【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

文字の大きさ
33 / 215
【英雄トルセンの弟子】

28.英雄トルセンの弟子④ Side.カッツェ&レジェ

しおりを挟む
【Side.トルセンの弟子 カッツェ】

昨日城に予め連絡を入れておいたので城門はすんなりと通る事ができた。
但し、アルフレッドではなくアルフレッドの部下である騎士がまず会うという話をされて少し残念に思う。
やはり側妃という立場上すぐには会えないのだろうか?
そう思いながら待っていると、迎えに来たレジェという騎士がすみませんねと言って騎士の鍛錬場へと連れて行ってくれた。

「騎士長は今日は姫の好意で急遽休暇になってていないんですよ」
「昨日闘技場で会ったが王子とデートしてたよな?昨日は休日じゃなかったのか?」
「昨日はある意味お勤めですね。騎士長、死んでないといいけど……」
「それってどういう……」

どういう意味だと尋ねようとしたところで他の騎士達の姿もちらほら見られはじめ、皆それなりに強そうだなと少し驚いた。

「もしかして皆アルフレッド…側妃様の訓練をしてるとかか?」
「あ、騎士長のことは側妃呼びしないでくださいね。物凄く嫌がるんで。普通にアルフレッド殿とかで構わないですよ」

そうなんだと不思議に思いながら続きを促すと、その騎士は訓練内容をサラッと口にしてきた。

「訓練内容は騎士長直伝ですよ。まあ誰もこなせないからボチボチできる範囲でという感じですけど」
「へぇ…勿体ない」

折角アルフレッドが用意してくれている訓練メニューなんだから真面目にこなせばいいのにと思いながら、少々鼻白み騎士を見遣るがレジェは苦笑しながら仕方がないんですよと口にしていた。
やっぱりアルフレッドはこんなところで腐らせたら勿体ないように思う。
なんとか説得してここから連れ出してやろうか?
師匠なら王子から守ってやることもできるかもしれないし、側妃が嫌だと言うなら一計を案じてみよう。
そんなことを考えながら歩いていると、やがて鍛錬場へとたどり着いた。

パッと見た感じ、素振り5000回とかしている騎士は見当たらないし、延々と走っている騎士もいない。
筋トレっぽいことをしている騎士は見掛けるが、どうも集中してやっているという感じでもないようだった。
動きの確認か?正直よくわからない。やる気がないのか?
そう思っていると、レジェが俺も参加するかと聞いてきたのでまあこちらの実力を見せつけるのもいいかと思い了承の返事を返した。

「じゃ、5分で木の葉斬り100回を左右交互に10回ずつ。はじめ!」
「は……は?」

正直言われている意味が分からなかった。
木の葉斬りってあれだよな?ヒラヒラ舞い落ちてくる木の葉を素早く斬るあの技だよな?滅茶苦茶集中力を必要とする必殺技じゃなかったっけ?それを5分で100回…だと?しかも左右交互とはこれ如何に?普通利き腕だけじゃないのか?

「あ、やっぱ難しいですよね?特に左右で10回ずつとか鬼だと思うんですよね~。しかも休憩は?!って訊いたら、右腕使ってる時は左腕は休んでるし、左腕を使ってる時は右腕は休んでるだろ、何言ってんだってキョトンとした顔で言うんですよ、あの人。おかしいでしょ?しかも疲れるなら全部終わってからゆっくり休んだらいいって言うんですよ。これでもやりながら休めるように考えたんだ、優しいだろなんて笑うんで怖くてそれ以上突っ込めません。何と言うか基準がおかしいんですよね」

だからできる範囲でそれぞれやって、自分で自分を高めているんだとレジェは言う。
向こうで動きの確認をしているのも木の葉斬りをどうマスターしたらいいのかを試行錯誤しているらしい。

「ちなみにサボってると見做されたら騎士長直々に指導が入るので、手合わせがしたいならそちらをお勧めします。俺はできれば避けたいので真面目にやってます」

気合いを入れてやっていたらまずサボってるとは思われないので大丈夫なのだとレジェはどこか誇らしげにしていた。

「ま…まぁ取り敢えずやってみるかな」

意外とやってみたらできるかもしれないしと思いながら取り敢えずやってみることに。

けれどそれからは地獄だった。
5回目あたりまでは順調に左右交互に出来ていたが、流石に息が上がってくると剣速が落ちるし集中力も落ちてくる。
だから必然的に段々と5分以内に100回という数に至らなくなっていって、とてもではないが完遂することはできなかった。

「くっ…!くそぉ…!」

1時間40分が過ぎた頃、俺はこなせなかったその訓練に悔しさを露にするしかない。

(悔しい…悔しすぎる……!)

