【完結】予想外の異世界で俺は第二の人生を生きることになった

オレンジペコ

文字の大きさ
18 / 71

17.魔法の検証をしてみたー勇者視点ー

しおりを挟む
さて、そんな感じで旅に出たのはいいのだが、最初の宿に着いたところでサトルが話があると持ち出してきた。
それなら自分達は聞き込みに言ってくると言って他の面々は村に聞き込みに行ったのだが、それを見てサトルは自分もと言い出した。
けれど話があると言うのならそれを聞かせて欲しいと引き留め、そのまま部屋へと連れていく。
そして話を聞くと、どうやら魔法について教えて欲しいとのことだった。
魔法は俺も一応使えるしどういうことが知りたいんだと尋ねたのだが、意外にも予想外のことを尋ねられて困ってしまった。
もっとこう、どうやって訓練したらいいのか的な類のことだと思っていたのに、重ね掛けはできるのかから始まり、どれくらい効果が持続するのか、防御魔法の類は衝撃や関節技にも耐えうるのかなどなど色々聞かれたのだが、正直半分も答えられなかったので素直に謝る羽目になった。
すると今度は謝らなくてもいいから実証に付き合ってほしいと言われ、まあ自分の役にも立つかと思って一緒にやることにした。



場所は宿の裏手だ。
ここなら人もそうそう来ないだろうし、下は芝生のように柔らかな草が生えているので怪我をする心配もない。

「じゃあ早速やるか」

準備体操をきっちりやった後、サトルは俺に防御魔法を掛け始める。
「まずは重ね掛けがどれくらいできるかだな」
そう言って呪文を唱えて素早くサッサと薄い膜のような防御魔法を重ね掛けしていく。

「…………10、11、あ、これ以上は無理だな」

どうやら重ね掛けは10回が限度らしい。

「じゃあ今度はどれだけの効果があるかと、時間的な問題と、強度の問題かな」

そして柔道の技を幾つか試させてほしいと言ってきた。
「一本背負いで衝撃に対する効果、関節技で痛みによる効果、締め技で呼吸に対する効果を確認しておきたい。ヤバい時は手で知らせてくれ」
どうやらギブアップは受け付けてくれるらしい。
(ま、大丈夫だろ)
サトルは剣もできなければ攻撃魔法も使えないらしいので、どれくらい護身で動けるかは把握しておきたいと思い、快く引き受ける。
そして防御魔法の検証に入ったのだが、これは凄いなと思った。
まず、一応受け身は取ったが、投げられても痛くも痒くもなかったし、衝撃もほぼなかった。
重ね掛け×10は伊達ではない。
同じく関節技も『え?これ本当に関節極めてる?』と言う感じだったし、締め技も『全然苦しくないんだけど…。これ本当に締めてるのか?』という感じだった。
それを正直に報告すると、サトルはなるほどと言って何やら納得していた。
けれど続いて言われた言葉に唖然とする。
「じゃあ今度は俺が自分に重ね掛けするから、ヒロは剣で思いっきり斬りつけてきて欲しい」
「は?」
(いやいやいや!流石にそれはマズいだろう?!)
いくらなんでも勇者の剣で打ち込めば怪我をするのではないか?
防御魔法の効果がいきなり切れたら死ぬんじゃないか?
そう思って難色を示すと、じゃあ魔法でと言われたのでそれも断っておいた。
さすがに怪我をさせる可能性があることなんてできるはずがないし、効果切れ問題は剣と同じくらいだ。
万が一にでも死なれたら困る。
すると今度はじゃあ自分が攻撃してみると言い出し、剣を持とうとしたので危なっかしくて別の案を出すことにした。
それはその辺の木に魔法を重ね掛けして検証してみようというものだ。
木になら幾らでも打ち込んでやれると言ってやると、サトルの方も納得がいったのか、それでいいと言ってくれた。
けれどそこからが問題だった。


「…………も、無理…」


正直打ち込み回数が300回を超えてからは数えていないが、疲れすぎてもう腕が上がらなくなってきていた。
いくらなんでもこの防御魔法は強すぎなのではないだろうか?
それとも自分の腕がまだまだ未熟なのか?
これほどダメージを与えられないと言うのはなんだか負けたようで悔しい。
けれどそんな自分にサトルはサクッと回復魔法を唱え、あっさりと体力を回復してくれた。
「悪い悪い。でも始めた時から今で2時間くらいだけど、効果の持続が確認されたし、ヒロには感謝してる。ありがとう」
そうやって笑顔で言われたら文句も言えないではないか。
「…まあ回復してもらえたし、いいか」
とは言えこのまま負けっぱなしなのも何となくスッキリしない。
そこで名案が浮かんだ。
「そうだ!この後夕飯まで時間あるだろう?お前も攻撃力がないんなら基礎トレでもして体力つけて、いざという時すぐに逃げられるようにした方がいいぞ」
自分も付き合うから体力をつけろと言ってやると、サトルはそれもそうだなとすぐに返事をしてきたので、とりあえず部屋へと戻り軽くシャワーで汗を流してからストレッチに入った。

「……ぅう」
「硬いな」
「うるさい」

そして思った通りサトルは体が少し硬かった。
とは言えこれくらいなら毎日ストレッチをしていれば柔らかくなるだろう程度だ。
だからグイーッとゆっくり背中を押しながら手伝ってやる。

「うっ…ヒロ…もっと優しくしてくれ」
「これでも優しくしてるつもりだけどな」
「ふぅ…う…痛い……」
「頑張れ。サトルはやればできる」
「……絶対楽しんでるだろ」
「もちろん!」
「うぁ!いきなりそんな風にされたら苦しいっ…!」

涙目になるサトルがこちらを見てきたので、これ以上睨まれないように少し手加減しながら少しずつストレッチを手伝ってやることにした。

「俺が悪かった。今度は優しくするから、そう睨むなよ」
「睨んでない」
「はいはい。これでどうだ?」
「んっんっ…、これくらいなら大丈夫だ」
「そうか。じゃあもうちょっと足を開いて、そうそう。今度はこっちな」

そうして反対側にも伸ばしてやると、少しだけ気持ちよさそうに微笑まれた。
どうやらこれくらいの力加減が一番好みのようだ。

「折角だし、この旅の間はじっくり付き合ってやるからな」
「うぇっ?!」
「嫌がるなよ。お前のためだろう?」
「うぅ…これ、絶対エスカレートするパターンだ」

絶対その後は筋トレだなんだと続くんだろうと言われて思わず笑ってしまう。
確かにそれはその通りだったからだ。
「腹筋背筋とかも大事だけど、持久力もつけような」
「持久力か…まあ逃げるには必須だな」
「だろう?」
そうして楽しく話ながらストレッチをして、さて夕食だと思いながら二人で食堂に向かったら騎士と魔道士達が先に食事をしていたんだが、微妙に視線を逸らされ頬を染められた。

─────なんでだ?



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

処理中です...