74 / 81
71.父が来りて
しおりを挟む
「カイザーリード!」
父は騎士団長からの手紙で俺達が泊っている宿を知ったらしく、王都に到着してすぐにここに来てくれたらしい。
「無事でよかった!」
開口一番俺がここに居ること自体に怒られるかもしれないと思っていたけど、そんなことはなく、優しくギュッと抱きしめてくれて涙が出そうになった。
「父様…心配かけてごめんなさい」
素直に謝罪の言葉が零れ落ち、『いいんだ』っていう言葉を聞きながら凄く安心している自分がいた。
やっぱり父の側は安心できる。
でもこの後の話し合いで場合によってはそれを失うことも考えられるから、心の準備だけはしておかないといけない。
「ルシアン。カイザーリードを保護してくれて助かった。礼を言う」
「いいえ。婚約者として当然のことをしたまでです」
ニコリと微笑むルシアン。
「ダニエルとダイアンもありがとう。事件に巻き込まれて怪我をしたと聞いたが大丈夫か?」
「はい。ただ深手を負ったので動けるようになるには少し時間がかかりそうで…すぐには帰れそうにありません」
「そうか」
痛まし気に二人を見遣り、父がチラリとこちらを向く。
「カイ。少し二人で話したいことがあるんだが、構わないか?」
その言葉にドキッと胸が弾む。
「え?!あ、はい」
(何を言われるんだろう?)
身に覚えがあり過ぎるから緊張から胸がバクバクと激しく弾んでしまう。
そんな俺を見て、ルシアンがすかさず同席を申し出てくれて少しだけホッとする。
「それは俺も同席しても?」
父はその言葉に少し思案した後『ちょうどいい機会かもしれない』と言ってルシアンの同席も認めてくれた。
「じゃあちょっと失礼させてもらう。安静にしていなさい」
そう言ってダニエル達の部屋を出た俺達は、今現在二人で借りている部屋へと移動することに。
「ここは?」
「俺達が借りている部屋です」
「ベッドが一つしかないようだが?」
「ええ。もう夫婦みたいなものなので、別におかしくはないでしょう?」
ルシアンからにこやかに放たれたその言葉に父が怒気を纏う。
でも特に怒鳴りつけるでもなく、鋭く睨みつけただけで『取り敢えず座りなさい』と促され、俺達は大人しく椅子に腰を下ろした。
(取り敢えず即喧嘩にならなくてよかった…)
心臓に悪い。
そんな俺の心境もなんのその。父は淡々と話し始める。
「これから話すことは他言無用にしてほしい」
そして父が話した内容は俺が魔剣の生まれ変わりであるという話で、これにはちょっと驚いてしまった。
まさか魂の存在を感じてくれていたなんて思ってもみなかったし、名づけも単純に元の愛剣にあやかってと言うわけではなかったのだと初めて知ったからだ。
「カイが母さんのお腹の中に宿った時、魔剣との絆が確かに蘇ったのを感じた。だからカイザーリードは正真正銘父さんの愛剣の生まれ変わりなんだ」
「父様……」
「だから大事にしたいと思う気持ちに嘘偽りはない。それを踏まえた上で聞きたい。カイは魔剣の時の記憶はあるのか?」
そう訊かれ、嘘を吐くなんて言う選択肢はなかった。
「はい…。ちゃんと…覚えています」
胸がいっぱいになりながらそう答えると、父はそうかと言いながら優しい眼差しで頭を撫でてくれる。
そして、ルシアンと契約をしたのかと訊かれた。
「あの旅行の時、これまで確かにあったはずのお前との絆が突然切れるのを感じた。あれはもしかしてルシアンと契約したんじゃないかと思ったからお前に聞いておきたかったんだ」
それを聞いて『ああ、だからか』とストンと父の行動の理由を理解することができた。
確かにあの時、ルシアンとの間に正式な契約が結ばれた。
つまりこれまでの契約は破棄されたと考えていい。
父がそれを感じていたのならそれは何かあったのではないかと思ったことだろう。
それこそ魔剣を叩き折られた際の契約がなくなる感覚を知っているだけに、何かあったんじゃないかと不安も大きかったはず。
そんな父の心境も知らず子供っぽくただ泣いてた自分が恥ずかしい。
「父様。すみませんでした」
素直に頭を下げて謝ると、自分の方こそ感情的になってすまなかったと謝ってくれた。
やっぱり父は立派だと思う。
こうしてちゃんと向き合ってくれるのだから。
「それでだが、カイは自分の魔剣の力をちゃんと把握できていないんじゃないかと思ったんだが、どうだ?」
「俺の力、ですか?」
てっきりここからルシアンとの今後の話になると思っていたのだけど、違うんだろうか?
