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4.ステータスを確認してみた
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「…………で?」
その後、俺はなんとか立ち上がってくれた勇者について来いと促され、取り敢えず素直に従い彼の部屋までやってきたのだが、ついて早々彼は疲れたようにソファーへと座り、頭をぐしゃりと掻き上げた。
どうやらまだ落ち込んでいるようだ。
けれど何をそんなに落ち込んでいるのかさっぱりわからないので、とりあえず事情を聴いた方がよさそうだと思い詳しい話を聞いてみることにした。
それによるとどうやらこの勇者もまた召喚でやってきた日本人とのことで、名前を知谷 比呂(ともや ひろ)というらしい。
それを聞くに、どうもあのアイスブルーの人物は名前をちゃんと把握しないあわてんぼうなタイプのようだという結論に至った。
けれどどうやらあの人物はこの国の宰相らしい。
随分若い宰相だが他に人材はいなかったのだろうか?
大丈夫なのか?この国は。
いや、きっと『勇者』であれば名前なんて何でもよかったんだ。
気に留めるほどの事ではなかったのだろう。
そうだ。そうに違いない。
「俺はサトル。よろしくな」
面倒だが勘違いされないためにも今度からは名前だけ名乗ろうと、そうやって軽い感じでヒロへと声を掛けたのだが、彼は先程話に出てきた『聖女』の件で酷く落ち込んでいるようだった。
しかし話を聞くだけで酷い話だと思えたので、あまり同情の余地はない。
赤の他人だったし、彼女も自分と同じように扱ってもらえているだろうと思い込んでいたため、まさか冷遇されて激怒して一人で帰ってしまうなんて思ってもいなかったのだという。
「俺は魔王を倒したら日本に帰れるって聞いてたから、俺が彼女を日本に帰すんだってどこかで思っていたのは確かだ。でも…」
それは単なる思い込みで、実際は聖女にこそ帰る手段があったのだと意気消沈してしまっている。
けれどだからこそ今回の聖女召喚には一縷の望みを掛けていたのだとか。
それであの時、召喚の儀が行われていると聞いて慌てて飛んできたのかと納得がいった。
そして一通り詳細を聞き終えたところでヒロが言ったのが「……で?」の言葉だった。
先程はショックで聞けなかったが、俺が本当に勇者なのかを確認したかったらしい。
そうは言われても自分的にはただの一般人としか思えなかったのでありのままを返答したのだが、ヒロはそれでは納得しなかった。
「もう俺一人でここで頑張るなんて嫌なんだ!ギスギスした王宮内は息も詰まるし、プレッシャーが半端ない!だからあんたが勇者なら一緒に戦ってほしいし、それ以外のジョブなら仲間として旅に同行してほしい!」
『どうかこの通りだ!』と思い切り頭を下げられるが、俺としては正直そんなことを言われてもとしか思えない。
けれどそれでは彼も納得できないんだろう。
それならそれで平行線を辿るよりかはいいかもと質問をしてみることにした。
「え~…っと。勇者かそうでないかはどうやったらわかるんだ?」
結果的に諦めてくれる切っ掛けになるかもと思いながら渋々そんな風に尋ねてみたのだが、ヒロはパッと頭を上げてどこかホッとしたように表情を緩ませた。
「助かる!」
いや。同行するとはまだ誰も言っていないんだが?
そんな嬉しそうに言われたら困ってしまうではないか。
なんだか居心地が悪くなりながらも、ヒロの次の言葉を待つと、ステータスについて教えて貰うことができた。
どうやらゲームのように心の中で【ステータス】と唱えたら自分のステータスを見ることができるらしい。
本当にそんなことができるのかと思いつつ試しに唱えてみるとあっさりと自分のステータスを確認することができた。
名前 : 真中 悟
ニックネーム : マナ
職業 : 聖者
レベル : 30
「…………え?」
正直これだけでも突っ込みどころが沢山だ。
まずニックネームってなんだ?
勘違い宰相の言っていた名前が勝手に表示されてしまっている。
しかも職業『聖者』ってなんだ?
