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第四章 フォルクナー帝国編Ⅱ(只今恋愛&婚約期間堪能中)

77.ダンジョンデートに出掛けた俺

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装備を整えマジックバッグの中身も確認。忘れ物はない。
ケインの方も準備はばっちりだ。
そうこうしているうちに一時間が経った。

ドアをノックする音と共にメイビスがやってきて、同行することになったという近衛を一人紹介してくれる。

「次期近衛の隊長と言われているバルドだ。腕は確かだから足は引っ張らないと思う」
「初めまして、ルマンド王子。近衛騎士バルド=ルンベルです」
「初めまして。よろしく」

にこやかにそう挨拶はしたものの、何故か近衛の視線は冷たい。どうしてだろう?
そう思ったのは俺だけではなかったのか、ケインがスッと目を細めメイビスへと声を掛けた。

「メイビス王子。この近衛は変更した方がよいのではありませんか?ルマンド様に向ける眼差しに問題があります」
「そうか?では別な者を…」

しかもあっさりとそんなことを言い出すものだから俺はちょっと焦ってしまった。
どうしてチェンジ?!強いなら問題はなくないか?
けれど近衛の方もこれには黙っていられなかったようで、しっかりとメイビスへと主張する。

「何も問題はありません!たとえ軟弱な方であろうとも、私が必ずやダンジョンで守って見せます!」

(ええ~……)

その言葉に俺はちょっとショックを受けた。
どうやらバルドには俺がただの好奇心だけでダンジョンに行こうとしている王子のように映っていたらしい。
違うんだけどな…。

「ああ。やっぱりケインの言うように別の近衛の方がよさそうだな」
「どうしてです?ダンジョンにデートに行くと仰られたのでしょう?気軽な気持ちでダンジョンに入ろうとするお方ですから、私くらいの腕がないとお守りできません!間違ってもメイビス様を盾にするようなことになっては大変です。他の者にこの仕事が務まるとは思えませんが?」
「……じゃあ聞くが、お前のレベルは幾つだ?」
「私ですか?65ですが」
「そうか。俺も今65で、そこのケインは…」
「私は68です」
「なっ…?!」
「そうか、あれから68になったのか。で、ルマンドは?」
「俺?この間のギガントアントで1上がってたから71かな」
「?!?!!」
「そう。ルマンドは一番この中で強いんだ。だから…失礼なことを言ってないで分を弁えろ」

え?何?メイビスが珍しく怒ってるんだけど?
これって単に俺が弱そうに見えたっていうだけの話なんだよな?
確かにムキムキじゃないし、着痩せするからより一層弱そうに見えたのかもしれない。
でもそれでチェンジは流石にな……。

「俺は気にしてないから、このまま行こう?」

メイビスとケインにはちょっと「どうせ早く行きたいだけだろ」的な視線を向けられたけど…当たってるけど、それだけじゃないから!

「レベルが65もあるなら安心して一緒に居られるし、俺はダンジョンはまだ2回目だから、もし詳しいようだったら色々教えてもらえたら嬉しいな」
「ルマンド王子…」
「頼りにしてるよ。よろしく」
「精一杯ご期待にお応えいたします」

ほら。これで全く問題ない。
笑顔でニッコリ友好関係を築けばいいんだから、チェンジなんて時間の無駄無駄!

「じゃあ行こうか」

そして俺の転移魔法でダンジョンのあるレイベルトの街まで一気に転移したら物凄く驚かれた。
なんであんなに目がキラキラしてるのかな?
メイビスがそんなバルドを見てイライラしてるのも地味に気になる。

「ルマンド…あまり他を魅了してばかりいないで、早く行こう」
「え?うん…」

魅了なんてした覚えはないけど早くダンジョンには行きたいから素直に頷いて、俺達はギルドで適当な依頼を見繕ってからダンジョンへと出発した。


******


「どうしてこんな……」

バルドはダンジョンでケインと前衛を担当してくれていたんだけど、俺が補助してメイビスが魔法で倒すというコンビプレーをしているせいでほとんどやることがない。
軽く牽制しておくだけで後衛が倒すのであまりにも楽なのだ。
だからこんな風に呆然としてしまうのだろう。

