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第五章 レイクウッド王国編(只今愛の試練中)
112.森に捨てられた俺
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「悪く思うなよ」
そんな声と共にドサッと地面へと投げ出されたようでフッと意識が浮上していく。
「あ……」
思うように声が出なくて、相変わらず思考は纏まらない。
俺はどうしてこんなところに連れてこられたんだろう?
さっき去っていった男は誰だったんだろう?ここはどこなんだ?
薄暗いどこかの森の中。
恐らくだけど、剣も懐剣もマジックバッグさえも全部取り上げられているっぽい。
こんな魔物が出そうな場所に丸腰で、しかも声も出ない状況で放置されたら魔物に襲われてあっという間に死んでしまうだろう。
「は…ぁ……」
取り敢えず魔法だけでも使えたらディスペルで状態異常は解除できると思うんだけど…やっぱり思考がまとまらなくて魔力のコントロールが儘ならない。
(俺…こんなところで死ぬのかな?)
どこなのかさえわからない森の中、魔物と戦うでもなく殺される。
(そんな死に方…魔法剣士として最悪だ……)
なんて屈辱的な死に方なんだろう?
(死にたく…ない……)
でも体が思うように動かない。
頭はぼんやりしているし、何もかもがダメダメだ。
(悔しい…悔しい…………)
頑張ってレベルを上げて、もっともっと強敵と戦うんだと夢見ていた。
ダンジョン攻略だってもっとやってみたかったし、幸せな未来だって楽しみにしていた。
それなのに…………。
自然と涙があふれてきて止まらない。
でも、暫くするとそんな風に諦めるのはまだ早いのではないだろうか?と考えられた。
そうだ…何とか無理矢理にでも動いて木に寄り掛かろう。
時間が経てば状況は改善するかもしれない。
少しずつでいい。動けるところから動かして、足掻いて足掻いて生き抜こう。
そうしたらきっと────のところに帰れる。
頭がぼんやりしていようと少しは考えることができるのだ。諦める必要はない。
ズルッズルッっと時間をかけてゆっくりと木の方へと移動していく。
それは酷く長い時間のように感じられた。
なんとか木の元へとたどり着けたら今度は這い上がる必要がある。
身体に力が入らないからこれがなかなか難しい。
何度も何度も失敗してようやく何とか成功し、ホッと息を吐くことができた頃にはすっかり夜になっていた。
それでも安全な時間の終わりというのは訪れるもので────。
(ああ…やっぱり来たのか)
どうやら時間が経ってもまだ俺の状態異常は続いているようだ。
こんな風に───弱いウルフが相手でも、囲まれてしまったらどうにもならない。
今の自分には剣を振るうことも魔法を使うこともできはしないのだから。
「情け…ない…な……」
折角頑張ったけど、戦うすべがない自分はあまりにも無力だ。
せめてここで僅かでも足掻けるくらいには回復してくれていればよかったんだが……現実はそう甘くはなかった。
(今夜はご馳走だな…)
思わずそう考えてしまいフフッと笑いがこぼれる。
今ここにいるのはAランク冒険者のルマンドじゃない。ただの非力な第二王子そのものなのだから…。
(ゴメン…────。どうやら俺、ここでお別れみたいだ)
そう思いながらもやっぱり冒険者の性なのか魔物から目を離すことはできなかった。
(せめて一撃で食い殺してくれたらいいんだけど……)
そんな風に思ったところでウルフに襲い掛かられた。
狙われたのは当然のように首筋で、ああ死んだなと普通に思った。
それなのに────。
確実に死んだと思ったにもかかわらず俺は無事だった。
仄かに光る指輪が、その魔法の存在を俺に思い出させてくれる。
『シェリ・レナローゼ』
(ああ、そうだ……)
これは俺が愛する『メイビス』のために一生懸命覚えた魔法だった。
『愛神レナローゼの寵愛』────。
それは結婚を誓った相手に真実の愛を注ぎ続ける限り永遠にその人を守り続ける魔法。
メイビスの指輪にどうしてもかけておきたくて、自分用の指輪で何度も何度も練習したんだっけ。
最終的に覚えるのに成功してこれでメイビスの指輪に使えると喜んでいたからうっかりしていた。
つまり、今この指輪はちゃんと俺を守ってくれたのだ。
俺がメイビスの名前を思い出せなくなっていたとしても想う気持ちは消えなかったし、傍に帰りたいと願っていた。
だからきっとこの魔法は発動してくれたのだろう。
何度もウルフがこちらへと襲い掛かってくるけれど、魔法の指輪で守られた俺には攻撃はきかない。
(良かった……)
これで後少しは生き長らえることができる。
どちらにせよ状態異常がどうにかならない限りここから動くことはできないし、食料や水を得られないなら俺は死ぬしかないだろう。
でも少なくとも戦うことなく弱い魔物に食い殺されるという冒険者として最悪の死に方だけは免れたのだということだけは有難いと思った。
(はぁ…取り敢えず、寝よ)
今はゆっくり休んで、また起きてから考えればいい。
俺はそう結論付けるとゆっくりと優しい眠りへと落ちていった…。
そんな声と共にドサッと地面へと投げ出されたようでフッと意識が浮上していく。
「あ……」
思うように声が出なくて、相変わらず思考は纏まらない。
俺はどうしてこんなところに連れてこられたんだろう?