聞いたことがないぞ?
そもそも何もできる気がしないのにレベルがすでに30ってどういうことだ?
意味が分からん。
そうして眉間に皺を寄せてうんうん唸っていると、ヒロがどうだったと不安げに聞いてきたので正直に答えてみた。
「いや…職業が『聖者』って書いてあるから何かと思って…」
それに対してヒロは首をかしげながら「セイジャ?忍者じゃなくて?いや間者?まさか賢者?あ、占者か?」と意味不明のことを口にしていた。
「ちなみにレベルが30になってるんだが、ヒロの方はどんな感じなんだ?」
「え?俺か?」
そうして思考を中断させて教えて貰ったステータスは──────。
名前 : 知谷 比呂
ニックネーム : トモ
職業 : 勇者
レベル : 58
とのことだった。
どうやらレベルの方は召喚当時の半年前でやはり30くらいだったらしいので、特段おかしなことではないようだった。
「取り敢えず、聖女の件は宰相や魔道士達が何とかするだろうから、サトルは気にせずレベルを上げるように頑張ってくれ!」
そうやって笑顔で言い切られたが、これはどうしたものだろうか?
自分としては旅をする気が端から無いからあまり期待されても困ってしまう。
けれどここでこの世界ならではの事を口にされると、好奇心が疼いてしまうのはどうしようもないことだった。
「図書室には色んな本もあるし、剣も魔法も練習し放題。薬草なんかも薬草園に色々あるし、やる気さえ出せば学ぶのにはもってこいの場所だぞ、ここは」
その中で特に図書室というのは一番興味を惹かれた。
俺は学生時代常時金がなかったから、当時はしょっちゅう図書館へ足を運んでそこで学んでいたのだ。
今から思えば懐かしい思い出だ。
就職して逃げるように実家を出てからはそう言えば行っていなかった気がする。
「行く!」
そこでならこの国について学ぶこともできるし、色々これからどうすればいいのか対策を立てることもできることだろう。
そう思ってヒロから教えられた図書室へとやってきたのだが、そこにはすでに先客がいた。
その後、俺はなんとか立ち上がってくれた勇者について来いと促され、取り敢えず素直に従い彼の部屋までやってきたのだが、ついて早々彼は疲れたようにソファーへと座り、頭をぐしゃりと掻き上げた。
どうやらまだ落ち込んでいるようだ。
けれど何をそんなに落ち込んでいるのかさっぱりわからないので、とりあえず事情を聴いた方がよさそうだと思い詳しい話を聞いてみることにした。
それによるとどうやらこの勇者もまた召喚でやってきた日本人とのことで、名前を知谷 比呂(ともや ひろ)というらしい。
それを聞くに、どうもあのアイスブルーの人物は名前をちゃんと把握しないあわてんぼうなタイプのようだという結論に至った。
けれどどうやらあの人物はこの国の宰相らしい。
随分若い宰相だが他に人材はいなかったのだろうか?
