【完結】予想外の異世界で俺は第二の人生を生きることになった

オレンジペコ

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18.勝手に薄めるのはやめて欲しい

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ヒロに手伝ってもらって魔法の効果を随分検証することができた。
助かったのは助かったが、その後仕返しとばかりにストレッチで酷い目にあった。
俺は体が硬いんだ。もう少し手加減してもらいたい。

「はぁ…」

だからつい夕食を食べながら溜息を吐いたんだが、何故か他の面々がこちらをチラッと見た後パッと視線を逸らした。
俺、何かしただろうか?
やっぱり嫌われてるんじゃないかと心配になってしまう。
まあヒロの選んでくれた人達だし、あからさまにこちらを攻撃してきたりはしないだろうが、それでも友好的でない相手と一緒にいるのはなんだか疲れるなというのが本音だった。
ただでさえ気詰まりな感じで馬車の中で過ごしていたのだし、せめて宿にいる間くらいは羽を伸ばさせてもらいたいものだ。
そう思っていると、こちらの気持ちを察してくれたのかヒロは俺と二人部屋を希望してくれた。
これは非常に助かる。
けれど他の人はそれでいいのかなと思ってちらりと様子を窺うと、何やら皆で頷き合ってあっさりOKを出してくれた。
さすが鶴の一声!
これで旅の間の部屋割り問題は解決だと嬉しくなった。
「これでサトルを虐めたい放題だな」
さっきのストレッチを思い出したのかヒロがどこか楽し気に笑って言うので、そっちがその気ならこっちだって魔法の訓練に付き合ってもらおうと思った。
なんかこう言うのって対等って感じがしていいなと思いながら笑顔で食事に手を付けていると、何故か皆が居た堪れないような表情になってしまった。
食も進んでいないようだし、慣れない旅で疲れているのだろうか?
それとも勇者と一緒の旅ということでプレッシャーでも感じているのか?
全然俺と話してくれないので今一つ彼らのことはわからないが、まあ気にするほどでもないだろうと思って気にせずパクパクと口と手を動かし、さっさと食事を終えた。



その翌朝、俺はヒロに早朝から揺り起こされてしまった。
どうやら早朝から村の周囲をジョギングして体力づくりをしながら、ついでに魔物がいたら倒して経験値を稼ごうと思い立ったらしい。
「寝るのは馬車でいくらでも寝れるだろうし、ちょうどいいだろう?」
眠いと抗議したらそんな風に笑われたので、少しだけ『それはいいかも』と思ってしまったのは仕方がない。
何故なら気詰まりな馬車内でずっと起きてるのは疲れるからだ。
それくらいならまだ寝てる方が気も楽だ。
なのでサクサクと朝の支度を整えて、ヒロと一緒に外へと飛び出した。

朝の冷たい空気が頬にあたって気持ちがいい。
「あ、そうだ」
確か朝露でいいものが作れるんだったと思い出し、近くの木々へと向かって掌に朝露をちょいちょいと集めてそれに浄化魔法を掛けた。
「サトル。なんだそれ?」
「ふふ。これはなんと聖露と言う聖水の仲間なんだ」
清浄な空気の中で集められた朝露に浄化魔法を掛けて作るこの聖露は、解毒効果が高いだけではなく傷口にかけると殺菌消毒効果も得られ治癒力も高まる代物だ。
それと共にある程度の体力回復効果もあるらしいので、怪我で動けなくなった時等に重宝できそうなものでもあった。
「取り敢えず水筒にいれておこうと思ってたんだよな」
手軽な分それほど沢山出来るわけではないから水筒いっぱい集めることはできないが、ジョギングで疲れた時にキュッと飲もうと思ってチョロチョロといれておいた。
けれどここでヒロが予想外の行動に出る。
「ダメだぞサトル。ジョギングの時は水分を多めにとるのは基本だろう?それっぽっちだと全然足りない」
そう言って自分の水筒から勝手に俺の水筒にドバドバと水を足してしまった。
「おまっ…!何してるんだ?!」
折角の聖露が台無しだと驚いてヒロの方を見ると、滅茶苦茶いい笑顔でサムズアップされた。
「どうせ胃に入ったら一緒だろう?全部飲んだら問題なし!」
それなんか違う!
え?俺が間違ってるのか?
どうしようと一瞬茫然となってしまったが、仕方がないのでしないよりはマシかと気持ちを切り替え水筒の水にも浄化魔法を掛けておく。
どうか少しでも体力回復効果がありますように────と願いながら。



それから村の近くをジョギングしながら少しだけ森の方へと向かい、魔物などがいないかを見ながら二人で走る。
けれど夜ではなく朝方だからか、魔物達の姿は全然見つけられなかった。
「何もいないな」
「そうだな。昨日アックス達、あ、これ赤髪の騎士の方な。そのアックスが言ってたように、たまにウルフ系やベア系の魔物が出るだけの平和な森ってことだな」
今は森の実りも多い時期だし、野生の動物もこの森には沢山住んでいる。
その為比較的強いウルフ系やベア系の魔物達はそれらを食料とするため、村にまではそうそう出てこないのだという。
しかも村に出てくるのは手負いの状態の時くらいで、大抵は村人で力を合わせただけで倒せるレベルなのだとか。
これなら何の問題もないだろう。
そう判断し、そろそろ村に戻るかと引き返そうとしたところでその声は聞こえてきた。


「誰かいるの?お願い!助けてちょうだい!」


女の声だ。
こんな早朝にこんな場所でと不思議に思ったが、助けを求めている相手を放っておくことはできない。
そう思いそちらへと向かうとそこには横倒しになった馬車があり、その周辺には盗賊らしき男達が6人ほど倒れ伏していた。


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