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75.おやすみ Side.ルシアン
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(勝った…!)
当然のように二重三重に手は打ってあったが、正直言ってこれほどあっさり上手くいくとは思ってもいなかった。
一つはユージィン自身と俺の契約にしてしまう手。
だがこんな小手先の手段はユージィンにはすぐバレる。
だが人とは一つでも回避できれば安堵するものだ。
ユージィンが文面に名を盛り込んできた時は流石だと思った。
だがそれだけでは甘い。
俺は敢えてどこの王室かは記していないし、ユージィンは確実な手と考えてフルネームで書いたのだろうが、これだと魔法公爵であるルシアン=ロシェには魔法契約は効力を発揮できない。
それを知らずに安堵し俺に勝ったと頬を緩ませている姿が滑稽だった。
(精々喜んでいればいい)
俺はこの場からカイザーリードを連れ出せればそれでいいのだから。
「では契約も成立しましたし、カイザーリードはもらっていきますね」
「……いいだろう。但し、挿れなければいいと言ってカイザーリードを可愛がるのは禁止だ。わかっているな?」
(なるほど?確かにそれくらいならやってやれないこともないな)
だが俺がそれで満足するはずもない。
勿論抱く気満々だ。
「勿論です。俺がそんな事をするはずがありません」
「どうだか。油断も隙もあったものではなさそうだがな」
「それは褒め言葉として受け取っておきます。カイ。行こうか」
「うん!父様、大丈夫です!本当に手を繋いで寝るだけですから」
清らかな笑みでそう言い放つカイザーリードにユージィンも折れざるを得なかったようで、くれぐれも手は出すなと釘を刺してから悔しそうに俺達を見送っていた。
***
「カイ…」
部屋で二人きりになり、抱き寄せながらキスをする。
うっとりした表情で拒むことなく受け入れてくれるカイザーリードの姿に満足し、俺は城で済ませてきた諸々の事を明かす事に。
「学園だが、一足早く卒業試験を受けてきた」
「え?!」
「結果はジェレアクト家に届けられる予定だ」
そう報告すると、カイザーリードは驚いた後何故かしょんぼりと肩を落とした。
「どうした?カイ」
「……なんでもない」
そう言うが何でもないはずがない。
泣きそうな顔になっているのにと思い、何とか聞き出したら可愛い答えが返ってきて、無性に押し倒したくなってしまった。
「ルシィとこれからは毎日学園で会えるようになるって思ってたのに、卒業されたら会えないじゃないか」
可愛過ぎるだろう。
「……っ、カイ。大丈夫だ。これはあくまでも留学先の学校の卒業試験だからな」
「え?」
「バルトロメオの学校を卒業しただけであって、ジュリエンヌ国の学校に通ったらダメというわけじゃない」
「そんな事、できるのか?」
「できる」
あんな穴だらけの制度、どうとでもなる。
心配は無用だ。
「カイが泣くようなことにはならないから安心しろ」
そう言ってやったらホッとしたように甘えてきた。
良い雰囲気だ。
「それと爵位と屋敷も貰ってきた」
「え?」
「まあ屋敷はこれから建てるらしいから、住むのは先だが」
「しゃ、爵位?!屋敷?!」
「ああ。あって困るものでもないし、結婚したら二人でこっちに住もう?」
『家同士の付き合いに影響するわけでもなし、住むのはどこでも良いだろう?』と言うと少し悩んでいたから『心配しなくてもいつでも里帰りはできる』と口にする。
「幸いユージィンには認めてもらえたし、関係は良好だ。定期的に二人で安心させに行けばいい」
ここは理解ある男をアピールしておこう。
下手な事を言って俺にユグレシア家で一緒に住もうと言い出されたら困るしな。
「ルシィ…」
「ダメか?」
「ダメじゃない」
「そうか」
よし。言質は取った。
これでこっちに住むのは決定だな。
後はジュリエンヌ側にも屋敷を用意して裏工作を徹底しないと。
商会も上手く使って資金を増やしてスムーズにことが運べるよう手配しよう。
やるべき事は沢山ある。
それら全てをユージィンに悟られる事なくやり遂げなければならない。
「カイ。前世ではあるが、この国に生まれた者としてここでプロポーズさせて欲しい。必ず幸せにする。だから俺と結婚してくれないか?」
穏やかにそう言ったらカイザーリードは胸がいっぱいと言うような表情になって、少し照れたように微笑んだ。
「…はい」
その答えに満足し、暫くキスを交わしたところで仲良く婚姻届にサインして、レンスニールからもらった書類転送箱へと入れた。
これで手続きはすぐにでも進めてもらえるだろう。
「カイ。一緒に湯を浴びようか」
「え?でも…」
「大丈夫だ。お互いの身体を洗い合うだけだろう?その後は手を繋いで寝よう?」
そんな風に誘いをかけ、浴場で焦らしながらこちらの立場と名で抱いてもいいかと了承を取り、結婚初夜と称して可愛いカイザーリードを美味しくいただいた。
勿論すんなりそうなったかと言えば答えはノーだが。
どうせ明日からの移動では抱けないのだ。
沢山可愛がれるとしたら今日だけだと言い、しおらしく下手に出て説得したら頷いて貰えた。
焦らしながらのお願いに陥落したと言ってもいい。
本当にカイザーリードはユージィンと違って素直で可愛い奴だ。
あいつに似なくて本当に良かった。
愛しくてたまらない。
事を終えて手を繋いで眠る夜も暫くはお預けだ。
少なくとも二年は昼日中だけの逢瀬となる。
名残惜しいが明日に響いてユージィンにバレてはいけない。