大丈夫なのか?この国は。
いや、きっと『勇者』であれば名前なんて何でもよかったんだ。
気に留めるほどの事ではなかったのだろう。
そうだ。そうに違いない。
「俺はサトル。よろしくな」
面倒だが勘違いされないためにも今度からは名前だけ名乗ろうと、そうやって軽い感じでヒロへと声を掛けたのだが、彼は先程話に出てきた『聖女』の件で酷く落ち込んでいるようだった。
しかし話を聞くだけで酷い話だと思えたので、あまり同情の余地はない。
赤の他人だったし、彼女も自分と同じように扱ってもらえているだろうと思い込んでいたため、まさか冷遇されて激怒して一人で帰ってしまうなんて思ってもいなかったのだという。
「俺は魔王を倒したら日本に帰れるって聞いてたから、俺が彼女を日本に帰すんだってどこかで思っていたのは確かだ。でも…」
それは単なる思い込みで、実際は聖女にこそ帰る手段があったのだと意気消沈してしまっている。
けれどだからこそ今回の聖女召喚には一縷の望みを掛けていたのだとか。
それであの時、召喚の儀が行われていると聞いて慌てて飛んできたのかと納得がいった。
そして一通り詳細を聞き終えたところでヒロが言ったのが「……で?」の言葉だった。
先程はショックで聞けなかったが、俺が本当に勇者なのかを確認したかったらしい。
そうは言われても自分的にはただの一般人としか思えなかったのでありのままを返答したのだが、ヒロはそれでは納得しなかった。
「もう俺一人でここで頑張るなんて嫌なんだ!ギスギスした王宮内は息も詰まるし、プレッシャーが半端ない!だからあんたが勇者なら一緒に戦ってほしいし、それ以外のジョブなら仲間として旅に同行してほしい!」
『どうかこの通りだ!』と思い切り頭を下げられるが、俺としては正直そんなことを言われてもとしか思えない。
けれどそれでは彼も納得できないんだろう。
それならそれで平行線を辿るよりかはいいかもと質問をしてみることにした。
「え~…っと。勇者かそうでないかはどうやったらわかるんだ?」
結果的に諦めてくれる切っ掛けになるかもと思いながら渋々そんな風に尋ねてみたのだが、ヒロはパッと頭を上げてどこかホッとしたように表情を緩ませた。
「助かる!」
いや。同行するとはまだ誰も言っていないんだが?
そんな嬉しそうに言われたら困ってしまうではないか。
なんだか居心地が悪くなりながらも、ヒロの次の言葉を待つと、ステータスについて教えて貰うことができた。
どうやらゲームのように心の中で【ステータス】と唱えたら自分のステータスを見ることができるらしい。
本当にそんなことができるのかと思いつつ試しに唱えてみるとあっさりと自分のステータスを確認することができた。
名前 : 真中 悟
ニックネーム : マナ
職業 : 聖者
レベル : 30
「…………え?」
正直これだけでも突っ込みどころが沢山だ。
まずニックネームってなんだ?
勘違い宰相の言っていた名前が勝手に表示されてしまっている。
しかも職業『聖者』ってなんだ?
聞いたことがないぞ?
そもそも何もできる気がしないのにレベルがすでに30ってどういうことだ?
意味が分からん。
そうして眉間に皺を寄せてうんうん唸っていると、ヒロがどうだったと不安げに聞いてきたので正直に答えてみた。
「いや…職業が『聖者』って書いてあるから何かと思って…」
それに対してヒロは首をかしげながら「セイジャ?忍者じゃなくて?いや間者?まさか賢者?あ、占者か?」と意味不明のことを口にしていた。
「ちなみにレベルが30になってるんだが、ヒロの方はどんな感じなんだ?」
「え?俺か?」
そうして思考を中断させて教えて貰ったステータスは──────。
名前 : 知谷 比呂
ニックネーム : トモ
職業 : 勇者
レベル : 58
とのことだった。
どうやらレベルの方は召喚当時の半年前でやはり30くらいだったらしいので、特段おかしなことではないようだった。
「取り敢えず、聖女の件は宰相や魔道士達が何とかするだろうから、サトルは気にせずレベルを上げるように頑張ってくれ!」
そうやって笑顔で言い切られたが、これはどうしたものだろうか?
自分としては旅をする気が端から無いからあまり期待されても困ってしまう。
けれどここでこの世界ならではの事を口にされると、好奇心が疼いてしまうのはどうしようもないことだった。
「図書室には色んな本もあるし、剣も魔法も練習し放題。薬草なんかも薬草園に色々あるし、やる気さえ出せば学ぶのにはもってこいの場所だぞ、ここは」
その中で特に図書室というのは一番興味を惹かれた。
俺は学生時代常時金がなかったから、当時はしょっちゅう図書館へ足を運んでそこで学んでいたのだ。
今から思えば懐かしい思い出だ。
就職して逃げるように実家を出てからはそう言えば行っていなかった気がする。
「行く!」
そこでならこの国について学ぶこともできるし、色々これからどうすればいいのか対策を立てることもできることだろう。
そう思ってヒロから教えられた図書室へとやってきたのだが、そこにはすでに先客がいた。
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