そう思いながらも問われた事について考えてみる。
(何かあったっけ?)
ステータスを上げる以外に思い当たるものはないのだけど…。
そう思って首を傾げていると、やっぱり気づいてなかったのかと言われてしまった。
「ステータスを上げる以外に何かありましたか?」
「ああ。ステータスはもちろん魔剣なんだから上げる力を持っているが、お前は癒しの力も持っていたんだ」
「???」
そんなもの、使った覚えが全くないのだけど?
言われている意味が分かりませんと困ったように父へと視線を送ると、父はここで初めてルシアンの方へと目をやった。
「ルシアン。今現在カイと契約しているというのは理解できているか?」
「はい」
「なら魔剣の力を使ってみるといい。きっとダニエルとダイアンの傷はそれで少しは治るはずだ」
契約ができたなら魔剣の姿でなくともその力は発揮されるだろうと父は言う。
でも本当にそんなことができるんだろうか?
甚だ疑問だ。
「どうやら信じられないようだな」
「はい。だって戦場でそんな力を使った覚えはないですよ?」
いくら思い返しても全く思い出せない。
そんな俺に父は言った。
「どうやら無意識だったようだな。最初は私も気のせいかと思ったが、どうやらお前とのシンクロ率が100%を超えたあたりでその力が解放されたようなんだ」
父が怪我人を庇うように俺を使って戦っていた際に、庇われた者の怪我が癒えていたらしい。
俺は全く気づいていなかったけど、それで一命を取り留めた者は数多くいたそうだ。
「……道理で」
隣で少し顔を歪めたルシアンが微かにそう呟くのが聞こえたから、もしかしたらルシアンにも心当たりがあるのかもしれない。
何せ前世では敵として戦っていたのだから。
でも本当にそんな力があるのなら是非使いたい。
「ルシアン。俺、もし本当にそんな力があるのなら使ってみたい」
ダニエルもダイアンも俺に付き添ってここまで来なかったら怪我なんてしなかったはずなのだ。
治せるものなら治したい。
そう思って伝えたら、優しくもちろんだと言って微笑んでもらうことができた。
父は騎士団長からの手紙で俺達が泊っている宿を知ったらしく、王都に到着してすぐにここに来てくれたらしい。
「無事でよかった!」
開口一番俺がここに居ること自体に怒られるかもしれないと思っていたけど、そんなことはなく、優しくギュッと抱きしめてくれて涙が出そうになった。
「父様…心配かけてごめんなさい」
素直に謝罪の言葉が零れ落ち、『いいんだ』っていう言葉を聞きながら凄く安心している自分がいた。
やっぱり父の側は安心できる。
でもこの後の話し合いで場合によってはそれを失うことも考えられるから、心の準備だけはしておかないといけない。
「ルシアン。カイザーリードを保護してくれて助かった。礼を言う」
「いいえ。婚約者として当然のことをしたまでです」
ニコリと微笑むルシアン。
「ダニエルとダイアンもありがとう。事件に巻き込まれて怪我をしたと聞いたが大丈夫か?」
「はい。ただ深手を負ったので動けるようになるには少し時間がかかりそうで…すぐには帰れそうにありません」
「そうか」
痛まし気に二人を見遣り、父がチラリとこちらを向く。
「カイ。少し二人で話したいことがあるんだが、構わないか?」
その言葉にドキッと胸が弾む。
「え?!あ、はい」
(何を言われるんだろう?)