簡単だと思ったのにと自分の実力不足を悔しく思う。
自分はまだまだだったのだと昨日以上に打ちひしがれた気分だった。
そんな俺にレジェが声を掛けてくる。

「初めてなのに凄く良かったですよ!騎士長が見たら嬉々として色々教えてくれそうですね」
「ほ、本当か?!」
「ええ。もしかして弟子入り希望とかです?」
「そうだ!」
「あ~…だったら騎士団に入らないと難しいかもしれないですね。特別扱いなんてしたら王子が出てきて牢屋行きとかにされそうなんで」
「……おかしくないか?」
「ここではおかしくないんですよ。あの姫が悪魔と言って恐れるほどの王子なので」
「……そうか」

やはり王子はアルフレッドをこんな場所に閉じ込めているのだ。
それなら俺がここから助け出してやろうと心に決め、また明日来ると言ってこの日は帰った。


***


【Side.レジェンド】

(あれは危険だな)

一目見てかなりの実力者だということはわかった。
だがアルフレッドに弟子入りしたいというのが透けて見えて、最悪何かやらかしそうな雰囲気がプンプンしている。
ここでまた万が一にでもアルフレッドに逃亡されたりしたら目も当てられない。
ここはやはり王子に話を通しておいた方がいいだろう。

「ポニーさん。います?」
「……ええ、おりますよ」

王子の情報源である暗部の人の名を呼ぶとすぐに答えが返ってきたので、そちらを見ずに話を続ける。

「王子に暫く騎士長に誰か監視をつけるか、それともあのさっきの男を見張らせておくかした方がいいとお伝え頂けますか?」
「わかりました。今はお楽しみ中なので後でお伝えしておきます」
「ああ…それで十分です。宜しくお願いしますね」

騎士長今日も襲われてるのか~と思いながら仲良しだなとサラッと流す。
明言はしないが多分アルフレッドは童貞だ。
あれだけ剣を極めてるアルフレッドにはこれまで浮いた噂の一つもなかった。
まさに剣が恋人と言っても過言ではない人。それがアルフレッドだ。
そんなアルフレッドが姫の代わりに王子に抱かれて処女が奪われたなんて可哀想すぎて何も言えない…。

この国に来る途中、一度だけ試しに冗談めかして言ってみたことがある。そんなに剣ばっかり振っててもたまには女を抱きたくなるんじゃないですかと。
そしたら物凄く嫌そうな顔をしながら「そんな時間があったら剣振りたい」と言ってきた。
他の騎士がさらに突っ込むと、やっぱり「別に抱きたいなんて思わない」「時間の無駄」「兎に角剣を振りたい」「溜まったら?自分で処理すればいいじゃないか」だけだった。
あまりにもストイックすぎて泣けた。
正直「あ、この人結婚しない気だな」と思ったものだ。
そんなアルフレッドが今側妃になって王子に抱かれてるなんて誰が想像できただろう。

(きっと色々未知の体験過ぎて怖くて泣いてるんじゃないか?)

そうは思うけどまあ愛されてはいるようだから大丈夫だろうと密かに見守っているのが実情だ。
騎士長として尊敬しているし、その剣の腕にも惚れ込んでいる。
だからずっとここにいて自分達を鍛えて欲しいのだ。

「もう絶対に逃がしませんからね、騎士長?」

王子サイドと結託してでももう二度とここから逃がす気はない。
災いの種は早急に刈り取るに限る。

「さて、今日も訓練訓練っ!」

最近やっとこのメニューにも慣れてきたことだし、他のメニューも頑張るとするかと剣をとる。
なにせアルフレッドの鬼メニューはまだまだいっぱいあるのだ。
今日も頑張らないとと気合を入れて、俺は剣を振り始めたのだった。



しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

処理中です...