明日聞いてみよう。
「んんっ。えっと、仕事の調整はしておく。パーシバルは適当にあしらっておくから。その…早く帰ってきて…ほしいな」
早く戻ってきてほしい。
「ルーセウス。帰ったらその……いっぱい愛してくれたら嬉しい」
ルーセウスに愛されたい。
『ディオ。明日にはここを発つから、待っていてくれ。最速で戻る』
「うん。でも無理はしないでくれ」
『大丈夫だ。今日はツンナガール越しに抱いていいか?』
こう言われて断るはずがない。
「久し振りだからちょっと恥ずかしいな」
ツンナガール越しは久し振りだ。
ゴソゴソと枕元を漁って取り出したのは、今日届いたばかりのルーセウスのものを模したディルド。
(バレなかったらフェラくらいしてもいいよな?)
本当は後ろに挿れてみたい気持ちもあるけど、そこは我慢。
約束は約束だ。
「ルーセウス。いっぱい愛して」
うっとりディルドを見つめながらツンナガール越しにルーセウスの声を聞く。
そうして俺はルーセウスで頭の中をいっぱいにしながら、そっとディルドにキスをした。
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