身に覚えがあり過ぎるから緊張から胸がバクバクと激しく弾んでしまう。
そんな俺を見て、ルシアンがすかさず同席を申し出てくれて少しだけホッとする。
「それは俺も同席しても?」
父はその言葉に少し思案した後『ちょうどいい機会かもしれない』と言ってルシアンの同席も認めてくれた。
「じゃあちょっと失礼させてもらう。安静にしていなさい」
そう言ってダニエル達の部屋を出た俺達は、今現在二人で借りている部屋へと移動することに。
「ここは?」
「俺達が借りている部屋です」
「ベッドが一つしかないようだが?」
「ええ。もう夫婦みたいなものなので、別におかしくはないでしょう?」
ルシアンからにこやかに放たれたその言葉に父が怒気を纏う。
でも特に怒鳴りつけるでもなく、鋭く睨みつけただけで『取り敢えず座りなさい』と促され、俺達は大人しく椅子に腰を下ろした。
(取り敢えず即喧嘩にならなくてよかった…)
心臓に悪い。
そんな俺の心境もなんのその。父は淡々と話し始める。
「これから話すことは他言無用にしてほしい」
そして父が話した内容は俺が魔剣の生まれ変わりであるという話で、これにはちょっと驚いてしまった。
まさか魂の存在を感じてくれていたなんて思ってもみなかったし、名づけも単純に元の愛剣にあやかってと言うわけではなかったのだと初めて知ったからだ。
「カイが母さんのお腹の中に宿った時、魔剣との絆が確かに蘇ったのを感じた。だからカイザーリードは正真正銘父さんの愛剣の生まれ変わりなんだ」
「父様……」
「だから大事にしたいと思う気持ちに嘘偽りはない。それを踏まえた上で聞きたい。カイは魔剣の時の記憶はあるのか?」
そう訊かれ、嘘を吐くなんて言う選択肢はなかった。
「はい…。ちゃんと…覚えています」
胸がいっぱいになりながらそう答えると、父はそうかと言いながら優しい眼差しで頭を撫でてくれる。
そして、ルシアンと契約をしたのかと訊かれた。
「あの旅行の時、これまで確かにあったはずのお前との絆が突然切れるのを感じた。あれはもしかしてルシアンと契約したんじゃないかと思ったからお前に聞いておきたかったんだ」
それを聞いて『ああ、だからか』とストンと父の行動の理由を理解することができた。
確かにあの時、ルシアンとの間に正式な契約が結ばれた。
つまりこれまでの契約は破棄されたと考えていい。
父がそれを感じていたのならそれは何かあったのではないかと思ったことだろう。
それこそ魔剣を叩き折られた際の契約がなくなる感覚を知っているだけに、何かあったんじゃないかと不安も大きかったはず。
そんな父の心境も知らず子供っぽくただ泣いてた自分が恥ずかしい。
「父様。すみませんでした」
素直に頭を下げて謝ると、自分の方こそ感情的になってすまなかったと謝ってくれた。
やっぱり父は立派だと思う。
こうしてちゃんと向き合ってくれるのだから。
「それでだが、カイは自分の魔剣の力をちゃんと把握できていないんじゃないかと思ったんだが、どうだ?」
「俺の力、ですか?」
てっきりここからルシアンとの今後の話になると思っていたのだけど、違うんだろうか?
そう思いながらも問われた事について考えてみる。
(何かあったっけ?)
ステータスを上げる以外に思い当たるものはないのだけど…。
そう思って首を傾げていると、やっぱり気づいてなかったのかと言われてしまった。
「ステータスを上げる以外に何かありましたか?」
「ああ。ステータスはもちろん魔剣なんだから上げる力を持っているが、お前は癒しの力も持っていたんだ」
「???」
そんなもの、使った覚えが全くないのだけど?
言われている意味が分かりませんと困ったように父へと視線を送ると、父はここで初めてルシアンの方へと目をやった。
「ルシアン。今現在カイと契約しているというのは理解できているか?」
「はい」
「なら魔剣の力を使ってみるといい。きっとダニエルとダイアンの傷はそれで少しは治るはずだ」
契約ができたなら魔剣の姿でなくともその力は発揮されるだろうと父は言う。
でも本当にそんなことができるんだろうか?
甚だ疑問だ。
「どうやら信じられないようだな」
「はい。だって戦場でそんな力を使った覚えはないですよ?」
いくら思い返しても全く思い出せない。
そんな俺に父は言った。
「どうやら無意識だったようだな。最初は私も気のせいかと思ったが、どうやらお前とのシンクロ率が100%を超えたあたりでその力が解放されたようなんだ」
父が怪我人を庇うように俺を使って戦っていた際に、庇われた者の怪我が癒えていたらしい。
俺は全く気づいていなかったけど、それで一命を取り留めた者は数多くいたそうだ。
「……道理で」
隣で少し顔を歪めたルシアンが微かにそう呟くのが聞こえたから、もしかしたらルシアンにも心当たりがあるのかもしれない。
何せ前世では敵として戦っていたのだから。
でも本当にそんな力があるのなら是非使いたい。
「ルシアン。俺、もし本当にそんな力があるのなら使ってみたい」
ダニエルもダイアンも俺に付き添ってここまで来なかったら怪我なんてしなかったはずなのだ。
治せるものなら治したい。
そう思って伝えたら、優しくもちろんだと言って微笑んでもらうことができた。
21
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる