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12.お粥は口に合ったようです
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「これは…えっと『トルネラ』。精神を落ち着かせる作用がある…か。ふむふむ」
俺は今薬草園に来ている。
何をしているかと言うと、一つ一つの薬草の作用を確認しているのだ。
最初は図書室で借りた図鑑片手にやってきたのだが、実はあの毒検出表示と同じように便利なステータスっぽい画面で薬草の効能を見られることが分かったので今はもう図鑑は手にしていない。
ヒロに確認してみると、それはきっと【鑑定】というスキルだろうとのことだった。
『賢者だし使えてもおかしくないんじゃね?』と言われたが、賢者ではないので本当のところはわからず仕舞いだ。
とは言えこの能力は結構便利で、扱い方の注意点や食材として使えるかどうかも教えて貰える。
だから俺はまずこの便利なスキルを使って宰相に七草がゆならぬ、薬草粥を作って持っていくことにした。
疲れている宰相が少しでも元気になる様にと思って、倦怠感や疲労感に効く薬草を中心に使用し、早速その日の夜食として差し入れたのだが、これが意外な効果を現し驚かれてしまった。
「……すごい」
どことなくスッキリした表情でカランと匙を置いた宰相は驚きの眼差しをこちらへと向けてくる。
「マナ!この粥はなんだ?食べる毎に頭痛がなくなって物凄く体がスッキリして軽くなったんだが…」
「え?ああ。七草がゆって言うんですけど」
それからお正月等が過ぎたころに食べる胃に優しい食べ物なのだと簡潔に伝えると、初めて聞いたと言いながらも嬉しそうにまた作ってほしいと言ってくれた。
どうやら当初の目的がちゃんと達成できたようだ。
「さすが賢者だな。これならまだまだ仕事が出来そうだ」
「そうですか?それなら良かった。でも無理はしないでくださいね?」
『賢者』を訂正するのももう面倒臭いので、そこには敢えて触れず『折角元気が出てもそこで無理をしたら同じだから』とだけ告げると、宰相は大丈夫だと綺麗に微笑んだ。
なんだこの張り付けたようなキラキラしい笑みは。
明らかに誤魔化すような笑みで、ちっとも大丈夫な気がしない。
やはりこれからも色々宰相のフォローができるように知識を蓄えて色々できるようにならないとと、半ば諦めながら溜息を吐いた。
そうしてその日の仕事を片付けていると、切りのいいところまで来たのか宰相が帰る支度を始めた。
「マナ。今日も助かった」
「いえ。今日は終業後しか手伝えなくて…すみません」
本当はいつも通り手伝いたかったのだが、あのジフリートという部下がやってきて、『二、三日後に国境線の方の調査に行ってもらいたいので、今日は街に出て旅支度を整えておいてください』と言ってきたのだ。
ご丁寧に金を袋に入れて持たせて。
それからヒロに街を案内してもらいがてら街に出たのだが、一通り買い出しを終えて帰ったものの中途半端な時間に帰ってきたものだから、今の時間から手伝うのもかえって邪魔かなと薬草園へと足を運んだという次第だ。
ちなみにヒロはその間ちょっと各所に顔出ししてくると言って別行動だった。
なんでも国境線に行くのについてきてくれる騎士と魔道士を厳選しに行くのだそうだ。
間違っても背後から俺を攻撃してくるような奴がいてはいけないからとのことだった。
正直心配しすぎな気がする。
大体例の毒検出だってあくまでも嫌がらせの範囲内だろうし、腹でも下せばいいんだ的な量しか入れられていなかったはずだ。
目的はあくまでも嫌がらせなのだろうし、そこまで警戒する必要もないだろうと言うのが俺の意見だった。
(本当、責任感の強い奴だな)
きっと聖女の二の舞だけは避けなければと一生懸命なのだろう。