「やっぱりもっと下に降りた方がいいのかな…」

俺がそう提案するも、それだと日帰りは難しいですよとケインが言う。
ちなみに俺達が今いるのは12階層。
どういった原理かは不明だけど、ダンジョン内には外から転移して入ることはできない。でも一歩足を踏み入れた場所からだったら行ったことのある場所へは転移できるようだったので、今日はそれで一気に前回来た10階層まで移動した。
今はそこから2階層下がったところだ。
依頼内容は12階層にある『虹の雫』の採取で、七色草から取れるらしい。
小瓶を一杯にするのに100本くらいの七色草がいるらしいからちょっと大変だ。
だから先にそれを取りに行ってからダンジョン攻略を進めようと皆で話し合った。

「あった」

そうこうしているうちに七色草の群生地へとたどり着く。

「じゃあ各自油断しないようにしながら雫を集めよう」

俺のその声に合わせて皆が動き出した。
ちなみに今回どうしてこのちょっと面倒な依頼にしたのかというと、今日の目的が一応デートだったからだ。
俺の中でデートと言うと、やっぱり恋人同士で仲良く何かをするっていうイメージがある。
今回護衛の二人がいるから、一緒に戦っていてもこれはデートじゃないなと思ったのでわざわざこういう依頼を選んだのだ。
これならケインとバルドが離れていてもおかしくないし、俺とメイビスがくっついて一緒に採取しててもおかしくないから。

「メイビス。あんまりデートっぽくなくてゴメンな?」
「いや。ルマンドがデートに誘ってくれたのが嬉しい」

以前と変わらない優しい笑顔にちょっと心が和む。
最近の甘い笑みも悪くはないけど、俺はどちらかというとこっちの方が好きかも。
変に照れなくて済むし、メイビスを見ながら笑うことができるから。

「はぁ……好き」
「え?」
「んっ…何でもない」
「ルマンド?」
「だから、なんでもない」
「本当に?」
「本当に」

本当だからあんまりここで甘い雰囲気を出してこないでくれ。
絶対面白がってるだろっ!

「ちょっと俺、魔物倒してくる!」

タイミングが良いのか悪いのかちょうど魔物がこちらに向かってきてたから、申し訳ないけど照れ隠しの犠牲になってもらうことにした。

「ちょっ…!ルマンド!」

『グラビティ・フィスト!』

重力魔法で叩き落して────。

『アースバインド!』

いつものように拘束して……。

剣を使ってコアを砕く。

ガッ…!!

(あれ?硬いな…)

思ったよりも硬かったから折角の愛剣が欠けてしまった。
仕方がないから予備の剣に火魔法を付与して魔法剣で貫いてみる。

パリンッ…!

今度はちゃんとコアが砕けたな。よしよし。

そして俺は満足して周囲を確認してから剣を仕舞ったのだが、駆け付けたメイビス達に焦ったように怒られた。

「ブラックワイバーンに一人で挑むなんて…!」
「え?でもワイバーンは前に倒したからいけるってわかってたし」

どうしてこんな浅い層にブラックワイバーンがいたのかは謎だけど、普通に倒せたし、何か問題でも?
ブラックワイバーンは普通のワイバーンよりは強いと聞くけど、当然ドラゴンよりは弱い。
それなら勝てるだろうと前回と同じように叩き落して拘束して剣で倒した。ただそれだけだ。
経験は自分を裏切らないから、安全な勝ちパターンがあるなら有効に使うべきだと思う。

「ちょっと照れ隠しの勢いで倒しただけなんだから、そんなに怒らなくても…」

そんな俺を見てケインはメイビスを睨むし、バルドはドン引きしていたのでちょっと反省。
取り敢えず、メイビスが遠い目になってしまったからフォローだけは入れておこうかな?


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