「カイザーリード。おやすみ」
可愛い寝顔を堪能しながら、俺は幸せを噛み締め眠りについた。
当然のように二重三重に手は打ってあったが、正直言ってこれほどあっさり上手くいくとは思ってもいなかった。
一つはユージィン自身と俺の契約にしてしまう手。
だがこんな小手先の手段はユージィンにはすぐバレる。
だが人とは一つでも回避できれば安堵するものだ。
ユージィンが文面に名を盛り込んできた時は流石だと思った。
だがそれだけでは甘い。
俺は敢えてどこの王室かは記していないし、ユージィンは確実な手と考えてフルネームで書いたのだろうが、これだと魔法公爵であるルシアン=ロシェには魔法契約は効力を発揮できない。
それを知らずに安堵し俺に勝ったと頬を緩ませている姿が滑稽だった。
(精々喜んでいればいい)
俺はこの場からカイザーリードを連れ出せればそれでいいのだから。
「では契約も成立しましたし、カイザーリードはもらっていきますね」
「……いいだろう。但し、挿れなければいいと言ってカイザーリードを可愛がるのは禁止だ。わかっているな?」
(なるほど?確かにそれくらいならやってやれないこともないな)
だが俺がそれで満足するはずもない。
勿論抱く気満々だ。
「勿論です。俺がそんな事をするはずがありません」
「どうだか。油断も隙もあったものではなさそうだがな」
「それは褒め言葉として受け取っておきます。カイ。行こうか」
「うん!父様、大丈夫です!本当に手を繋いで寝るだけですから」
清らかな笑みでそう言い放つカイザーリードにユージィンも折れざるを得なかったようで、くれぐれも手は出すなと釘を刺してから悔しそうに俺達を見送っていた。
***
「カイ…」
部屋で二人きりになり、抱き寄せながらキスをする。
うっとりした表情で拒むことなく受け入れてくれるカイザーリードの姿に満足し、俺は城で済ませてきた諸々の事を明かす事に。
「学園だが、一足早く卒業試験を受けてきた」
「え?!」
「結果はジェレアクト家に届けられる予定だ」
そう報告すると、カイザーリードは驚いた後何故かしょんぼりと肩を落とした。
「どうした?カイ」
「……なんでもない」
そう言うが何でもないはずがない。
泣きそうな顔になっているのにと思い、何とか聞き出したら可愛い答えが返ってきて、無性に押し倒したくなってしまった。
「ルシィとこれからは毎日学園で会えるようになるって思ってたのに、卒業されたら会えないじゃないか」
可愛過ぎるだろう。
「……っ、カイ。大丈夫だ。これはあくまでも留学先の学校の卒業試験だからな」
「え?」
「バルトロメオの学校を卒業しただけであって、ジュリエンヌ国の学校に通ったらダメというわけじゃない」
「そんな事、できるのか?」
「できる」
あんな穴だらけの制度、どうとでもなる。
心配は無用だ。
「カイが泣くようなことにはならないから安心しろ」
そう言ってやったらホッとしたように甘えてきた。
良い雰囲気だ。
「それと爵位と屋敷も貰ってきた」
「え?」
「まあ屋敷はこれから建てるらしいから、住むのは先だが」
「しゃ、爵位?!屋敷?!」
「ああ。あって困るものでもないし、結婚したら二人でこっちに住もう?」
『家同士の付き合いに影響するわけでもなし、住むのはどこでも良いだろう?』と言うと少し悩んでいたから『心配しなくてもいつでも里帰りはできる』と口にする。
「幸いユージィンには認めてもらえたし、関係は良好だ。定期的に二人で安心させに行けばいい」
ここは理解ある男をアピールしておこう。
下手な事を言って俺にユグレシア家で一緒に住もうと言い出されたら困るしな。
「ルシィ…」
「ダメか?」
「ダメじゃない」
「そうか」
よし。言質は取った。
これでこっちに住むのは決定だな。
後はジュリエンヌ側にも屋敷を用意して裏工作を徹底しないと。
商会も上手く使って資金を増やしてスムーズにことが運べるよう手配しよう。
やるべき事は沢山ある。
それら全てをユージィンに悟られる事なくやり遂げなければならない。
「カイ。前世ではあるが、この国に生まれた者としてここでプロポーズさせて欲しい。必ず幸せにする。だから俺と結婚してくれないか?」
穏やかにそう言ったらカイザーリードは胸がいっぱいと言うような表情になって、少し照れたように微笑んだ。
「…はい」
その答えに満足し、暫くキスを交わしたところで仲良く婚姻届にサインして、レンスニールからもらった書類転送箱へと入れた。
これで手続きはすぐにでも進めてもらえるだろう。
「カイ。一緒に湯を浴びようか」
「え?でも…」
「大丈夫だ。お互いの身体を洗い合うだけだろう?その後は手を繋いで寝よう?」
そんな風に誘いをかけ、浴場で焦らしながらこちらの立場と名で抱いてもいいかと了承を取り、結婚初夜と称して可愛いカイザーリードを美味しくいただいた。
勿論すんなりそうなったかと言えば答えはノーだが。
どうせ明日からの移動では抱けないのだ。
沢山可愛がれるとしたら今日だけだと言い、しおらしく下手に出て説得したら頷いて貰えた。
焦らしながらのお願いに陥落したと言ってもいい。
本当にカイザーリードはユージィンと違って素直で可愛い奴だ。
あいつに似なくて本当に良かった。
愛しくてたまらない。
事を終えて手を繋いで眠る夜も暫くはお預けだ。
少なくとも二年は昼日中だけの逢瀬となる。
名残惜しいが明日に響いてユージィンにバレてはいけない。
「カイザーリード。おやすみ」
可愛い寝顔を堪能しながら、俺は幸せを噛み締め眠りについた。
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