ヒロからはこれでもかと言うほど気配り心配りが感じられるが、正直自分は聖女とは違って男なのだから、それほど守ってもらわなくてもある程度は大丈夫なんだがなと思わずにはいられなかった。
俺は今薬草園に来ている。
何をしているかと言うと、一つ一つの薬草の作用を確認しているのだ。
最初は図書室で借りた図鑑片手にやってきたのだが、実はあの毒検出表示と同じように便利なステータスっぽい画面で薬草の効能を見られることが分かったので今はもう図鑑は手にしていない。
ヒロに確認してみると、それはきっと【鑑定】というスキルだろうとのことだった。
『賢者だし使えてもおかしくないんじゃね?』と言われたが、賢者ではないので本当のところはわからず仕舞いだ。
とは言えこの能力は結構便利で、扱い方の注意点や食材として使えるかどうかも教えて貰える。
だから俺はまずこの便利なスキルを使って宰相に七草がゆならぬ、薬草粥を作って持っていくことにした。
疲れている宰相が少しでも元気になる様にと思って、倦怠感や疲労感に効く薬草を中心に使用し、早速その日の夜食として差し入れたのだが、これが意外な効果を現し驚かれてしまった。
「……すごい」
どことなくスッキリした表情でカランと匙を置いた宰相は驚きの眼差しをこちらへと向けてくる。
「マナ!この粥はなんだ?食べる毎に頭痛がなくなって物凄く体がスッキリして軽くなったんだが…」
「え?ああ。七草がゆって言うんですけど」
それからお正月等が過ぎたころに食べる胃に優しい食べ物なのだと簡潔に伝えると、初めて聞いたと言いながらも嬉しそうにまた作ってほしいと言ってくれた。
どうやら当初の目的がちゃんと達成できたようだ。
「さすが賢者だな。これならまだまだ仕事が出来そうだ」
「そうですか?それなら良かった。でも無理はしないでくださいね?」
『賢者』を訂正するのももう面倒臭いので、そこには敢えて触れず『折角元気が出てもそこで無理をしたら同じだから』とだけ告げると、宰相は大丈夫だと綺麗に微笑んだ。
なんだこの張り付けたようなキラキラしい笑みは。
明らかに誤魔化すような笑みで、ちっとも大丈夫な気がしない。
やはりこれからも色々宰相のフォローができるように知識を蓄えて色々できるようにならないとと、半ば諦めながら溜息を吐いた。
そうしてその日の仕事を片付けていると、切りのいいところまで来たのか宰相が帰る支度を始めた。
「マナ。今日も助かった」
「いえ。今日は終業後しか手伝えなくて…すみません」
本当はいつも通り手伝いたかったのだが、あのジフリートという部下がやってきて、『二、三日後に国境線の方の調査に行ってもらいたいので、今日は街に出て旅支度を整えておいてください』と言ってきたのだ。
ご丁寧に金を袋に入れて持たせて。
それからヒロに街を案内してもらいがてら街に出たのだが、一通り買い出しを終えて帰ったものの中途半端な時間に帰ってきたものだから、今の時間から手伝うのもかえって邪魔かなと薬草園へと足を運んだという次第だ。
ちなみにヒロはその間ちょっと各所に顔出ししてくると言って別行動だった。
なんでも国境線に行くのについてきてくれる騎士と魔道士を厳選しに行くのだそうだ。
間違っても背後から俺を攻撃してくるような奴がいてはいけないからとのことだった。
正直心配しすぎな気がする。
大体例の毒検出だってあくまでも嫌がらせの範囲内だろうし、腹でも下せばいいんだ的な量しか入れられていなかったはずだ。
目的はあくまでも嫌がらせなのだろうし、そこまで警戒する必要もないだろうと言うのが俺の意見だった。
(本当、責任感の強い奴だな)
きっと聖女の二の舞だけは避けなければと一生懸命なのだろう。
ヒロからはこれでもかと言うほど気配り心配りが感じられるが、正直自分は聖女とは違って男なのだから、それほど守ってもらわなくてもある程度は大丈夫なんだがなと思わずにはいられなかった。
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