さっき去っていった男は誰だったんだろう?ここはどこなんだ?
薄暗いどこかの森の中。
恐らくだけど、剣も懐剣もマジックバッグさえも全部取り上げられているっぽい。
こんな魔物が出そうな場所に丸腰で、しかも声も出ない状況で放置されたら魔物に襲われてあっという間に死んでしまうだろう。
「は…ぁ……」
取り敢えず魔法だけでも使えたらディスペルで状態異常は解除できると思うんだけど…やっぱり思考がまとまらなくて魔力のコントロールが儘ならない。
(俺…こんなところで死ぬのかな?)
どこなのかさえわからない森の中、魔物と戦うでもなく殺される。
(そんな死に方…魔法剣士として最悪だ……)
なんて屈辱的な死に方なんだろう?
(死にたく…ない……)
でも体が思うように動かない。
頭はぼんやりしているし、何もかもがダメダメだ。
(悔しい…悔しい…………)
頑張ってレベルを上げて、もっともっと強敵と戦うんだと夢見ていた。
ダンジョン攻略だってもっとやってみたかったし、幸せな未来だって楽しみにしていた。
それなのに…………。
自然と涙があふれてきて止まらない。
でも、暫くするとそんな風に諦めるのはまだ早いのではないだろうか?と考えられた。
そうだ…何とか無理矢理にでも動いて木に寄り掛かろう。
時間が経てば状況は改善するかもしれない。
少しずつでいい。動けるところから動かして、足掻いて足掻いて生き抜こう。
そうしたらきっと────のところに帰れる。
頭がぼんやりしていようと少しは考えることができるのだ。諦める必要はない。
ズルッズルッっと時間をかけてゆっくりと木の方へと移動していく。
それは酷く長い時間のように感じられた。
なんとか木の元へとたどり着けたら今度は這い上がる必要がある。
身体に力が入らないからこれがなかなか難しい。
何度も何度も失敗してようやく何とか成功し、ホッと息を吐くことができた頃にはすっかり夜になっていた。
それでも安全な時間の終わりというのは訪れるもので────。
(ああ…やっぱり来たのか)
どうやら時間が経ってもまだ俺の状態異常は続いているようだ。
こんな風に───弱いウルフが相手でも、囲まれてしまったらどうにもならない。
今の自分には剣を振るうことも魔法を使うこともできはしないのだから。
「情け…ない…な……」
折角頑張ったけど、戦うすべがない自分はあまりにも無力だ。
せめてここで僅かでも足掻けるくらいには回復してくれていればよかったんだが……現実はそう甘くはなかった。
(今夜はご馳走だな…)
思わずそう考えてしまいフフッと笑いがこぼれる。
今ここにいるのはAランク冒険者のルマンドじゃない。ただの非力な第二王子そのものなのだから…。
(ゴメン…────。どうやら俺、ここでお別れみたいだ)
そう思いながらもやっぱり冒険者の性なのか魔物から目を離すことはできなかった。
(せめて一撃で食い殺してくれたらいいんだけど……)
そんな風に思ったところでウルフに襲い掛かられた。
狙われたのは当然のように首筋で、ああ死んだなと普通に思った。
それなのに────。
確実に死んだと思ったにもかかわらず俺は無事だった。
仄かに光る指輪が、その魔法の存在を俺に思い出させてくれる。
『シェリ・レナローゼ』
(ああ、そうだ……)
これは俺が愛する『メイビス』のために一生懸命覚えた魔法だった。
『愛神レナローゼの寵愛』────。
それは結婚を誓った相手に真実の愛を注ぎ続ける限り永遠にその人を守り続ける魔法。
メイビスの指輪にどうしてもかけておきたくて、自分用の指輪で何度も何度も練習したんだっけ。
最終的に覚えるのに成功してこれでメイビスの指輪に使えると喜んでいたからうっかりしていた。
つまり、今この指輪はちゃんと俺を守ってくれたのだ。
俺がメイビスの名前を思い出せなくなっていたとしても想う気持ちは消えなかったし、傍に帰りたいと願っていた。
だからきっとこの魔法は発動してくれたのだろう。
何度もウルフがこちらへと襲い掛かってくるけれど、魔法の指輪で守られた俺には攻撃はきかない。
(良かった……)
これで後少しは生き長らえることができる。
どちらにせよ状態異常がどうにかならない限りここから動くことはできないし、食料や水を得られないなら俺は死ぬしかないだろう。
でも少なくとも戦うことなく弱い魔物に食い殺されるという冒険者として最悪の死に方だけは免れたのだということだけは有難いと思った。
(はぁ…取り敢えず、寝よ)
今はゆっくり休んで、また起きてから考えればいい。
俺はそう結論付けるとゆっくりと優しい眠りへと落ちていった…。
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